行政手続法の適用除外:3条・4条と、地方公共団体の処分・行政指導の扱いを表で覚える

行政手続法の適用除外は、3つの表で覚えます。①3条1項:国会・裁判・刑事・学校・公務員・外国人・試験の結果など、16の場面の処分と行政指導には、申請・不利益処分・行政指導などの章を使わない。②3条3項:地方公共団体の機関がする処分(根拠が条例・規則のもの)と届出(同)、すべての行政指導、命令等を定める行為には、第2章から第6章を使わない。③4条:国の機関や地方公共団体が「固有の資格」で処分の相手になる場合などは、この法律を使わない。

いちばんのひっかけは、地方公共団体の処分でも、根拠が法律にあれば行政手続法が使われることです。行政指導は、地方公共団体の機関がするものなら、根拠を問わず除外されます。この記事は、令和8年4月1日時点の行政手続法をe-Govで確かめて書いています。

身近な例で考えると

登場人物は、市内でカフェを営むゆうきさんと、市です。

場面根拠行政手続法は
市長が、法律にもとづいてカフェに営業停止を命じる法律使われる(聴聞・弁明、理由の提示など)
市が、市の条例にもとづく市民ホールの使用許可を取り消す条例使われない(3条3項)
市の職員が、店の看板を小さくするよう指導する根拠を問わない使われない(3条3項)
市が規則を作る―意見公募の章も使われない(3条3項)
  1. ゆうきさんの店は、法律にもとづいて市長から営業停止を命じられました。市の処分でも根拠は法律なので、行政手続法の不利益処分の決まり(弁明の機会、理由の提示など)が使われます。
  2. 同じ週、ゆうきさんが借りていた市民ホールの使用許可が、市の条例にもとづいて取り消されました。こちらは根拠が条例なので、行政手続法は使われません。
  3. 市の職員から看板について指導も受けました。地方公共団体の機関の行政指導なので、行政手続法の行政指導の章は使われません。
  4. ただし、行政手続法46条は、地方公共団体に、これらの手続について、この法律の趣旨にのっとって必要な措置を講ずるよう努めることを求めています。

たとえると、国が作った「手続のルールブック」は、国の法律にもとづく仕事に使います。地方が自分で作ったルール(条例・規則)にもとづく仕事には、地方が自分のルールブックを用意する、という分け方です。ただし本物の条文では、行政指導と命令等は、根拠が法律でも地方の機関なら除外されます。たとえと条文がずれる所なので、表で覚えます。

3条3項:地方公共団体の機関の扱い

地方公共団体の機関がすること根拠が条例・規則根拠が法律など
処分使われない使われる
届出(を受けること)使われない使われる
行政指導使われない使われない
命令等を定める行為使われない使われない
  • 除外されるのは、第2章(申請に対する処分)から第6章(意見公募手続等)までです。
  • 3条3項の「届出」は、届出の根拠が条例・規則に置かれているものに限られます。
  • 行政指導の決まり(書面の交付や中止の求めなど)は行政指導の記事、意見公募は意見公募手続の記事、条例と規則の違いは条例と規則の記事で確かめられます。

3条1項:16の場面を4つに束ねる

3条1項の処分と行政指導には、第2章から第4章の2まで(申請に対する処分、不利益処分、行政指導、処分等の求め)を使いません。当サイトでは、覚えるために次の4つに束ねています(理由づけは当サイトの整理で、条文の言葉ではありません)。

束ね方号中身(短く)
別の慎重な手続がある1〜4号、12号、15号、16号国会・議会の議決、裁判、議会の同意を得てする処分、検査官会議、利害を調整する裁定(双方が名あて人)、審査請求などへの裁決、その手続や聴聞・弁明などの意見陳述の手続の中でされる処分
刑事・犯則の手続5号、6号検察官・司法警察職員の処分、国税・地方税と金融商品取引の犯則事件の処分
特別な関係の中7〜9号学校での教育目的の処分、刑務所・少年院などでの収容目的の処分、公務員の職務・身分に関する処分
性質になじまない10号、11号、13号、14号外国人の出入国・難民の認定・補完的保護対象者の認定・帰化、試験や検定の結果、現場での警察官などの処分、報告や物件の提出を命じるなど情報収集が直接の目的の処分
  • 11号は「専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分」です。国家試験の不合格に、申請に対する処分の理由の提示の規定は使われません。
  • 14号の情報収集の処分は、行政調査(報告や物件の提出を命じる処分など)にかかわる号です。

3条2項・4条:そのほかの除外

3条2項:次の命令等を定める行為には、第6章(意見公募手続など)を使いません。

  • 法律の施行期日を定める政令、恩赦に関する命令
  • 制定行為が処分に当たる命令・規則、法律の規定にもとづき施設・区間・地域などを指定する命令・規則
  • 公務員の給与・勤務時間などの勤務条件を定める命令等
  • 法令や慣行、または定める機関の判断で公にされない審査基準・処分基準・行政指導指針

4条1項:国の機関や地方公共団体(その機関)に対する処分で、これらが「固有の資格」(一般の私人が立ちえない立場)で相手になるもの、それらへの行政指導、それらがする固有の資格での届出には、行政手続法の規定を使いません(この法律全体の除外)。

