行政不服審査法の適用除外:7条1項の処分と、国の機関などが「固有の資格」で受ける処分

ひとことで言うと、行政不服審査法の適用除外は「審査請求の仕組みを使えない処分」を決めた条文です。7条1項は12の処分(とその不作為)について審査請求の規定(2条・3条)を使わないとし、7条2項は、国の機関や地方公共団体などが固有の資格(一般の私人が立つことのない立場)で相手方となる処分とその不作為に、この法律を使わないとしています。

いちばんのひっかけは、行政手続法の適用除外と同じだと思い込むことです。たとえば、市の条例にもとづく処分は行政手続法の手続からは外れますが、行政不服審査法の審査請求の対象には入ります。この記事は、令和8年4月1日時点の条文で、2つの法律の除外を比べます。行政手続法の側は行政手続法の適用除外で説明しています。

身近な例で考えると

人物受けた処分審査請求は
たくみさん国家資格の試験で不合格とされたできない(7条1項11号)
ゆりさんA市の条例にもとづく市民ホールの使用許可を取り消されたできる(除外の定めがない)
リンさん難民の認定をしない処分を受けたできる(入管法に特別の決まり)
C市国の機関から、固有の資格で処分を受けるこの法律は使われない(7条2項)
  1. たくみさんは、試験の点数が基準に届かず不合格とされた。「専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分」なので、審査請求はできない。
  2. ゆりさんは、市の条例にもとづくホールの使用許可を、市長に取り消された。行政手続法の不利益処分の手続は使われないが(行政手続法3条3項)、行政不服審査法7条には同じ除外がないので、審査請求はできる。
  3. リンさんは、難民の認定の申請をしたが認められなかった。7条1項10号が外しているのは「外国人の出入国又は帰化に関する処分」で、難民の認定は挙げられていない。審査請求の手続は、出入国管理及び難民認定法(入管法)が特別に定めている。難民の定義と、入管法の難民認定・補完的保護のしくみは難民条約と難民認定の記事にあります。
  4. C市は、一般の会社なら受けることのない立場で、国の機関から処分を受ける。固有の資格での処分なので、行政不服審査法は使われない(7条2項)。

たとえるなら、行政不服審査法の適用除外は「お客様窓口で受け付けない案件の一覧」です。裁判所や国会のように別の慎重な場で決まったもの、試験の採点のように見直しになじまないものが並びます。ただし本物のルールでは、一覧にあっても、別の法令で専用の窓口を作ることは妨げられていません(8条)。

条文ではこう決まっている

7条1項:12の処分を3つに束ねる

7条1項は「次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない」と定めています。処分にも、申請に応答しない不作為にも、審査請求ができません。当サイトでは、覚えるために次の3つに束ねています(束ね方は当サイトの整理で、条文の言葉ではありません)。

束ね方号中身(短く)
別の慎重な手続を経ている1〜5号、12号議決による処分、裁判、議決や同意を経る処分、検査官会議の処分、当事者どうしの訴えで争う処分、この法律にもとづく処分
刑事・犯則の手続6号、7号検察官などの刑事事件の処分、税と金融商品取引の犯則事件の処分
特別な関係・性質になじまない8〜11号学校での教育目的、刑務所などでの収容目的、外国人の出入国・帰化、試験・検定の結果
  • 5号は「当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの」です。争い方を、当事者どうしの訴訟に決めている処分です。
  • 12号は「この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)」です。審査請求の裁決など、この法律の手続の中でされる処分は、さらに審査請求の対象にはなりません(行政不服審査会の設置・組織の款にもとづく処分は除く)。

7条2項:固有の資格

「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」(7条2項)。一般の私人と同じ立場で受ける処分(たとえば、市が一般の事業者と同じように受ける営業の許可)は、固有の資格には当たりません。

8条・1条2項:別の制度との関係

  • 7条で審査請求ができない処分や不作為について、別に法令で、その性質に応じた不服申立ての制度を設けることは妨げられません(8条)。
  • 処分に関する不服申立ては、他の法律に特別の定めがある場合を除き、この法律によります(1条2項)。たとえば国家公務員の懲戒処分などは、人事院に対してのみ審査請求ができ(国家公務員法90条1項)、その審査請求には行政不服審査法第2章が適用されません(同条3項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(11号):たくみさんの不合格。試験の結果の処分なので、審査請求はできません。
  • 当てはまる(9号):刑務所で、収容の目的を達成するためにされる処分。審査請求の対象外です。
  • 当てはまらない(条例):ゆりさんのホールの使用許可の取消し。行政手続法では除外されますが、行政不服審査法では審査請求ができます。
  • 当てはまらない(一般と同じ立場):C市が、一般の事業者と同じ立場で法律にもとづく営業の許可を受けていて、それを取り消される。固有の資格での処分ではないので、7条2項に当たりません。
  • ひっかけやすい(公務員):国家公務員の懲戒処分は、7条1項の号に挙がっていません。審査請求の扱いは、国家公務員法90条が人事院への審査請求として特別に定めています。行政手続法では、公務員の職務・身分の処分は除外です(行政手続法3条1項9号)。

