ひとことで言うと、社外取締役は、その会社やグループ会社の仕事を自分で動かす立場(業務執行)から離れていて、経営者の親族でもない取締役です。要件は会社法2条15号のイ〜ホに並んでいて、全部を満たす人だけが社外取締役になります。
監査役会設置会社のうち、公開会社で大会社であり、有価証券報告書を出さなければならない会社は、社外取締役を置かなければなりません(327条の2)。この義務は令和元年の会社法改正(令和元年法律第70号)で設けられ、令和3年3月1日から施行されています。あわせて、取締役の責任を前もって限る責任限定契約(427条)は、社外かどうかではなく「業務執行をしない取締役など」と結べる、という点も整理します。指名委員会等・監査等委員会の仕組みの全体は委員会型の会社の記事、取締役の責任の全体は取締役の義務と責任の記事に任せます。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。
身近な例で考えると
舞台は、公開会社で大会社、監査役会を置き、有価証券報告書を出している「しらさぎ精機株式会社」です(架空の話です)。しらさぎ精機は「しらさぎホールディングス株式会社」の子会社で、同じグループに「しらさぎ物流株式会社」(兄弟会社)があります。
| 人物 | 立場 | 社外取締役になれるか |
|---|---|---|
| りょうさん | 12年前までしらさぎ精機の社員 | なれる |
| まいさん | しらさぎ物流の監査役 | なれる |
| あやさん | しらさぎホールディングスの取締役(業務執行はしない) | なれない |
| けいごさん | しらさぎ精機の社長の弟 | なれない |
- しらさぎ精機は327条の2の会社に当たるので、社外取締役を置かなければならない。
- りょうさんは社員だったが、それは就任の前10年間より前のことなので、2条15号イの要件を満たす。
- まいさんは兄弟会社の監査役。兄弟会社については「業務執行取締役等」でないことだけが要件(ニ)なので、監査役なら妨げにならない。
- あやさんは親会社の取締役。親会社については、業務執行をするかどうかを問わず、取締役であれば外れる(ハ)。
- けいごさんは代表取締役の弟で、二親等の親族に当たるので外れる(ホ)。
たとえるなら、社外取締役は「部活の外から来た審判」です。部員(業務執行をする人)だった人や、部長の家族は審判に向きません。ただし本物のルールでは、どこまでの関係で外れるかが号ごとに細かく決まっていて、「グループの会社に関わっていれば全部だめ」ではありません。
条文ではこう決まっている
社外取締役の要件(2条15号イ〜ホ)
「業務執行取締役等」は、業務執行取締役(代表取締役など363条1項の取締役と、実際に会社の業務を執行した取締役)・執行役・支配人その他の使用人をまとめた言葉です(2条15号イ)。イ〜ホは全部満たす必要があります。
| 号 | 外れる人 | ポイント |
|---|---|---|
| イ | その会社・子会社の業務執行取締役等。就任の前10年間にそうだった人も | 今と過去10年 |
| ロ | 就任前10年内に、その会社・子会社の取締役・会計参与・監査役だった人で、その役に就く前10年間に業務執行取締役等だった人 | 途中の役をはさんでもさかのぼる |
| ハ | 親会社等(自然人)本人、親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人 | 親会社は業務執行かを問わない |
| ニ | 兄弟会社(親会社等の子会社等)の業務執行取締役等 | 兄弟会社は業務執行だけ |
| ホ | その会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人、親会社等(自然人)の配偶者・二親等内の親族 | 近親者 |
社外監査役(2条16号)は、イの範囲が広く、就任前10年間にその会社・子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人だったことがないことが要件です。社外取締役のイが「業務執行取締役等」に限っているのに対し、社外監査役は業務執行をしない取締役だった人も外れます。
置かなければならない会社(327条の2・331条6項・400条3項)
- 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)で、金融商品取引法24条1項により株式について有価証券報告書を提出しなければならない会社は、社外取締役を置かなければならない(327条の2)。4つの条件が全部そろったときだけです。
