ひとことで言うと、種類株式(しゅるいかぶしき)は、配当・議決権・譲渡のしかたなどの中身が違う株式を、1つの会社が2種類以上発行するときの、それぞれの株式です。会社法108条1項が、違いを設けてよい事項を9つに限って並べています。種類株式を発行する会社を「種類株式発行会社」と呼びます(2条13号)。
この記事では、9つの種類の中身、全部の株式に同じ内容を付ける107条との違い、種類株主総会(その種類の株主だけの総会)が要る場面を扱います。株主の権利や株式の譲渡のしくみそのものは、株式と株主の権利の記事で説明しています。
身近な例で考えると
舞台は、全部の株式に譲渡制限がある(公開会社ではない)「あおば製菓株式会社」です。取締役会を置いています。
| 人物 | 立場 | 望んでいること |
|---|---|---|
| たいちさん | 創業者で社長。株の大部分を持つ | 経営の決定権は手放したくない |
| ふみかさん | 新しく出資する人 | 経営には口を出さないが、配当は先にほしい。合併だけは止められるようにしたい |
- あおば製菓は定款を変えて、「配当を先に受け取れるが、株主総会の議決権はない株式」を新しい種類として定めた(108条1項1号と3号の組み合わせ)。
- さらに「合併には、この種類の株主の総会の決議も要る」という定めを加えた(8号)。
- この株式をふみかさんに発行した。たいちさんの持つ株式(ふつうの株式)と合わせて、2種類の株式がある会社になった。
こうすると、ふだんの決定はたいちさんが株主総会で行い、ふみかさんは配当を先に受け取れます。合併のときだけは、ふみかさんたちの種類株主総会の決議がなければ効力を生じません(323条)。
たとえるなら、同じ会社の株に「指定席の券」と「自由席の券」があるようなものです。ただし本物のルールでは、券の種類は108条1項の9つの事項の範囲でしか作れず、その中身は定款に書かなければなりません(108条2項)。
条文ではこう決まっている
108条1項は、次の事項について「異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる」としています。
| 号 | 何が違う株か | 呼び名の例 |
|---|---|---|
| 1号 | 剰余金の配当 | 配当優先株式 |
| 2号 | 残余財産(会社をたたむときの残り)の分配 | 残余財産優先株式 |
| 3号 | 株主総会で議決権を使える事項 | 議決権制限株式 |
| 4号 | 譲渡による取得に会社の承認が要る | 譲渡制限種類株式 |
| 5号 | 株主が会社に取得を請求できる | 取得請求権付種類株式 |
| 6号 | 一定の事由が生じたら会社が取得できる | 取得条項付種類株式 |
| 7号 | 株主総会の決議でその種類の全部を会社が取得する | 全部取得条項付種類株式 |
| 8号 | 株主総会などの決議に加え、その種類株主総会の決議が要る | 拒否権付種類株式 |
| 9号 | その種類株主総会で取締役・監査役を選ぶ | 役員選任権付種類株式 |
- 108条1項ただし書:指名委員会等設置会社と公開会社は、9号の種類株式を発行できない。
- 108条2項:種類株式を発行するには、その事項と、発行可能種類株式総数(その種類を何株まで発行できるか)を定款で定める。
- 108条3項:配当の額など一部の事項は、定款には要綱(あらまし)だけを書き、最初に発行する時までに株主総会などの決議で決めることができる。
- 115条:公開会社で、議決権制限株式の数が発行済株式の総数の2分の1を超えたときは、会社は直ちに、2分の1以下にするための必要な措置をとらなければならない。
種類株主総会が要る場面
- 322条1項(損害を及ぼすおそれ):株式の種類の追加・内容の変更などの定款変更、株式の併合・分割、株式の募集、合併などで、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株主総会の決議がなければ効力を生じない。株式の併合・分割そのものの決め方は株式の併合・株式の分割・株式無償割当ての違いで比べています。
- 322条2項・3項:ある種類の株式について、この決議を要しない旨を定款で定められる。ただし、1号の定款変更(株式の種類の追加・内容の変更・発行可能株式総数の増加など。単元株式数についてのものを除く)では外せない。
- 322条4項:発行したあとで「決議を要しない」定めを設けるには、その種類の株主全員の同意が要る。
- 323条(拒否権付):8号の定めがある事項は、株主総会などの決議に加えて、その種類株主総会の決議がなければ効力を生じない。
- 111条:発行したあとで、ある種類に取得条項(6号)を付ける定款変更は、その種類の株主全員の同意が要る(1項)。譲渡制限(4号)や全部取得条項(7号)を付けるときは、その種類株主総会の決議が要る(2項)。
種類株主総会の決議は、原則として、その種類の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した議決権の過半数で行います(324条1項)。322条1項の決議や全部取得条項を付ける決議は3分の2以上の特別決議(324条2項)、譲渡制限を付ける決議は、議決権を使える株主の半数以上で、かつ議決権の3分の2以上という特殊決議(324条3項)です。決議の数字は会社法の数字の一覧で並べて見直せます。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(配当優先・議決権なし):あおば製菓がふみかさんに発行した株式です。1号と3号の事項について、ふつうの株式と違う定めをしています。
- 当てはまらない(全部の株式に譲渡制限):会社の全部の株式に同じ譲渡制限を付けるのは107条1項1号の定めです。株式は1種類のままなので、種類株式発行会社にはなりません。この会社は公開会社ではない、という扱いになります(2条5号)。
