固定資産税の台帳と手続き:1月1日の所有者・評価替え・縦覧と閲覧・審査の申出

固定資産税は、市町村が「固定資産課税台帳」に登録した価格をもとに、毎年1月1日の所有者に課す税金です(地方税法359条・343条)。価格は3年ごとに見直します(評価替え)。登録された価格は、ほかの土地や家屋と比べて確かめられ(縦覧)、自分の分は台帳で見られます(閲覧)。不服があれば、固定資産評価審査委員会に審査の申出をします(432条)。

この記事は、台帳と手続きの流れを扱います。税率・免税点・住宅用地の特例・新築住宅の減額などの数字は、不動産の税金をわかりやすく(不動産取得税と固定資産税)で説明しています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
ゆかりさん土地と家の持ち主前の年の12月に亡くなった父から相続した
しんじさん買主5月にゆかりさんの家を買った
ある市課税する市町村価格を決め、台帳に登録する
  1. 前の年の12月、父が亡くなった。1月1日の時点で、登記簿の所有者はまだ父のままだった。
  2. 市長は、3月31日までに土地と家の価格を決め、台帳に登録して、登録したことを公示した。
  3. 4月、ゆかりさんは市役所で縦覧帳簿を見て、近所の土地の価格と自分の土地の価格を比べた。自分の土地の台帳は、閲覧でも確かめた。
  4. 市から納税通知書が届いた。この年度の固定資産税は、1月1日に現に土地と家を持っていたゆかりさんに課される。
  5. 5月にしんじさんに家を売ったが、この年度の税は変わらずゆかりさんに課される。
  6. ゆかりさんは土地の価格が高すぎると思い、固定資産評価審査委員会に、文書で審査の申出をした。

たとえるなら、台帳は市が作る「土地と家の名簿と値札」です。名簿は1月1日の時点で作り、値札は3年に一度つけ直します。ただし本物のルールでは、値札(価格)に文句があるときの窓口は市長ではなく、独立した委員会です。

条文ではこう決まっている

だれに課すか(343条・359条)

  • 固定資産税は、固定資産の所有者に課す(343条1項)。賦課期日(ふかきじつ=だれに課すかを決める日)は、その年度の初日の属する年の1月1日(359条)。
  • 土地・家屋の「所有者」は、登記簿などに所有者として登記・登録されている人(343条2項前段)。
  • 登記されている個人が賦課期日の前に死亡しているとき(法人なら消滅しているとき)は、1月1日に現にその土地・家屋を所有している人が所有者になる(343条2項後段)。
  • 災害などで所有者の所在が分からないときや、探しても所有者がいるか分からないときは、使用者を所有者とみなして課税できる(343条4項・5項)。

台帳と価格(341条・349条・388条・403条・410条・411条)

  • 固定資産課税台帳は、土地課税台帳・土地補充課税台帳・家屋課税台帳・家屋補充課税台帳・償却資産課税台帳の総称(341条9号)。登記簿に登記されていない土地で固定資産税を課せるものは、土地補充課税台帳に載ります(同条11号)。
  • 評価の基準は総務大臣が定めて告示し(388条1項)、市町村長はその基準で価格を決める(403条1項)。価格は毎年3月31日までに決め(410条1項)、直ちに台帳に登録し、登録したことを公示する(411条1項・2項)。
  • 基準年度は、昭和33年度から3年度ごとの年度(341条6号)。令和6年度が基準年度で、次は令和9年度です。
  • 土地・家屋の課税標準は、基準年度の価格を、第二年度・第三年度もそのまま使うのが原則(349条2項・3項)。地目の変換、家屋の改築・損壊などの特別の事情があるときは、近くの似た土地・家屋の価格に比べて決めた価格(比準価格)にする(同項ただし書)。

縦覧と閲覧(415条・416条・382条の2)

