行政書士試験の受験資格と科目免除:誰でも受けられるか、免除はあるか

行政書士試験は、年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できます(行政書士試験研究センターの試験案内)。高校生でも、外国籍の人でも、前に自己破産した人でも受けられます。

科目の一部を免除する(受けなくてよくする)制度はありません。試験案内・試験概要・よくある質問のどれにも、免除の決まりはありません。試験のことを決めた行政書士法3条にも、免除の言葉はありません(2026年10月確認)。法律系の資格を持つ人や公務員の人も、受験するならほかの人と同じ60問を解きます。合否も同じ基準で決まります。

ただし、試験に合格しなくても「行政書士となる資格」を持つ人がいます(行政書士法2条2号〜6号)。反対に、合格しても資格を持てない人もいます(2条の2の欠格事由=けっかくじゆう。資格を持てない理由のこと)。この3つを分けて覚えておくと、試験の基礎知識の問題にもそのまま使えます。

受験資格はあるのか:公式の文言

試験案内と試験概要には、次のように書かれています。

「年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます。」

よくある質問(FAQ)には「過去に自己破産しているのですが、受験できますか。」という質問があります。答えは上と同じ文です。破産の手続きを受けたことがあっても、受験のさまたげにはなりません。

受験する試験地(都道府県)も、住所と関係なく全国どこでも選べます。ただし申し込んだあとは、転勤や引っ越しを理由に試験場を変えられません。選ぶときだけ気をつけます。受験手数料は10,400円です(令和8年度。払い方は費用の記事)。

科目の一部免除はあるのか

ありません。当サイトで、センターの令和8年度試験案内、試験概要、よくある質問を確かめました。どれにも、科目の一部を免除する決まりはありませんでした。

行政書士試験を決めた行政書士法3条は、次のとおりです。「行政書士試験は、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年一回以上行う。」書かれているのはこれだけで、免除の言葉はありません。

このため、受験する人は全員、次の3つの基準を全部満たす必要があります。令和7年度の合否判定基準では、法令等122点以上、基礎知識24点以上、全体180点以上でした。基準は補正(年度によって調整)されることがあります(仕組みは合格点と足切りの記事)。

  • 法令等の得点が満点の50%以上
  • 基礎知識の得点が満点の40%以上
  • 試験全体の得点が満点の60%以上

たとえば、法律の仕事をしてきた人でも、基礎知識で基準に届かなければ不合格です。基礎知識には、一般知識・行政書士法などの業務に関係する法令・情報通信と個人情報保護・文章理解(国語の読み取り)が入ります。得意な科目で点をかせぎ、苦手な科目は免除してもらう、という形はとれません。だから、基礎知識の対策は全員に必要です(基礎知識の記事)。

ほかの資格試験には、科目の免除がある試験もあります。「行政書士試験にも免除がある」という話を見かけたら、ほかの試験の話がまざっていないか確かめましょう。確かめる先は、公式の試験案内です。

試験に合格しなくても資格を得る人は誰か(行政書士法2条)

行政書士法2条は「次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。」と決めています。そして、6つの号(並べて挙げた項目)を挙げています。

  1. 行政書士試験に合格した者
  2. 弁護士となる資格を有する者
  3. 弁理士となる資格を有する者
  4. 公認会計士となる資格を有する者
  5. 税理士となる資格を有する者
  6. 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間と、行政執行法人・特定地方独立行政法人の役員や職員として行政事務に相当する事務を担当した期間を通算して20年以上になる者(「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上」)

読むときのポイントは3つです。

  • 2号〜5号は「となる資格を有する者」。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士として登録していることまでは求めていません。それぞれの資格を持っていれば足ります。
  • 司法書士や社会保険労務士は2条に入っていません。並んでいるのは、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の4つです。
  • 6号の年数は「通算」で、学歴で20年と17年に分かれます。通算(つうさん)とは、とぎれた期間も足し合わせることです。高等学校を卒業した者などは17年以上、それ以外は20年以上です。

6号の例で考えます。高校を卒業したけんじさんが、市役所で行政事務を10年担当しました。そのあと別の役所に移って、さらに7年担当したとします。合わせると17年なので、6号に当てはまります。

どの号でも、得られるのは「行政書士となる資格」です。行政書士になるには、さらに行政書士名簿への登録が要ります(6条1項)。

日本行政書士会連合会の「新規登録の手続」では、場合によって要る書類の一つに、公務員職歴証明書が挙がっています。どの場合に要るかは、そのページには書かれていません。登録する都道府県の行政書士会で確かめます(登録の流れは合格後の登録の記事)。

