ひとことで言うと、3つともほかの人の取引を手伝う商人ですが、手伝い方が違います。代理商(だいりしょう)は、決まった商人のために、いつも取引の代理や媒介(ばいかい=間に入って契約が成り立つよう取り持つこと)をします。仲立人(なかだちにん)は、他人どうしの商行為の媒介だけをします。問屋(といや)は、自分の名前で、他人のために物品を売ったり買ったりします。
この記事では、3つの違い、代理商の競業の禁止と留置権、仲立人と問屋の特別な義務を、商法の条文で整理します。会社の代理商は会社法16条〜20条に同じ形の定めがあります。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。
身近な例で考えると
はやしさんは、個人で家具の製造と販売をしている商人です。はやしさんの家具の取引に、3人(3社)がかかわります。
| 人物 | 立場 | していること |
|---|---|---|
| たけるさん | 代理商 | はやしさんの代理人として、いつも家具店に家具を売る。はやしさんの使用人ではない |
| みかさん | 仲立人 | 家具の卸売店と小売店を引き合わせ、売買を取り持つ |
| ひがし商会 | 問屋 | 自分の名前で、はやしさんのために木材を買い入れる |
- たけるさんが、はやしさんの代理人として、家具店とテーブルの売買契約を結んだ。契約の当事者は、はやしさんと家具店。たけるさんは、遅滞なく、はやしさんに通知を発する(商法27条)。
- みかさんは、卸売店と小売店の売買を取り持った。契約の当事者は卸売店と小売店で、みかさんは当事者ではない。成立したら、みかさんは結約書(けつやくしょ=契約の内容を書いた書面)を作り、双方に渡す(546条)。
- ひがし商会は、自分の名前で製材所から木材を買った。製材所に対して代金を払う義務を負うのは、ひがし商会自身(552条1項)。木材は、あとで、はやしさんに引き渡す。
たとえると、代理商は「お店の名前で注文を取る外回りの契約担当」、仲立人は「お見合いの紹介役」、問屋は「頼まれて自分の名前で買い物をしてくる人」です。ただし本物のルールでは、代理商は社員ではなく独立の商人です。ここがたとえと違う点で、社員である支配人とは競業の禁止の範囲が違います。
条文ではこう決まっている
代理商(商法27条〜31条)
- 代理商は、商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でないもの。代理または媒介をしたときは、遅滞なく商人に通知を発する(27条)。
- 商人の許可を受けなければ、①自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引をすること、②商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役・業務を執行する社員になること、ができない(28条1項)。①に違反して得た利益の額は、商人の損害の額と推定する(同条2項)。
- 物品の販売(またはその媒介)の委託を受けた代理商は、買主からの品質の不適合の通知(526条2項)など、売買に関する通知を受ける権限を持つ(29条)。
- 契約の期間を定めなかったときは、商人も代理商も、2か月前までに予告して解除できる(30条1項)。やむを得ない事由があるときは、いつでも解除できる(同条2項)。
- 代理・媒介で生じた債権の弁済期が来ていれば、弁済を受けるまで、商人のために占有する物または有価証券を留置できる。当事者が別段の意思表示をしたときは除く(31条)。
仲立人(543条〜550条)
- 他人間の商行為の媒介をすることを業とする者(543条)。
- 媒介した行為について、当事者のために支払などの給付を受けることはできない。当事者の別段の意思表示や慣習があれば別(544条)。
- 見本を受け取ったときは、行為が完了するまで保管する(545条)。
- 行為が成立したら、遅滞なく、各当事者の氏名(名称)、行為の年月日と要領を書いた結約書を作り、署名か記名押印して各当事者に交付する(546条1項)。帳簿にも同じ事項を記載する(547条)。
- 当事者から氏名を相手方に示さないよう命じられたときは、結約書などに書けない(548条)。当事者の一方の氏名を相手方に示さなかったときは、仲立人は、その相手方に対して自ら履行する責任を負う(549条)。
- 報酬は、546条の手続を終えた後でなければ請求できず、当事者双方が等しい割合で負担する(550条)。
問屋(551条〜558条)
- 自己の名をもって他人のために物品の販売または買入れをすることを業とする者(551条)。
- 相手方に対しては、問屋が自ら権利を取得し、義務を負う(552条1項)。委託者との間には、委任と代理の規定を準用する(同条2項)。