- 令和3年2月までの327条の2は、社外取締役を置いていない場合に、取締役が定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明する仕組みでした。令和元年の改正で、置くこと自体の義務になりました。
- 監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数は社外取締役(331条6項)。指名委員会等設置会社では、各委員会の委員の過半数が社外取締役(400条3項)。これらの会社は、機関の形から社外取締役が要ります。
社外取締役の役割にかかわる条文(348条の2・373条)
- 業務執行の委託(348条の2):会社と取締役の利益が相反する状況にあるときなど、取締役が業務を執行すると株主の利益を損なうおそれがあるときは、会社は、その都度、取締役会の決議(取締役会のない会社は取締役の決定)で、業務の執行を社外取締役に委託できる(1項)。委託された業務の執行は、2条15号イの「業務を執行した」に当たらないので、社外取締役のままでいられる。ただし、業務執行取締役の指揮命令を受けて執行したときは別(3項)。
- 特別取締役(373条):取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)で、取締役が6人以上、そのうち1人以上が社外取締役であるときは、重要な財産の処分・譲受けや多額の借財について、あらかじめ選んだ3人以上の特別取締役で決議できると定められる(1項)。
責任限定契約(427条)と責任の一部免除(425条・426条)
- 会社は、取締役(業務執行取締役等を除く)・会計参与・監査役・会計監査人(まとめて「非業務執行取締役等」)と、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする契約を結べる旨を、定款で定められる(427条1項)。
- 契約の相手方が、その会社の業務執行取締役等になったときは、契約は将来に向かって効力を失う(同条2項)。
- 最低責任限度額は、1年あたりの報酬などの額に、代表取締役・代表執行役は6、ほかの業務執行取締役等は4、それ以外の取締役・会計参与・監査役・会計監査人は2を掛けて計算する(425条1項)。
- あとから責任の一部を免除する方法として、株主総会の特別決議(425条・309条2項8号)と、定款にもとづく取締役会の決議など(426条。総株主の議決権の3%以上の株主が異議を述べたときは免除できない)がある。
責任を限る3つの方法を比べる
| 方法 | いつ・何で決めるか | 相手 |
|---|---|---|
| 総会の決議(425条) | 責任が生じたあと、株主総会の特別決議 | 役員等すべて |
| 取締役会の決議など(426条) | 定款の定めにもとづき、あとから。3%の異議で不可 | 役員等すべて(会社は監査役設置会社などに限る) |
| 責任限定契約(427条) | 定款の定めにもとづき、前もって契約 | 非業務執行取締役等だけ |
どの方法でも、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないことが前提で、全額の免除にはなりません。全額を免除するには総株主の同意が要ります(424条)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:りょうさんは12年前までしらさぎ精機の社員でした。就任の前10年間には業務執行取締役等ではないので、イを満たします。ほかの号にも当たらなければ社外取締役になれます。
- 当てはまらない例:あやさんは親会社の取締役で、業務執行はしていません。ハは親会社等の「取締役」を業務執行に限らずに外しているので、社外取締役になれません。
- 当てはまらない例:公開会社でない大会社が監査役会を置いていても、327条の2の義務はかかりません。4つの条件の一つ(公開会社であること)を欠くからです。
- ひっかけやすい例:まいさんは兄弟会社の監査役です。ニが外すのは兄弟会社の業務執行取締役等だけなので、社外取締役になれます。親会社(ハ)と同じ範囲だと考えると誤ります。
- ひっかけやすい例:業務執行をしない取締役で、社外取締役の要件は満たさない人(たとえば社長の弟けいごさん)とも、定款に定めがあれば責任限定契約を結べます。427条の線引きは「社外か」ではなく「業務執行取締役等か」です。
試験ではここをまちがえやすい
- 親会社と兄弟会社の範囲:親会社等は取締役・執行役・使用人なら外れる(ハ)。兄弟会社は業務執行取締役等だけが外れる(ニ)。
- 10年の数え方:イは「就任の前10年間」に業務執行取締役等でなかったこと。10年より前の経歴は問わない。
