宅建の贈与税をわかりやすく:住宅取得等資金の非課税と相続時精算課税

贈与税(ぞうよぜい)は、生きている人から財産をもらった人が納める国の税金です。宅建試験で押さえるのは、おもに「親や祖父母から、家を買うお金をもらう場面」です。

ひとことで言うと、この場面では2つの特例が使えます。1つは住宅取得等資金の非課税で、一定の額まで贈与税がかかりません(租税特別措置法70条の2)。もう1つは相続時精算課税で、累計2,500万円まで今は贈与税がかからず、親が亡くなったときに相続税で精算します(相続税法21条の9以下)。2つは、年齢の要件がかかる人と、所得・床面積の線が違います。

この記事では、この2つと、ふつうの贈与税(暦年課税)の基本を扱います。特例には適用の期限がありますが、この記事は令和8年4月1日現在の法令によります。期限は改正で延びたり変わったりするので、試験では期限そのものより要件の中身が大事です。

身近な例で考えると

登場人物は3人です。家を買う会社員=あおいさん(32歳、その年の合計所得金額は600万円)、あおいさんの父=たけしさん(62歳)、あおいさんの祖母=きよこさん(80歳)です。

  1. 令和8年の春、たけしさんが、あおいさんに家の購入資金として1,500万円を贈与した(お金で渡した)。
  2. あおいさんは、その年のうちに、床面積85平方メートルの省エネ性能の高い新築マンションを、そのお金も全部使って買った。売主は不動産会社で、親族ではない。
  3. あおいさんは、令和9年3月15日までに入居した。
  4. あおいさんは、令和9年2月1日から3月15日までの間に、特例を使う旨を書いた贈与税の申告書を税務署に出した。

この場合、1,500万円のうち1,000万円は、住宅取得等資金の非課税で贈与税がかかりません。残りの500万円は、次のどちらかで扱います。

  • 暦年課税(ふつうの贈与税):500万円から基礎控除110万円を引いた390万円に、贈与税がかかる。
  • 相続時精算課税を選ぶ:500万円から基礎控除110万円を引いた390万円は、2,500万円の特別控除の中に収まるので、今は贈与税がかからない。そのかわり、たけしさんが亡くなったとき、相続税の計算に加える。

たとえるなら、非課税は「もらいっぱなしでよい枠」、相続時精算課税は「今は払わずにすむが、相続のときに清算するツケ」です。ただし本物のルールでは、精算課税は「選んだら取り消せない」ので、気軽なツケとは違います。

条文ではこう決まっている

住宅取得等資金の非課税(租税特別措置法70条の2)

  • だれから:直系尊属(父母・祖父母など)からの贈与。贈与する人の年齢の要件はない。
  • 何を:住宅の新築・取得・増改築等の代金に充てるための金銭(2項5号)。家そのものをもらう場合は対象外。配偶者など特別の関係がある人から家を買う場合も除く。
  • 受ける人:贈与を受けた年の1月1日で18歳以上。その年の合計所得金額が2,000万円以下。ただし、家の床面積が50平方メートル未満なら1,000万円以下(2項1号、施行令40条の4の2第1項)。
  • 家の床面積:40平方メートル以上240平方メートル以下で、床面積の2分の1以上をもっぱら自分の住まいに使うもの(施行令40条の4の2第2項)。
  • 住む時期:贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらったお金の全額を充てて新築・取得をし、同じ日までに住む。同じ日のあと遅滞なく住むことが確実と見込まれる場合も使えるが、翌年の12月31日までに住まなければ特例は取り消される(1項・4項)。
  • 非課税の額:省エネ性能が特に高い住宅や、耐震・高齢者等への配慮などの基準に合う一定の住宅(省エネ等住宅)は1,000万円、それ以外は500万円(2項6号)。
  • 手続き:贈与税の申告書に特例を使う旨を書き、明細書などを付けて出した場合に限り使える(14項)。贈与税がゼロになっても申告はいる。

相続時精算課税(相続税法21条の9〜21条の15)

  • だれから・だれへ:贈与した年の1月1日で60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子(推定相続人である直系卑属)や孫へ(21条の9第1項、租税特別措置法70条の2の6)。
  • 選ぶ手続き:贈与税の申告期限までに届出書を出す。出した届出書は撤回できない(21条の9第2項・6項)。
  • 毎年の基礎控除:令和6年1月1日以後の贈与は、毎年110万円(租税特別措置法70条の3の2)。
  • 特別控除:贈与した人ごとに、累計で2,500万円まで(21条の12)。
  • 税率:特別控除を超えた部分に一律20%(21条の13)。
  • 相続のとき:この制度で受けた財産(基礎控除を引いた残り)を、相続税の課税価格に加える(21条の15)。
  • 住宅資金の特例:住宅取得等資金の贈与なら、贈与する親が60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例がある(租税特別措置法70条の3。令和8年4月1日現在の法令による)。

