ひとことで言うと、婚姻(こんいん=法律上の結婚)は、18歳以上の2人が婚姻届を出すことで成り立ちます。夫婦になると、日常の家事のための借りは2人で責任を負います。離婚は、話し合い(協議)でもでき、話し合えなければ、法律の決めた理由があるときに裁判で求めます。離婚のときは、財産分与(ざいさんぶんよ=夫婦の財産を分けること)を請求できます。
令和6年の民法改正(令和6年法律第33号)は、令和8年4月1日に施行されました。離婚後も父母の双方を親権者にできる、財産分与を請求できる期間が5年に延びた、などの変更があります。行政書士試験も宅建試験も、出題の根拠は試験の年度の4月1日現在施行の法令なので、令和8年度の試験では改正後の条文で覚えます。
この記事では、婚姻の成立・効力と離婚を扱います。親子関係(嫡出の推定・認知・養子)は親子をわかりやすく、配偶者の相続は相続をわかりやすくで扱います。
身近な例で考えるとどうなるか
登場人物は、夫のしょうたさん、妻のあおいさん、2人の子のはるとくん(4歳)です。
- 2人は、成年の友人2人に証人になってもらい、市役所に婚姻届を出しました。届出が受理されて、夫婦になりました。あおいさんは、しょうたさんの氏(うじ=名字)を名乗ることにしました。
- あおいさんは、家電量販店で家族用の冷蔵庫を分割払いで買いました。家族の暮らしに必要で、家計に見合った買い物なら日常の家事に当たるので、しょうたさんも代金の支払いに連帯して責任を負います。
- しょうたさんが結婚前から持っていた車は、しょうたさんだけの財産です。結婚後に買ったソファは、どちらの物か分からないので、2人の共有と推定されます。
- 数年後、2人は話し合って離婚することにしました。はるとくんは未成年なので、親権者(しんけんしゃ=子の世話や財産の管理をする親)を、2人とするか、どちらか一人とするかを決めます。養育費や、はるとくんと会う方法も話し合って決めます。
- あおいさんは、結婚中に2人で貯めた預金について、財産分与を請求できます。離婚の時から5年以内に家庭裁判所へ申し立てられます。
条文ではどう決まっているか
婚姻が成り立つ条件
- 年齢(731条):18歳にならなければ婚姻できない。男女とも同じ。
- 重婚の禁止(732条):配偶者のある人は、重ねて婚姻できない。
- 近い親族どうしの禁止(734条〜736条):直系血族(親子・祖父母と孫など)と3親等内の傍系血族(きょうだい・おじとめいなど)の間はできない。ただし、養子と養親側の傍系血族の間はできる。直系姻族(義理の親子など)の間は、姻族関係が終わった後もできない。
- 削除された条文:女性だけの再婚禁止期間(733条)と、未成年者の婚姻に父母の同意を求める定め(737条)は、どちらも削除されていて、いまはない。
- 成年被後見人(738条):成年被後見人(判断する力を欠く常況にあり、後見が始まった人)が婚姻するのに、成年後見人の同意はいらない。
- 届出(739条):婚姻は、戸籍法に従って届け出ることで効力を生じる。届出は、当事者2人と成年の証人2人以上が署名した書面か、口頭でする。
婚姻の無効と取消し(742条〜748条)
- 無効(742条):①人違いなどで、当事者の間に婚姻をする意思がないとき。②届出をしないとき。ただし、届出が証人の署名などの方式を欠くだけなら、婚姻は無効にならない。
- 取消しは条文の場合だけ(743条):婚姻を取り消せるのは、744条・745条・747条の場合に限られる。
- 条件違反の婚姻(744条):年齢・重婚・近親婚に違反した婚姻は、各当事者、その親族、検察官が家庭裁判所に取消しを請求できる。検察官は、当事者の一方が亡くなった後は請求できない。重婚では、前の婚姻の配偶者も請求できる。
- 年齢違反(745条):年齢に達した後は、取消しを請求できない。ただし本人は、年齢に達した後3か月間は請求できる(追認したときを除く)。
- 詐欺・強迫(747条):だまされた・おどされた人は、家庭裁判所に取消しを請求できる。詐欺を見つけた後か、強迫を免れた後、3か月たつか追認すると、取消権は消える。
- 取消しの効果(748条):将来に向かってのみ効力を生じる。取消しの原因を知らなかった当事者は、婚姻で得た財産を現に利益を受けている限度で返す。知っていた当事者は全部を返し、相手が知らなかったなら損害も賠償する。
夫婦になると何が変わるか(750条〜762条)
- 氏(750条):婚姻の際に決めたとおり、夫か妻の氏を名乗る。
- 同居・協力・扶助(752条):夫婦は同居し、互いに協力し扶助(ふじょ=生活を支え合うこと)しなければならない。
- 夫婦の財産の決め方(755条):届出の前に財産について別の契約(夫婦財産契約)をしなければ、民法の定め(法定財産制)による。
- 婚姻費用(760条):資産・収入その他一切の事情を考えて、生活にかかる費用を分担する。
- 日常の家事の借り(761条):夫婦の一方が日常の家事について第三者と契約したら、もう一方も連帯して責任を負う。ただし、第三者に「責任を負わない」と前もって知らせていれば負わない。
- 財産の帰属(762条):結婚前から持っていた財産と、結婚中に自分の名で得た財産は、その人だけの財産(特有財産)。どちらの物か分からない財産は、共有と推定する。
