不可分債務・不可分債権・連帯債権:連帯債務とどこが違うか、1人に起きたことは他の人に及ぶか(民法428条〜435条の2)

ひとことで言うと、債権者や債務者が何人かいるとき、原則は人数で分けます(民法427条)。ただし、1台の車の引渡しのように性質上分けられない給付なら、不可分債権・不可分債務になります。お金のように分けられる給付でも、法令や約束で「連帯」にすれば、連帯債権・連帯債務です。

令和2年4月施行の改正で、①不可分になるのは「性質上」不可分な場合だけになり、②連帯債権の規定(432条〜435条の2)ができ、③不可分債権・不可分債務は、連帯債権・連帯債務の規定を準用する形になりました。違いが出るのは、準用から外された条です。不可分債権は433条(更改・免除)と435条(混同)、不可分債務は440条(混同)が外されています。

この記事では、この4つの違いを、1人に起きたことが他の人にも効くか、その人だけに効くかの表で整理します。その人だけに効くことを相対的効力(相対効)といい、435条の2・441条の見出しは「相対的効力の原則」です。他の人にも効くのは、条文が特に定めた事由だけです。連帯債務そのものは連帯債務の記事で扱っているので、ここでは違いだけを書きます。条文は、令和8年4月1日時点の民法を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
あおいさん・りくさん・はなさん中古のキャンピングカー1台を共有する3人ゆうとさんに売った
ゆうとさん買った人車の引渡しを求める
まことさん・ゆいさん2人で軽トラック1台を買った人売主に引渡しを求める
けいすけさん軽トラックを売った人引渡しの債務を負う
  1. あおいさん・りくさん・はなさんの3人は、共有のキャンピングカー1台を、ゆうとさんに売った。
  2. 車1台の引渡しは、3分の1ずつに分けることができない。3人の引渡しの債務は、不可分債務になる。
  3. ゆうとさんは、3人のうちだれか1人、たとえばはなさんにだけ、車全体の引渡しを求めることができる(430条で436条を準用)。

反対に、債権者の側が何人かいる場合もあります。まことさんとゆいさんは、2人で一緒に、けいすけさんから軽トラック1台を買いました。2人の引渡しを求める債権は、分けられない給付なので不可分債権です。まことさんもゆいさんも、それぞれ、2人のために車の引渡しを求めることができ、けいすけさんは、どちらか1人に引き渡せば足ります(428条で432条を準用)。

一方、3人がゆうとさんに対して持つ代金の債権は、お金なので分けられます。特に約束がなければ、3人は等しい割合で代金の債権を持ちます(427条)。3人とゆうとさんの間で「連帯して」持つと約束すれば、連帯債権になります(432条)。

たとえるなら、不可分は「1枚のピザを1人前ずつには切れない料理として注文した」場合で、連帯は「切れるピザを、だれが受け取ってもよいと決めた」場合です。ただし本物のルールでは、何が分けられないかは給付の性質で決まります。約束で「不可分」にする定めはなく、約束でまとめるときは「連帯」にします。

条文ではこう決まっている

4つの分け方

種類どんなときか主な条文
分割債権・分割債務別段の意思表示がないとき(原則)427条
不可分債権・不可分債務給付がその性質上不可分のとき428条〜431条
連帯債権性質上可分で、法令の規定か意思表示で連帯のとき432条〜435条の2
連帯債務性質上可分で、法令の規定か意思表示で連帯のとき436条〜445条

428条は「次款(連帯債権)の規定(第四百三十三条及び第四百三十五条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する」とします。430条は「第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する」とします。

債権者が何人か:連帯債権と不可分債権

起きたこと連帯債権不可分債権
1人の請求・1人への履行全員のために効力(432条)同じ(428条で準用)
1人と債務者の更改・免除その人に分与されるべき利益の部分は、他の人も請求できない(433条)他の人は全部の履行を請求できる。分与されるべき利益は債務者に償還(429条)
債務者が1人に対する債権で相殺他の人にも効力(434条)同じ(428条で準用)
1人と債務者の混同債務者は弁済をしたものとみなす(435条)435条は準用しない。他の人に効力を生じない
それ以外他の人に効力を生じない(435条の2)同じ(428条で準用)

