宅建の欠格事由をわかりやすく:免許と登録の違い・政令で定める使用人まで

欠格事由(けっかくじゆう)とは、「この人には免許や登録を与えない」と法律が決めている事情のことです。宅建では、宅建業者の免許(宅地建物取引業法5条1項)と、宅建士の登録(18条1項)の2か所に並んでいます。破産して復権していない、拘禁刑以上の刑を受けて5年たっていない、といった中心の部分は共通です。ただし、未成年者の扱いや、会社の役員・支店長のような「周りの人」の扱いは、免許と登録で違います。

この記事で扱うのは、5条1項と18条1項の中身と、その違いです。免許の手続き全体は宅建業の免許をわかりやすく、登録と宅建士証の手続きは宅建士の登録と宅建士証をわかりやすくで説明しています。免許や登録を受けたあとに欠格事由にあたった場合の取消し・消除は監督処分と罰則をわかりやすくに任せます。条文は e-Gov 法令検索で、令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。

身近な例で考えると

名古屋市で不動産会社「ひかり不動産」を作る、けんじさんの話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場事情
けんじさん社長(代表取締役)特になし
まことさん取締役になる予定3年前に傷害罪で罰金刑
りょうさん豊橋支店の支店長2年前に破産し、復権ずみ
そうたさん17歳の宅建試験合格者親から営業の許可なし
  1. けんじさんは、名古屋の本店と豊橋の支店で、愛知県知事に免許を申請しようとした。
  2. 役員の名簿を見直すと、まことさんが3年前に傷害罪で罰金刑を受けていた。傷害罪の罰金は欠格事由にあたり、まだ5年たっていない。役員に1人でも欠格の人がいると、会社は免許を受けられない。
  3. まことさんには取締役にならないでもらい、役員を入れかえてから申請した。
  4. 支店長のりょうさんは、破産していたが復権を得ている。復権を得れば、5年を待たずに欠格ではなくなる。会社の免許に問題はない。
  5. アルバイトのそうたさんは宅建試験に合格した。しかし、宅建業の営業について親の許可を受けていない未成年者なので、宅建士の登録は受けられない。

たとえると、欠格事由は「この仕事を任せられない人のリスト」です。会社の免許では、社長だけでなく、役員と支店長のような「店の顔」までリストと照らし合わせます。ただし本物のルールでは、ふつうの社員は照らし合わせる対象に入りません。対象は条文で決まった人だけです。

条文ではこう決まっている

免許の欠格事由(5条1項1号〜15号)

5条1項は、次のどれかにあたる人に「免許をしてはならない」としています。15の号を、4つのまとまりに分けると覚えやすくなります。

  • 本人の今の状態:破産手続開始の決定を受けて復権(ふっけん=破産による制限が解けること)を得ていない人(1号)。暴力団員か、暴力団員でなくなって5年たっていない人(7号。あわせて「暴力団員等」)。心身の故障で宅建業を適正に営めない人として省令で定める人(10号)。
  • 本人の過去の行い:拘禁刑以上の刑を受け、刑の執行が終わるか、執行を受けることがなくなった日から5年たっていない人(5号)。一定の罪で罰金刑を受け、同じく5年たっていない人(6号)。免許の申請前5年以内に、宅建業について不正または著しく不当な行為をした人(8号)。不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな人(9号)。
  • 過去の処分:不正の手段で免許を受けた、業務停止の事由にあたり情状が特に重い、業務停止の処分に違反した、のどれかで免許を取り消され、取消しの日から5年たっていない人(2号。66条1項8号・9号)。法人なら、聴聞の公示の日前60日以内に役員だった人もふくみます。取消しの聴聞の公示のあと、処分が決まる前に解散や廃業の届出をした人なども、届出から5年は欠格です(3号・4号)。
  • 周りの人と会社の体制:宅建業の営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者で、その法定代理人(親など)が1号〜10号にあたる人(11号)。役員か政令で定める使用人の中に、1号〜10号にあたる人がいる法人(12号)。政令で定める使用人の中に、1号〜10号にあたる人がいる個人(13号)。暴力団員等が事業活動を支配する人(14号)。事務所に置く宅建士の要件(31条の3)を満たしていない人(15号)。

罰金刑で欠格になる罪は、6号で決まっています。宅建業法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の違反、刑法の傷害(204条)・現場助勢(206条)・暴行(208条)・凶器準備集合及び結集(208条の2)・脅迫(222条)・背任(247条)、暴力行為等処罰に関する法律の罪です。これ以外の罪の罰金は、欠格事由になりません。免許をしないときは、理由を書いた書面で申請者に知らせます(5条2項)。

宅建士の登録の欠格事由(18条1項1号〜12号)