- 夫婦間の契約の取消権は削除:「夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せる」という754条は、令和8年4月1日施行の改正で削除された。
離婚の方法(763条〜771条)
- 協議離婚(763条・764条):夫婦は話し合いで離婚できる。届出が必要で、詐欺・強迫による離婚は取り消せる(婚姻の738条・739条・747条を準用)。
- 届出の受理(765条):未成年の子がいるときは、親権者が決まっているか、親権者を決める家事審判・家事調停の申立てがされていることを確かめてから受理する。ただし、これに反して受理されても、離婚は有効。
- 裁判離婚(770条):離婚の訴えを起こせるのは、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④その他婚姻を続けがたい重大な事由、の4つの場合だけ。①〜③があっても、裁判所は一切の事情を考えて、婚姻を続けるのが相当なら請求を退けられる。
- 削除された離婚原因:「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない」という離婚原因は、令和8年4月1日施行の改正で削除された。
離婚した後のルール
- 親権者(819条):協議離婚では、父母の協議で双方か一方を親権者と決める。裁判離婚では、裁判所が双方か一方を決める。裁判所が決めるときは、子の利益を考え、子の心身に害を及ぼすおそれや、暴力などで共同で親権を行うのが難しいと認められるときは、一方を親権者としなければならない。
- 子の監護(766条):子の監護をする人、父または母と子の交流、監護にかかる費用(養育費)の分担などは、協議で決める。決めるときは子の利益をいちばんに考える。まとまらなければ家庭裁判所が決める。
- 法定養育費(766条の3):養育費を決めずに協議離婚したときでも、離婚の時から主に子の世話をしている親は、もう一方に毎月の費用を請求できる。額は法務省令で決まる。払う側が、支払う力がないことなどを証明すれば、拒める。
- 氏(767条):結婚で氏を改めた人は、離婚で元の氏に戻る。離婚の日から3か月以内に届け出れば、結婚中の氏を名乗り続けられる。
- 財産分与(768条):離婚した一方は、相手に財産分与を請求できる。協議がまとまらなければ家庭裁判所に申し立てる。ただし、離婚の時から5年を過ぎるとできない。財産を得たり維持したりした寄与の程度は、違うことが明らかでなければ、等しい(2分の1ずつ)とする。
- 裁判離婚への準用(771条):766条〜769条は、裁判離婚にも当てはまる。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(761条):あおいさんが家族の食料品や日用品をスーパーでつけ払いにした。日常の家事の範囲なので、しょうたさんも連帯して払う責任を負います。
- 当てはまらない(761条):あおいさんが、しょうたさんに無断で、しょうたさんが結婚前から持っている土地を売った。最高裁判所第一小法廷の昭和44年12月18日判決は、761条は夫婦がおたがいに日常の家事について代理する権限をもつことも前提にしている、としました。そのうえで、日常の家事の範囲をこえる行為は、相手が「日常の家事の範囲内だ」と信じたことに正当な理由があるときに限り、110条(表見代理。代理をわかりやすくで解説)の趣旨を類推して守られる、としています。この判決の事件では、夫婦の一方の特有財産の売買は日常の家事にあたらず、正当な理由も認められませんでした。
- ひっかけやすい(取消しの効果):あおいさんが、しょうたさんにだまされて婚姻していた。取り消すと、婚姻は「初めからなかった」ではなく、取り消した時から先の効力がなくなります(748条1項)。契約の取消しが初めから無効とみなされる(121条)のと逆です。
- ひっかけやすい(届出の方式):婚姻届の証人の署名が1人分しかなかったのに、受理された。方式を欠くだけなので、婚姻は無効になりません(742条2号ただし書)。
- 判断が分かれる(有責配偶者の離婚請求):しょうたさんが不貞をして家を出て、別居が長く続いた後、自分から離婚を求めた。最高裁判所大法廷の昭和62年9月2日判決は、離婚の原因を作った配偶者からの請求でも、別居が年齢や同居期間と比べて相当の長期間に及び、未成熟の子がいない場合には、相手が離婚で極めて苛酷な状態に置かれるなどの特段の事情がない限り、有責というだけで退けることはできない、としました。はるとくんのような幼い子がいれば、この判決が挙げた「未成熟の子がいない」という事情には当たりません。
似ているルールとどう違うか
| 比べる点 | 協議離婚 | 裁判離婚 |
|---|---|---|
| 方法 | 話し合い+届出(763条・764条) | 離婚の訴え(770条) |
| 理由 | いらない | 770条1項の4つだけ |
| 親権者 | 協議で双方か一方(819条1項) | 裁判所が双方か一方(819条2項) |
| 子の監護・財産分与 | 766条・768条 | 同じ(771条で準用) |
