行政書士を40代・50代から独学で受ける:年代別の受験者数と合格者数、記憶の研究から決める1年の組み方

令和7年度の行政書士試験では、40歳代が12,161人受けて1,867人、50歳代が12,330人受けて1,445人合格しました(行政書士試験研究センターの「受験者・合格者の属性」)。合格者を受験者で割ると40歳代15.4%、50歳代11.7%で、試験全体の合格率は14.54%です(年代別の率は当サイトの計算)。この資料には勉強時間や受けた回数がないので、この差から「40代・50代は不利」とも「年齢は関係ない」とも言えません。

記憶の研究で分かっているのは、年齢とともに下がりやすい力(頭の中での処理の速さなど)と、下がりにくい力(言葉の知識)がある、ということです。そこでこの記事では、条文は理由と組で読む、判例は結論を先に思い出す、記述式は40字を思い出して書く練習を早めに始める、解く速さは早い時期に測るという形で、試験までのおよそ1年を組みます。転職・就職・開業の話は扱いません。

40代・50代は、何人受けて何人受かっているか

センターは、最近3年分の年代別の受験者数と合格者数を公表しています。資料には合格率の欄がないので、右の列は当サイトが合格者数を受験者数で割ったものです。

40歳代受験者合格者合格者÷受験者
令和7年度12,161人1,867人15.4%
令和6年度11,875人1,564人13.2%
令和5年度11,954人1,736人14.5%
50歳代受験者合格者合格者÷受験者
令和7年度12,330人1,445人11.7%
令和6年度11,643人1,175人10.1%
令和5年度11,311人1,295人11.4%

試験全体の合格率は、令和7年度14.54%、令和6年度12.90%、令和5年度13.98%でした。3年とも、40歳代の率は全体を少し上回り、50歳代の率は全体を2〜3ポイントほど下回っています(当サイトの計算)。

人数で見ると、3年とも、受験者がいちばん多い2つの年代が40歳代と50歳代です。令和7年度は、40歳代と50歳代を合わせて24,491人で受験者全体の48.8%、合格者は3,312人で合格者全体の45.4%でした(当サイトの計算)。全年代の令和7年度の数字と、合格率の推移の読み方は、行政書士試験の合格率の記事にまとめています。

この数字から言えること・言えないこと

言えるのは、40歳代・50歳代で受ける人が多く、どちらの年代も合格者が毎年千人を超えている、ということまでです。率の差がどこから来るかは、この資料からは分かりません。勉強を始めた時期、週に使えた時間、前の年にも受けたか、法律を学んだことがあるか、といった条件が年代ごとにそろっていないからです。

試験の仕組みのほうは、はっきりしています。受験資格は「年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます」とされています。合否は、法令等・基礎知識・試験全体の3つの基準を全部満たしたかで決まり、令和7年度の合否判定基準では、法令等122点以上、基礎知識24点以上、全体180点以上でした(基準は補正されることがあります)。年齢で点数が足し引きされる仕組みはありません。

ですから、自分が受けるかどうか、1年で受けるかどうかは、年代の率ではなく、「試験日までに3つの基準の上に自分の点を置ける勉強を続けられるか」で決めるのが筋です。その判断のしかた(自分の時間を測って、1年で足りるか2年に分けるかを決める)は、働きながら行政書士に受かるかの記事で扱っています。

年齢で変わりやすい力・変わりにくい力(研究で分かっていること)

どんな研究か:Park らの研究(2002年、Psychology and Aging)は、345人の成人に、処理の速さ・作業記憶(頭の中で情報を少しの間持って使う力)・長期記憶・言葉の知識などをはかるテストを受けてもらい、年齢による違いを調べました。

何が分かったか:処理の速さ・作業記憶・長期記憶のように頭を多く働かせる課題では、20代から年齢とともに成績が続けて下がっていました。言葉の知識は、年齢とともに増えていました。Salthouse の論文(2009年、Neurobiology of Aging)も、健康で教育を受けた成人で、認知の働きの一部は20代・30代から下がり始めると結論づけています。