- 相手方が債務を履行しないときは、問屋が自らその履行をする責任を負う。別段の意思表示や慣習があれば別(553条)。
- 委託者が指定した金額(指値=さしね)より低い価格で売ったり、高い価格で買ったりしても、問屋が自らその差額を負担するときは、委託者に効力を生じる(554条)。
- 取引所の相場がある物品なら、問屋が自ら買主や売主になれる(介入権)。代価は、その旨の通知を発した時の相場による。この場合も報酬を請求できる(555条)。
- 代理商の通知義務(27条)と留置権(31条)を準用する(557条)。物品の売り買い以外の取次ぎをする者(準問屋)にも、この章を準用する(558条)。
仲立ちと取次ぎ(自分の名前で他人のためにする行為)は、営業としてすれば商行為です(502条11号)。商行為の代理の引受けも同じです(502条12号)。
3つの違いを表で比べる
| 比べる点 | 代理商 | 仲立人 | 問屋 |
|---|---|---|---|
| だれのために | 決まった商人のために継続して | 他人どうし(媒介だけ) | 委託者のために |
| 契約の名義 | 本人の名で代理(または媒介) | 当事者どうしの名 | 問屋自身の名 |
| 相手方への義務 | 本人が負う | 負わない(黙秘したときは履行責任) | 問屋が負う |
| 特別な定め | 通知・競業の禁止・留置権 | 見本保管・結約書・帳簿・報酬の折半 | 履行の担保・指値・介入権・留置権(準用) |
代理商が代理をするときは、民法の代理と同じく本人に効力が生じます。民法の代理のしくみは代理をわかりやすくの記事、商行為の代理で「本人のため」と示さなかった場合(商法504条)は顕名の記事で扱っています。問屋は自分の名前で契約するので、代理ではありません。
支配人の競業の禁止とどう違うか
支配人(しはいにん)は、商人に雇われた使用人で、営業の全体を任される人です(商法総則の記事)。代理商は使用人ではないので、禁止される範囲が狭くなっています。
| 許可がなければできないこと | 支配人(23条1項) | 代理商(28条1項) |
|---|---|---|
| 自ら営業を行う | できない | 定めなし |
| 自己・第三者のために営業の部類に属する取引 | できない | できない |
| 他の商人・会社の使用人になる | できない | 定めなし |
| 会社の取締役・執行役・業務執行社員になる | どの会社でもできない | 同種の事業の会社だけできない |
違反して得た利益の額を商人の損害の額と推定する定めは、両方にあります(23条2項・28条2項)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:たけるさんが、はやしさんの許可を得ずに、ほかの家具メーカーの家具を自分で仕入れて家具店に売った。自己のために、はやしさんの営業の部類に属する取引をしたので、28条1項1号に反します。
- 当てはまらない例:はやしさんの店の店長として雇われている人が、いつも家具を売っている。商人の使用人なので、代理商ではありません(27条のかっこ書)。この人の競業は23条などの使用人の定めで見ます。
- 当てはまらない例:会社員どうしが中古の自転車を個人的に売り買いするのを、みかさんが取り持った。どちらにとっても商行為ではないので、543条の「他人間の商行為の媒介」には当たりません。
- ひっかけやすい例:ひがし商会が買った木材の代金を、製材所がはやしさんに請求した。製材所との契約の当事者はひがし商会なので、代金の義務を負うのはひがし商会です(552条1項)。
- ひっかけやすい例:たけるさんが、はやしさんとの代理の手数料を払ってもらえず、手元にあるはやしさんの家具を返さなかった。手数料の債権の弁済期が来ていれば、31条の留置権で留置できます。その家具と手数料の債権がつながっている必要はありません。くわしくは商事留置権の記事で比べています。
問屋が破産したとき:判例
552条1項では、問屋が買った物の権利は、まず問屋が取得します。では、委託者に移す前に問屋が破産したらどうなるか。最高裁判所第一小法廷昭和43年7月11日判決(昭和40年(オ)第25号)の裁判要旨は、問屋が委託の実行としてした売買で権利を取得したあと、委託者に移転しない間に破産した場合には、委託者はその権利について取戻権(とりもどしけん=破産した人の財産から自分の物として取り戻す権利)を使えるとしています。
この判決の事案は、株券の引渡しを求めたものです。結論は「取戻権を行使することができる」で、限定は「委託の実行としてした売買により取得した権利」「委託者に移転しない間に破産した」の2つです。
