間違いノートは作りすぎない:1か所1行で見返せる形の作り方

間違いノートは、作るより使うものです。問題文や解説を書き写すのはやめましょう。書くのは、間違えた肢(し=選択肢)と、当たったけれど根拠を言えなかった肢だけ。1か所につき1行で、「どこの問題か」「何を取り違えたか」「正しい根拠」「正解した日」の4つだけを書きます。見返すときは、根拠の欄を隠して、自分で言えるかを確かめます。

研究では、間違えたあとに正しい答えを確かめると、あとまでよく覚えていました。一方、正解した答えにあとから正解を見せても、差はほとんどありませんでした。ただし、選択式の問題で自信のないまま当たった答えは、正解を確かめると残りやすくなったという研究もあります。ですから、根拠まで言えた肢はノートに書かなくて足ります。また、一度言えただけで「もう大丈夫」と外すと、あとで思い出せなくなりやすいことも分かっています。この記事では、働きながらでも続く、1行の書き方と使い方を具体的に決めます。

間違いノートに時間をとられるのはなぜか

時間がかかる原因の多くは、書き写しです。問題文、5つの選択肢、解説、図。全部を写すと、1問で10分以上かかることもあります。平日30分の勉強なら、2〜3問でその日が終わってしまいます。

しかも、書き写すこと自体の効果は大きくありません。学生がよく使う勉強法を調べ直した Miyatsu ら(2018年)は、ノートの取り方について、講義の内容をそのまま写して、あとで見直さないやり方は、学習にほとんど役立たないとまとめています。役立つのは、自分の言葉で言いかえたり整理したりすること、そして見直すことです。これは講義ノートの研究ですが、間違いノートにも同じ考え方が使えると当サイトは考えます。

もう一つ、注意があります。過去問の問題文を写したノートを、ブログやSNSなどで公開しないでください。行政書士試験の問題は、ホームページなどへの掲載に行政書士試験研究センターの許諾が必要です。くわしくは過去問の記事に書いています。問題文を写さない1行ノートなら、この心配もありません。

間違いを記録する意味はあるのか:研究で分かっていること

間違えたあとに正しい答えを見ると残る(Pashler ら、2005年)

どんな実験か:インターネットで集めた258人が、アフリカの言語(ルガンダ語)の単語20個と英語の意味を覚えました。練習のテストのあとに、何も見せない、「正解・不正解」だけを伝える、正しい答えを見せる、などの条件を比べています。最後のテストは1週間後です。

分かったこと:間違えたあとに正しい答えを見せると、その場でも1週間後でも、よく覚えていました。正解したあとの答えの表示は、自信の有無にかかわらず、ほとんど差を生みませんでした(この実験は、選択肢から選ぶのではなく、答えを自分で書く形でした)。また、「不正解」と伝えるだけでは、助けになりませんでした。

試験勉強ではこう使う:ノートに「✕」とだけ書いても、正しい答えにはたどり着きません。何が正しいのかの根拠を、1行の中に入れます。逆に、根拠まで言えて正解した肢の解説まで書き残す必要はありません。

自信のないまま当たった答えは別(Butler ら、2008年)

どんな実験か:参加者が一般知識の選択問題に答え、1問ごとに自信の度合いを答えました。半分の問題では、答えたあとに正しい答えを見せ、あとで答えを思い出すテストをしました。

分かったこと:正しい答えを見せると、間違えた答えが直りやすくなっただけでなく、自信のないまま当たった答えも、覚えている割合がおよそ2倍になりました。

試験勉強ではこう使う:選択肢から選ぶ択一式では、根拠を言えないまま当たることがあります。こうした肢(「できたつもり」を防ぐ記事でいう△)は、正解でもノートに1行書き、正しい根拠を確かめます。根拠まで言えた肢(○)は書きません。

自信があった間違いほど直りやすい(Metcalfe、2017年)

間違いと学習の研究をまとめた Metcalfe(2017年)の総説(たくさんの研究を整理した論文)は、次のように述べています。間違えたあとに正しい答えを受け取る学び方は、学習に役立つ。自信をもって答えた間違いのほうが、自信のなかった間違いより直りやすい。間違えるまでの考え方の分析をふくめた、答えの確かめ方が大切だ。

試験勉強ではこう使う:「自信があったのに間違えた」問題には、★などの印をつけます。こうした問題は、思い込みがはっきりしています。正しい根拠と並べると、どこで取り違えたかが見えやすくなります。また、「なぜそう思ったか」を数文字でよいので書きます。「聴聞だと思った」「期間を逆に覚えていた」などです。

なお、どれも法律の択一式で調べた研究ではありません。Pashler らの実験は外国語の単語の暗記、Butler らの実験は一般知識の選択問題です。試験勉強への当てはめは、当サイトの考えです。

1行に書くのは4つだけ

書く形を、先に決めてしまいます。1か所1行で、次の4つの欄だけです。

場所取り違え正しい根拠正解した日
行政法 p.52 問3 肢4★弁明でよいと思った行政手続法13条1項で、聴聞になる処分か確かめる10/14○
宅建業法 p.88 問5 肢237条書面にも同じ記載が要ると思った35条と37条で記載事項が違う。比較表で確認(まだ)

書くときの決まりは次のとおりです。

  • 場所:問題集のページ・問題番号・肢の番号。これだけで元の問題に戻れるので、問題文は書きません。
  • 取り違え:自分が何だと思っていたかを、20字くらいで。自信があったら★。当たったが根拠を言えなかった肢なら、「勘」「消去法で残った」のように書きます。
  • 正しい根拠:条番号と、一言の理由。条文の文を写すのではなく、自分の言葉で書きます。
  • 正解した日:見返して正しく言えた日を書きます。最初は空けておきます。

