重要事項説明(宅地建物取引業法35条)には、ふつうの売買・貸借の説明(1項)のほかに、場面を限った説明が2つあります。代金を分割で受け取って売る「割賦販売(かっぷはんばい)」の説明(2項)と、不動産を信託した「受益権(じゅえきけん)」を売るときの説明(3項)です。
ひとことで言うと、割賦販売では、1項の説明に「現金販売価格・割賦販売価格・支払い方」の3つが加わります。信託の受益権では、物件について3項に並ぶ事項を説明します。ただし受益権には、説明がいらない場合が施行規則で3つ決まっています。
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、35条書面(重要事項説明)が主な論点の問題は81問で、40回すべてに出ていました(直近10回では29問)。割賦販売は、ほかの論点の問題に混ざる「副の論点」として3問(直近10回で2問)でした。数えたのは問題ごとの論点で、2項・3項のような個々の説明事項までは分けていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。
この記事では35条2項・3項を扱います。重要事項説明の基本(だれが・いつ・どう説明するか)は重要事項説明(35条)の記事で、割賦販売の契約の解除の制限と所有権留保(42条・43条)は8種制限の記事で扱っています。
身近な例で考えると
登場人物は4人(社)です。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| ひかり不動産 | 宅建業者 | 一戸建てを分割払いで売る。別に、賃貸マンションを信託し、その受益権を売る |
| まなみさん | ひかり不動産の宅建士 | 重要事項の説明をする |
| そうたさん | 会社員 | 一戸建てを分割払いで買う |
| けいこさん | 個人の投資家 | マンションの受益権を買う |
まず、割賦販売の場面です。
- ひかり不動産は、自社の一戸建てを売りに出した。
- そうたさんは、引渡しまでに頭金を払い、残りを引渡しから5年間、毎月払う約束にしたい。
- 引渡しのあとも1年以上にわたり、2回以上に分けて代金を受け取るので、割賦販売にあたる。
- まなみさんは、契約の前に、ふつうの重要事項に加えて3つを書面で説明する。①一括で払う場合の値段(現金販売価格)。②分割で払う場合の値段(割賦販売価格)。③引渡しまでに払う額と、毎回払う額(賦払金:ふばらいきん)、その時期と払い方。
2つの値段が並ぶと、そうたさんは、分割にするといくら多く払うことになるかが分かります。たとえるなら、家電の「一括なら○円、分割なら合計○円」の表示です。ただし本物のルールでは、宅建士が契約の前に、書面を渡して説明する点が違います。
次に、信託の場面です。
- ひかり不動産は、持っている賃貸マンションを信託銀行に信託した。ひかり不動産が委託者(任せる人)、信託銀行が受託者(預かって管理する人)。
- 家賃などの利益を受け取る権利(受益権)は、ひかり不動産が持っている。
- ひかり不動産は、この受益権をけいこさんに売る。
- けいこさんが手に入れるのは、マンションそのものではなく受益権。それでも中身は不動産なので、まなみさんは、マンションの登記された権利や法令上の制限などを、契約の前に書面で説明する。
条文ではこう決まっている
割賦販売の説明(35条2項)
- 割賦販売とは:代金の全部または一部を、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分けて受け取ることを条件に売ること(2項のかっこ書き)。
- だれに・いつ:割賦販売の相手方に、契約が成立するまでの間に、宅建士に説明させる。1項の事項も説明する。条文は「割賦販売の相手方」とだけ書いていて、業者が自ら売主の場合に限っていない。
- 加わる事項:①現金販売価格(引渡しまでに代金の全額を受け取る場合の価格)。②割賦販売価格(割賦販売の方法で売る場合の価格)。③引渡しまでに払う金銭の額、賦払金の額、その支払の時期と方法。
- 賦払金:割賦販売の契約にもとづく各回の代金の支払分で、引渡しの後のもの。
信託の受益権の説明(35条3項)
- だれが:宅建業者が、宅地・建物の信託(その業者が委託者のものに限る)の受益権の売主となるとき。
- だれに・いつ:売買の相手方に、契約が成立するまでの間に、宅建士に書面を交付して説明させる。