試験ではここをまちがえやすい
- 名義の取り違え:代理商は本人の名で代理、問屋は自己の名、仲立人は当事者にならない。相手方に義務を負うのは、代理商の場合は本人、問屋の場合は問屋です。
- 履行の責任:問屋は相手方が履行しないとき自ら履行する責任を負う(553条)。仲立人が自ら履行する責任を負うのは、当事者の氏名を示さなかったときだけ(549条)。
- 競業の禁止の範囲:代理商は「同種の事業の会社」の役員だけ。他の商人の使用人になることは28条にない。支配人の23条と混ぜない。
- 解除の予告:期間の定めがなければ2か月前。やむを得ない事由があればいつでも(30条)。
- 報酬:仲立人の報酬は当事者双方が等しい割合(550条2項)。問屋は介入しても報酬を請求できる(555条2項)。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
問屋のひがし商会は、はやしさんの委託で、自分の名前で木材を買い入れ、その所有権を取得した。木材をはやしさんに移す前に、ひがし商会が破産した。判例によれば、はやしさんは、木材について取戻権を行使できる。
答え:○ 分かれ目は、問屋の破産のときの委託者の立場です。最高裁判所第一小法廷昭和43年7月11日判決は、問屋が委託の実行としてした売買で権利を取得し、委託者に移転しない間に破産した場合、委託者はその権利について取戻権を行使できるとしました。問屋が自ら権利を取得する(552条1項)ので、木材は問屋の財産だと考えると✕に見えます。取り違えの相手は、相手方に対する関係を定めた552条1項です。委託者との間には、同条2項で委任と代理の規定が準用されます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
仲立人みかさんは、卸売店と小売店の売買を媒介し、当事者の氏名を互いに示したうえで結約書を交付した。小売店が代金を払わないとき、みかさんは、卸売店に対し、自ら代金を支払う責任を負う。
答え:✕ 分かれ目は、仲立人が自ら履行する責任を負う場面です。549条は、当事者の一方の氏名を相手方に示さなかったときに限って、仲立人に相手方への履行の責任を負わせています。正しくは、氏名を示しているみかさんは、売買の当事者ではないので、代金を払う責任を負いません。相手方が履行しないとき自ら履行する責任を負うのは、自己の名で取引する問屋(553条)で、その規定を仲立人に当てはめた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
たけるさんは、はやしさんの代理商として、家具の販売の代理をしている。たけるさんは、はやしさんの許可を受けずに、家具とは関係のない食品の卸売店に、使用人として雇われることができる。
答え:○ 分かれ目は、代理商の競業の禁止の範囲です。28条1項が許可なくできないとするのは、はやしさんの営業の部類に属する取引と、同種の事業を行う会社の取締役・執行役・業務を執行する社員になることです。他の商人の使用人になることは、28条に入っていません。商人の使用人である支配人は、他の商人や会社の使用人になることも許可なくできない(23条1項3号)ので、それと混ぜると✕に見えます。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」(商法の問題もここに入っています)で続けて解けます。
まとめ
- 代理商は、決まった商人のために継続して代理・媒介をする、使用人でない独立の商人。通知義務・競業の禁止・2か月前の予告・留置権がある。
- 代理商の競業の禁止は、営業の部類に属する取引と、同種の事業の会社の役員だけ。支配人より狭い。
- 仲立人は他人間の商行為の媒介だけ。結約書を交付し、報酬は双方が等しく負担。氏名を黙秘したときだけ自ら履行する責任。
- 問屋は自己の名で他人のために売り買いし、相手方に権利義務を負う。履行の担保・指値・介入権。破産したときは委託者に取戻権(判例)。
このサイトで次に読むなら、商事売買の特則の記事です。29条で代理商が受け取れる「526条2項の通知」の中身を、買主の検査と通知のルールで確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確かめました。
- e-Gov法令検索「商法」(23条、27条〜31条、502条7号・11号・12号、543条〜558条)
- e-Gov法令検索「会社法」(16条〜20条)
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷 昭和43年7月11日判決(昭和40(オ)25)」(問屋の破産と取戻権)
働く人の法律試験ノート