- 近親者の範囲:配偶者と二親等内の親族(ホ)。三親等のおじ・おば、四親等のいとこは当たらない。
- 置く義務の条件:監査役会設置会社・公開会社・大会社・有価証券報告書の提出義務の4つ。大会社の判定は公開会社と大会社の記事にあります。
- 委託と社外性:348条の2の委託で業務を執行しても社外取締役のまま。ただし業務執行取締役の指揮命令を受けたときは別。
- 責任限定契約の相手:非業務執行取締役等(業務執行をしない取締役・会計参与・監査役・会計監査人)。社外取締役に限らない。業務執行取締役等になると将来に向かって効力を失う。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
A社はP社の子会社である。Cは、P社の取締役だが、P社の業務は執行していない。CはA社の役員の親族ではなく、A社とその子会社で働いたこともない。この場合、Cは、A社の社外取締役の要件を満たす。
答え:✕ 分かれ目は、親会社でどの立場の人が外れるかです。会社法2条15号ハは、親会社等の「取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人」でないことを求めていて、業務を執行するかどうかで区別していません。正しくは、業務を執行しない取締役でも、親会社の取締役であるCは要件を満たしません。業務執行取締役等だけが外れるのは兄弟会社の場合(同号ニ)で、それと取り違えた形です。兄弟会社の監査役なら、社外取締役になれます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
D社の定款には、427条1項の責任限定契約についての定めがある。D社の取締役Eは、業務を執行していない。Eは代表取締役の弟で、社外取締役には当たらない。この場合、D社は、Eとの間で責任限定契約を結ぶことができない。
答え:✕ 分かれ目は、責任限定契約を結べる相手の範囲です。427条1項の相手は、取締役(業務執行取締役等を除く)・会計参与・監査役・会計監査人で、社外取締役かどうかは要件ではありません。正しくは、業務を執行しないEとは、定款の定めにもとづいて契約を結べます。社外取締役の要件(2条15号ホの近親者)と、責任限定契約の相手(業務執行をするかどうか)を同じ物差しで考えた形です。Eが業務執行取締役等になれば、契約は将来に向かって効力を失います(427条2項)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
F社は、大会社で監査役会を置き、金融商品取引法24条1項により有価証券報告書を提出しなければならない。ただし、F社の株式は全部が譲渡制限株式である。F社が社外取締役を置いていなくても、会社法327条の2には違反しない。
答え:○ 分かれ目は、327条の2の対象の条件です。この条は、監査役会設置会社のうち「公開会社であり、かつ、大会社であるもの」で、有価証券報告書の提出義務がある会社に社外取締役を置くよう求めています。株式の全部が譲渡制限株式のF社は公開会社ではないので、この義務はかかりません。大会社と有価証券報告書の2つで義務が決まると考えると✕にしてしまいます。公開会社かどうかの定義は2条5号です。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。
まとめ
- 社外取締役の要件は2条15号イ〜ホを全部満たすこと。自社・子会社の業務執行取締役等でなく、就任前10年間もそうでない。
- 親会社等の取締役・使用人は外れる。兄弟会社は業務執行取締役等だけが外れる。近親者は配偶者・二親等内の親族。
- 置く義務(327条の2)は、監査役会設置会社・公開会社・大会社・有価証券報告書の提出義務の4つがそろう会社。令和3年3月1日から義務。
- 348条の2の委託で業務を執行しても社外性を失わない(指揮命令を受けたときは別)。特別取締役には社外取締役1人以上が条件(373条)。
- 責任限定契約(427条)の相手は非業務執行取締役等。社外取締役に限らない。
このサイトで次に読むなら、取締役の選任と累積投票の記事です。社外取締役を含む取締役が、どんな決議で選ばれ、解任されるかが分かります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(2条15号・16号、327条の2、331条6項、348条の2、373条、400条、424条〜427条。令和8年4月1日時点。327条の2は令和3年2月時点の版とも比べた)
- 法務省「会社法の一部を改正する法律について」(令和元年法律第70号。社外取締役を置くことの義務付け。令和3年3月1日施行)
働く人の法律試験ノート