- 説明する事項(3項各号):①登記された権利の種類・内容と、登記名義人。②都市計画法・建築基準法などの法令上の制限(政令で定めるもの)。③私道に関する負担。④飲用水・電気・ガス・排水の施設の整備の状況。⑤工事が終わっていない物件の、完了時の形状・構造など。⑥区分所有建物なら、敷地の権利や共用部分の規約など。⑦そのほか国土交通省令で定める事項。
- 説明がいらない場合(3項ただし書、施行規則16条の4の4):①相手方が金融商品取引法の特定投資家(プロの投資家)のとき。②売買の前1年以内に、同じ内容の契約について、相手方に書面を交付して説明しているとき。③説明すべき事項がすべて書かれた目論見書(もくろみしょ:投資の説明書)を交付しているとき。
2項と3項に共通すること
- 宅建士は、説明のときに宅建士証を示す(4項)。書面には宅建士が記名する(5項)。
- 相手方の承諾があれば、書面の代わりに電磁的方法(電子データ)で提供できる(8項)。
- 相手方が宅建業者のときは、説明はいらず、宅建士が記名した書面の交付で足りる(6項・7項)。ただし、6項が読み替えの対象にしているのは1項と2項で、3項は挙がっていない。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(割賦販売):頭金を払い、残りを引渡しから3年間、36回で払う。1年以上・2回以上の両方を満たすので、2項の3つの説明がいる。
- 当てはまらない(1年に届かない):残りを、引渡しから10か月の間に10回で払う。2回以上ではあるが、引渡し後1年以上ではないので割賦販売にあたらず、2項の3つはいらない(1項の説明はいる)。
- ひっかけやすい(銀行のローン):そうたさんが銀行からお金を借り、代金を一括で払う。業者が代金を分けて受け取るのではないので、割賦販売ではない。業者がそのローンをあっせんするなら、説明するのは1項12号の「あっせんの内容と、ローンが成立しないときの措置」。
- ひっかけやすい(受益権の説明の省略):ひかり不動産は、10か月前に、同じ内容の受益権の契約について、けいこさんに書面を渡して説明していた。1年以内なので、今回は改めて説明しなくてよい(施行規則16条の4の4第1項2号)。ふつうの売買の説明(1項)には、このような省略の定めはない。
- 当てはまらない(委託者が別の会社):ほかの会社が信託した不動産の受益権の話は、3項の対象ではない。3項は、業者自身が委託者となった信託に限っている。
似ているルールとの違い
1項・2項・3項を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 1項(ふつう) | 2項(割賦) | 3項(受益権) |
|---|---|---|---|
| 説明の相手 | 買う人・借りる人など | 割賦販売の相手方 | 受益権の売買の相手方 |
| 説明する事項 | 1項各号 | 1項各号+3つ | 3項各号 |
| 相手が業者 | 書面の交付だけ | 書面の交付だけ | 6項の読み替えなし |
| 説明がいらない場合 | 定めなし | 定めなし | 施行規則の3つ |
割賦販売には、説明のほかに、8種制限の2つのルールがあります。こちらは、業者が自ら売主で、買主が業者でないときのルールです(78条2項)。説明(35条2項)は、契約の「前」の話。42条・43条は、契約の「後」に支払いが遅れたときや、登記をいつするかの話です。
| ルール | 条文 | 中身 |
|---|---|---|
| 割賦販売の説明 | 35条2項 | 契約の前に、値段2つと支払い方を説明 |
| 解除などの制限 | 42条 | 30日以上の期間を定めて書面で催告してから |
| 所有権留保の禁止 | 43条 | 代金の3割を超えて受け取るまでに登記などをする |
43条の正確な言い方は、「引渡しまでに登記などをする。引渡しまでに代金の3割を超える額を受け取っていなければ、3割を超えて受け取るまでにする」です。数字の入れかえ(30日と3割)は、8種制限の記事の表で確かめてください。
試験ではここをまちがえやすい
- 割賦販売の定義を半分だけにする型:「引渡し後1年以上」と「2回以上」の両方がそろって割賦販売です。10か月で払い終える分割は、回数が多くても割賦販売ではありません。
- ローンと割賦販売の取り違え:銀行のローンで一括払いする話に「現金販売価格・割賦販売価格」を当てる選択肢に注意します。ローンは1項12号のあっせんの説明です。
- 受益権の省略を1項に広げる型:「1年以内に同じ内容で説明していれば省略できる」のは、3項の受益権の話だけです。ふつうの売買にはありません。
