宅建業者がしてはいけないことをわかりやすく:守秘義務・断定的判断・しつこい勧誘

宅建業者(たっけんぎょうしゃ=不動産の売買や仲介を仕事にする会社や個人)は、お客さんより不動産にくわしい立場です。そのため宅建業法は、お客さんを不利にする行為をいくつも禁じています。中心は、仕事で知った秘密をもらさないこと(45条)、大事なことをわざと隠したりうそを言ったりしないこと(47条1号)、「もうかる」と言い切ったり、おどしたり、しつこく勧誘したりしないこと(47条の2)です。

この記事では、業者と従業者(じゅうぎょうしゃ=社員など、業者のもとで働く人)が「してはいけないこと」と、その罰則を扱います。広告のルールは宅建業の広告のルールをわかりやすく、報酬の上限は報酬の上限をわかりやすくで説明しています。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文(2026年4月1日施行の改正を反映したもの)で確かめています。

身近な例で考えると

名古屋市でマンションを探している、はるかさんの話です。登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
はるかさんマンションを買おうか考えている会社員ひかり不動産に相談した
ひかり不動産宅建業者(売主)新しいマンションを売っている
たくみさんひかり不動産の営業担当(従業者)はるかさんに勧誘をした
けんじさん以前ひかり不動産に家を売った人家を売った事情を担当者に話していた
  1. たくみさんは、はるかさんに「近くに新しい駅ができるので、このマンションは値上がりまちがいなしです」と言い切った。
  2. となりの空き地に高い建物が建つ計画を、たくみさんは知っていた。日当たりが悪くなる話なのに、はるかさんには言わなかった。
  3. はるかさんが「手付金が用意できない」と言うと、たくみさんは「手付金は会社が貸すので、今日契約しましょう」と誘った。
  4. はるかさんは「買いません。もう連絡しないでください」と伝えた。それでも、たくみさんは夜11時に電話をかけ、勧誘を続けた。
  5. 雑談の中で、たくみさんは「前にけんじさんという人が、借金を返すために急いで家を売ったんですよ」と話した。

1〜5のどれも、宅建業法で禁じられている行為にあたります。1は断定的判断の提供、2は重要な事項を故意に告げないこと、3は手付の信用の供与(しんようのきょうよ=お金を貸すなどして支払いを待ってあげること)、4は再勧誘と迷惑な時間の電話、5は秘密をもらすことです。

たとえると、これらは「お店の人がしてはいけない売り方」の決まりです。ただし本物のルールでは、契約が結ばれなくても、その行為をしただけで違反になります。また、勧誘のルールは業者だけでなく、たくみさんのような従業者にも直接向けられています。

条文ではこう決まっている

すべての土台:信義誠実(31条1項)

宅建業者は「取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない」とされています(31条1項)。下の禁止事項は、この考え方を具体的な形にしたものです。

秘密を守る義務(45条・75条の3)

  • 宅建業者は、正当な理由がなければ、仕事で知った秘密をほかにもらしてはいけない(45条)。
  • 宅建業をやめたあとも、同じく秘密を守る(45条後段)。
  • 業者の使用人などの従業者も、仕事を手伝って知った秘密をもらしてはいけない。従業者でなくなったあと(退職後)も同じ(75条の3)。

業務に関する禁止事項(47条)

47条は、宅建業者が「宅地建物取引業者の相手方等」(取引の相手や、代理・媒介を頼んだ人など)に対してしてはいけない行為を3つ並べています。

  1. 大事なことを隠す・うそを言う(1号):契約の勧誘をするとき、または契約の申込みの撤回・解除や、取引で生じた債権(さいけん=お金などを請求する権利)の行使をじゃまするために、次の事項について「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」をしてはいけない。対象の事項は、イ:重要事項説明で説明する事項(35条1項・2項の各号)、ロ:供託所などの説明事項(35条の2)、ハ:37条書面に書く事項、ニ:それ以外で、物件の所在・規模・形質、利用の制限、環境、交通などの利便、代金や支払方法、業者や関係者の資力・信用などのうち、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの。
  2. 不当に高い報酬を求める(2号):「不当に高額の報酬を要求する行為」をしてはいけない。
  3. 手付で釣る(3号):「手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」をしてはいけない。

