地球温暖化対策推進法とは:温室効果ガスの定義、基本理念(脱炭素社会)、地球温暖化対策計画と地方公共団体実行計画、算定・報告・公表制度

ひとことで言うと、地球温暖化対策推進法は、温室効果ガスの排出を減らすために、国・地方公共団体・事業者・国民の責務と、政府の「地球温暖化対策計画」、地方公共団体の「地方公共団体実行計画」、排出の多い事業者の排出量を報告・公表する制度を決めた法律です。2条の2の基本理念は、我が国における「二千五十年までの脱炭素社会」の実現を旨とすると書いています(2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認)。

「地球温暖化対策推進法」「温対法」は略した呼び方で、法律の題名は「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)です。2条の2の基本理念は、令和3年法律第54号による改正で置かれました。環境省の発表では、この改正法は令和4年4月1日に全面施行されています。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の社会の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点=6問)を越えるための6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、という基礎知識の記事の順番は変わりません。削減目標の数字、排出量、各国の比べ、政策の評価は扱わず、令和8年4月1日時点の条文の骨組みだけを整理します。

身近な例で考えると

はるとさんは、工場を持つメーカーB社で働きながら、行政書士試験の勉強をしています。住んでいるのはC町(指定都市でも中核市でもない町)です。「温暖化の法律は、だれに何を求めているのか」を、自分の身の回りの立場ごとに条文で確かめました。B社は、排出の多い事業者として政令で定める「特定排出者」に当たるものとします。

人物・機関この法律での立場主な条文
はるとさん国民日常生活での削減に努め、国などの施策に協力する(6条)
B社事業者・特定排出者削減に努め、施策に協力する(5条)。毎年度、排出量を報告する(26条)
C町市町村町の事務・事業の実行計画を作る(21条1項)
政府国地球温暖化対策計画を定める(8条)

はるとさんが気づいたのは、同じ条文の中に「努める」と「しなければならない」が並んでいることでした。たとえると、この法律は「国全体の計画表と、各自の役割分担表」です。ただし本物のルールでは、役割の中に、努力にとどまるものと義務になっているものが混ざっていて、その区別が条文の言葉で決まります。

条文ではこう決まっている

目的(1条)と定義(2条)

1条は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが「人類共通の課題」であり、全ての者が自主的かつ積極的に取り組むことが重要だとしています。そのうえで、地球温暖化対策計画の策定や排出の量の削減等を促進する措置などにより、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与し、人類の福祉に貢献することを目的にしています。

2条1項は「地球温暖化」を、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の濃度を増加させ、地球全体として地表・大気・海水の温度が追加的に上昇する現象、と定義しています。2条3項が並べる「温室効果ガス」は、次の7つの号です。

  1. 二酸化炭素
  2. メタン
  3. 一酸化二窒素
  4. ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  5. パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  6. 六ふっ化硫黄
  7. 三ふっ化窒素

4号と5号は「のうち政令で定めるもの」なので、その種類の物質がすべて入るわけではありません。

基本理念(2条の2)

2条の2は、パリ協定2条1(a)が世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること、1.5度高い水準までのものに制限する努力を続けることとしているのを踏まえる、と書き出します。そのうえで、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、「我が国における二千五十年までの脱炭素社会」の実現を旨として、国民・国・地方公共団体・事業者・民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならない、としています。

「脱炭素社会」には条文の中に定義があります。人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と、吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会です。排出をなくした社会、という書き方ではありません。

だれが何をするか(条ごとの一覧)

条だれが何を(条文の言葉)
3条国観測・監視を行い、総合的かつ計画的な対策を策定し、実施するものとする
4条地方公共団体区域の自然的社会的条件に応じた施策を推進するものとする
5条事業者事業活動に関し削減等の措置を講ずるように努めるとともに、国・地方公共団体の施策に協力しなければならない
6条国民日常生活に関し削減等の措置を講ずるように努めるとともに、国・地方公共団体の施策に協力しなければならない
8条政府地球温暖化対策計画を定めなければならない。内閣総理大臣が案につき閣議の決定を求める(3項)
21条都道府県・市町村事務及び事業に関し地方公共団体実行計画を策定するものとする(1項)
26条特定排出者毎年度、温室効果ガス算定排出量を事業所管大臣に報告しなければならない
29条環境大臣・経済産業大臣通知された事項をファイルに記録し、公表するものとする

地方公共団体実行計画(21条)の書き分け

  • 1項(すべての都道府県・市町村):自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減等のための措置に関する計画(地方公共団体実行計画)を「策定するものとする」。
  • 3項(都道府県と指定都市等):その区域の自然的社会的条件に応じて削減等を行うための施策に関する事項を「定めるものとする」。指定都市等は、地方自治法の指定都市と中核市です。
  • 4項(指定都市等を除く市町村):区域の施策に関する事項を「定めるよう努めるものとする」。
  • 5項(市町村):区域の施策を定める場合は、地域脱炭素化促進事業の促進に関する事項(促進区域など)を「定めるよう努めるものとする」。

算定・報告・公表の制度(26条〜29条)