- 説明の時期:2項も3項も「契約が成立するまでの間」です。契約のあとに渡す37条書面と入れかえた選択肢に注意します。
- 契約後のルールとの混同:30日以上の書面の催告(42条)と3割(43条)は、説明事項ではなく8種制限です。
宅建試験では、重要事項説明の問題の1つの肢として、割賦販売の説明事項や、受益権で説明がいらない場合を確かめておく範囲です。上の集計のとおり、割賦販売や受益権だけで1問になるより、ほかの論点の問題に混ざって出る論点です。重要事項説明の全体(とくに区分所有建物で加わる事項)は、マンションの重要事項説明の記事とあわせて押さえると、35条の問題で迷う肢が減ります。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でないBに建物を売る。代金の一部を、引渡しから2年間に24回に分けて受け取る約束である。Aは、35条1項の事項に加え、現金販売価格と割賦販売価格をBに説明させなければならない。
答え:○ 分かれ目は、割賦販売にあたるかどうかです。引渡し後1年以上にわたり2回以上に分けて受け取るので、35条2項の割賦販売にあたり、1項の事項に加えて現金販売価格・割賦販売価格・支払の時期と方法などを説明させます。「代金の一部だけを分けるなら割賦ではない」と考えると✕にしてしまいますが、定義は「代金の全部又は一部」です。銀行のローンで一括して払う場合は割賦販売ではなく、1項12号のあっせんの説明の問題です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが売主となる建物の売買で、買主Bは銀行のローンで代金を一括して払う。Aがこのローンをあっせんするときは、割賦販売にあたるので、Aは、現金販売価格と割賦販売価格をBに説明させなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、だれが代金を分けて受け取るかです。代金はAに一括で入り、Bは銀行に返していくので、Aが代金を分割で受け取る割賦販売(35条2項)にはあたりません。正しくは、あっせんするローンの内容と、ローンが成立しないときの措置を、1項12号の事項として説明させます。2項の3つの説明と、1項12号のローンの説明を取り違えた文です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが自ら委託者となって建物を信託し、その受益権をCに売る。Aは10か月前、同じ内容の契約についてCに書面を交付して説明していたが、今回も改めて宅建士に説明させなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、3項の説明がいらない場合にあたるかです。売買の前1年以内に、同じ内容の契約について相手方に書面を交付して説明しているときは、説明はいりません(35条3項ただし書、施行規則16条の4の4第1項2号)。正しくは、今回の説明は省略できます。ふつうの売買の重要事項説明(1項)には「1年以内なら省略」という定めがなく、その感覚で「毎回説明する」と考えた誤りです。
まとめ
- 割賦販売は「引渡し後1年以上」かつ「2回以上」に分けて代金を受け取る売り方。説明は1項の事項+現金販売価格・割賦販売価格・支払い方。
- 銀行のローンでの一括払いは割賦販売ではない。業者があっせんするなら1項12号の説明。
- 業者が自ら委託者の信託の受益権を売るときは、3項の事項(登記・法令の制限・私道・設備・未完成の形状・区分所有など)を契約の前に書面で説明。
- 受益権は、特定投資家・1年以内に同じ内容で説明済み・目論見書のときは説明がいらない。
- 解除の30日以上の書面の催告(42条)と、3割の所有権留保(43条)は、説明ではなく8種制限。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。重要事項説明の肢と8種制限の肢をまぜて解くと、契約の前の話か後の話かを見分ける練習になります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(35条1項12号・2項〜8項、42条、43条、78条2項)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(16条の4の4、16条の4の5)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
- 不動産適正取引推進機構(宅建試験の問題と正解の公開。出題数は当サイトが数えたもの)
働く人の法律試験ノート