- 当てはまらない(全部の株式から議決権をなくす):107条1項が全部の株式に付けられるとするのは、譲渡制限・取得請求・取得条項の3つだけです。議決権の制限は108条の種類株式として、ほかの種類と分けて定めます。
- ひっかけやすい(役員を選ぶ株式):公開会社は9号の株式を発行できません。公開会社でなければ、指名委員会等設置会社である場合を除き、発行できます。
- ひっかけやすい(株主ごとの定め):公開会社でない会社は、配当・残余財産・議決権について、株主ごとに違う取扱いを定款で定められます(109条2項)。これは株式ではなく人に着目した定めですが、種類株式とみなして会社法の規定を使います(109条3項)。株主平等の原則(109条1項)との関係は株主平等原則の記事で扱っています。
似ているルールとの違い
| 比べる点 | 107条 | 108条 | 109条2項 |
|---|---|---|---|
| 何に付けるか | 全部の株式に同じ内容 | 種類ごとに違う内容 | 株主ごとに違う取扱い |
| 付けられる事項 | 譲渡制限・取得請求・取得条項の3つ | 9つ | 配当・残余財産・議決権 |
| 使える会社 | どの株式会社も | どの株式会社も(9号は公開会社などを除く) | 公開会社でない会社だけ |
新しく株式を発行するときの決め方(株主総会か取締役会か)は、種類株式でもふつうの株式でも、募集株式の発行の記事のルールが基本です。種類株式発行会社では、募集する株式が譲渡制限株式の種類なら、その種類株主総会の決議も要る場合があります(199条4項。定款で外せます)。
試験ではここをまちがえやすい
- 9号を発行できない会社:公開会社と指名委員会等設置会社。「取締役会設置会社は発行できない」「非公開会社は発行できない」とする形は主体の入れ替えです。
- 115条の範囲と効果:公開会社だけ。2分の1を「超えた」とき、直ちに措置をとる義務。発行が無効になるのではありません。
- 同意と決議の取り違え:発行後に取得条項を付けるのは、その種類の株主全員の同意(111条1項)。譲渡制限・全部取得条項は種類株主総会の決議(111条2項)。
- 322条の決議を定款で外せる範囲:株式の分割・併合や募集などは外せるが、株式の種類の追加などの定款変更は外せない(322条3項ただし書)。
- 107条と108条の取り違え:全部の株式に付けられるのは3つ。議決権・配当の違いは、2種類以上の株式を前提にした108条の話です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
取締役会を置く非公開会社であるあおば製菓株式会社は、指名委員会等設置会社ではない。この会社は、定款で定めれば、その種類の株主だけの種類株主総会で取締役を選ぶ種類株式を発行できる。
答え:○ 分かれ目は、9号の株式を発行できない会社の範囲です。108条1項ただし書が発行を禁じているのは「指名委員会等設置会社及び公開会社」だけで、取締役会を置いていても、非公開会社なら発行できます。役員を株主総会で選ぶのが原則なので、✕に見えやすい問題です。発行できないのは公開会社と指名委員会等設置会社で、取締役会の有無ではありません。
問2(このサイトのオリジナル問題)
非公開会社であるあおば製菓株式会社で、議決権のない種類株式の数が、発行済株式の総数の2分の1を超えた。この場合、会社は、直ちに2分の1以下にするための必要な措置をとることを要する。
答え:✕ 分かれ目は、115条がかかる会社です。115条は「種類株式発行会社が公開会社である場合」に、議決権制限株式が発行済株式の総数の2分の1を超えたら直ちに措置をとる義務を定めています。正しくは、非公開会社にはこの義務はありません。2分の1という数字と措置の義務は正しいので、主体だけを公開会社から非公開会社に入れ替えた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
Z社は、優先株式について、322条1項の種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めている。この場合、Z社が株式の分割をして優先株主に損害を及ぼすおそれがあっても、優先株主の種類株主総会の決議は要らない。
答え:○ 分かれ目は、定款で外せる322条の決議の範囲です。322条2項は、ある種類の株式について同条1項の決議を要しない旨を定款で定められるとし、3項は、その定めのある種類の種類株主総会には1項を適用しないとしています。損害のおそれがあるのに決議が要らないので、✕に見えやすい問題です。外せないのは、3項ただし書の1号の定款変更(株式の種類の追加・内容の変更など。単元株式数についてのものを除く)で、株式の分割はこれに当たりません。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。
まとめ
- 種類株式は108条1項の9つの事項で内容の違う2種類以上の株式。事項と発行可能種類株式総数は定款に書く。
- 9号(役員を選ぶ株式)は、公開会社と指名委員会等設置会社は発行できない。
- 107条は全部の株式に同じ内容(譲渡制限・取得請求・取得条項の3つ)。109条2項は非公開会社の株主ごとの定め。
- 公開会社で議決権制限株式が2分の1を超えたら、直ちに措置(115条)。
- 損害のおそれ(322条)・拒否権(323条)で種類株主総会。322条の決議は定款で外せるが、種類の追加などの定款変更は外せない。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。
- e-Gov法令検索「会社法」(2条5号・13号・14号、107条、108条、109条、111条、115条、199条4項、322条、323条、324条)
このサイトで次に読むなら、商法・会社法は捨てていいかの記事です。種類株式のような細かい論点に、会社法全体の中でどこまで時間をかけるかを、配点と合わせて決められます。
働く人の法律試験ノート