1行を書く時間は、1分までを目安にします。答え合わせの直後、問題集を閉じる前に書きます。あとでまとめて書こうとすると、何を取り違えたかを忘れてしまいます。

ノートに書かない間違いもある

間違いには種類があります。模試の記事では、失点を「知らなかった」「知っていたが読み違えた」「時間が足りなかった」「マークのずれやもれ」の4つに分けました。1行ノートに書くのは、このうち知識の間違い(知らなかった、取り違えた)です。

「できない」を「できる」と読んだ、のような読み違えは、知識を足しても直りません。ノートの最後に「解き方のくせ」の欄を1つ作り、「否定の言葉に丸をつける」のように、直し方を1行で書きます。同じくせが出たら、その行に正の字を足すだけです。

どこに作るか:問題集・紙・スマホの分担

置き場所は、2か所だけにします。

  1. 問題集そのもの:解いた日と、肢ごとの○・△・✕の印を、問題番号の横に書きます。何回目にどう変わったかは、ここで分かります。
  2. 1行ノートの一覧:紙のノートでも、スマホのメモや表計算アプリでもかまいません。通勤や昼休みに見返すなら、スマホのほうが向いています。科目ごとに分けず、1つの一覧に「行政法」「民法」のような見出しを付けるだけにします。

色分けや図、きれいな清書はしません。見返すために必要なのは、4つの欄だけです。きれいにまとめる時間は、問題を解く時間に回します。

見返すときは「読む」のではなく「隠して思い出す」

ノートの使い方で一番大切なのは、読み返さないことです。この点は、Karpicke と Roediger(2008年)の実験がよく示しています。

どんな実験か:アメリカの大学生が、スワヒリ語と英語の単語40組を、覚える・テストする、をくり返して学びました。一度思い出せた組を、その後どう扱うかを変えています。テストから外す組と、テストを続ける組です。最後のテストは1週間後です。

分かったこと:練習の日の終わりには、どの条件でもほとんど全部を覚えていました。ところが1週間後、テストを続けた条件では約80%を思い出せたのに、テストから外した条件では33〜36%でした。思い出せたあとに見て覚え直すことを続けても、1週間後の成績はほとんど変わりませんでした。差を生んだのは、くり返しテストしたかどうかでした。しかも、学生が自分で予想した成績は、実際の成績と関係がありませんでした。

試験勉強ではこう使う:1行ノートは、右の2つの欄(正しい根拠・正解した日)を手や紙で隠して使います。「場所」と「取り違え」を見て、正しい根拠を声に出すか頭の中で言います。言えたら、正解した日を書き込みます。言えなければ、その場で根拠を読み、問題集の元の問題に戻って解き直します。

一覧から外す基準は、別の日に2回続けて言えたらにします。「できたつもり」を防ぐ記事の「日をあけて2回続けて○なら外す」、過去問の記事の「2回続けて◎なら外す」と同じ考え方です。1回言えただけで外すのは早すぎます。カードで覚える方法を調べた Miyatsu ら(2018年)も、一度正解したらすぐやめてしまうことを、よくある落とし穴に挙げています。見返す間隔は、2〜3日後、約1週間後、3〜4週間後のように、少しずつ広げます。間隔の決め方は間をあけて繰り返す復習の記事にまとめています。

働く人の1週間に入れると、たとえば次のようになります。

時間ノートでやること
平日の勉強30分問題を25分解き、最後の5分で✕と△の1行を書く
通勤・昼休みの10分2〜3日以上前に書いた行から5行(★を先に)、右を隠して根拠を言う
休日に30分一覧の残りの行を、問題集の元の問題で解き直す

ノートが増えすぎたときは、どう減らすか

一覧が長くなりすぎて、見返しきれなくなることがあります。当サイトでは、次の3つで量を調整することをすすめます。

  • 1周目は書かない:初めて解く問題集の1周目は、知らないことだらけで、✕と△が多くて当然です。問題集に印をつけるだけにして、テキストに戻ります。1行ノートは、2周目以降の✕と△から書き始めます。
  • 同じ取り違えが3行たまったら、1枚の比較表にする:たとえば35条書面と37条書面で何度も間違えるなら、行を増やさず、違いだけを並べた表を1枚作ります。その組の問題を混ぜて解く練習も足します。やり方は混ぜて解く記事に書いています。
  • 外した行は消さずに下へ移す:2回続けて言えた行は、一覧のいちばん下の「卒業」欄に移します。試験の直前に一度だけ見返します。

試験が近づくと、この一覧の残りの行が、そのまま復習の中心になります。新しい教材を増やすより、自分が取り違えたところを一つずつつぶすほうが、限られた時間に合っています。

今日からやること

  • 今あるノートの書き写しをやめ、スマホのメモか紙に「場所・取り違え・正しい根拠・正解した日」の4つの欄を作る。
  • 次に問題を解いたら、答え合わせの直後に、✕の肢と、当たったが根拠を言えなかった△の肢だけを1行1分で書く。自信があった間違いには★をつける。
  • 2〜3日後の通勤か昼休みに、右の欄を隠して、★の行から根拠を言ってみる。
  • 読み違えのくせは、別の欄に1行だけ書き、同じくせが出たら正の字を足す。

次に読むなら、読むより「思い出す」ほうが覚える記事がおすすめです。1行ノートを隠して使う理由になっている「思い出す練習」を、テキストと問題集全体の使い方に広げています。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

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