  • 宅建業の営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者(1号)。法定代理人の事情は関係ありません。
  • 破産して復権を得ていない人(2号)。拘禁刑以上の刑で5年たっていない人(6号)。免許と同じ罪の罰金刑で5年たっていない人(7号)。暴力団員等(8号)。
  • 不正の手段などで業者の免許を取り消され、5年たっていない人(3号)。取消しを逃れるための廃業の届出などをした人(4号・5号)。
  • 不正の手段で登録や宅建士証を受けた、事務禁止の事由にあたり情状が特に重い、などの理由で登録を消除(しょうじょ=名簿から消すこと)され、5年たっていない人(9号・10号。68条の2第1項2号〜4号・同条2項2号・3号)。事務禁止の期間中に本人の申請で登録を消し、その期間がまだ終わっていない人(11号)。
  • 心身の故障で宅建士の事務を適正に行えない人として省令で定める人(12号)。

政令で定める使用人と役員とは

  • 政令で定める使用人:宅建業者の使用人で、宅建業について事務所の代表者である人(施行令2条の2)。事務所は、本店・支店か、継続して業務ができる施設があり、契約を結ぶ権限のある使用人を置く場所です(施行令1条の2)。たとえば支店長や営業所長です。
  • 役員:業務を執行する社員、取締役、執行役か、これらに準ずる人(5条1項2号のかっこ書き)。相談役・顧問などの名前でも、取締役などと同じかそれ以上の支配力があると認められる人はふくみます。
  • 役員と政令で定める使用人の氏名は、免許の申請書に書く事項です(4条1項2号・3号)。

成年被後見人・被保佐人はどうなったか(令和元年の改正後)

以前は、成年被後見人と被保佐人であることだけで、免許も登録も受けられませんでした(改正前の5条1項1号・18条1項2号)。令和元年9月14日に施行された改正(令和元年法律第37号)で、この一律の定めはなくなりました。かわりに、心身の故障で適正に仕事ができない人として省令で定める人が欠格になります。省令の中身は「精神の機能の障害により」、仕事に必要な「認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」です(施行規則3条の2・14条の2)。つまり今は、成年被後見人かどうかではなく、一人ひとりの状態で判断します。古い教材や過去問の解説では扱いが違うので注意します。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:ひかり不動産の取締役の一人が、3年前に背任罪で罰金刑を受けていた。背任は6号の罪なので、その取締役は欠格です。役員に欠格の人がいるので、会社も免許を受けられません(5条1項12号)。
  2. 当てはまらない例:もし、まことさんの罰金刑が傷害罪ではなく、道路交通法違反(スピード違反など)によるものだったら。罰金で欠格になるのは6号に並んだ罪だけです。道路交通法は入っていないので、欠格ではありません。
  3. ひっかけやすい例:同じ道路交通法違反でも、拘禁刑を受けた場合。拘禁刑以上の刑は、罪の種類を問わず欠格です(5号)。「罰金なら罪で分かれる、拘禁刑ならどの罪でも欠格」と分けて覚えます。
  4. 当てはまらない例:支店長のりょうさんは破産したが、復権を得た。条文は「復権を得ない者」なので、復権すればすぐに欠格ではなくなります。「破産から5年」という決まりはありません。
  5. ひっかけやすい例:拘禁刑に執行猶予(しっこうゆうよ=刑をすぐには受けず、一定の期間ようすを見ること)が付いた人。猶予の期間中は「刑に処せられ」た状態なので欠格です。ただし、取り消されずに猶予の期間を終えると、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条1項)。そこからは、5年を待たずに免許も登録も受けられます(猶予の期間中に別の罪で起訴され、その裁判が続いているときなどは、期間を過ぎても効力が続くことがあります。同条2項)。
  6. 当てはまらない例:ひかり不動産の営業担当(支店長でも役員でもない社員)が、傷害罪で罰金刑を受けた。会社の免許で照らし合わせるのは、役員と政令で定める使用人だけです(12号)。会社の免許には影響しません。ただし、その社員が宅建士なら、本人の登録は別の問題になります(18条1項7号・68条の2)。
  7. ひっかけやすい例:免許を受けてから1年以内に事業を始めず、免許を取り消された業者(66条1項6号)。取消しのあと5年の欠格になるのは、66条1項8号・9号(不正の手段・情状が特に重い・業務停止違反)による取消しだけです(5条1項2号)。この業者は、すぐに申請し直せます。

似ているルールとの違い:免許と登録を並べる

共通する部分と、片方にしかない部分を表にしました。

事情免許(5条)登録(18条)
破産・復権なし欠格欠格
拘禁刑以上・5年欠格欠格
一定の罪の罰金・5年欠格欠格
暴力団員等欠格欠格
心身の故障業を営めない人事務を行えない人
未成年者法定代理人しだい営業の許可がなければ欠格
申請前5年の不正行為欠格定めなし
役員・使用人1人でもいれば欠格関係なし
処分による5年免許取消し免許取消し・登録消除