勧誘のしかたの禁止(47条の2、施行規則16条の11)

47条の2の主語は「宅地建物取引業者等」です。業者だけでなく、その代理人・使用人その他の従業者もふくみます。

  • 断定的判断(1項):勧誘するとき、「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断」を示してはいけない。
  • 威迫(いはく=おどして怖がらせること。2項):契約させるため、または申込みの撤回・解除をじゃまするために、相手方等をおどしてはいけない。
  • 省令で決めた行為(3項):相手方等の利益を守れなくなる行為として、施行規則16条の11が次のものを挙げている。
場面してはいけないこと
勧誘のとき(1号イ)物件の将来の環境や交通などの利便について、誤解させる断定的判断を示す
勧誘のとき(1号ロ)正当な理由なく、契約するか考える時間を与えない
勧誘のとき(1号ハ)先に業者の名前・担当者の名前・勧誘の目的を言わずに勧誘する
勧誘のとき(1号ニ)「契約しない」「もう勧誘しないで」と言われたのに続ける
勧誘のとき(1号ホ)迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をする
勧誘のとき(1号ヘ)深夜や長時間の勧誘など、生活や仕事の平穏を害する方法で困らせる
申込みの撤回(2号)すでに受け取った預り金を返すのを拒む
手付放棄の解除(3号)正当な理由なく、手付を放棄しての解除を拒む・じゃまする

関連:登記・引渡し・支払いを不当に遅らせない(44条)

宅建業者は、業務としてするべき登記や引渡し、取引の代金の支払いを、不当に遅らせてはいけません(44条)。

罰則(79条の2〜84条)

違反刑罰法人への罰金
47条1号(隠す・うそ)2年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、または両方(79条の2)1億円以下(84条1号)
47条2号(高い報酬の要求)1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、または両方(80条)100万円以下(84条2号)
47条3号(手付の貸付けなど)・44条6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、または両方(81条)100万円以下(84条2号)
45条・75条の3(秘密)50万円以下の罰金。告訴がなければ起訴できない(83条1項3号・2項)法人を罰する規定から除かれている(84条2号)

「法人への罰金」は、従業者が法人の業務として違反したときに、行為をした人とは別に法人にも科される罰金です(84条。両罰規定〈りょうばつきてい〉)。47条・47条の2の違反は、刑罰とは別に、指示や業務停止の処分の理由にもなります(65条)。処分の流れは監督処分と罰則をわかりやすくで説明しています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:たくみさんが、となりに高い建物が建つ計画を知りながら黙っていた。日当たりは「環境」に関する事項で、はるかさんの判断に重要な影響を及ぼすものです。故意に告げていないので、47条1号ニにあたります。
  2. 当てはまる例:はるかさんが契約しなかったときでも、1の行為は違反です。47条は「行為をしてはならない」と決めていて、契約が結ばれたことは要件に入っていません。
  3. 当てはまらない例:たくみさんが、日当たりについて調べて「この部屋は南向きです」と事実を説明した。事実を正しく伝えているので、47条1号の問題にはなりません。
  4. 当てはまらない例:けんじさん本人が「私の事情を、次の買主に話してかまいません」と同意していた。45条は「正当な理由がある場合」を除いています。本人の同意がある場合は、正当な理由があると考えられます。
  5. ひっかけやすい例:たくみさんがひかり不動産を辞めたあと、けんじさんの事情を友人に話した。退職すれば自由になるわけではありません。従業者でなくなったあとも秘密を守る義務が続きます(75条の3後段)。
  6. ひっかけやすい例:たくみさんが「手付金は分けて払ってもいいですよ。だから今日契約を」と誘った。条文は「貸付けその他信用の供与」と広く書いています。お金を貸すことに限らず、支払いを待ってあげることで契約を誘う形も、47条3号の問題になりえます。
  7. ひっかけやすい例:たくみさんが「ここは新駅ができるので、通勤がまちがいなく便利になります」と言い切った。もうけの話ではなく交通の利便の話なので、47条の2第1項ではなく、施行規則16条の11第1号イの断定的判断にあたります。どちらも禁止です。

