行政書士とはどんな資格か:できる仕事・できない仕事を法律から整理

行政書士は、人に頼まれ、お金をもらって、役所に出す書類などを作ることを仕事にできる資格です。法律の言葉では「他人の依頼を受け報酬を得て」、官公署(かんこうしょ=役所)に出す書類や、権利義務・事実証明に関する書類を作ることを「業とする」と書かれています(行政書士法1条の3第1項)。そのほかにも、次のことを仕事にできます(1条の4第1項)。その書類を役所に出す手続の代理。契約書などを代理人として作ること。書類の作り方についての相談です。

ただし、書類を作る仕事でも、「他の法律において制限されているもの」はできません(1条の3第2項)。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士などの法律が、それぞれの資格者でないとできない仕事を決めているからです。また、行政書士と名乗れるのは、試験に合格したうえで、行政書士名簿に登録された人だけです(6条1項、19条の2第1項)。この記事の条文は、2026年1月1日施行の改正後のもので、e-Gov法令検索で確かめました。

行政書士は、法律でどう位置づけられているか

行政書士法の第1条は、2026年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号)で変わりました。見出しが「目的」から「行政書士の使命」になっています。今の条文は次のとおりです。

「行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。」

かみくだくと、行政書士の役割は3つの段階で書かれています。まず、役所への手続がスムーズに進むよう手伝うこと。それで、国民が便利になること。そして最後に、国民の権利や利益がきちんと実現されることです。行政書士は、この役割を法律で与えられた資格です。

同じ改正で、第1条の2に「職責(しょくせき=仕事をするうえでの責任)」が新しく置かれました。第1項は「行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」です。第2項は、デジタル社会が進んでいることをふまえた決まりです。情報通信技術を使うことなどを通じて、「国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。」とされています。第1項は義務(しなければならない)、第2項は努力義務(できるだけそうするよう求めるもの)という違いがあります。改正で何がどう変わったかは行政書士法の改正の記事でくわしく扱っています。

行政書士ができる仕事は、条文で何と書かれているか

仕事の中心は、第1条の3第1項の書類づくりです。条文を分けると、次の3種類の書類になります。

  1. 官公署に提出する書類:役所などに出す書類です。紙の代わりに、電磁的記録(でんじてききろく=電子データ)を作る場合もふくまれます。
  2. 権利義務に関する書類:権利(求めることができること)や義務(しなければならないこと)に関わる書類です。1条の4第1項第3号には、「契約その他に関する書類」という言葉が出てきます。
  3. 事実証明に関する書類:ある事実を証明するための書類です。「実地調査に基づく図面類を含む」とされています。

これらを「他人の依頼を受け報酬を得て」作ることを、「業とする(仕事として行う)」のが行政書士です。たとえば、お店を開きたいさくらさんが、役所に出す申請書の作成を行政書士に頼み、お金を払う場面です(ほかの法律で制限されていない書類の場合)。さらに第1条の4第1項は、「前条に規定する業務のほか」、次のことも仕事にできると決めています。

号できること(要旨)
1号作れる書類を役所に出す手続や、許認可などの聴聞(ちょうもん)・弁明などの手続で、役所に対する行為を代理する
2号許認可などについての審査請求などの不服申立ての手続を代理し、その書類を作る(特定行政書士だけ)
3号契約その他に関する書類を、代理人として作る
4号書類の作り方について相談にのる

表の言葉を少し説明します。許認可(きょにんか)は、役所が出す許可や認可のことです。聴聞・弁明は、役所が不利な処分をする前に、相手の言い分を聞く手続です。不服申立て(ふふくもうしたて)は、役所の決定に納得できないとき、見直しを求めることです。2号の仕事ができるのは「特定行政書士」だけです(1条の4第2項)。特定行政書士とは、日本行政書士会連合会が会則で決めた研修を終えた行政書士のことです。行政書士なら誰でも不服申立ての代理ができる、というわけではありません。