ただし:どちらも、違う年齢の人を同じ時期に比べた結果(横断的な比較)が中心で、平均の傾向です。Salthouse の結論には、同じ号で Schaie(2009年)が、横断的な比較から年齢による低下を読み取ることへの批判を出しています。どの研究も、一人ひとりの力を年齢から決めるものではありません。

試験勉強ではこう使う:行政書士試験に置きかえると、①意味のつながりのない語や数字を丸ごと覚え込むやり方は負担が大きくなりやすい、②仕事や暮らしで身についた言葉(契約・役所の手続・お金のやりとり)は足場に使える、③解く速さは、練習と時間の配分で手当てする必要がある、の3つになります。これは研究の結果をそのまま言いかえたものではなく、その結果から当サイトが選んだ組み方です。

思い出す練習は、55歳以上でも効いたのか

どんな実験か:Meyer と Logan の研究(2013年、Psychology and Aging)は、18〜25歳の大学生、18〜25歳の地域の成人、55〜65歳の地域の成人を60人ずつ集め、学んだ内容を小テストで思い出す練習(テスト効果)が、大学生以外にも効くかを調べました。成績は、学んだ直後と2日後にはかっています。

何が分かったか:3つのグループとも、直後でも2日後でも、思い出す練習の効果が同じくらい出ました。著者らは、思い出す練習は幅広い人の生涯学習に使える方法だと述べています。

ただし:26〜54歳の人は入っていないので、40代そのものを調べた結果ではありません。はかったのも2日後までで、何か月も続く試験勉強を調べたものでもありません。それでも、55〜65歳でも「思い出す」ほうに時間を回す意味があったことは、50代の勉強の組み方の根拠の一つになります。間をあけて繰り返す研究は復習の間隔の記事、同じ研究を宅建の勉強に当てはめたものは宅建を40代・50代から受ける記事にあります。

条文・判例・記述式の練習を、どう置くか

条文:理由と組で読み、似た決まりと並べる

条文の要件や期間を、意味のつながりなしに覚え込もうとすると、上の研究でいう「新しいことを覚え込む力」に頼ることになります。先に「なぜこの決まりがあるのか」を一行で言えるようにし、似た決まりと並べて違いを覚えます。

  • 民法96条:詐欺も強迫も取り消せる(1項)。ただし3項は、詐欺による取消しを「善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」とし、強迫は書いていない。理由の一行の例は「だまされた人には落ち度がありうるが、おどされた人にはそれを求めにくいので、より厚く守る」。
  • 期間は組で覚える:審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(行政不服審査法18条1項)。取消訴訟は、処分または裁決があったことを知った日から6か月(行政事件訴訟法14条1項)。どちらも、処分などの日から1年を過ぎるとできないという決まりが別の項にあります(行政不服審査法18条2項・行政事件訴訟法14条2項)。どの期間にも、正当な理由があるときの例外があります。

判例:結論を先に思い出す

判例は、事案の細かい経過から覚えると量が増えます。1件ごとに「結論を一行」「その結論を決めた理由の要点を一行」「事案を一行」の順でノートに書き、練習ではまず結論を隠して思い出します。思い出せなかったものだけを、翌日と数日後にもう一度出します。経験から想像がつきやすい事案(売買・相続・役所との争い)は、事案の一行を先に読むと結論を思い出す手がかりになります。

記述式:40字を思い出して書く練習を、早めに始める

記述式は40字程度で書く問題で、配点は、令和7年度の合否判定基準で1題20点、3題で60点でした。答えを見て読むのではなく、問いだけを見て、条文の言葉で40字を書いてから答え合わせをします。書くことそのものが思い出す練習になります。

条文の言葉を正確に書けるようになるには、間をあけた繰り返しが要ります。そのため当サイトでは、記述式の練習を最後の数か月にまとめず、民法・行政法の一つの分野を読み終えるたびに、その分野の記述式を数問書く形で、早い時期から少しずつ入れることをすすめます。最初は時間を測らず、書けなかった言葉に印を付け、翌週にその問いだけを書き直します。

