資金決済法とは:前払式支払手段(自家型・第三者型)、資金移動業、暗号資産と電子決済手段の定義

ひとことで言うと、資金決済法は、銀行以外の事業者が行う支払や送金のサービスについて、届出・登録などの決まりを置いた法律です。中心は、商品券やプリペイドカードなどの前払式支払手段(自家型は届出、第三者型は登録)、銀行等以外の者が行う送金の資金移動業(登録)、そして電子決済手段と暗号資産の定義と、その交換などの業の登録です。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の経済の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、制度の骨組みを知るために読んでください。

正式な題名は「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)で、「資金決済法」は略した呼び方です。暗号資産の銘柄・価格・税、事業者の名前、内閣府令やガイドラインの実務は扱いません。条文は令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめました。それより後に施行される改正は、最後の節に分けて書きます。

身近な例で考えると

大学生のこうきさんの財布とスマホの中身を、資金決済法の言葉で分けてみます。

  1. 行きつけの書店で、お金を払ってその書店でだけ使えるプリペイドカードを買った。発行した書店からの購入に限って使えるので「自家型前払式支払手段」(3条4項)。
  2. 誕生日に、たくさんの店で使える商品券をもらった。自家型でないので「第三者型前払式支払手段」(3条5項)。
  3. 銀行ではない会社の送金サービスで、友人に旅行の立替金を送った。銀行等以外の者が為替取引を業として営むので「資金移動業」(2条2項)。
  4. 暗号資産交換業者の口座で、暗号資産を少し買った。暗号資産の売買を業として行う「暗号資産交換業」(2条15項)。

たとえると、前払式支払手段は「先にお金を預けて、あとで代金にあてる引換券」です。ただし本物のルールでは、3条1項の要件(金額などが記録され、対価を得て発行され、代価の弁済に使えること)に当たるかで決まり、名前が「ポイント」か「カード」かでは決まりません。

条文ではこう決まっている

  • 1条(目的):資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、利用者等を保護するとともに、サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う為替取引、電子決済手段の交換等、暗号資産の交換等などについて、登録その他の必要な措置を講ずる。
  • 3条1項1号(前払式支払手段):証票や電子機器などに記載・記録される金額に応ずる対価を得て発行される証票等や番号・記号などで、発行者などから物品等を買うときなどに、代価の弁済のために提示・交付・通知などの方法で使えるもの。2号は、物品や役務の数量で表す形。
  • 3条4項・5項:発行する者(政令で定める密接関係者を含む)からの購入などに限り使えるのが自家型。自家型以外が第三者型。
  • 2条2項(資金移動業):「銀行等以外の者が為替取引を業として営むこと」。37条で、内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法の規定にかかわらず資金移動業を営むことができる。

金融庁は、前払式支払手段を「商品券、ギフト券、磁気式やIC式のプリペイドカード、サーバ型前払式支払手段等の総称」と説明しています。

前払式支払手段の決まりを、条と数字で表にすると

決まり中身条
適用除外発行の日から6か月以内に限り使えるもの、乗車券・入場券など政令で定めるもの、国・地方公共団体が発行するものなどには、前払式支払手段の章の規定は適用しない4条1号〜3号・施行令4条1項・2項
自家型の届出基準日未使用残高が、発行を始めてから最初に基準額を超えたとき、内閣総理大臣に届出書を出す5条1項
第三者型の登録内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ、発行の業務を行えない7条
発行保証金の供託基準日未使用残高が基準額(1,000万円)を超えるとき、その2分の1以上を最寄りの供託所に供託する14条1項・施行令6条
払戻し発行の業務の全部又は一部の廃止などのときは払い戻す。それ以外は原則として払い戻してはならない20条1項・5項

「基準日」は毎年3月31日と9月30日で、その時点で使われずに残っている額の合計が「基準日未使用残高」です(3条2項)。自作の数値例で供託の額を確かめます。

  1. ある基準日の未使用残高が3,000万円:基準額の1,000万円を超えるので、3,000万円×2分の1=1,500万円以上を供託する。
  2. 未使用残高が800万円:基準額を超えていないので、14条1項の供託の義務は生じない。

