意見公募手続をわかりやすく:命令等を定めるときのルール

意見公募手続(いけんこうぼてつづき)とは、国の役所がルール(命令等)を作る前に、案を公開して、広くみんなの意見を集める手続です。ふだん「パブリックコメント」と呼ばれているものです。意見を出す期間は、原則として公示の日から30日以上です(行政手続法39条3項)。

役所は、出た意見を十分に考慮し、ルールを定めたら、意見と、それをどう考慮したかの結果・理由を公示します(42条・43条)。この記事では、行政手続法の第6章(38条〜45条)を扱います。法規命令と行政規則の違いそのものは行政立法をわかりやすくで説明しています。

身近な例で考えると

登場人物は3人です。国のある省で省令の案を担当する=しおりさん、自転車で通勤する会社員=あおいさん、日本に住んで働く外国籍の人=リナさんです。場面は架空のものです。

  1. しおりさんの省は、ある法律にもとづいて、駐輪場の設備の基準を定める省令を作ろうとしている。
  2. しおりさんは、省令の案と関連する資料を、インターネットで公示した。案には、省令の題名と、根拠になる法律の条項を書いた。意見の提出先と、公示の日から30日以上の締切も示した。
  3. あおいさんは「屋根の基準がないと雨の日に困る」と意見を出した。リナさんも、自分の経験した情報を書いて出した。意見を出すのに、資格や国籍の条件はありません。
  4. しおりさんの省は、出た意見を十分に考慮し、案の一部を直して省令を定めた。
  5. 省令の公布と同じころ、出た意見と、それを考慮した結果(案からどこを変えたか)とその理由を公示した。

たとえるなら、学校の「校則を変える前の意見箱」です。先生(役所)は出た意見を読み、「この意見はこう考えて、ここを直しました」と結果を貼り出します。ただし本物の手続では、意見が多いほうに決める「多数決」ではありません。意見に従う義務はなく、十分に考慮する義務がある、という点が違います。

条文ではこう決まっている

対象になる「命令等」(2条8号)

命令等とは、内閣または行政機関が定める次の4つです。

  1. 法律に基づく命令または規則:政令・省令など。処分の要件を定める告示も含む。
  2. 審査基準:申請に許可などを出すかどうかを判断する基準。
  3. 処分基準:不利益処分をするか、どんな処分にするかを判断する基準。
  4. 行政指導指針:複数の人に同じ目的で行政指導するときの共通の中身。

定めるときの一般原則(38条)

  • 命令等制定機関(ルールを定める機関)は、命令等が根拠となる法令の趣旨に適合するようにしなければならない(1項)。
  • 定めた後も、実施状況や社会の変化を見て、必要に応じ内容を検討し、適正を確保するよう努めなければならない(2項・努力義務)。

意見公募手続の中身(39条)

  • 命令等の案と関連資料をあらかじめ公示し、意見の提出先と意見提出期間を定めて、広く一般の意見を求めなければならない(1項)。ここでいう意見には「情報」も含む。
  • 案は、具体的かつ明確な内容で、題名と、根拠となる法令の条項を明示したものでなければならない(2項)。
  • 意見提出期間は、公示の日から起算して30日以上(3項)。
  • 公示は、インターネットなど情報通信の技術を使う方法で行う(45条1項)。

期間を短くできる場合・自分で実施しなくてよい場合(40条)

  • 30日以上を定められない「やむを得ない理由」があれば、30日を下回る期間にできる。その場合は、案の公示の際に理由を明らかにする(1項)。
  • 委員会等の議を経て定める場合に、その委員会等が意見公募手続に準じた手続をしたときは、命令等制定機関が自分で実施しなくてよい(2項)。

意見を受けたあと(41条〜43条)

  • 手続の周知と関連する情報の提供に努める(41条・努力義務)。
  • 期間内に出た意見(提出意見)を十分に考慮しなければならない(42条・義務)。
  • 命令等を定めたら、公布と同時期に、①題名、②案の公示の日、③提出意見(なければその旨)、④考慮した結果(案との違いを含む)とその理由、を公示する(43条1項)。
  • 必要に応じ、提出意見の代わりに「整理又は要約したもの」を公示できる。その場合は、公示の後、遅滞なく提出意見を事務所に備え付けるなどして公にする(43条2項)。
  • 第三者の利益を害するおそれがあるときなどは、提出意見の全部または一部を除ける(43条3項)。
  • 手続をしたのに、結局定めないことにしたときも、その旨などを速やかに公示する(43条4項)。

当てはまる例・当てはまらない例

手続がいらない場合(39条4項)

次のどれかに当たるときは、意見公募手続をしなくてよいとされています(要旨)。

  1. 公益上、緊急に定める必要があり、手続をするのが困難なとき。
  2. 納付すべき金銭について定める法律の制定・改正にともない、金額の算定の基礎・率・方法などを定めるとき。
  3. 予算の定めにもとづいて金銭を給付する決定のために、算定の基礎・率・方法などを定めるとき。
  4. 利害の調整を目的に、利害関係者と公益の代表の委員で組織される委員会等の議を経て定めるもので、政令で定めるもの。
  5. 他の行政機関が意見公募手続をして定めた命令等と、実質的に同一のものを定めるとき。
  6. 法令の適用・準用のための技術的な読替えを定めるとき。
  7. 根拠の法令の規定が削除されたため、当然に必要になる廃止をするとき。
  8. 他の法令の改正にともなう規定の整理など、政令で定める軽微な変更をするとき。

