宅建業の免許証:交付・書換え・再交付・返納の場面と、掲げる義務のある標識との違い、免許の条件

ひとことで言うと、宅建業の免許証は、免許をした国土交通大臣か都道府県知事が交付する「免許を受けたことの証明書」です(宅建業法6条)。書いてある事項が変わったら書換え、なくしたり汚したりしたら再交付、免許換えや免許の取消しのときは返納します。手続の細かい決まりは、宅建業法施行規則4条の2〜4条の4にあります。

まちがえやすいのは、事務所に掲げなければならないのは免許証ではなく標識だという点です(50条1項)。標識には免許証番号を書きます。この記事では、免許証の4つの手続と、標識・宅建士証との違い、免許に付ける条件(3条の2)を扱います。免許がいる人・免許換えの要件は宅建業の免許の記事、標識に書く事項は標識の記事に任せます。免許証の様式や写真の扱いは扱いません。条文は令和8年4月1日時点の宅建業法と施行規則を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
ひなた不動産宅建業者(はじめは甲県知事の免許)商号を変え、事務所を増やした
甲県知事はじめの免許権者免許証を交付した
国土交通大臣あとの免許権者免許換えの免許をした
  1. ひなた不動産は、甲県だけに事務所を置いて甲県知事の免許を受け、免許証を交付された。
  2. 3年目に、会社の商号を変えた。30日以内に変更の届出をし、それと併せて免許証の書換え交付を申請した。
  3. 引っ越しの片づけで免許証が見当たらなくなった。遅滞なく再交付を申請し、新しい免許証を受け取った。
  4. その後、古い免許証が書類の箱から出てきた。遅滞なく甲県知事に返納した。
  5. 乙県にも事務所を設け、国土交通大臣の免許を受けた(免許換え)。甲県知事の免許は効力を失ったので、甲県知事の免許証を、遅滞なく甲県知事に返納した。

2番目で書換えが要るのは、商号が免許証に書かれている事項だからです。都道府県の案内(大阪府)でも、商号・名称、主たる事務所の所在地、代表者の変更では、変更の届出と書換え交付の申請の両方が要るとしています。5番目の返納先は、新しい免許をした国土交通大臣ではなく、効力を失った免許をした甲県知事です。

たとえるなら、免許証は「お店の営業許可の原本」で、標識は「お店の入口に出す看板」です。看板には許可番号を書いて出しておきますが、原本は手元で保管します。ただし本物のルールでは、標識を掲げる場所は事務所だけでなく、案内所や分譲の現地なども含みます(50条1項の「事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所」)。

条文ではこう決まっている

交付(6条)

「国土交通大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の免許をしたときは、免許証を交付しなければならない。」交付するのは免許権者です。免許証の様式は施行規則4条で別記様式第三号と決まっています。

書換え交付(施行規則4条の2)

免許証の記載事項に変更が生じたときは、その免許証を添え、9条の変更の届出と併せて、免許を受けた大臣か知事に書換え交付を申請します。この条文には「〇日以内」の期限は書かれていません。期限があるのは変更の届出のほうで、9条1項は「三十日以内」としています。

再交付(施行規則4条の3)

免許証を亡失・滅失・汚損・破損したときは、遅滞なく、免許を受けた大臣か知事に再交付を申請します(1項)。汚損・破損のときは、その免許証を添えます(2項)。

返納(施行規則4条の4)

  • 1項:次のどれかに当たるときは、遅滞なく、その免許を受けた大臣か知事に返納する。①7条1項(免許換え)で免許が効力を失ったとき、②66条または67条1項で免許を取り消されたとき、③亡失した免許証を発見したとき。
  • 2項:11条の廃業等の届出をする者は、その業者が大臣の免許なら大臣に、知事の免許なら知事に、免許証を返納する。

2項の「届出をする者」は、業者本人とは限りません。11条1項では、合併で消滅した法人ならその法人を代表する役員であった者、破産手続開始の決定があったなら破産管財人、合併・破産以外の理由で解散したなら清算人が届け出ます。その人が免許証も返納します。

免許の条件(3条の2)

大臣か知事は、免許(免許の更新を含む)に条件を付け、それを変更することができます(1項)。条件は、宅建業の適正な運営と取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限り、免許を受ける者に不当な義務を課すものであってはなりません(2項)。業者が付された条件に違反したときは、免許権者は免許を取り消すことができます(66条2項)。66条1項の各号(取り消さなければならない場合)とは書き方が違い、取り消すかどうかは免許権者の判断です。

4つの手続を1枚にすると

場面いつどこへ根拠
交付免許をしたとき免許権者が交付する6条
書換え交付記載事項の変更。9条の届出(30日以内)と併せて免許を受けた大臣・知事規則4条の2
再交付亡失・滅失・汚損・破損。遅滞なく免許を受けた大臣・知事規則4条の3
返納免許換えで失効・取消し・亡失した免許証の発見。遅滞なくその(失効した・取り消された)免許の大臣・知事規則4条の4第1項
返納廃業等の届出をするとき免許を受けた大臣・知事規則4条の4第2項

表の読み方のこつは2つです。①期限の言葉は、再交付と1項の返納が「遅滞なく」、書換えは「届出と併せて」。②行き先は、どれも「その免許を受けた」大臣か知事。免許換えのときは、効力を失った前の免許の免許権者です。なお、新しく免許をした大臣か知事は、遅滞なく、前の免許をした知事か大臣にその旨を通知します(施行規則4条の5)。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:汚した免許証の再交付

ひなた不動産が免許証に飲み物をこぼして汚した場合は、遅滞なく再交付を申請し、その汚れた免許証を添えます(施行規則4条の3第1項・2項)。

当てはまらない例:業務停止処分を受けた

業務停止処分(65条)を受けても、免許は取り消されていないので、返納の事由に当たりません。施行規則4条の4の返納は、免許の取消し(66条・67条1項)のときです。業者が処分を受けて免許証を差し出す(提出する)決まりもありません。

ひっかけやすい例:事務所に免許証を掲げる?