435条の2には、ただし書があります。他の債権者の1人と債務者が別段の意思を表示したときは、その債権者に対する効力は、その意思に従います。

債務者が何人か:連帯債務と不可分債務

起きたこと連帯債務不可分債務
1人に請求する1人にも全員にも、全部か一部を請求できる(436条)同じ(430条で準用)
1人と債権者の更改全員の利益のために債権が消滅(438条)同じ(430条で準用)
1人が相殺を援用全員の利益のために債権が消滅(439条1項)同じ(430条で準用)
1人と債権者の混同弁済をしたものとみなす(440条)440条は準用しない。他の人に効力を生じない
請求・免除・時効の完成など他の人に効力を生じない(441条)同じ(430条で準用)

債務者の側では、不可分債務と連帯債務の違いは混同の1つだけです。払った人の求償(442条以下)も、430条で準用されます。

分けられるようになったとき(431条)

431条は、不可分債権が可分債権になったときは、各債権者は自分が権利を持つ部分だけ履行を請求でき、不可分債務が可分債務になったときは、各債務者はその負担部分だけ履行の責任を負う、とします。分けられなくする理由がなくなれば、原則の分割に戻るということです。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:1人に車全体の引渡しを求める

ゆうとさんは、はなさん1人に、キャンピングカーの引渡しを求めることができます。はなさんが「自分の持分は3分の1だけ」と言って断ることはできません。不可分債務には、連帯債務の436条が準用されるからです。

当てはまる例:債権者の1人が免除しても、他の人は全部を求められる

まことさんが、けいすけさんに「引渡しはもういい」と免除したとします。ゆいさんは、それでも軽トラックの引渡しを求めることができます(429条前段)。そのかわり、ゆいさんは、まことさんが権利を失わなければ分与されるはずだった利益を、けいすけさんに償還しなければなりません(429条後段)。車は分けられないので、まず車全体を受け取り、まことさんの分はお金などで清算する形です。

当てはまらない例:お金の代金の債権

3人がゆうとさんに持つ代金の債権は、性質上分けられます。不可分債権にはならず、約束がなければ等しい割合で分かれます(427条)。改正後は、約束で「不可分」にする定めはありません。まとめて請求できるようにしたいなら、連帯債権として約束することになります(432条の「当事者の意思表示によって」)。

ひっかけやすい例:車が壊れて、お金の債務に変わった

3人の落ち度で引渡しの前に車が壊れ、引渡しの債務がお金の支払の債務(可分債務)に変わったとします。431条により、3人は、それぞれの負担部分だけ支払の責任を負います。不可分だった間のように、1人に全額を求めることはできません。

ひっかけやすい例:1人と更改した

りくさんが、ゆうとさんと「キャンピングカーの代わりに別の車を渡す」という更改(こうかい=今の債務を消して新しい債務に置き換える契約)をしたとします。不可分債務には438条が準用されるので、債権は3人全員の利益のために消滅し、あおいさんとはなさんもキャンピングカーの引渡しを免れます。更改・免除・混同のしくみそのものは代物弁済・更改・免除・混同の記事、相殺の要件は弁済と相殺の記事にあります。

似ているルールとの違い

改正の前後で、ここが変わりました。改正前の条文は、e-Gov 法令検索で令和2年3月31日時点の民法を確かめました。

比べる点改正前いま
不可分になる場合性質上または当事者の意思表示によって不可分性質上不可分のときだけ(428条・430条)
不可分債務への準用連帯債務の規定のうち434条〜440条を除いて準用(旧430条)連帯債務の規定のうち440条(混同)だけを除いて準用(430条)
連帯債権規定がなかった432条〜435条の2

改正前は、連帯債務の更改の規定も準用から外されていたので、不可分債務の1人との更改は、他の債務者に効かない作りでした。いまは、更改(438条)も相殺(439条1項)も準用され、他の人に効かないのは混同だけです。古い教材で覚えた人は、ここを直しておきます。