4条2項・3項:法律で直接設立された法人などへの、監督の法律の特別の規定にもとづく処分と、法律にもとづき指定を受けて試験・検査・登録などの事務をする者(その事務について公務員とみなされる者)への監督上の処分には、第2章・第3章を使いません。ただし、解散の命令、設立の認可の取消し、役員や業務に従事する者の解任の命令(指定の場合は、指定の取消しと、役員や事務に従事する者の解任の命令)は除外されず、手続が使われます。

4条4項:国や地方公共団体の機関の組織、皇統譜、公務員の礼式・研修・表彰、予算・会計、会計検査、国と地方公共団体の関係などを定める命令等には、第6章を使いません。

似ているルールとの違い

くらべる点3条1項3条3項4条1項
対象16の場面の処分・行政指導地方公共団体の機関の処分・行政指導・届出・命令等国の機関等が固有の資格で相手になる処分など
使わない範囲第2章〜第4章の2第2章〜第6章この法律の規定すべて
条件号に当たること処分・届出は根拠が条例・規則のとき固有の資格であること

46条の地方公共団体の措置は「努めなければならない」という努力義務です。行政手続法の全体の流れは行政手続法の記事で説明しています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 根拠の取り違え:「地方公共団体の機関の処分には、行政手続法は一切適用されない」→ ✕。根拠が法律なら適用されます。除外は根拠が条例・規則のものだけ。
  • 行政指導:「法律にもとづく事務での市の行政指導には、行政指導の章が適用される」→ ✕。地方公共団体の機関の行政指導は、根拠を問わず除外されます。
  • 命令等:「地方公共団体の規則の制定にも、行政手続法の意見公募手続が必要」→ ✕。
  • 46条:「地方公共団体は行政手続条例を定めなければならない」→ ✕。条文は、必要な措置を講ずるよう努めなければならない(努力義務)。
  • 3条1項の範囲:3条1項は第5章(届出)・第6章(意見公募)の除外ではありません。命令等の除外は3条2項・3条3項(地方公共団体の機関)・4条4項です。
  • 4条の例外の例外:特殊法人などへの監督処分は原則除外でも、解散の命令・設立の認可の取消し・役員の解任の命令には手続が使われます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
A市長が、A市の条例にもとづく市民ホールの使用許可を、利用者のVさんに不利益な処分として取り消すことにした。この取消しには、行政手続法の不利益処分の規定(弁明の機会の付与など)は適用されない。

答え:○ 分かれ目は、地方公共団体の機関の処分の根拠が条例か法律かです。行政手続法3条3項は、地方公共団体の機関がする処分で、根拠となる規定が条例または規則に置かれているものには、第2章から第6章までを適用しないとしています。「不利益処分なのだから弁明の機会がある」と考えると✕にしてしまいます。同じ市長の処分でも、根拠が法律なら行政手続法が適用されます。この取消しの手続をどう定めるかは、46条で市の努力に委ねられています。

問2(このサイトのオリジナル問題)
B県の職員が、法律にもとづいて県が行う許可の事務の中で、申請者のWさんに申請の取下げを求める行政指導をした。根拠となる事務が法律に定められているので、この行政指導には行政手続法の行政指導の章(第4章)が適用される。

答え:✕ 分かれ目は、地方公共団体の機関の行政指導の扱いです。行政手続法3条3項は、地方公共団体の機関がする行政指導については、根拠が条例か法律かを区別せず、第2章から第6章までを適用しないとしています。正しくは、この行政指導に行政手続法の第4章は適用されません。根拠が条例・規則かどうかで分かれるのは、処分と届出です。行政指導と処分の扱いを入れ替えた肢です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
国家試験を受けたXさんが、試験の点数が基準に届かないとして不合格とされた。この不合格の処分は申請に対する拒否の処分に当たるので、行政庁は、行政手続法8条により、Xさんに同時に理由を示さなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、試験の結果についての処分が適用除外かです。行政手続法3条1項11号は、「専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分」には第2章から第4章の2までを適用しないとしています。正しくは、8条の理由の提示の規定は適用されません。申請を拒否する処分は同時に理由を示すのが原則(8条1項)なので、○と迷いやすい肢です。8条1項が使われるのは、3条1項の各号に当たらない申請に対する処分です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 3条1項:16の場面の処分・行政指導は、第2章〜第4章の2を使わない。試験の結果・公務員の身分・外国人の出入国・情報収集の処分などが入る。
  • 3条2項:施行期日の政令、恩赦、勤務条件、公にされない基準などの命令等は、意見公募を使わない。
  • 3条3項:地方公共団体の機関の、条例・規則にもとづく処分と届出、すべての行政指導、命令等を定める行為は、第2章〜第6章を使わない。
  • 4条:固有の資格での国の機関等への処分は法律全体を使わない。特殊法人などへの監督処分は第2章・第3章を使わないが、解散命令などは別。
  • 46条:地方公共団体は必要な措置を講ずるよう努める(努力義務)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。