これは「試験の免除」とは違います。科目の一部を免除して試験を受けるのではありません。試験そのものを受けずに資格を持つ、という仕組みです。

「受験資格」と「欠格事由」は何が違うのか

受験資格は「試験を受けられるか」の話です。こちらに制限はありません。欠格事由は「行政書士となる資格を持てるか」の話です。

2条の2は「次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、行政書士となる資格を有しない。」と決めています。「前条の規定にかかわらず」とは、「2条に当てはまっていても」という意味です。だから、試験に合格した人にも、弁護士となる資格などを持つ人にも当てはまります。

下の表の言葉は、次の意味です。復権(ふっけん)は、破産で失った資格などを取り戻すこと。拘禁刑(こうきんけい)は、刑務所などに入れられる刑。懲戒免職(ちょうかいめんしょく)は、罰として仕事をやめさせられることです。

号内容(要旨)いつまでか
1号未成年者成年(18歳)になるまで
2号破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者復権を得るまで
3号拘禁刑以上の刑に処せられた者執行を終わり、または受けることがなくなってから3年
4号懲戒免職の処分を受けた公務員処分の日から3年
5号行政書士の登録の取消しの処分(6条の5第1項)を受けた者処分の日から3年
6号業務の禁止の処分(14条)を受けた者処分の日から3年
7号弁護士会からの除名など、他の士業の懲戒処分を受けた者処分を受けた日から3年
8号税理士法の処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者決定を受けた日から3年

1号の「未成年者」は、民法4条の「年齢十八歳をもって、成年とする。」によります。たとえば、17歳のりこさんが受験して合格することはできます。でも18歳になるまでは、行政書士となる資格を持てません。

2号も同じ形です。自己破産した人は、受験も合格もできます。でも復権を得るまでは、資格を持てません。FAQの「自己破産でも受験できる」と、2条の2第2号は食い違っていません。受験と資格は、別の段階の話だからです。

欠格事由とは別に、登録の段階で日本行政書士会連合会が登録を断る場合も決められています(6条の2第2項)。挙がっているのは、資格を持たない人のほか、心や体の故障で業務を行えない人などです。こちらは「資格があっても登録されない」場合の決まりで、欠格事由とは段階が違います(合格後の登録の記事)。

試験では、この条文のどこがひっかけになるか

行政書士法は、基礎知識の「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」に入っています。2条と2条の2でまちがえやすいのは、次の型です。

  • 「受験できない」と「資格を有しない」のすり替え。欠格事由は、受験の制限ではありません。
  • 3年の起算点(数え始める日)のずらし。号ごとに、数え始める日が決まっています。3号は「その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから」。4号〜6号は「当該処分の日から」。7号は「これらの処分を受けた日から」。8号は「当該決定を受けた日から」です。「刑を言い渡された日から数える」という形にはなっていません。
  • 2条の士業の入れ替え。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の4つ以外(司法書士など)を入れて、「資格を有する」とする形です。
  • 6号の年数の入れ替え。20年と17年を逆にする形や、「通算」を「継続して」(とぎれずに)に変える形です。

(このサイトのオリジナル問題)次の文は正しいか。

  1. 18歳未満の者は、行政書士試験を受験することができない。
  2. 税理士となる資格を有する者は、行政書士試験に合格していなくても、行政書士となる資格を有する。
  3. 公務員として懲戒免職の処分を受けた者は、以後、行政書士となる資格を有しない。

答え:1は誤り。受験資格に年齢の制限はありません。未成年者は、合格しても成年になるまで資格を持てないだけです(2条の2第1号)。2は正しい(2条5号)。3は誤り。資格を持てないのは、処分の日から3年がたっていない人に限られます(2条の2第4号)。

行政書士法は、令和7年の改正(2026年1月1日施行)で1条などが変わっています。この記事では、2条・2条の2の言葉を、令和8年4月1日時点の条文で確かめました。改正の全体は行政書士法の改正の記事にまとめています。

申し込む前に確かめておくこと

  • 公務員の職歴が長い人:2条6号に当てはまるかを、先に確かめます。職歴の数え方や証明の書類は、登録する都道府県の行政書士会に問い合わせて確かめます。
  • 弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を持つ人:試験を受けなくても資格があります。受験するかは、試験の知識が自分に必要かどうかで決めます。
  • 欠格事由に当たるかもしれない人:受験はできます。合格して登録するまでに、どの号の「いつまで」に当たるかを確かめておきます。
  • それ以外の人:受験資格を気にする必要はありません。日程と申込みの締切を確かめるところから始めます(試験日程の記事)。

このサイトで次に読むなら、合格点と足切りの記事がおすすめです。全員が同じ基準で判定される仕組みを、数字で確かめられます。何が出るかを先に知りたい人は、出題範囲の記事をどうぞ。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)