連帯債務との違いを一言でいえば、①給付が性質上可分か不可分か、②混同が他の人に効くか、の2点です。3人で1台の車を持つこと自体の決まり(共有)は共有の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 意思表示で不可分にする形:「当事者の約束で不可分債務にできる」とする形。改正前の規定で、いまは性質上不可分の場合だけです。
  • 不可分債務の更改を相対効とする形:改正前の準用の範囲です。いまは438条が準用され、相殺(439条1項)とともに他の人にも効きます。
  • 不可分債務の混同が他の人にも効くとする形:440条は準用から外されています。
  • 不可分債権の免除を連帯債権と同じにする形:連帯債権の免除は、その人に分与されるべき利益の部分を他の人も請求できなくなります(433条)。不可分債権では、他の人は全部を請求でき、その分を債務者に償還します(429条)。
  • 不可分債権の混同が他の人にも効くとする形:435条は準用から外されています。
  • 可分になっても全額を求められるとする形:431条で、各自の部分・負担部分だけになります。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
あおいさん・りくさん・はなさんの3人が共有のキャンピングカー1台をゆうとさんに売ったが、引渡しの前に3人の落ち度で車が壊れ、引渡しの債務はお金の支払の債務(可分債務)に変わった。この場合も、ゆうとさんは、3人のだれに対しても全額の支払を請求できる。

答え:✕ 分かれ目は、不可分債務が可分債務に変わったあとの責任の範囲です。不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負います(民法431条)。正しくは、ゆうとさんが各人に請求できるのは、その人の負担部分だけです。車の引渡しの間は1人に全部を請求できた(430条で436条を準用)ので、そのまま全額と考えると○にしてしまいます。連帯債務なら全額を請求できますが、この問は連帯の約束がない場面です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
まことさんとゆいさんは、2人で買った軽トラック1台の引渡しを、売主のけいすけさんに求める債権を持っている。まことさんがけいすけさんに対して引渡しの債務を免除しても、ゆいさんは、軽トラックの引渡しを求めることができる。

答え:○ 分かれ目は、不可分債権者の1人がした免除の効き方です。1人が免除しても、他の不可分債権者は全部の履行を請求でき、そのかわり、免除した人に分与されるべきだった利益を債務者に償還します(民法429条)。免除で債務が消えたと考えると✕にしてしまいます。連帯債権なら、その部分は他の人も請求できなくなります(433条)。不可分債権では、428条が433条を準用から外し、429条が使われます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
あおいさん・りくさん・はなさんの3人は、共有のキャンピングカー1台をゆうとさんに引き渡す債務を負っている。りくさんがゆうとさんと、キャンピングカーの代わりに別の車を渡す更改をした場合、あおいさんとはなさんも、キャンピングカーを引き渡す債務を免れる。

答え:○ 分かれ目は、不可分債務の1人との更改が他の債務者に効くかです。不可分債務には連帯債務の規定が440条を除いて準用され(民法430条)、連帯債務者の1人と債権者の間に更改があったときは、債権は全ての債務者の利益のために消滅します(438条)。改正前の旧430条は434条〜440条を準用から外していたので、古い知識だと✕にしてしまいます。いまの不可分債務で他の人に効かないのは、混同(440条)です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「民法」で続けて解けます。

まとめ

  • 原則は分割(427条)。性質上分けられない給付は不可分、分けられる給付で法令か約束により連帯なら連帯(改正後は意思表示による不可分はない)。
  • 不可分債権は、連帯債権の規定を433条(更改・免除)と435条(混同)を除いて準用(428条)。1人の免除でも他の人は全部を請求でき、分与分を償還(429条)。
  • 不可分債務は、連帯債務の規定を440条(混同)だけ除いて準用(430条)。更改・相殺は他の人にも効く。
  • 可分になったら、各自の部分・負担部分だけ(431条)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の民法と、改正前の令和2年3月31日時点の民法を確かめました。

このサイトで次に読むなら、連帯債務の記事です。この記事の表の「連帯債務」の列を、請求・免除・時効・相殺・求償の例で確かめられます。

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