事業活動に伴い相当程度多い温室効果ガスの排出をする者として政令で定めるものが「特定排出者」です(26条1項)。国または地方公共団体の事務及び事業も「事業活動」に含まれます。特定排出者は、毎年度、温室効果ガス算定排出量に関する事項を、その事業を所管する大臣(事業所管大臣)に報告します。政令で定める規模以上の事業所があれば、事業所ごとの量も報告します。報告された事項は、28条1項によって環境大臣と経済産業大臣に通知され、両大臣がファイルに記録して公表します(29条1項)。環境省の説明では、令和3年の改正で、この制度の開示請求の規定などが削除されました。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:メタンや一酸化二窒素。二酸化炭素と並んで、2条3項に号として書かれています。
  2. 当てはまる例:指定都市でも中核市でもないC町が、町の庁舎や公用車などの事務・事業について地方公共団体実行計画を作る。21条1項の「策定するものとする」は、すべての市町村にかかります。
  3. 当てはまらない例:ハイドロフルオロカーボンに当たる物質なら何でも温室効果ガス、という読み方。2条3項4号は「のうち政令で定めるもの」に限っています。
  4. ひっかけやすい例:C町が区域全体の施策(住民や事業者の排出を減らす施策)を実行計画に定めるかどうか。指定都市等を除く市町村では、21条4項で「定めるよう努めるものとする」にとどまります。
  5. ひっかけやすい例:はるとさんの日常生活での省エネルギー。6条は「講ずるように努める」で、ここは努力です。施策への協力は「しなければならない」と書き分けています。

似ているルールとの違い

この法律には、名前の似た2つの計画があります。どちらも行政が作る計画ですが、作る主体と決め方が違います。

比べる点地球温暖化対策計画地方公共団体実行計画
条8条21条
作る主体政府都道府県・市町村(単独でも共同でも)
決め方内閣総理大臣が案につき閣議の決定を求め、決定後に公表地球温暖化対策計画に即して策定
中身国全体の対策の総合的かつ計画的な推進自らの事務・事業の措置。区域の施策は団体の種類で義務か努力かが分かれる

指定都市と中核市がどんな市かは、地方公共団体の種類の記事で地方自治法の条文から整理しています。行政が作る計画を一般にどう扱うか(法律の根拠がいるか、裁判で争えるか)は、行政法の行政契約と行政計画の記事の範囲です。国際の枠組みとしてはパリ協定があり、この法律の基本理念(2条の2)がその2条1(a)の気温の目標に触れています。環境の分野の基本となる法律と典型7公害は環境基本法の記事、廃棄物の発生抑制から適正処分までの順番は循環型社会形成推進基本法の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 題名と略称:題名は「地球温暖化対策の推進に関する法律」。「温対法」「地球温暖化対策推進法」は略した呼び方。
  • 脱炭素社会の定義:排出量と吸収量の「均衡」が保たれた社会。排出ゼロとは書いていない。
  • 努力と義務:事業者・国民は、削減の措置が「努める」、国・地方公共団体の施策への協力が「しなければならない」。
  • 実行計画の範囲:事務・事業の計画はすべての都道府県・市町村(1項)。区域の施策は都道府県・指定都市・中核市が「定めるものとする」、それ以外の市町村は「努める」。
  • 報告の行き先:特定排出者の報告先は事業所管大臣(26条1項)。記録・公表は環境大臣と経済産業大臣(29条)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
メーカーのB社は、事業活動について温室効果ガスの排出の量の削減等の措置を講ずるよう努めることとされているが、国や地方公共団体が実施する削減等の施策に協力することは、努力ではなく義務とされている。

答え:○ 分かれ目は、5条の前半と後半の書き分けです。5条は、事業者が削減等の措置を「講ずるように努める」とともに、国及び地方公共団体の施策に「協力しなければならない」と定めています。責務の条文だから全部が努力義務だ、と考えると✕に見えます。国民の責務(6条)も同じ形で、日常生活での措置が努力、施策への協力が義務です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
指定都市でも中核市でもないC町は、区域の施策に関する事項と同じく、町の事務及び事業に関する地方公共団体実行計画についても、策定するよう努めれば足りる。

答え:✕ 分かれ目は、21条の1項と4項の違いです。正しくは、自らの事務及び事業に関する地方公共団体実行計画は、すべての都道府県と市町村が「策定するものとする」とされています(21条1項)。「定めるよう努めるものとする」にとどまるのは、指定都市等を除く市町村が区域の施策に関する事項を定める部分です(21条4項)。区域の施策の努力の規定を、事務・事業の計画にまで広げた誤りです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
2条の2の基本理念は、我が国における2050年までの脱炭素社会の実現を旨としている。ここでいう「脱炭素社会」は、人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量をなくした社会として、条文で定義されている。

答え:✕ 分かれ目は、定義が「排出をなくす」か「均衡」かです。正しくは、脱炭素社会は、人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と、吸収作用の保全及び強化により吸収される吸収量との間の「均衡が保たれた社会」と定義されています(2条の2)。言葉の響きから、排出そのものをなくすことだと受け取った誤りです。この定義は、令和3年法律第54号の改正で基本理念とともに置かれました。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 題名は「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)。温室効果ガスは2条3項の7つの号(4号・5号は政令で定めるもの)。
  • 基本理念(2条の2)は「二千五十年までの脱炭素社会」の実現を旨とする。脱炭素社会=排出量と吸収量の均衡。令和3年法律第54号で置かれ、令和4年4月1日に全面施行。
  • 事業者・国民:削減の措置は努力、施策への協力は義務(5条・6条)。
  • 地球温暖化対策計画は政府(8条、閣議決定)。地方公共団体実行計画はすべての都道府県・市町村(21条1項)、区域の施策は団体の種類で義務と努力が分かれる。
  • 特定排出者は毎年度、事業所管大臣に報告(26条)。環境大臣・経済産業大臣が記録・公表(29条)。

このサイトで次に読むなら、地方公共団体の種類の記事です。21条の「指定都市等」のように、ほかの法律が地方自治法の区分を借りて義務の重さを分ける場面が分かり、行政法の地方自治の勉強にもつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の内容を確かめました(2026年10月17日確認)。

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