宅建業法と施行規則には、免許証を事務所に掲げる(掲示する)決まりはありません(e-Gov で「免許証」の語が出てくる条を確かめました)。事務所等ごとに公衆の見やすい場所に掲げるのは標識で(50条1項)、事務所に掲げるものとしてはほかに報酬の額があります(46条4項)。

ひっかけやすい例:免許換えのあとの返納先

免許換えで国土交通大臣の免許を受けたら、前の甲県知事の免許証は、甲県知事に返します。新しい免許証をくれた大臣に返すのではありません。返すのは「効力を失った免許」の免許証だからです。

似ているルールとの違い

項目免許証標識宅建士証
掲げる・見せる決まりなし事務所等ごとに掲げる(50条1項)取引の関係者の請求(22条の4)・重要事項の説明(35条4項)で提示
返す返納(規則4条の4)―登録の消除・失効で速やかに返納(22条の2第6項)
処分を受けたとき提出の決まりなし―事務禁止処分で速やかに提出(22条の2第7項)

宅建士証には、提示・返納・提出の3つの場面があります。提出した宅建士証は、禁止の期間が満了して返還の請求があったときに直ちに返されます(22条の2第8項)。業者の免許証には、提示と提出の決まりがありません。宅建士証の手続の全体は宅建士証の記事、廃業等の届出をだれがするかは廃業等の届出の記事で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、免許が主な論点の問題は22問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では6問でした。ほかの論点が主な問題の中に副の論点として含むものは20問(直近10回で6問)です。免許証だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 掲げる物の入れ替え:「事務所には免許証を掲げる」。掲げるのは標識です。
  • 返納先の入れ替え:免許換えで失効した免許証を、新しい免許権者に返す形。返すのは、前の免許の免許権者です。
  • 宅建士証との混同:業務停止処分で免許証を提出する、取引の相手方に免許証を提示する、とする形。どちらも宅建士証の決まりです。
  • 期限の入れ替え:書換え交付に「30日以内」の期限があるとする形。30日以内は9条の変更の届出の期限で、書換えはそれと「併せて」申請します。
  • 条件の範囲:「条件は新しい免許のときだけ」「付けた条件は変えられない」とする形。更新にも付けられ、変更もできます(3条の2第1項)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
甲県知事の免許を受けていた宅建業者Aは、乙県にも事務所を設けたため、国土交通大臣の免許を受けた。この場合、Aは、甲県知事の免許証を、新たに免許をした国土交通大臣に返納する。

答え:✕ 分かれ目は返納先です。施行規則4条の4第1項1号は、7条1項(免許換え)で免許が効力を失ったとき、遅滞なく「その免許を受けた」大臣か知事に免許証を返納するとしています。正しくは、効力を失った免許をした甲県知事に返納します。取り違えの相手は、新しい免許をした大臣が前の免許権者に通知をする施行規則4条の5で、大臣が関わるのは通知のほうです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
甲県知事は、宅建業者Bの免許を更新するときに、その免許に条件を付けることができ、いったん付けた条件を後から変更することもできる。

答え:○ 分かれ目は、条件を付けられる場面と変更の可否です。3条の2第1項は、大臣か知事は免許(「同条第三項の免許の更新を含む」)に条件を付し、これを変更することができると定めています。条件は最初の免許のときだけで、あとから動かせないと考えると✕にしてしまいます。条件に違反したときの免許の取消しは66条2項で「取り消すことができる」とされ、「取り消さなければならない」とする66条1項の各号とは別の扱いです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Cは、甲県知事から業務停止処分を受けた。Cは、宅建士が事務禁止処分を受けたときと同じく、速やかに免許証を甲県知事に提出しなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、業者の処分で免許証を差し出す決まりがあるかです。宅建業法と施行規則には、業務停止処分を受けた業者に免許証の提出を求める規定はなく、施行規則4条の4の返納も、免許の取消し(66条・67条1項)などの場合です。正しくは、Cに免許証を提出する義務はありません。取り違えの相手は、事務禁止処分を受けた宅建士が宅建士証を交付を受けた知事に提出する22条の2第7項です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。

まとめ

  • 免許証は免許権者が交付する(6条)。事務所に掲げるのは免許証ではなく標識(50条1項)。
  • 書換え交付は、記載事項の変更のとき、9条の届出(30日以内)と併せて申請する。
  • 再交付は亡失・滅失・汚損・破損のとき遅滞なく。汚損・破損は元の免許証を添える。
  • 返納は、免許換えで失効・取消し・亡失した免許証の発見のとき遅滞なく、その免許の免許権者へ。廃業等の届出をする者も返納する。
  • 免許(更新を含む)には条件を付け、変更できる(3条の2)。違反したら免許を取り消すことができる(66条2項)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の宅建業法と施行規則を確かめました。

このサイトで次に読むなら、宅建業の免許の記事です。免許換えがいる3つの場面(7条1項)と、免許の有効期間を、この記事の返納の場面とつなげて確かめられます。

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