行政書士法の条文まとめ:資格・登録・事務所・義務・懲戒・罰則と行政書士法人

行政書士法は、基礎知識の「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」の中心になる法律です。条文は多く見えますが、「なる」(資格・欠格事由・登録)、「働く」(事務所・帳簿・依頼に応ずる義務・秘密)、「罰せられる」(懲戒・罰則)の3段と、行政書士法人に分けると、どこに何があるかが見えてきます。

覚えるときの急所は、数字(3年・2年・3か月・2週間)と、「しなければならない」「できる」「努めなければならない」の言い分けです。この記事では、令和8年度試験の基準日である令和8年4月1日時点の条文を、e-Gov法令検索で確かめて一覧にしました。令和7年の改正(令和8年1月1日施行)後の条文です。

改正で変わった条文(1条の使命、1条の2の職責、19条の言葉など)は行政書士法の改正で、行政書士ができる仕事の範囲(1条の3・1条の4)は行政書士とはどんな資格かで扱っています。この記事はそれ以外の条文を受け持ちます。なお、令和8年5月21日に施行された別の改正は、4月1日より後なので令和8年度試験の範囲外です。

身近な例で考えるとどうなるか

試験に合格したことねさんが、開業して法人を作るまでの流れで、条文の位置を確かめます。

  1. 合格した(2条1号で資格を持つ)。ただし未成年者などの欠格事由(2条の2)に当たれば、行政書士になれない。
  2. 事務所を置く県の行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に登録を申請する(6条の2第1項)。登録を受けた時に、その県の行政書士会の会員になる(16条の5)。
  3. 事務所を1つだけ設け(8条)、帳簿をつけ(9条)、報酬の額を事務所に掲示する(10条の2)。依頼は正当な事由がなければ断れない(11条)。秘密は漏らさない(12条)。
  4. 仲間の行政書士と行政書士法人を作る(13条の3)。主たる事務所の所在地で設立の登記をした時に成立する(13条の9)。
  5. 法律に違反すれば、都道府県知事から懲戒を受ける(14条)。無資格の人に仕事をさせるなどすれば、罰則もある。

「なる」:資格・欠格事由・登録

資格(2条)

次の6つのどれかに当たる人が、行政書士となる資格を持ちます。

号資格を持つ人
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1号行政書士試験に合格した者
2〜5号弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者
6号公務員等として行政事務を担当した期間が通算20年以上(高校卒業者などは17年以上)の者

司法書士などは、この表に入っていません。「士業ならだれでも」とする肢に注意します。

欠格事由(2条の2)

2条の資格があっても、次の人は行政書士になれません。期間が書かれたものは、すべて「3年」です。

  • 1号:未成年者
  • 2号:破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 3号:拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者
  • 4号:公務員(行政執行法人・特定地方独立行政法人の役職員を含む)で懲戒免職の処分を受け、その日から3年を経過しない者
  • 5号:6条の5第1項で登録の取消しの処分を受け、その日から3年を経過しない者
  • 6号:14条で業務の禁止の処分を受け、その日から3年を経過しない者
  • 7号:弁護士会からの除名、公認会計士の登録抹消、弁理士・税理士・司法書士・土地家屋調査士の業務禁止、社労士の失格処分という、ほかの士業の法律による懲戒の処分を受け、3年を経過しない者
  • 8号:税理士法48条1項による決定(同法44条3号の処分を受けるべきであったことの決定)を受け、3年を経過しない者

登録(6条〜7条の4)

段階条文中身
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名簿6条行政書士名簿は日本行政書士会連合会に備え、登録も連合会が行う
申請6条の2第1項事務所を置く都道府県の行政書士会を経由して連合会に申請
拒否6条の2第2項・3項心身の故障で業務ができない者、信用・品位を害するおそれがある者など。資格審査会の議決に基づき、あらかじめ弁明の機会を与える
不服6条の3総務大臣に審査請求。申請から3か月たっても処分がなければ、拒否されたものとして審査請求できる
取消し6条の5偽りその他不正の手段で登録を受けたと分かったときは、取り消さなければならない
抹消(義務)7条1項欠格事由に当たった、廃業の届出、死亡、登録の取消し
抹消(任意)7条2項引き続き2年以上業務を行わない、心身の故障で業務ができない

登録を受けると、連合会は行政書士証票を交付します(6条の2第4項)。登録が抹消されたときや業務停止の処分を受けたときは、証票を連合会に返します(7条の2)。

「働く」:事務所・帳簿・依頼・秘密

条文義務の中身言い回しの急所
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8条事務所を設けなければならない。2以上設けてはならない行政書士等の使用人である行政書士は、事務所を設けてはならない
9条帳簿に事件の名称・年月日・報酬の額・依頼者の住所氏名などを書く帳簿閉鎖の時から2年間保存。行政書士でなくなっても同じ
10条信用又は品位を害するような行為をしてはならない見出しは「信用失墜行為の禁止」
10条の2事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示会・連合会の統計の作成・公表は「努めなければならない」
11条依頼を拒むことができない「正当な事由がある場合でなければ」
12条業務上知り得た秘密を漏らしてはならない「正当な理由がなく」。行政書士でなくなった後も同じ
13条所属する行政書士会と連合会の会則を守る義務
13条の2研修を受け、資質の向上を図る「努めなければならない」(努力義務)
19条の3行政書士・行政書士法人の使用人なども秘密を漏らしてはならない使用人等でなくなった後も同じ