供託するのは「基準額を超えた部分の2分の1」ではなく、基準日未使用残高の2分の1以上です(14条1項)。発行者がいなくなったときに、残高を持つ人を守るための仕組みです。

資金移動業・電子決済手段・暗号資産は、どう分かれるか

言葉何か(定義の要点)業に要るもの条
資金移動業銀行等以外の者が為替取引を業として営むこと内閣総理大臣の登録2条2項・37条
電子決済手段通貨建資産で、不特定の者に使え、電子的に移転できるものなど電子決済手段等取引業は内閣総理大臣の登録2条5項・62条の3
暗号資産不特定の者に使え、不特定の者と売買でき、電子的に移転できる財産的価値(通貨・通貨建資産などを除く)暗号資産交換業は内閣総理大臣の登録2条14項・63条の2

暗号資産の定義(2条14項)は2つの号からなります。1号は、物品等を買うときなどに代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却ができる財産的価値で、電子機器などに電子的方法で記録され、電子情報処理組織を用いて移転できるもの。2号は、不特定の者を相手方として1号のものと相互に交換できる財産的価値で、電子的に移転できるものです。1号のかっこ書きで、本邦通貨・外国通貨・通貨建資産と電子決済手段(通貨建資産に当たるものを除く)が除かれます。さらに、金融商品取引法29条の2第1項8号に規定する権利を表示するものも、ただし書きで除かれます。

言葉の移り変わりも見ておきます。e-Gov の版で比べると、2020年4月30日時点の2条5項の言葉は「仮想通貨」で、2020年5月1日施行の改正(令和元年法律第28号)のあとの版から「暗号資産」です。2023年6月1日の版からは、2条5項に電子決済手段の定義が入り、暗号資産の定義は2条14項に移っています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:書店の自社のプリペイドカード。お金を払って買い、その書店からの購入に限り使えるので自家型(3条4項)。残高が基準額を超えるまでは届出も要らない(5条1項)。
  2. 当てはまる例:多くの店で使える商品券。第三者型で、発行の業務は内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ行えない(7条)。
  3. 当てはまらない例:発行の日から6か月以内に限り使える前払式支払手段。4条2号と施行令4条2項で、前払式支払手段の章の規定は適用されません。
  4. 当てはまらない例:国や地方公共団体が発行する前払式支払手段(4条3号)。
  5. ひっかけやすい例:円の金額で価値が表示されたデジタルの支払手段。電子的に移転できても、通貨建資産は2条14項1号のかっこ書きで暗号資産から除かれます。要件を満たせば、2条5項の電子決済手段の側で扱われます。

似ているルールとの違い

仕組みお金を払う時期主な法律
前払式支払手段先に払い、あとで代金にあてる資金決済法(第3章)
資金移動業(送金)送る人が払い、受け取る人に移す資金決済法(2条2項・37条)
クレジット(包括・個別信用購入あっせん)買ったあとで払う割賦販売法

あとから払うクレジットの決まり(支払可能見込額の調査、抗弁の接続)は、割賦販売法の記事で扱っています。前払いと後払いで、守る法律が別になっている、という見分け方です。お金そのもの(日本銀行券)を発行する日本銀行のしくみは、日本銀行の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 届出と登録:自家型は基準額を超えたときの届出(5条1項)、第三者型は発行の業務の前の登録で、法人に限る(7条)。
  • 供託の額:基準日未使用残高が1,000万円を超えたら、残高の2分の1以上(14条1項・施行令6条)。
  • 払戻し:業務の廃止などのときは払い戻す義務(20条1項)。それ以外は原則として払戻しの禁止(20条5項)。
  • 6か月:発行の日から6か月以内に限り使えるものは適用除外(4条2号・施行令4条2項)。
  • 暗号資産と電子決済手段:通貨建資産は暗号資産から除かれる。登録の名前は、暗号資産交換業(63条の2)と電子決済手段等取引業(62条の3)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
書店を営む会社が、自社の店でだけ使えるプリペイドカードを、お金を受け取って発行しようとしている。この会社は、自家型前払式支払手段の発行者として、発行を始める前に内閣総理大臣の登録を受けておく必要がある。