似ているルールとの違い

「隠す・うそ」の47条1号と、重要事項説明の35条は、どちらも「伝えるべきことを伝える」ルールなので混ざりやすいところです。

項目35条(重要事項説明)47条1号(不告知・不実告知)
何をするルールか決まった事項を書面で説明する大事なことを故意に隠す・うそを言うのを禁止
いつ契約が成立するまで勧誘のとき、撤回・解除や債権の行使をじゃまするとき
だれが説明するか宅建士(説明者の定めはない。業者の行為として禁止)
故意が必要か条文に「故意」の要件はない必要(「故意に」)

重要事項説明の中身は重要事項説明(35条)をわかりやすくで整理しています。

秘密を守る義務も、業者と従業者で条文が分かれています。業者は45条、従業者は75条の3です。どちらも「やめたあとも続く」点は同じです。罰則も同じ83条1項3号で、告訴がなければ起訴できない点も共通です。

試験ではここをまちがえやすい

このテーマは宅建試験の宅建業法で、ほかの禁止事項と組み合わせて問われやすいところです。次の型に注意します。

  • 「契約しなかったからセーフ」:不告知・断定的判断・威迫などは、行為そのものが禁止です。契約が成立したかどうかは関係ありません。
  • 「辞めたら話してよい」:業者が廃業しても(45条後段)、従業者が退職しても(75条の3後段)、秘密を守る義務は続きます。
  • 「正当な理由」の見落とし:45条は、正当な理由があれば話してよいとしています。「どんな場合でももらしてはならない」と書いた選択肢に注意します。
  • 「故意」の有無:47条1号は「故意に」告げない・うそを言う行為です。うっかり伝え忘れた場合を47条1号違反と決めつける形に注意します。ただし重要事項説明の項目なら、35条の説明義務の問題は別に残ります。
  • 主語のすりかえ:47条の2は「業者等」で、従業者もふくみます。「業者が禁じられているだけで、従業者個人は対象外」とする形はまちがいです。
  • 手付の扱い:手付を貸すなど「信用の供与」で契約を誘うのが禁止です。8種制限の手付の上限(代金の2割)とは別のルールなので、混ぜないようにします。上限の話は8種制限をわかりやすくで扱っています。
  • 罰則の重さ:いちばん重いのは47条1号(2年以下の拘禁刑など、法人は1億円以下)。秘密の漏えいは50万円以下の罰金で、告訴が必要です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者の従業者は、勤めている間は仕事で知った秘密を守らなければならないが、退職したあとはこの義務を負わない。

答え:✕
75条の3は、従業者でなくなったあとも同じく秘密を守るとしています。正当な理由がなければ、退職後ももらしてはいけません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者の営業担当者が、買おうとしている人に「この土地は値上がりして利益が出るのはまちがいない」と言い切って勧誘したが、結局その人は契約しなかった。この場合、契約が成立していないので宅建業法の違反にはならない。

答え:✕
47条の2第1項は、利益が出ることが確実だと誤解させる断定的判断を示す「行為」を禁じています。契約の成立は要件ではありません。また、主語は業者の従業者もふくむ「宅地建物取引業者等」です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者が、手付金を用意できない買主に「手付金はこちらで貸します」と持ちかけて、売買契約を結ぶよう誘った。これは宅建業法で禁じられている行為にあたる。

答え:○
47条3号は、手付について貸付けその他の信用の供与をして契約の締結を誘う行為を禁じています。違反すると、6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方です(81条2号)。

まとめ

  • 秘密を守る義務:業者は45条、従業者は75条の3。やめたあとも続く。正当な理由があれば別。違反は50万円以下の罰金で、告訴が必要。
  • 47条:重要な事項を故意に隠す・うそを言う(1号)、不当に高い報酬の要求(2号)、手付の貸付けなどで誘う(3号)。いちばん重い1号は2年以下の拘禁刑など、法人は1億円以下の罰金。
  • 47条の2:断定的判断・威迫・省令の行為(再勧誘、迷惑な時間の電話、考える時間を与えない、預り金を返さない、手付放棄の解除を拒むなど)。主語は従業者もふくむ「業者等」。
  • どれも「行為」が禁止。契約が成立しなくても違反になる。

このサイトで次に読むなら、これらの違反があったとき業者や宅建士がどんな処分を受けるかを扱う監督処分と罰則をわかりやすくがおすすめです。禁止事項と処分は、セットで整理しておくと選択肢を見分けやすくなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)