速さ:早い時期に一度、時間を測る

試験は午後1時から4時までの3時間で、令和7年度は60問(法令等46問・基礎知識14問)でした。全体を問題数で割ると、1問あたり平均3分です(当サイトの計算。記述式を書く時間もこの中に入ります)。処理の速さは年齢とともに下がりやすい力なので、終わり近くに初めて時間を測るのではなく、勉強を始めて数か月のうちに一度、時間を測って解き、自分の速さを知っておきます。遅い分野が分かれば、その分野には、短い時間で○か✕かを決める練習を足します。

試験までの1年の組み方の例

試験は毎年1回、11月の第2日曜日です。試験までおよそ1年ある場合の例を、時期ごとに並べます。どの時期にどれだけの時間が要るかは人によって違うので、総量は勉強時間の考え方の記事の方法で見積もってください。法律の勉強が初めての人は、最初の時期を長めにとります。

時期中心にすること思い出す練習
12〜9か月前民法・行政法を、理由の一行を書きながら1周読んだ範囲の○✕を翌日・数日後に
8〜5か月前2周目と憲法・判例。一度、時間を測って解く判例の結論を隠して思い出す。記述式を分野ごとに数問
4〜2か月前会社法・基礎知識を足し、遅い分野を直すまちがえた問いだけを1〜2週あけて出し直す
最後の1か月新しい教材を足さず、時間を測って通しで解く書けなかった記述式と、まちがえた肢の見直し

基礎知識には、法令等とは別に基準点(令和7年度は24点)があるので、後回しにしすぎないようにします。疲れて予定どおりにできない日は、前日と数日前の範囲の○✕だけでも解くと、間をあけた繰り返しの流れが切れません。

今日からやること

  1. 試験日から逆に数えて、自分がいま上の表のどの時期にいるかを決める。
  2. ノートの各ページに「理由の一行」の欄を作り、今週読む条文の分だけ埋める。
  3. 読んだ範囲の○✕を、翌日・3日後・1週間後に解く予定をカレンダーに入れる。
  4. 民法か行政法の一つの分野を読み終えたら、その分野の記述式を1問、何も見ずに40字で書いてみる。

行政書士の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルで、まちがえた問題が間をあけて戻ってくる形で解けます。

このサイトで次に読むなら、働きながら行政書士に受かるかの記事です。自分の週の時間を測り、1年で足りるか2年に分けるかを決めると、上の表のどこから始めるかが決まります。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Park, D. C., Lautenschlager, G., Hedden, T., Davidson, N. S., Smith, A. D., & Smith, P. K. (2002). Models of visuospatial and verbal memory across the adult life span. Psychology and Aging, 17(2), 299–320. DOI
  • Salthouse, T. A. (2009). When does age-related cognitive decline begin? Neurobiology of Aging, 30(4), 507–514. DOI
  • Schaie, K. W. (2009). “When does age-related cognitive decline begin?” Salthouse again reifies the “cross-sectional fallacy”. Neurobiology of Aging, 30(4), 528–529. DOI
  • Meyer, A. N. D., & Logan, J. M. (2013). Taking the testing effect beyond the college freshman: Benefits for lifelong learning. Psychology and Aging, 28(1), 142–147. DOI
  • 行政書士試験研究センター「最近3年間における行政書士試験の受験者・合格者の属性」(PDF。年代別の受験者数・合格者数)、同「最近10年間における行政書士試験結果の推移」(PDF。合格率)、同「令和7年度 合否判定基準」(PDF。配点・基準点・出題数)、同「試験概要」(受験資格・試験の実施日)、同「令和8年度 試験案内」(PDF。合格基準・記述式の字数)
  • e-Gov法令検索:民法(96条)、行政不服審査法(18条)、行政事件訴訟法(14条)。令和8年4月1日時点(asof=2026-04-01)の版で確かめました。

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