11条は「正当な事由」、12条は「正当な理由」です。一字違いですが、条文の言葉として区別しておきます。

「罰せられる」①:懲戒と立入検査

懲戒の種類と、だれがするか(14条・14条の2)

相手懲戒する人処分の種類
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行政書士(14条)都道府県知事戒告/2年以内の業務の停止/業務の禁止
行政書士法人(14条の2)主たる事務所の都道府県知事など戒告/2年以内の業務の全部または一部の停止/解散

懲戒の理由は、行政書士法やそれに基づく命令・規則その他都道府県知事の処分に違反したとき、または「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」があったときです。懲戒するのは日本行政書士会連合会ではなく、都道府県知事です。

懲戒の手続(14条の3〜14条の5)

  • だれでも求められる:何人も、懲戒の事由に当たる事実があると考えるときは、事務所の所在地を管轄する都道府県知事に通知し、適当な措置をとることを求めることができる。知事は必要な調査をしなければならない。
  • 業務停止でも聴聞:業務の停止の処分をするときは、行政手続法の区分(ふつうは弁明の機会の付与にあたる処分)にかかわらず、聴聞を行わなければならない。聴聞の通知は期日の1週間前まで、審理は公開で行う。
  • 抹消の制限:業務の停止・禁止の手続が進んでいる間は、連合会は廃業の届出などによる登録の抹消ができない(14条の4)。懲戒を逃れるための廃業を防ぐ仕組みです。
  • 公告:懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その都道府県の公報で公告する(14条の5)。
  • 立入検査(13条の22):都道府県知事は、職員に行政書士の事務所に立ち入らせ、帳簿などを検査させることができる。日没から日の出までの間は除かれ、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

行政手続法の聴聞は原則として公開しないので、行政書士法の聴聞が「公開」である点は、行政手続法の知識と混ざりやすいところです。聴聞と弁明の違いは聴聞と弁明の機会の付与で確かめられます。

「罰せられる」②:罰則の一覧

違反条文刑
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資格のない者が虚偽の申請で名簿に登録させた21条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
行政書士でない者が業務を行った(19条1項違反)21条の21年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
秘密を漏らした(12条・19条の3違反)22条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。告訴がなければ公訴を提起できない
行政書士の名称を使った(19条の2違反)22条の4100万円以下の罰金
帳簿(9条)・依頼に応ずる義務(11条)の違反23条100万円以下の罰金
立入検査を拒んだ・妨げた(13条の22違反)23条の230万円以下の罰金

このほか、法人の代表者や従業者が業務に関して21条の2・22条の4などの違反をしたときは、行為者だけでなく法人などにも罰金刑を科す両罰規定があります(23条の3)。秘密を漏らした罪だけが「告訴がなければ」起訴できない(親告罪)点と、名称の使用(22条の4)には拘禁刑がない点が、言い分けの急所です。

行政書士法人:作り方と、社員のルール

項目条文中身
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設立できる人13条の3行政書士
名称13条の4名称中に「行政書士法人」という文字を使う
社員13条の5社員は行政書士。業務の停止の期間中の者は社員になれない
成立13条の9・13条の10主たる事務所の所在地で設立の登記をして成立。成立の日から2週間以内に、登記事項証明書・定款の写しを添えて届け出る
業務の執行13条の12定款に別段の定めがなければ、社員はすべて業務を執行する権利を持ち、義務を負う
社員の常駐13条の14各事務所に、その都道府県の行政書士会の会員である社員を常駐させる
特定業務13条の6不服申立ての代理などは、社員にその業務ができる行政書士がいる法人に限る
競業の禁止13条の16社員は、自己・第三者のために法人の業務の範囲に属する業務を行えず、他の行政書士法人の社員にもなれない
解散13条の19総社員の同意、合併、破産、社員の欠亡など

社員が1人もいなくなる(社員の欠亡)と解散事由になります。ただし、社員の死亡で欠亡した場合に限り、清算人は、相続人などの同意を得て新たに社員を加入させ、法人を続けることができます(13条の19の2)。合併には総社員の同意が必要です(13条の20)。

行政書士会と連合会

  • 行政書士会(15条):都道府県の区域ごとに一つ設立しなければならない。法人とする。
  • 入会と退会(16条の5):登録を受けた時に「当然」、事務所の所在地の行政書士会の会員になる。登録が抹消されれば当然に退会する。
  • 注意勧告と報告(17条・17条の2):行政書士会は、会員が法令などに違反するおそれがあるときは注意を促し、必要な措置を勧告できる。会員の違反を知ったときは、都道府県知事に報告しなければならない。
  • 日本行政書士会連合会(18条):全国の行政書士会が設立しなければならない。登録に関する事務を行う。
  • 資格審査会(18条の4):連合会に置く。会長と委員4人で組織し、会長には連合会の会長が充たる。委員は、会長が総務大臣の承認を受けて、行政書士・総務省の職員・学識経験者から委嘱する。