答え:✕ 分かれ目は、届出か登録かです。自家型の発行者は、基準日未使用残高が発行を始めてから最初に基準額を超えたときに、内閣総理大臣に届出書を出します(5条1項)。正しくは、発行の前の登録は要りません。登録が要るのは第三者型で、内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ発行の業務を行えません(7条)。自家型の届出と第三者型の登録を入れ替えた誤りです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
こうきさんは、多くの店で使える第三者型の商品券を持っている。発行者が発行の業務を廃止したり登録を取り消されたりしていない場合は、こうきさんが求めても、発行者は、少額の場合など内閣府令で定める場合を除き、残高を払い戻してはならない。

答え:○ 分かれ目は、払戻しが許される場面です。20条5項は、発行者は、1項各号の場合を除き、保有者に払戻しをしてはならないとし、ただし書きで少額の場合など内閣府令で定める場合を除いています。持ち主を守る法律なら、求めれば払い戻せるはずだ、と考えると✕に見えます。払い戻さなければならないのは、発行の業務の全部又は一部を廃止したときや、第三者型発行者が登録を取り消されたときなど(20条1項)で、義務の場面と禁止の場面を取り違えないことが要点です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
令和8年4月1日時点の資金決済法では、円の金額で価値が表示された通貨建資産は、不特定の者に対して使うことができ、電子情報処理組織を用いて移転できるものであっても、2条14項の「暗号資産」からは除かれている。

答え:○ 分かれ目は、通貨建資産の扱いです。2条14項1号のかっこ書きは、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に当たるものを除く)を暗号資産から除いています。不特定の者に使え、電子的に移転できる、という暗号資産の要件に当たって見えるので✕と答えやすい問です。通貨建資産で要件を満たすものは、2条5項の電子決済手段の定義の側に置かれています。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

令和8年4月2日以降に施行される改正(基準日のあと)

ここまでの説明は、令和8年4月1日時点の条文です。そのあとに施行される改正は、2026年10月17日に e-Gov の改正履歴・版と参議院の法律案の要旨で確かめた範囲だけを、最小限に書きます。

  • 令和7年法律第66号(2026年6月1日施行の部分):2条18項に「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の定義が加わった(同日の版から)。
  • 令和8年法律第64号(金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律。2026年7月23日公布):参議院の法律案の要旨では、資金決済法から暗号資産の取引の規制を削り、金融商品取引法の側で暗号資産の売買などを金融商品取引業に含める改正です。この部分の施行は「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」で、2026年10月17日に e-Gov の改正履歴で確かめた時点では、施行日は「政令で定める日」のままで、日付は示されていません。令和9年4月1日より前に施行されるかどうかも、この時点では決まっていません。施行されると、この記事の暗号資産・暗号資産交換業の説明(2条14項・15項・63条の2)は、資金決済法の条文としては使えなくなります。
  • 同じ要旨には、前払式支払手段・資金移動業・電子決済手段についての改正は書かれていません。令和9年度の試験の基準日(試験案内で示されます)と、暗号資産の部分の施行日の両方が分かってから、暗号資産の条文を確かめ直してください。

まとめ

  • 正式な題名は資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)。
  • 前払式支払手段:自家型は届出(5条1項)、第三者型は法人の登録(7条)。6か月以内に限り使えるものは適用除外。
  • 基準日(3月31日・9月30日)の未使用残高が1,000万円を超えたら、その2分の1以上を供託。払戻しは原則禁止で、廃止などのときは払戻しの義務。
  • 資金移動業・電子決済手段等取引業・暗号資産交換業は、いずれも内閣総理大臣の登録。通貨建資産は暗号資産から除かれる。
  • 暗号資産の取引の規制を資金決済法から削る令和8年法律第64号の部分は、公布から1年以内の政令で定める日に施行(2026年10月17日時点で日付は未定。令和9年4月1日より前かどうかも未定)。

このサイトで次に読むなら、割賦販売法の記事です。前払いの資金決済法と、後払いの割賦販売法を並べると、届出・登録と消費者を守る決まりの違いが見えてきます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令(言葉の移り変わりは2020年4月30日・2023年5月31日・2023年6月1日時点、改正後は2026年6月1日時点の版と改正履歴)を、2026年10月17日に確かめました。金融庁と参議院の資料も同じ日に確かめています。

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