似ているルールとの違い:行政手続法の適用除外と比べる

比べる点行政手続法行政不服審査法
外すもの申請・不利益処分・行政指導などの手続審査請求(2条・3条)
条例・規則にもとづく地方の処分除外(3条3項)除外の定めなし
公務員の職務・身分の処分除外(3条1項9号)7条1項に号なし(国家公務員法90条など)
難民の認定除外(3条1項10号)7条1項に号なし(入管法に審査請求の決まり)
試験の結果除外(3条1項11号)除外(7条1項11号)
固有の資格処分・行政指導・届出(4条1項)処分とその不作為(7条2項)

固有の資格の条文も、主語の書き方が少し違います。行政手続法4条1項は「国の機関又は地方公共団体若しくはその機関」、行政不服審査法7条2項は「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関」です。審査請求の流れそのものは審査請求をわかりやすくで、申請に返事がないときの手段は役所が返事をしないときの3つの手段で確かめられます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 行政手続法の除外を持ち込む形:「条例にもとづく処分は審査請求できない」は誤り。条例・規則による除外は行政手続法3条3項の話です。
  • 号の範囲:10号は出入国と帰化だけ。難民の認定を含めるのは行政手続法3条1項10号です。公務員の身分の処分も、行政不服審査法7条1項の号にはありません。
  • 不作為:7条1項も7条2項も「及びその不作為」。除外される処分について、申請に応答しない不作為の審査請求もできません。
  • 除外の効果:7条1項は2条・3条(審査請求)を使わない、7条2項はこの法律の規定を使わない。8条で、別の法令の不服申立て制度は作れます。
  • 固有の資格の判断:国や自治体が相手でも、一般の私人と同じ立場で受ける処分は除外されません。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ゆりさんは、A市の条例にもとづく市民ホールの使用許可を、市長から取り消された。この取消しには行政手続法の不利益処分の規定が適用されないので、行政不服審査法による審査請求もすることができない。

答え:✕ 分かれ目は、行政手続法の適用除外が行政不服審査法にも当てはまるかです。行政手続法3条3項は、地方公共団体の機関が条例・規則にもとづいてする処分を同法の手続から外していますが、行政不服審査法7条には同じ除外がありません。正しくは、ゆりさんは審査請求ができます。行政不服審査法4条も「条例に基づく処分については、条例」の定めを想定しており、条例にもとづく処分も審査請求の対象です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
外国人のリンさんは、難民の認定の申請をしたが、難民の認定をしない処分を受けた。この処分は、行政不服審査法7条1項の適用除外に当たらず、リンさんは審査請求をすることができる。

答え:○ 分かれ目は、7条1項10号の範囲です。10号が審査請求の対象から外しているのは「外国人の出入国又は帰化に関する処分」で、難民の認定は挙げられていません。外国人に関する処分は全部除外と考えると✕にしてしまいます。入管法61条の2の12は、難民の認定をしない処分についての審査請求を法務大臣にするものとし、行政不服審査法の一部の規定を適用しない・読み替える形で手続の特則を置いています。同法の審査請求ができることを前提にした定めです。行政手続法3条1項10号は難民の認定まで除外しており、2つの法律で範囲が違います。

問3(このサイトのオリジナル問題)
C市が、国の機関に対し、C市がその固有の資格において相手方となる処分を申請したが、相当の期間がたっても応答がない。この不作為について、C市は、行政不服審査法による審査請求をすることができる。

答え:✕ 分かれ目は、固有の資格の除外が不作為にも及ぶかです。行政不服審査法7条2項は、国の機関や地方公共団体などが固有の資格で相手方となる処分「及びその不作為」について、この法律の規定を適用しないとしています。正しくは、この不作為について審査請求はできません。処分だけが除外されると読むと○にしてしまいます。行政手続法4条1項の除外は、処分のほか行政指導と届出を挙げる形で、書き方が違います。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 7条1項:12の処分とその不作為は審査請求できない。議決・裁判などの別の手続、刑事・犯則、教育・収容・出入国と帰化・試験の結果、この法律にもとづく処分。
  • 7条2項:国の機関や地方公共団体などが固有の資格で相手方となる処分とその不作為には、この法律を使わない。
  • 8条:除外された処分にも、別の法令で不服申立ての制度を作れる。1条2項:他の法律の特別の定めが優先(国家公務員法90条など)。
  • 行政手続法と違い、条例にもとづく地方の処分は除外されない。難民の認定・公務員の身分の処分も7条1項の号にない。

このサイトで次に読むなら、再調査の請求と再審査請求です。審査請求ができる処分について、その前後に置かれる手続を比べられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。

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