ひとことで言うと、製造物責任法(PL法)は、製造物の欠陥によって人の生命・身体・財産が侵害されたとき、製造業者等が損害を賠償する責任を負うと定める法律です(3条)。民法709条の不法行為は、加害者の「故意又は過失」が要件です。PL法の責任は過失を要件にしていません。被害者は、製造物に「欠陥」があったことを示すことになります(消費者庁の説明)。
この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の社会の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、制度の骨組みを知るために読んでください。
PL法は平成6年法律第85号で、平成6年7月1日に公布されました。附則は「公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、この法律の施行後にその製造業者等が引き渡した製造物について適用する」としています。個別の事故・商品・企業の事例は書きません。条文は令和8年4月1日時点の法令を、2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確かめました。
身近な例で考えると
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| A社(架空) | 電気ストーブを作る会社 | ストーブを作り、販売店に引き渡した |
| B店(架空) | 家電の販売店 | ストーブを店で売った |
| けいたさん | 買った人 | B店でストーブを買い、家で使った |
- ふつうの使い方をしていたのに、ストーブの内部の不具合で、けいたさんの家のじゅうたんが焦げた。
- けいたさんは、A社に、じゅうたんの損害の賠償を求めたい。
- 民法709条で求めるなら、A社の故意か過失を問題にすることになる。PL法3条なら、ストーブに「欠陥」があったかが問題になる。
たとえると、PL法は「作った人の落ち度を探す」代わりに「製品が当然もつべき安全さを欠いていたか」を見る決まりです。ただし本物のルールでは、欠陥があっても、損害がストーブそのものにしか生じていないときは、PL法の責任は生じません(3条ただし書)。その場合は、民法の不法行為責任や契約不適合責任などの要件を満たすかで考えます(消費者庁の説明)。
条文ではこう決まっている
| 条 | 決まり |
|---|---|
| 2条1項(製造物) | 「製造又は加工された動産」 |
| 2条2項(欠陥) | 製造物の特性、通常予見される使用形態、引き渡した時期などを考えて、「通常有すべき安全性を欠いていること」 |
| 2条3項(製造業者等) | 1号 業として製造・加工・輸入した者、2号 製造業者として氏名等を表示した者・製造業者と誤認させる表示をした者、3号 実質的な製造業者と認められる表示をした者 |
| 3条(責任) | 引き渡した製造物の欠陥で他人の生命・身体・財産を侵害したとき、損害を賠償する。ただし、損害が製造物についてのみ生じたときは除く |
| 4条(免責) | 1号 引き渡した時の科学又は技術に関する知見では欠陥を認識できなかった、2号 部品・原材料で、欠陥が専ら他の製造業者の設計に関する指示に従ったことで生じ、かつ過失がない |
| 5条(消滅時効) | 知った時から3年(人の生命・身体は5年)、引き渡した時から10年 |
| 6条(民法の適用) | この法律に定めのないことは民法による |
4条の免責は、製造業者等の側が「証明したとき」に認められます。1号は一般に「開発危険の抗弁」と呼ばれますが、法律の言葉ではありません。基準は、その製造業者が知っていたかではなく、引き渡した時の「科学又は技術に関する知見」です。
「製造物」と「製造業者等」に当たるか
- 動産に限る:2条1項は「動産」としているので、建物などの不動産は製造物に当たりません。消費者庁の説明でも、不動産、電気、ソフトウェア、未加工の農林畜水産物などはこの法律の対象にならないとされています(ソフトウェアを組み込んだ製造物は対象と解される場合がある)。
- 輸入した者も入る:2条3項1号は「製造、加工又は輸入した者」です。国内で作っていなくても、業として輸入した者は製造業者等です。
- 販売店は原則入らない:消費者庁の説明では、販売業者は基本的にこの法律の対象ではありません。ただし、輸入業者や、2条3項2号・3号の表示をした者に当たる販売業者は対象になります。
「欠陥」の3つの類型
2条2項は欠陥を一つの定義で書いていて、種類には分けていません。消費者庁のQ&Aは、考え方として次の3つに分けて説明しています。条文の分け方ではなく、説明のための整理です。
- 製造上の欠陥:製造の過程で材料が混じったり、組立てを誤ったりした場合。
- 設計上の欠陥:設計の段階で安全性への配慮が足りなかった場合。
- 指示・警告上の欠陥:危険を避けるのに必要な情報を、製造者が与えなかった場合。
期間(3年・5年・10年)を日付で確かめる
5条は、令和2年4月1日に施行された改正(平成29年法律第45号)のあとの文言です。改正前の5条は見出しが「期間の制限」で、期間は知った時から3年と引き渡した時から10年の2つでした(2項は、いまの3項と同じ、蓄積・潜伏の損害の起算点の決まり)。人の生命・身体の侵害を5年にする2項は、この改正で入りました。民法724条の2が、人の生命又は身体を害する不法行為を5年にしたのと同じ形です。
けいたさんの例に日付を入れます。期間は、初日を数えず(民法140条)、最後の年の起算日に応当する日の前日に満了します(民法143条2項)。
- A社がストーブをB店に引き渡したのが令和8年3月10日。10年の期間は3月11日から数え、令和18年3月10日に満了する(5条1項2号)。
- けいたさんが損害とA社を知ったのが令和9年8月20日。じゅうたん(財産)だけの損害なら、3年の期間は8月21日から数え、令和12年8月20日に満了する(5条1項1号)。
- 同じ日に知った損害が人の身体の侵害なら、5年になり、令和14年8月20日に満了する(5条2項)。
- どれか一つでも当てはまれば時効で消える。この例では、10年の満了(令和18年3月10日)より前に、3年・5年が満了する。
10年の起算点は、けいたさんが買った日ではなく、製造業者等が引き渡した時です。また、身体に蓄積した場合に人の健康を害する物質による損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害は、10年を「その損害が生じた時から起算する」とされています(5条3項)。