婚姻の取消しと、ふつうの契約の取消しも比べておきます。契約を詐欺や強迫で取り消すと、初めから無効だったとみなされます(121条)。婚姻の取消しは将来に向かってだけ効きます(748条)。取消権が消えるまでの期間も、婚姻は「詐欺を見つけた・強迫を免れた後3か月」と短く決まっています。契約の取消しのルールは意思表示をわかりやすくで整理しています。
もう一つ、財産分与と相続はどちらも「夫婦の財産を分ける」場面ですが、別の制度です。財産分与は離婚した相手に求めるもので、相続は配偶者が亡くなったときに起きます。離婚した元の配偶者は相続人になりません。
試験ではどこをまちがえやすいか
- 削除された条文を前提にする型:再婚禁止期間(733条)、父母の同意(737条)、夫婦間の契約の取消権(754条)、強度の精神病という離婚原因はいずれも、いまの条文にはありません。古い教材や過去の問題で覚えた人は特に注意します。
- 財産分与の期間を古い数字にする型:令和8年4月1日施行の改正で、家庭裁判所に求められる期間は離婚の時から5年になりました。2年ではありません。
- 離婚後の親権者を「一方だけ」とする型:いまは、協議で双方か一方を選べます。裁判所が決める場合でも双方を選べますが、子への害のおそれや暴力などがあれば一方にしなければなりません。
- 婚姻の取消しをさかのぼらせる型:婚姻の取消しは将来に向かってだけ効きます。
- 取消しを請求できる人をずらす型:検察官は、当事者の一方が亡くなった後は請求できません。重婚では前の婚姻の配偶者も請求できます。
- 成年被後見人の婚姻に同意を求める型:成年後見人の同意はいりません(738条)。
行政書士試験では、5肢択一式で、婚姻の成立条件・取消し・離婚の効果を並べ、期間や請求できる人を入れかえる形が考えられます。改正で変わった点(親権者、財産分与の5年、削除された条文)は、改正前の内容と入れかえる形に注意します。
宅建試験では、夫婦の一方が相手の名義の土地や建物を勝手に売った場面で、761条と表見代理の関係を問う形が考えられます。離婚の財産分与で不動産を分ける場面は、相続とあわせて家族と不動産の問題として出てくる形も考えられます。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
令和8年4月1日現在の民法では、協議離婚をする父母は、未成年の子の親権者を父母のどちらか一方に決めなければならない。
答え:✕ 協議離婚では、父母の協議で、その双方又は一方を親権者と定めます(819条1項)。ただし、子の心身に害を及ぼすおそれなどがあるときは、裁判所は一方を親権者としなければなりません(同条7項)。
問2(このサイトのオリジナル問題)
りなさんは、だまされてけいさんと婚姻した。りなさんが家庭裁判所に請求して婚姻が取り消されると、婚姻は初めから無効であったものとみなされる。
答え:✕ 婚姻の取消しは、将来に向かってのみ効力を生じます(748条1項)。初めから無効とみなすのは、契約などの取消しの原則(121条)です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
夫のゆうじさんが、近所の米店と、家族が毎日食べる米を配達してもらい月末にまとめて払う契約をした。妻のまどかさんは、米店に対して前もって「責任を負わない」と知らせていなかった。この場合、まどかさんも代金について連帯して責任を負う。
答え:○ 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方も連帯して責任を負います。第三者に責任を負わないことを予告していれば別です(761条)。
まとめ
- 婚姻は18歳から、届出で成り立つ。再婚禁止期間と父母の同意の条文は削除済み。
- 婚姻の取消しは744条・745条・747条の場合だけで、将来に向かってだけ効く。
- 日常の家事の借りは夫婦が連帯して負う。分からない財産は共有と推定。
- 裁判離婚の原因は4つ。財産分与は離婚から5年、寄与は原則2分の1ずつ。
- 離婚後の親権者は双方か一方(令和8年4月1日施行)。養育費を決めなくても法定養育費を請求できる。
次に読むなら、親子をわかりやすくがおすすめです。離婚後の親権者の決め方は、親権の中身や嫡出の推定とつながっていて、続けて読むと家族法の流れが一つにまとまります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。754条の削除は、法務省の新旧対照条文で確かめています。
- e-Gov法令検索「民法」(121条、731条、732条、733条、734条、735条、736条、737条、738条、739条、740条、742条、743条、744条、745条、747条、748条、750条、752条、755条、760条、761条、762条、763条、764条、765条、766条、766条の3、767条、768条、770条、771条、819条)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」(施行日、新旧対照条文、改正の概要)
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷 昭和44年12月18日判決」(民法761条と夫婦相互の代理権・表見代理)
- 裁判所「最高裁判所大法廷 昭和62年9月2日判決」(長期間の別居と有責配偶者からの離婚請求)
働く人の法律試験ノート