ふつうの贈与税(暦年課税)

  • 1年間(1月1日から12月31日)にもらった財産の合計から、基礎控除110万円を引いた残りに税率をかける(租税特別措置法70条の2の4)。
  • 申告と納税は、もらった年の翌年2月1日から3月15日まで(相続税法28条1項)。

当てはめ表:受ける人の年齢・所得・床面積・住む時期

条件住宅資金の非課税相続時精算課税
贈与する人の年齢要件なし1月1日で60歳以上(住宅資金の特例なら60歳未満でも可)
受ける人の年齢1月1日で18歳以上1月1日で18歳以上
受ける人の所得2,000万円以下(50㎡未満の家なら1,000万円以下)要件なし
家の床面積40㎡以上240㎡以下一般の贈与なら要件なし
住む時期翌年3月15日まで(見込みなら翌年12月31日まで)一般の贈与なら要件なし
かからない額1,000万円か500万円毎年110万円+累計2,500万円

表の「相続時精算課税」の列は、住宅資金に限らない一般の制度の要件です。住宅資金の特例(70条の3)を使う場合は、住宅の要件と住む時期の要件がつきます。

表を使うときは、問題文から「贈与する人の年齢」「受ける人の年齢」「所得」「床面積」「住む時期」の5つを先に抜き出します。5つのうち、非課税の特例で効くのは贈与する人の年齢以外の4つ、相続時精算課税(一般)で効くのは2つの年齢だけです。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(若い親からの贈与):あおいさんの弟のそうたさん(25歳)が、母(55歳)から住宅資金500万円をもらった。非課税の特例には、贈与する人の年齢の要件がない。所得や床面積などの要件を満たせば使える。
  2. 当てはまらない(所得と床面積の組み合わせ):合計所得金額1,500万円の人が、床面積45平方メートルのマンションを買うために祖父から資金をもらった。50平方メートル未満の家なので、所得の上限は1,000万円になる。非課税の特例は使えない。
  3. 当てはまらない(家そのものの贈与):祖母のきよこさんが、自分のマンションをあおいさんに贈与した。非課税の特例は「金銭」の贈与が対象なので使えない。家をもらったので、不動産取得税もかかる(相続ではなく贈与なので、地方税法73条の7の非課税に当たらない)。
  4. ひっかけやすい(住む期限):令和8年に贈与を受けたのに、工事が遅れて、入居が令和9年12月31日を過ぎた。見込みで特例を使っていた場合でも、期限までに住まなかったので特例は使えず、修正申告がいる(災害による遅れには別の延長がある)。
  5. ひっかけやすい(精算課税の取り消し):たけしさんからの贈与で相続時精算課税を選んだあおいさんが、翌年「やはり暦年課税に戻したい」と考えた。届出書は撤回できないので、たけしさんからの贈与は、以後も相続時精算課税で計算する。

似ているルールとの違い

比べる点暦年課税相続時精算課税
毎年かからない額110万円110万円(令和6年以後)
それを超えた分超えた額に応じて税率が上がる累計2,500万円までは今はかからず、超えた分は20%
相続のとき相続前7年以内の贈与は相続財産に加える基礎控除を引いた残りを加える
やめられるか選ぶ手続きがない届出書は撤回できない

暦年課税でも、相続の開始前7年以内に亡くなった人からもらった財産は、相続財産に加えます(相続税法19条1項。3年より前の分は合計から100万円を引く)。宅建試験では、この加算の細かい計算より、上の表の2,500万円・20%・撤回できない、の3つを先に押さえます。

家を買ったときにかかるほかの税とも区別します。不動産取得税と固定資産税は不動産の税金をわかりやすく、住宅ローンを組んだときの所得税の控除は住宅ローン控除をわかりやすくで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 年齢の要件をずらす型:非課税の特例に「贈与する人が60歳以上」の要件を付ける。60歳以上がいるのは相続時精算課税(一般)のほうです。
  • 所得の線を1本にする型:非課税の特例の所得は原則2,000万円以下ですが、50平方メートル未満の家なら1,000万円以下です。床面積の下限は40平方メートルです。
  • 2,500万円を毎年にする型:相続時精算課税の特別控除は累計2,500万円です。毎年使えるのは基礎控除の110万円のほうです。
  • 税率を入れ替える型:相続時精算課税で特別控除を超えた部分は一律20%。暦年課税は、額に応じて税率が上がるしくみです。
  • 金銭と家を入れ替える型:非課税の特例は「住宅取得等資金」=金銭の贈与。家や土地そのものをもらうのは対象外です。
  • 申告をいらないとする型:非課税の範囲に収まって税額がゼロでも、特例を使うには贈与税の申告書がいります。