民法709条とどう違うか
| 比べる点 | PL法3条 | 民法709条 |
|---|---|---|
| 責任を負う人 | 製造業者等(2条3項) | 故意又は過失で権利等を侵害した者 |
| 被害者が示すこと | 製造物の欠陥 | 故意又は過失 |
| 対象 | 製造又は加工された動産 | 限定なし |
| 長い方の期間 | 引き渡した時から10年 | 不法行為の時から20年(724条2号) |
短い方の期間は、どちらも知った時から3年、人の生命・身体の侵害は5年です(PL法5条1項1号・2項、民法724条1号・724条の2)。PL法に定めのないことは民法によります(6条)。不法行為の全体は不法行為の記事、建物の塀などの責任は工作物責任の記事、時効の起算点の比べは消滅時効の起算点の記事で扱っています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:ストーブの欠陥で、けいたさんのじゅうたんが焦げた。製造物以外の財産の侵害なので、A社は3条の責任を負います。
- 当てはまる例:海外で作られたストーブを業として輸入した会社。2条3項1号の「輸入した者」です。
- 当てはまらない例:欠陥でストーブそのものだけが壊れ、ほかに被害がなかった。3条ただし書で、PL法の責任は生じません。
- 当てはまらない例:建てた家の欠陥。建物は動産ではないので、製造物に当たりません。
- ひっかけやすい例:A社が「うちの社員に落ち度はなかった」と証明しても、それだけでは免れません。4条1号が求めるのは、引き渡した時の科学又は技術の知見では欠陥を認識できなかったことの証明です。
試験ではここをまちがえやすい
- 過失は要件でない:3条の要件は欠陥と侵害。民法709条の「故意又は過失」と取り違えない。
- 製造物のみの損害:損害が製造物についてのみ生じたときは3条の責任なし(ただし書)。
- 免責の基準:4条1号は「科学又は技術に関する知見」で決まる。製造業者の過失のなさではない。「過失がないこと」が出てくるのは2号(部品・原材料)。
- 期間:知った時から3年(人の生命・身体は5年)、製造業者等が引き渡した時から10年。5年は令和2年4月1日施行の改正から。
- 対象:製造又は加工された動産。不動産は入らない。輸入した者、製造業者として表示をした者は製造業者等に入る。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
けいたさんは、A社が作ってB店に引き渡したストーブを、B店で買った。ストーブの欠陥による損害について、けいたさんのA社に対するPL法3条の賠償請求権の10年の期間は、けいたさんがB店から買って受け取った時から数える。
答え:✕ 分かれ目は、10年の起算点です。PL法5条1項2号は、「その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したとき」と定めています。正しくは、A社がストーブをB店に引き渡した時から数えます。買った人が受け取った時や、損害が出た時から数えると考えた誤りで、損害が出た時から数えるのは、蓄積する物質や潜伏期間のある損害(5条3項)の特則の場合です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
製造業者A社は、ストーブに欠陥があることを自社が知らず、知らなかったことに過失もなかったことを証明すれば、欠陥によってけいたさんの財産に生じた損害について、PL法3条の賠償の責任を免れる。
答え:✕ 分かれ目は、免責で何を証明するかです。PL法4条1号の免責は、引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、欠陥があることを認識できなかったことの証明です。正しくは、A社自身に過失がなかったことを示しても、それだけでは免れません。過失のなさを問うのは民法709条の考え方で、PL法の中では、部品・原材料の製造業者の免責(4条2号)に「過失がないこと」が出てきます。
問3(このサイトのオリジナル問題)
B店は、A社から仕入れたストーブを売っただけで、自らは製造も輸入もしていない。ただ、そのストーブには、B店が自らを製造業者として自分の商号を表示していた。この場合、B店も、PL法3条の責任を負う「製造業者等」に当たる。
答え:○ PL法2条3項2号は、自ら当該製造物の製造業者として、その製造物に氏名、商号、商標その他の表示をした者を「製造業者等」に入れています。自分で作っていなくても、製造業者として表示をすれば当たります。消費者庁の説明でも販売業者は基本的にこの法律の対象ではないので、「売っただけの店は責任を負わない」と考えると✕に見えます。表示がなく、輸入もしていない販売店なら原則どおり対象外で、分かれ目は2条3項の表示をしたかどうかです。製造・加工・輸入・販売に係る形態などの事情からみて、実質的な製造業者と認められる表示をした者は、3号で入ります。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 製造物=製造又は加工された動産。欠陥=通常有すべき安全性を欠いていること。製造業者等には輸入した者・表示をした者も入る。
- 3条の責任は過失を要件にしない。損害が製造物だけのときは責任なし(ただし書)。
- 免責は4条:1号は引渡し時の科学又は技術の知見、2号は部品・原材料で設計の指示に従い過失がないこと。
- 期間は知った時から3年(生命・身体は5年)、引き渡した時から10年。
このサイトで次に読むなら、消費者基本法の記事です。PL法のような個別の法律の上にある、消費者政策の基本理念と責務を条文で整理しています。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令(改正前の5条は2019年1月1日時点の版)を、2026年10月17日に確かめました。消費者庁のQ&Aも同じ日に確かめています。
- e-Gov法令検索「製造物責任法」(1条〜6条、附則)
- e-Gov法令検索「民法」(140条・143条・709条・724条・724条の2)
- 消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」(対象にならないもの、欠陥の3つの考え方、販売業者の扱い、製造物だけの損害のとき)
働く人の法律試験ノート