政治資金規正法:政治団体の届出・寄附の制限・収支報告書の公開のしくみ

ひとことで言うと、政治資金規正法は、政治団体に届出をさせ、お金の出入りを収支報告書で公開させ、だれがだれにいくらまで寄附できるかを制限する法律です。目的は、政治活動が国民の監視と批判のもとに行われるようにし、「政治活動の公明と公正を確保し」、「民主政治の健全な発達に寄与」することです(1条)。

この記事の位置づけ:行政書士試験の基礎知識の4分野(一般知識・行政書士法等の業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の記事です。足切り(令和7年度の合否判定基準では基礎知識24点以上。6問分)を越えるには、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固めるのが、基礎知識の記事で書いた当サイトの方針です。この記事は、その方針のうえで、政治資金規正法の骨組みを条文だけで扱います。違反の事件・政党名・人名・改正の経緯は書きません。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました(2026年10月17日確認)。

身近な例で考えると

人物・団体立場したいこと
けんじさん市議会議員の選挙に出るつもりの人(公職の候補者)活動の資金を集めたい
けんじ会けんじさんを支持する後援の団体(政治団体)寄附を受けたい
たかしさん会社員(個人)けんじさんを応援したい
ひかり電機会社寄附をしたい
  1. けんじ会は、特定の公職の候補者を支持することを本来の目的とする団体なので、政治団体に当たる(3条1項2号)。組織した日から7日以内に、都道府県の選挙管理委員会に届け出る(6条1項)。
  2. 届出の前は、けんじ会は政治活動のための寄附を受けることも、支出をすることもできない(8条)。
  3. たかしさんは、けんじ会に寄附できる。ただし、同じ相手には1年に150万円まで(22条2項)。
  4. ひかり電機は、けんじ会に寄附できない。会社が寄附できる相手は、政党と政治資金団体だけ(21条1項)。
  5. 翌年、けんじ会の会計責任者は、前の年の収支を書いた収支報告書を出す。報告書はインターネットで公表される(12条・20条)。

たとえるなら、部活の会計で「だれからいくら集め、何に使ったか」を帳簿にして全員に見せ、集めてよい相手と額も決めておく仕組みです。ただし本物のルールでは、公開される相手は国民全体で、違反には罰則があります。

条文ではこう決まっている

政治団体と政党(3条・6条の2)

  • 政治団体(3条1項):政治上の主義・施策を推進・支持・反対することを本来の目的とする団体(1号)、特定の公職の候補者を推薦・支持・反対することを本来の目的とする団体(2号)、それらの活動を主たる活動として組織的・継続的に行う団体(3号)。
  • 政党(3条2項):政治団体のうち、所属する衆議院議員・参議院議員が5人以上のもの(1号)、または直近の国政選挙で得票が有効投票の総数の100分の2以上のもの(2号)。
  • 政治資金団体(6条の2):政党が、その政党の政治資金団体となるべき団体として一つ指定した団体。指定したら直ちに総務大臣に届け出る。

届出(6条・8条)

政治団体は、組織された日などから7日以内に、目的・名称・主たる事務所・代表者・会計責任者などを、文書で届け出ます(6条1項)。届出先は、主に一つの都道府県で活動する団体なら、その都道府県の選挙管理委員会です。2つ以上の都道府県にわたって活動する団体と、政党・政治資金団体は、都道府県の選挙管理委員会を経て総務大臣に届け出ます。届出の前は、政治活動(選挙運動を含む)のために、いかなる名義でも寄附を受けたり支出したりできません(8条)。

収支報告書と公開(12条・20条)

  • 政治団体の会計責任者は、毎年12月31日現在で、その年の収入・支出・資産などを書いた報告書を、翌日から3か月以内(選挙の期間がかかるときは4か月以内)に、届出先と同じ区分で提出します(12条1項)。国会議員関係政治団体は、総務省の説明では翌年5月末日(1月から5月までに総選挙などがあったときは6月末日)までです。
  • 同じ人からの寄附が年間5万円を超えるものは、寄附をした人の氏名・住所・職業・金額・年月日を書きます(12条1項1号)。支出は、人件費などを除いて1件5万円以上のものの支払先などを書き、領収書などの写しを付けます(同項2号・2項)。
  • 総務大臣・都道府県の選挙管理委員会は、受け取った報告書を「インターネットを利用する方法により」公表します。原則として、提出された年の11月30日までです(20条1項)。