「宅建で贈与税は出ないのか」への答え:宅建試験の範囲は「宅地及び建物についての税に関する法令」(宅建業法施行規則8条4号)で、贈与税もこれに入ります。令和3年度(10月)の問題冊子で当サイトが確かめた並びでは、国の税(国税)の問題は問23の1問で、その年は所得税(譲渡所得)でした(公式の内訳ではありません)。国税の1問がどの税になるかは年によって違い、公式の予告はありません。当サイトの考えは、贈与税は「捨てる」のではなく「深追いしない」論点です。上の当てはめ表の数字(18歳・60歳・2,000万円と1,000万円・40平方メートル・2,500万円・20%)を覚えるところまでにして、時間は不動産取得税・固定資産税・譲渡所得などに回します。税の分野の時間の配り方は宅建の税・その他の勉強法で説明しています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
あおいさん(32歳、合計所得金額600万円)が、55歳の母から、自分が住む床面積70平方メートルの新築住宅を買うための金銭の贈与を受けた。贈与する母が60歳未満でも、ほかの要件を満たせば、住宅取得等資金の非課税の特例を受けられる。(令和8年4月1日現在の法令による)

答え:○ ○です。分かれ目は、年齢の要件がだれにかかるかです。住宅取得等資金の非課税の特例(租税特別措置法70条の2)は、直系尊属からの贈与であればよく、贈与する人の年齢の要件はありません。年齢の要件があるのは受ける人(贈与を受けた年の1月1日で18歳以上)です。「60歳以上」は相続時精算課税(相続税法21条の9第1項)の要件で、それと取り違えると✕を選びます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
合計所得金額が1,500万円のBが、祖父から金銭の贈与を受け、自分が住む床面積45平方メートルの新築マンションを買った。所得が2,000万円以下なので、Bは住宅取得等資金の非課税の特例を受けられる。(令和8年4月1日現在の法令による)

答え:✕ ✕です。分かれ目は、床面積で所得の上限が変わる点です。所得の上限は原則2,000万円以下ですが、家の床面積が50平方メートル未満なら1,000万円以下になります(租税特別措置法70条の2第2項1号、施行令40条の4の2第1項)。正しくは、45平方メートルの家で所得1,500万円なので、特例は受けられません。床面積の下限(40平方メートル)だけを見て、所得の線を1本で考えた取り違えです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
父から贈与を受けて相続時精算課税を選んだCは、その父からの贈与について、毎年2,500万円まで贈与税がかからない。

答え:✕ ✕です。分かれ目は、2,500万円が毎年か累計かです。正しくは、特別控除の2,500万円は、贈与した人ごとに累計で使う枠です(相続税法21条の12)。毎年使えるのは、令和6年以後の贈与にかかる基礎控除110万円のほうです(租税特別措置法70条の3の2)。特別控除を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります(21条の13)。毎年の基礎控除と、累計の特別控除を取り違えた肢です。

まとめ

  • 親や祖父母から住宅資金をもらうときは、住宅取得等資金の非課税(1,000万円か500万円)と、相続時精算課税(毎年110万円+累計2,500万円、超えた分は20%)が使える。
  • 非課税の特例は、贈与する人の年齢は問わない。受ける人が18歳以上、所得2,000万円以下(50㎡未満の家なら1,000万円以下)、床面積40㎡以上240㎡以下、翌年3月15日までに取得して住む。金銭の贈与だけが対象。
  • 相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子や孫へ。届出書は撤回できない。住宅資金なら親が60歳未満でも使える特例がある。
  • 特例を使うには、税額がゼロでも贈与税の申告書がいる。申告は翌年2月1日から3月15日まで。
  • 宅建では深追いしない論点。当てはめ表の数字までを覚える。

税の分野の○✕は、このサイトの宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。贈与税の肢は少ないので、不動産取得税や譲渡所得の肢と混ぜて、どの税の要件かを見分ける練習に使ってください。

次に読むなら、不動産を売ったときの税金(譲渡所得)がおすすめです。国税の1問の候補として、贈与税より要件の数字が多く、3,000万円控除などの特例の当てはめを同じ表の形で整理できます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令API(v2)で令和8年4月1日時点(asof=2026-04-01)の版を指定して確かめました。特例の適用期限は、令和8年4月1日現在の法令によります。

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