数字と言い回しの一覧:まぎらわしいものを並べる

数字・言葉どこに出てくるか
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3年欠格事由の期間(2条の2の3号〜8号)
2年帳簿の保存(9条2項)/業務停止の上限(14条2号)/不業務による任意の抹消(7条2項1号)
3か月登録申請に処分がないときのみなし拒否(6条の3第2項)
2週間行政書士法人の成立の届出(13条の10)
1週間業務停止・禁止の聴聞の通知(14条の3第4項)
しなければならない不正登録の取消し(6条の5)、7条1項の抹消
できる7条2項の抹消(2年以上の不業務・心身の故障)
努めなければならない研修(13条の2)、報酬の統計(10条の2第2項)

試験ではここをまちがえやすい

  • 抹消の「しなければならない」と「できる」を入れ替える型:2年以上業務を行わないときの抹消は「できる」(7条2項)。廃業届・死亡・欠格は「しなければならない」(7条1項)。
  • 懲戒権者を入れ替える型:行政書士の懲戒は都道府県知事。日本行政書士会連合会や総務大臣ではありません。登録の拒否・取消し・抹消をするのは連合会なので、ここで混ざります。
  • 手続を行政手続法どおりにする型:業務停止でも聴聞、しかも公開。弁明の機会の付与で足りるとする肢は誤りです。
  • 数字を入れ替える型:欠格は3年、業務停止の上限と帳簿の保存は2年。
  • 努力義務を義務にする型:研修は「努めなければならない」。会則の遵守は義務です。
  • 法人の社員の兼業を認める型:社員は、法人の業務の範囲に属する業務を自分のために行えません(13条の16)。

行政書士法は、条文を読めば答えが一つに決まる問題が中心です。基礎知識全体のなかで、どの分野から点を取るかは行政書士試験の「基礎知識」で整理しています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
主たる事務所を愛知県に置く行政書士法人Xが、岐阜県に従たる事務所を設ける場合、Xは、岐阜県の事務所に、岐阜県行政書士会の会員である社員を常駐させなければならない。

答え:○ 分かれ目は、常駐させる社員の所属です。行政書士法人は、その事務所に、その事務所の所在地の都道府県の行政書士会の会員である社員を常駐させなければなりません(行政書士法13条の14)。主たる事務所が愛知県なので、愛知県行政書士会の社員で足りると考えると✕にしてしまいます。従たる事務所ごとに、その県の会の会員である社員が要ります。

問2(このサイトのオリジナル問題)
行政書士Aが、病気などの事情なしに、引き続き2年以上行政書士の業務を行わなかった。この場合、日本行政書士会連合会は、Aの登録を抹消しなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、抹消が義務か裁量かです。引き続き2年以上業務を行わないときは、連合会は登録を抹消「することができる」にとどまります(7条2項1号)。正しくは、抹消するかどうかは連合会の判断です。廃業の届出・死亡・欠格事由に当たったときの抹消(7条1項)は「しなければならない」なので、この二つを取り違えると○にしてしまいます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
行政書士法人Xの社員である行政書士Bは、Xの業務の範囲に属する許可申請書類の作成の依頼を、自分の顧客から、Xとは別にB個人の業務として引き受けることはできない。

答え:○ 行政書士法人の社員は、自己もしくは第三者のためにその法人の業務の範囲に属する業務を行ってはなりません(13条の16第1項)。Bは登録を受けた行政書士なので、個人でも引き受けられると考えると✕にしてしまいます。社員が他の行政書士法人の社員になることも、同じ条文で禁じられています。違反して得た利益の額は、法人に生じた損害の額と推定されます(同条2項)。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 行政書士法は「なる(2条・2条の2・6条〜7条)」「働く(8条〜13条の2)」「罰せられる(14条〜、21条〜)」と行政書士法人(13条の3〜)に分けて覚える。
  • 欠格事由の期間は3年。帳簿の保存と業務停止の上限は2年。登録のみなし拒否は3か月。
  • 登録の取消し・抹消は連合会、懲戒は都道府県知事。業務停止でも聴聞で、公開。
  • 依頼は「正当な事由」がなければ拒めない。秘密は「正当な理由」がなく漏らせず、漏らした罪は告訴が必要。
  • 行政書士法人の社員は行政書士。各事務所に、その県の会の会員である社員を常駐させ、法人の業務を自分のために行えない。

次に読むなら、合格後の登録の流れがおすすめです。この記事の6条〜7条を、実際の申請の順番と必要書類に当てはめて確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容(令和7年法律第65号による改正後)を、e-Gov法令検索で確かめています。