この場合でも、命令等の公布と同時期に、題名と趣旨、手続をしなかった旨と理由を公示します(43条5項。趣旨は、1号〜4号に当たり、命令等自体から明らかでないときに限る)。

例で確かめる

  1. 当てはまる:しおりさんの省が、ある許可の審査基準を新しく作る。審査基準は命令等なので、意見公募手続の対象です。
  2. 当てはまらない(法律そのもの):国会が法律を作る。命令等は「内閣又は行政機関が定める」ものなので、法律は対象外です。
  3. 当てはまらない(地方公共団体):市が条例や規則、審査基準を作る。地方公共団体の機関が命令等を定める行為には、行政手続法の第6章は適用されません(3条3項)。地方公共団体には、法律の趣旨にのっとって必要な措置を講ずる努力義務があります(46条)。
  4. 当てはまらない(3条2項):法律の施行期日を定める政令、恩赦に関する命令、公務員の給与や勤務時間などの勤務条件を定める命令等は、第6章の適用除外です。
  5. ひっかけやすい(期間):意見提出期間を20日にした。やむを得ない理由があり、案の公示のときにその理由を明らかにしていれば、違反にはなりません(40条1項)。理由を示さずに短くするのは許されません。

似ているルールとの違い

行政手続法には「意見を聞く」手続がいくつかあります。誰の意見を、何のために聞くかで区別します。

手続誰の意見か何の前か
意見公募手続(39条)広く一般(誰でも)命令等を定める前
聴聞・弁明(13条)処分を受ける本人不利益処分の前
公聴会など(10条)申請者以外の人一部の申請への処分の前(努力義務)

聴聞・弁明は、一人ひとりへの処分について本人の言い分を聞く手続です。聴聞と弁明の機会の付与で、分かれ目を説明しています。公聴会など申請に対する処分のルールは行政手続法をわかりやすくへ。

もう一つ、命令等のうち行政指導指針は、行政指導の章(36条)と結びつきます。複数の人に同じ指導をするなら、指針を定めて公表する。指針を定めるときは意見公募手続をする、という順番です。行政指導のルールは行政指導をわかりやすくで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 期間の起算点・日数をずらす型:「公示の日から起算して30日以上」。「2週間以上」「60日以上」などは誤り。
  • 意見を出せる人をしぼる型:「利害関係人に限る」「日本国民に限る」は誤り。条文は「広く一般の意見」です。
  • 「考慮」を「従う」にする型:42条は「十分に考慮しなければならない」。意見のとおりに定める義務ではありません。
  • 命令等の範囲をずらす型:審査基準・処分基準・行政指導指針も命令等。逆に、法律や条例は対象外。
  • 短縮の条件を落とす型:30日を下回るには「やむを得ない理由」と、公示の際に理由を明らかにすることの両方が必要。
  • 結果の公示を省ける場面を広げる型:定めないことにしたときも、手続をしなかったときも、公示の決まりがあります(43条4項・5項)。
  • 義務と努力義務を入れかえる型:38条2項(見直し)と41条(周知)は努力義務。39条1項(意見を求める)と42条(考慮)は義務です。

行政書士試験では、5肢択一式で数字(30日)と主語(誰が・誰の意見を)をずらす形が考えられます。地方公共団体が適用除外になる点は、行政指導や条例にもとづく処分と同じ3条3項なので、まとめて覚えると取りこぼしが減ります。条例・規則の作り方は条例と規則をわかりやすくで説明しています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
国の省が省令を定めるため意見公募手続をするとき、意見を提出できるのは、その省令によって直接に権利や利益を左右される利害関係人に限られる。

答え:✕ 39条1項は「広く一般の意見」を求めるとしています。利害関係人に限られません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
国の省が審査基準を定める場合でも、審査基準は法律にもとづく命令ではないので、意見公募手続をする必要はない。

答え:✕ 審査基準は「命令等」に含まれます(2条8号ロ)。39条4項などの例外に当たらない限り、意見公募手続の対象です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
意見公募手続をして命令等を定めた機関は、命令等の公布と同時期に、提出意見と、それを考慮した結果およびその理由を公示しなければならない。提出意見がなかったときは、その旨を公示する。

答え:○ 43条1項のとおりです。必要に応じ、提出意見そのものの代わりに、整理・要約したものを公示することもできます(43条2項)。

まとめ

  • 命令等は、内閣・行政機関が定める「命令・規則」「審査基準」「処分基準」「行政指導指針」の4つ。
  • 案と資料を公示し、広く一般から、公示の日から30日以上の期間で意見を求める。
  • やむを得ない理由があれば30日未満にできるが、公示の際に理由を示す。
  • 提出意見は十分に考慮(従う義務ではない)。公布と同時期に、意見・結果・理由を公示。
  • 地方公共団体の機関が命令等を定める行為は、第6章の適用除外(努力義務あり)。

次に読むなら、行政立法をわかりやすくがおすすめです。意見公募手続の対象になる「命令」と「基準」が、それぞれ国民を縛る力を持つのかどうかを整理できます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。