各号に共通しているのは、出発点が「前条の規定により行政書士が作成することができる」書類だということです。行政書士の仕事は、まず書類を作れる範囲があります。その範囲に関わる提出・代理・相談へと広がる、という組み立てです。

他の士業との境界は、どこに書かれているか

行政書士法は、仕事の範囲を決める条文の中に、境目の線も書きこんでいます。

  • 1条の3第2項:「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。」
  • 1条の4第1項ただし書(例外を決めた部分):「ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。」
  • 1条の4第1項第1号のかっこ書:役所に対する行為の代理から、「弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するもの」を除いています。

つまり、役所に出す書類であっても、ほかの法律が「その資格者でなければできない」と決めている仕事は、行政書士の仕事から外れます。行政書士の仕事の範囲は、行政書士法だけを読んでも決まりません。ほかの士業の法律と並べて読んで、はじめて決まるということです。

行政書士ができない仕事の例を、他の法律の条文で見る

「他の法律において制限されているもの」の代表的な例を、e-Gov法令検索で確かめた条文で並べます。ここに挙げるのは、条文に書かれている範囲の要旨です。一つひとつの仕事がどちらに当たるかの判断は、この記事では扱いません。

法律条文その資格者でないとできないこと(要旨)
弁護士法72条お金を目的に、訴訟・不服申立てなど一般の法律事件の代理・和解などの法律事務を仕事にすること
司法書士法3条1項1〜5号、73条1項登記・供託の手続の代理、法務局や裁判所・検察庁に出す書類の作成など
税理士法2条1項、52条税務代理、税務書類の作成、税務相談(税理士業務)
社会保険労務士法2条1項1号〜2号、27条労働社会保険諸法令にもとづく申請書等・帳簿書類の作成、提出の代行、申請等の代理など(お金をもらって仕事として行うこと)

表の言葉も少し説明します。登記(とうき)は、土地や会社などの情報を法務局の記録に載せる手続です。供託(きょうたく)は、お金などを国の機関に預けて、法律上の目的を果たす手続です。たとえば、さくらさんの税務書類(税金の書類)を作るのは、表のとおり税理士業務です。役所に出す書類だからといって、行政書士が引き受けることはできません。

それぞれの条文の書き出しを見ておきます。

  • 弁護士法72条:「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で」で始まります。ただし書で「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」としています。
  • 司法書士法73条1項:「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。」3条1項1号は「登記又は供託に関する手続について代理すること。」です。
  • 税理士法52条:「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。」
  • 社会保険労務士法27条:「社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。」ただし書で、例外を2つ決めています。ほかの法律に別の決まりがある場合と、政令で決めた仕事にともなって行う場合です。

読み比べると、要件(どんなときに禁止されるか)の書き方が法律ごとに違うことが分かります。弁護士法72条は「報酬を得る目的で」と書いています。社会保険労務士法27条は「他人の求めに応じ報酬を得て」です。ところが、税理士法52条の本文には、お金についての言葉がありません。境目を考えるときは、「同じような制限だろう」と思いこまないことです。それぞれの条文の要件を確かめる必要があります。

なお、不服申立ての代理は、弁護士法72条にも出てくる言葉です。一方、行政書士法1条の4第1項第2号は、特定行政書士に限って、不服申立ての手続の代理を認めています。対象は、行政書士が作れる書類に関わる許認可などについての不服申立てです。72条のただし書(ほかの法律に別の決まりがある場合)とあわせて、両方の条文を並べて読むところです。

「行政書士」と名乗れるのは誰か

行政書士法は、「資格がある人」と「行政書士である人」を分けています。

  1. 資格(2条):「次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。」第1号が「行政書士試験に合格した者」です。ほかにも資格を持つ人がいます。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を持つ人。公務員などとして行政の仕事を通算20年以上(高校卒業者などは17年以上)担当した人です。ただし、2条の2の欠格事由(けっかくじゆう=資格を持てない事情。未成年者など8つの号)に当たる人は、資格を持てません。
  2. 登録(6条1項):「行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に」住所・氏名・生年月日・事務所の名称及び所在地などの「登録を受けなければならない。」名簿は日本行政書士会連合会にあり、登録も同会が行います(6条2項・3項)。
  3. 名前の使い方の制限(19条の2第1項):「行政書士でない者は、行政書士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。」違反すると100万円以下の罰金です(22条の4)。