「5年」の数え始めは、事由ごとに違います。拘禁刑と罰金は「刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日」。免許の取消しは「取消しの日」。暴力団員は「暴力団員でなくなった日」。不正行為は逆向きで、「申請前5年以内」にしたかどうかを見ます。

欠格事由は「受ける前」の基準です。免許や登録を受けたあとに同じ事情にあたると、業者は免許の取消し(66条1項1号〜4号)、宅建士は登録の消除(68条の2第1項1号)になります。どの号が取消しや消除につながるかは監督処分と罰則で、宅建士本人が出す届出(21条)は宅建士の登録と宅建士証で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

  • 罰金の罪のすりかえ:過失傷害や道路交通法違反の罰金で欠格とする形。罰金で欠格になるのは、宅建業法・暴力団関係・暴力的な罪(傷害・暴行・脅迫など)と背任だけです。
  • 「5年」の付けすぎ:破産なら「復権」でただちに、執行猶予なら「猶予期間の満了」でただちに欠格でなくなります。ここに5年を足す選択肢に注意します。
  • 取消しの理由:どんな理由の免許取消しでも5年とする形。5年になるのは不正の手段・情状が特に重い・業務停止違反の3つです。
  • 照らし合わせる人の範囲:ふつうの従業員が欠格なら会社も免許を受けられない、とする形。会社の免許で照らし合わせるのは、役員と政令で定める使用人(事務所の代表者)です。役員か支店長かは、肩書きではなく条文の定義で判断します。
  • 未成年者の入れかえ:登録の未成年者の欠格を、免許にもあてはめる形。免許では、未成年者自身ではなく法定代理人の事情を見ます。
  • 古い知識:「成年被後見人は登録を受けられない」とする形。令和元年の改正で、一律の欠格はなくなりました。

欠格事由の数字は「5年」と「60日」くらいです。罪の名前は、語呂で覚えるより「人に力を使う罪と、お客を裏切る罪(背任)」と理由でまとめたほうが崩れにくくなります。このまとめ方は語呂合わせは使うべきかでも例として取り上げています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
法人の取締役の一人が、道路交通法違反で罰金刑に処せられ、まだ5年たっていない。この法人は、そのことを理由に宅建業の免許を受けることができない。

答え:✕
罰金刑で欠格になるのは、宅建業法・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の違反と、刑法の傷害・暴行・脅迫・背任などの罪だけです(5条1項6号)。道路交通法違反の罰金は入らないので、取締役は欠格ではなく、法人も12号にあたりません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
拘禁刑1年・執行猶予3年の判決を受けた人は、執行猶予を取り消されずに猶予の期間を終えても、そこから5年たつまでは宅建士の登録を受けることができない。

答え:✕
執行猶予を取り消されずに猶予の期間を終えると、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条1項)。拘禁刑に処せられたことがなくなるので、18条1項6号の5年を待たずに登録を受けられます。猶予の期間中は欠格です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業の営業について法定代理人から許可を受けていない17歳の人は、宅建士の登録を受けられない。一方、同じ17歳の人でも、法定代理人が欠格事由にあたらなければ、宅建業の免許の欠格事由にはあたらない。

答え:○
登録では、営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者は、それだけで欠格です(18条1項1号)。免許では、そのような未成年者は、法定代理人が5条1項1号〜10号にあたるときに欠格になります(5条1項11号)。

まとめ

  • 免許(5条)と登録(18条)に共通:破産で復権なし、拘禁刑以上で5年、一定の罪の罰金で5年、暴力団員等、心身の故障。
  • 罰金で欠格になるのは、宅建業法・暴力団関係・傷害や暴行などの暴力的な罪・背任だけ。拘禁刑以上はどの罪でも欠格。
  • 復権や執行猶予の満了なら、5年を待たずに欠格でなくなる。取消しで5年になるのは不正の手段・情状が特に重い・業務停止違反だけ。
  • 会社の免許では、役員と政令で定める使用人(支店長などの事務所の代表者)を照らし合わせる。未成年者は、免許なら法定代理人しだい、登録なら本人で欠格。
  • 成年被後見人・被保佐人の一律の欠格は、令和元年の改正でなくなった。

このサイトで次に読むなら、欠格事由が免許を受けたあとに問題になる場面を扱う監督処分と罰則をわかりやすくがおすすめです。5条と66条の号の対応を見比べると、「受ける前」と「受けたあと」の区別がはっきりします。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。宅建試験は、試験を行う年度の4月1日現在で施行されている法令から出題されます(不動産適正取引推進機構の試験概要)。