  • 縦覧(じゅうらん):市町村長は、毎年3月31日までに土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を作る(415条1項)。納税者が、自分の土地・家屋の価格を、同じ市町村の他の土地・家屋の価格と比べられるよう、毎年4月1日から、4月20日か最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、縦覧に供する(416条1項)。土地の納税者は土地の帳簿、家屋の納税者は家屋の帳簿が対象です。
  • 閲覧(えつらん):市町村長は、納税義務者などの求めに応じて、固定資産課税台帳のうち、その人に係る固定資産の部分を閲覧に供する(382条の2第1項)。条文に期間の定めはありません。

審査の申出(423条・432条〜434条)

  • 台帳に登録された価格の不服を審査するため、市町村に固定資産評価審査委員会を置く(423条1項)。
  • 納税者は、台帳に登録された価格に不服があるときは、委員会に文書で審査の申出ができる。期限は、価格を登録した旨の公示の日から、納税通知書の交付を受けた日後3か月を経過する日まで など(432条1項)。
  • 第二年度・第三年度で基準年度の価格が登録されたものとみなされる土地・家屋は、地目の変換・家屋の改築や損壊などの特別の事情を申し立てる場合を除いて、審査の申出ができない(432条1項ただし書、411条3項)。
  • 委員会は、申出を受けた日から30日以内に審査の決定をする(433条1項)。決定に不服があれば取消しの訴えを起こせる。価格の不服は、審査の申出と取消しの訴えによってのみ争うことができる(434条)。

納め方(362条・364条)

  • 納期は、4月・7月・12月・2月中で市町村の条例で決める。特別の事情があれば別の納期も定められる(362条1項)。
  • 徴収は普通徴収(364条1項)。納税通知書は、遅くとも納期限前10日までに納税者に交付する(同条9項)。

手続きの順に並べると

  1. 1月1日:賦課期日。この日の所有者が、その年度の納税義務者。
  2. 3月31日まで:市町村長が価格を決める。縦覧帳簿も作る。価格を台帳に登録し、公示する。
  3. 4月1日から:縦覧(4月20日か最初の納期限の遅いほうの日以後まで)。閲覧は条文上の期間の定めなし。
  4. 納期限の10日前まで:納税通知書の交付。納期は4・7・12・2月中で条例が決める。
  5. 公示の日から、納税通知書を受けた日後3か月まで:固定資産評価審査委員会に審査の申出。
  6. 申出から30日以内:委員会が審査の決定。不服なら取消しの訴え。

縦覧と閲覧はどう違うか

比べる点縦覧閲覧
見るもの縦覧帳簿(他の土地・家屋の価格)台帳のうち自分に係る部分
目的他と比べて価格を確かめる自分の資産の登録内容を見る
期間4月1日から一定の日まで条文に期間の定めなし
条文415条・416条382条の2

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:ゆかりさんの家のとなりで近所の工務店が資材置き場に使っている土地は、登記簿の所有者がずっと昔の人のままで、市が政令で定める方法で調べ尽くしても、所有者がいるかどうか分からない。→市は、使っている工務店を所有者とみなして台帳に登録し、固定資産税を課すことができます。登録の前に、その使用者に通知します(343条5項)。「登記簿の名義人にしか課税できない」わけではありません。
  • 当てはまる例:第二年度に、ゆかりさんの土地が畑から宅地に変わった(地目の変換)。→基準年度の価格のままでは不適当なので、比準価格になります(349条2項ただし書)。この事情を申し立てる審査の申出もできます。
  • 当てはまらない例:第三年度に、特別の事情は何もないのに「基準年度の価格が高い」と審査の申出をした。→基準年度の価格が登録されたとみなされる年度なので、特別の事情を申し立てる場合を除き、申出はできません(432条1項ただし書)。不服は基準年度に申し出ることになります。
  • ひっかけやすい例:価格の不服を、市長への審査請求で争おうとした。→価格の不服は、固定資産評価審査委員会への審査の申出と、その決定の取消しの訴えによってのみ争えます(434条2項)。