試験に合格して手に入るのは「行政書士となる資格」です。名乗れるのは、登録されてからです。たとえば、合格したばかりのゆうとさんは、登録が済むまで名刺に「行政書士」と書けません。19条の2は「行政書士」という名前だけでなく、「これと紛らわしい名称」(まちがえやすい名前)も禁じています。登録の流れ・必要書類・期間(愛知県では申請から約2か月)は合格後の登録の記事にまとめています。

行政書士でない人がしてはいけないことは何か

名前とは別に、仕事そのものの制限が第19条第1項にあります。2026年1月施行の改正後の言葉は次のとおりです。

「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。」

要件を分けると、次の3つがそろったときに禁止される、という形です。「他人の依頼を受け」(人に頼まれて)、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」(どんな呼び方でもお金をもらって)、「業として」(仕事として行う)。「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の部分は、令和7年の改正で加わりました。総務省の行政書士制度のページでも、こう説明されています。「手数料」や「コンサルタント料」など、どんな名目でも、見返りを受け取って仕事として行うことはできない、ということです。違反すると、した人は1年以下の拘禁刑(こうきんけい)または100万円以下の罰金です(21条の2)。

ただし書では、例外が2つ決められています。ほかの法律に別の決まりがある場合。そして、総務省令で決めた、型が決まっていて簡単な手続について、総務省令で決めた人が電磁的記録を作る場合です。第2項は、その総務省令を総務大臣が決めるときの手順です。前もって、その手続の法律を担当する大臣の意見を聞く、と決めています。

「行政書士ができない仕事」(ほかの士業だけができる仕事)と、「行政書士でない人ができない仕事」(19条)は、向きが反対の制限です。この2つを混同しないことが、資格の範囲を正しくつかむ近道です。

受験生は、行政書士法のどこまでを押さえればよいか

行政書士法は、試験の基礎知識の出題分野「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」に入っています。令和8年度試験は、令和8年4月1日現在施行の法令から出題されます。つまり、2026年1月1日施行の改正後の条文が範囲です(2026年5月21日施行の別の改正は範囲外)。この記事で見た条文のうち、次の点は条文の言葉どおりに覚えておくと、正しいか誤りかの判断に使えます。

  • 第1条の主語「行政書士は」と、文の終わり「使命とする」
  • 第1条の2の第1項「行わなければならない」(義務)と、第2項「図るよう努めなければならない」(努力義務)
  • 仕事は第1条の3、代理・相談などは第1条の4、特定行政書士は第1条の4第2項
  • 第1条の3第2項の「他の法律において制限されているもの」
  • 資格(2条)と登録(6条)の区別。名前の制限(19条の2)と仕事の制限(19条)の区別

確かめ用に、自作の問題を置きます(このサイトのオリジナル問題)。令和8年4月1日時点の条文で判断します。

  1. 行政書士は、官公署に提出する書類であれば、他の法律でその業務が制限されているものであっても作成することができる。→ 誤り。1条の3第2項で、ほかの法律で制限されているものは、仕事にできません。
  2. 行政書士であれば誰でも、行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関する審査請求の手続を代理できる。→ 誤り。1条の4第2項で、特定行政書士に限られます。
  3. 行政書士試験に合格した者は、行政書士名簿への登録を受ける前でも、「行政書士」と紛らわしい名称なら用いることができる。→ 誤り。19条の2第1項は「これと紛らわしい名称」も禁じています。登録されるまでは「行政書士でない者」です。

基礎知識の分野全体の中で、行政書士法をどう位置づけるか。足切りの6問をどこで取るか。これは基礎知識の記事で扱っています。このサイトで次に読むなら、行政書士法の改正の記事がおすすめです。改正前と後の条文を並べて比べています。古い教材の条番号(仕事=1条の2)をどう読みかえるかまでまとめています。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)