寄附の制限(21条〜22条の6)

出し手受け手年間の上限など条
個人政党・政治資金団体総額で2,000万円21条の3第1項
個人それ以外の政治団体など総額で1,000万円。同じ相手には150万円21条の3第3項・22条2項
個人などだれでも公職の候補者本人(政治活動。選挙運動を除く)金銭等の寄附は禁止。政治団体への寄附は別21条の2第1項
会社・労働組合など政党・政治資金団体資本金・組合員数などに応じ750万円〜21条の3第1項・2項
会社・労働組合などそれ以外禁止21条1項
外国人・外国法人などだれでも受けてはならない22条の5
  • 会社の寄附の相手(21条):会社・労働組合・職員団体その他の団体は、政党と政治資金団体以外に政治活動に関する寄附をしてはなりません(1項)。政治団体がする寄附には、この制限はかかりません(2項)。政党の支部は、市町村や選挙区などを単位とするもののほかは、政党と扱われません(4項)。
  • 公職の候補者への寄附(21条の2):何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関して、金銭等による寄附をしてはなりません。政治団体に対する寄附は除かれます(1項)。総務省の説明では、政党がする寄附は、令和8年12月31日まで認められています。
  • 外国人などからの寄附(22条の5):何人も、外国人・外国法人、主たる構成員が外国人・外国法人である団体などから、政治活動に関する寄附を「受けてはならない」とされています。ただし、日本法人で、株式が金融商品取引所に5年以上継続して上場されているものがする寄附は除かれます(1項ただし書)。
  • 匿名などの寄附(22条の6):本人以外の名義や匿名で寄附をしてはなりません(1項)。街頭や公開の演説会・集会の会場で、政党・政治資金団体にする1,000円以下の寄附は、匿名の禁止から外されます(2項)。違反してされた寄附は受けてはなりません(3項)。

政治資金パーティー(8条の2・22条の8)

政治資金パーティーは、対価を取って行う催物で、収入から経費を引いた残りを政治活動に使うこととされているものです。政治団体によって開催されるようにしなければなりません(8条の2)。一つのパーティーにつき、開く側は同じ人から150万円を超えて対価を受けてはならず、払う側も150万円を超えて払ってはなりません(22条の8第1項・3項)。対価の支払は寄附とは別に数えます。

収支報告書に対価を払った人の氏名などを書く基準は、令和8年4月1日時点の条文では、同じ人からの支払の年間合計が20万円を超えるものです(12条1項1号)。令和9年1月1日に施行される改正(令和7年法律第2号)で、この基準は5万円を超えるものに変わります(e-Gov の改正後の条文で確認)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:たかしさんが、けんじ会に1年で100万円を寄附した。同じ相手への150万円の上限の中です(22条2項)。
  2. 当てはまる例:たかしさんが、ある政党に1年で300万円を寄附した。150万円の上限は政党・政治資金団体以外への寄附の決まりなので、総枠の2,000万円の中なら寄附できます(21条の3第1項)。
  3. 当てはまらない例:ひかり電機が、けんじ会に10万円を寄附した。額にかかわらず、会社は政党・政治資金団体以外に寄附できません(21条1項)。
  4. 当てはまらない例:たかしさんが、けんじさん本人に、政治活動に使ってほしいと現金を渡した。公職の候補者の政治活動に関する金銭等の寄附は禁止です(21条の2第1項)。けんじ会(政治団体)への寄附なら、この禁止に当たりません。
  5. ひっかけやすい例:届出の前のけんじ会が、事務所の家賃を払った。届出の前は、寄附を受けるだけでなく、支出もできません(8条)。