区画整理の仮換地を使っている土地は、仮換地を、従前の土地の登記上の所有者のものとみなして課税されます(343条7項)。くわしくは仮換地が指定されたらで触れています。取得したときに1回かかる不動産取得税の「取得」の範囲は不動産取得税の「取得」に当たる場合で整理しています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、固定資産税が主な論点の問は18問(18回)、直近10回では5問でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。問24の位置の出方は宅建の税・その他の出題傾向で数えています。

  • 納税義務者の時点:1月1日の所有者。年の途中で売っても変わらない。登記名義人が1月1日より前に死亡していれば、1月1日に現に所有している人。
  • 審査の申出の相手:固定資産評価審査委員会。市町村長でも都道府県知事でもない。
  • 縦覧と閲覧の入れ替え:他と比べるのが縦覧(期間あり)、自分の台帳を見るのが閲覧。
  • 評価替えの間隔:3年ごと。第二年度・第三年度は原則として基準年度の価格。
  • 徴収の方法:普通徴収。納税通知書は納期限の10日前まで。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ゆかりさんは、固定資産課税台帳に登録された自分の土地の価格に不服がある。この場合、ゆかりさんは、市町村長に対して文書で審査の申出をすることができる。

答え:✕ 分かれ目は、審査の申出をする相手です。台帳に登録された価格に不服がある納税者は、固定資産評価審査委員会に文書で審査の申出をします(地方税法432条1項)。正しくは、市町村長ではなく、市町村に置かれる固定資産評価審査委員会(423条1項)です。価格を決めて登録するのが市町村長(410条・411条)なので、その人に不服を言うと取り違えた形です。委員会は申出から30日以内に決定し、それに不服なら取消しの訴えを起こせます(433条・434条)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
第二年度に、ゆかりさんの土地について基準年度の価格がそのまま台帳に登録されたものとみなされた。この場合、ゆかりさんは、地目の変換などの特別の事情があることを申し立てる場合を除き、その価格について審査の申出をすることができない。

答え:○ 分かれ目は、評価替えのない年度でも、価格について審査の申出ができるかどうかです。第二年度・第三年度に基準年度の価格が登録されたとみなされる土地・家屋(411条3項)は、349条2項1号の事情(地目の変換、家屋の改築・損壊など)があると申し立てる場合を除いて、審査の申出ができません(432条1項ただし書)。毎年、納税通知書が届くたびに申し出られると考えると✕を選びます。基準年度の価格そのものへの不服は、基準年度に申し出ることになります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
ゆかりさんの父は、前の年の12月に死亡したが、1月1日の時点で、土地の登記簿上の所有者は父のままだった。この場合、その年度の固定資産税は、1月1日に現にその土地を所有しているゆかりさんに課される。

答え:○ 分かれ目は、登記簿の所有者が賦課期日の前に死亡していたかどうかです。固定資産税の所有者は、原則として登記簿に所有者として登記されている人ですが、その個人が賦課期日の前に死亡しているときは、賦課期日に現にその土地を所有している人が所有者になります(343条2項後段)。「登記簿の名義人に課す」とだけ覚えていると✕にしてしまいます。賦課期日は1月1日です(359条)。

まとめ

  • 納税義務者は1月1日の所有者(登記簿上の所有者。その人が1月1日より前に死亡していれば、現に所有している人)。
  • 市町村長が3月31日までに価格を決め、台帳に登録して公示する。評価替えは3年ごと(令和6年度が基準年度)。
  • 縦覧は他と比べるため、4月1日から一定の日まで。閲覧は自分の台帳を見るもので、条文に期間の定めなし。
  • 価格の不服は固定資産評価審査委員会へ審査の申出(公示の日から納税通知書を受けた日後3か月まで)。第二・第三年度は特別の事情を申し立てる場合に限る。
  • 普通徴収。納期は4・7・12・2月中で条例が決める。納税通知書は納期限の10日前まで。

税の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。次に読むなら、不動産の税金をわかりやすくで、免税点と住宅用地の特例、新築住宅の減額の数字を確かめるのがおすすめです。この記事の手続きと、あちらの数字がそろうと、固定資産税の問の肢をひととおり判断できます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

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