似ているルールとの違い

  • 政党助成法の「政党」:政治資金規正法3条2項2号は、得票が100分の2以上なら、所属国会議員がいなくても政党に当たります。政党交付金を受けられる政党助成法の「政党」は、得票の要件に加えて国会議員がいることを求めます。違いは政党助成法の記事で扱っています。
  • 会社の政治献金の判例:会社が政党に寄附することは会社の権利能力の範囲内とした判例と、強制加入の税理士会が政治団体に寄附することは目的の範囲外とした判例は、憲法・民法の論点です。人権の主体の記事で扱っています。
  • 選挙のときの寄附:公職選挙法にも、候補者などの寄附の禁止があります。選挙の仕組みは衆議院と参議院の選挙制度の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 会社の寄附の相手:政党と政治資金団体だけ。後援会など、ほかの政治団体には額にかかわらず寄附できない。
  • 150万円が何の数字か:個人が政党・政治資金団体以外の同じ相手にする寄附の年間上限(22条2項)と、一つのパーティーの対価の上限(22条の8)。政党への個人の寄附は総枠2,000万円だけ。
  • 外国人などからの寄附:「受けてはならない」と受け手を縛る形。5年以上継続して上場している日本法人の寄附は除かれる。
  • 届出の前:寄附を受けることも、支出をすることもできない。
  • 公表の方法:インターネットで、原則として提出された年の11月30日まで。
  • 基準日のあとの改正:パーティーの対価の記載の基準は令和9年1月1日から5万円超。受ける年度の試験の基準日で、どちらの数字かが変わる。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
株式会社であるひかり電機は、市議会議員の選挙に出るけんじさんを支持する後援の政治団体「けんじ会」に、政治活動に関する寄附をしようとしている。寄附の額がその年の合計で150万円を超えなければ、ひかり電機はこの寄附をすることができる。

答え:✕ 分かれ目は、会社が寄附できる相手です。政治資金規正法21条1項は、会社・労働組合などの団体は「政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない」としています。正しくは、ひかり電機は、額にかかわらずけんじ会に寄附できません。150万円は、個人が政党・政治資金団体以外の同じ相手にする寄附の年間上限(22条2項)で、それを会社に当てはめた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
X社は日本の株式会社で、発行済株式の過半数を外国法人が持っているが、その株式は金融商品取引所に5年以上継続して上場されている。X社が政党に政治活動に関する寄附をしたとき、政党がこれを受けても、外国人などからの寄附を受けることを禁じる22条の5には反しない。

答え:○ 分かれ目は、22条の5第1項ただし書です。同項は外国人・外国法人などから寄附を受けることを禁じ、外国人などが株式の過半数を持つ上場会社もその対象に含めていますが、ただし書で、日本法人で株式が「五年以上継続して上場されているもの」がする寄附を除いています。外国法人が過半数を持つので受けられない、と考えると✕に見えます。この寄附にも、会社の寄附としての総額の上限(21条の3)はかかります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
会社員のたかしさんは、ある政党に、1年の間に合計300万円を寄附したいと考えている。個人は同じ相手に対して年間150万円を超えて寄附できないので、たかしさんがこの政党に300万円を寄附することはできない。

答え:✕ 分かれ目は、150万円の上限がかかる相手です。22条2項は、個人の寄附について「政党及び政治資金団体以外の同一の者に対しては」150万円を超えられないとしています。正しくは、政党への寄附にはこの上限はかからず、個人が政党・政治資金団体にする寄附の総額の上限である年2,000万円(21条の3第1項)の中なら、300万円を寄附できます。政党以外の政治団体への上限を、政党にも広げた形です。

まとめ

  • 目的は、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与すること(1条)。手段は届出・収支の公開・授受の規正。
  • 政治団体は7日以内に届出。届出の前は寄附の受領も支出もできない(6条・8条)。
  • 収支報告書は翌年3か月以内に提出し、インターネットで公表(12条・20条)。年5万円を超える寄附は寄附者の氏名などを書く。
  • 会社の寄附は政党・政治資金団体にだけ。個人は総枠(政党などへ2,000万円、それ以外へ1,000万円)と、同じ相手への150万円(政党など以外)。外国人などからは受けられない。
  • 政治資金パーティーは政治団体が開く。一つのパーティーで同じ人から150万円まで。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめ、令和9年1月1日施行の改正後の条文もあわせて確かめました(2026年10月17日確認)。

このサイトで次に読むなら、政党助成法の記事です。同じ「政党」という言葉が、政治資金規正法と政党助成法で少し違う意味で使われていることを、要件の表で確かめられます。

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