宅建の勉強は、宅建業法 → 権利関係(民法など) → 法令上の制限 → 税・その他、の順に入るのが当サイトのすすめです。宅建業法は条文の言葉がそのまま正誤の決め手になるので、最初に「読んだらすぐ解ける」形を作れます。範囲がいちばん広い権利関係は、間をあけて戻る回数がいちばん要るので2番目に入ります。
ただし、これは「入る順」で、「終わらせる順」ではありません。次の分野に進んでも、前の分野は解き直しを続けます。どの分野でも、やり方の芯は3つです。読んだらその日のうちに本を閉じて思い出す。間をあけて解き直す。一通り終えたら、取り違えやすい制度を混ぜて解く。
この記事では、順番の理由と、4つの分野ごとのやり方の要点をオリジナルの○✕つきで示し、分野ごとの詳しい記事へつなぎます。教材の選び方と月ごとの計画は宅建を独学で受けるにはで扱っているので、ここでは「どう勉強するか」に絞ります。
宅建の勉強は、どの順番で進めればよいか
分野の分け方は、宅地建物取引業法施行規則8条の号にそろえます(呼び名は宅建試験の科目と出題範囲と同じです。この記事の「税・その他」は、税・価格の四号・六号と、登録講習修了者が免除される一号・五号を合わせた呼び名です)。当サイトのすすめる順番と、その理由は次のとおりです。
| 順番 | 分野 | その順にする理由 |
|---|---|---|
| 1 | 宅建業法(七号) | 条文の言葉がそのまま正誤になり、すぐ解ける |
| 2 | 権利関係(二号) | 範囲が広く、戻る回数がいちばん要る |
| 3 | 法令上の制限(三号) | 数字が多く、試験に近い時期に回数を足す |
| 4 | 税・その他(四号・六号と、一号・五号) | 範囲を区切りやすく、最後に仕上げやすい |
宅建業法を最初にするのは、条文の「誰が・いつ・どの書面で」が、そのまま選択肢の正誤の分かれ目になるからです。読んだその日に過去問で確かめられるので、あとで説明する「思い出す練習」を最初から回せます。宅建業法16条2項が「試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う。」と定めるとおり、試験の中心の分野でもあります。さらに、重要事項説明(宅建業法35条)で説明する事項には、法令上の制限や権利関係の中身が出てきます。先に宅建業法を読んでおくと、後の分野が「買う人に何を説明する話か」という見出しつきで頭に入ります。
権利関係を2番目にするのは、いちばん時間がかかる分野に、いちばん長い期間をとるためです。民法は、一度読んだだけでは場面と結論が結びつきません。間をあけて何度も戻ることで残ります。試験の近くになってから始めると、その「間」がとれません。
法令上の制限は、覚える数字と区域の名前が多い分野です。試験に近い時期に回す回数を多くとれるよう、3番目に置きます。ただし量はあるので、最後に回すと一周で終わってしまいます。税・その他は、税の種類ごとに範囲を区切りやすく、統計のように試験の年度の数字を覚えるものもあるので最後にします(統計はその年度の公表値を別に確かめます)。
順番は「入る順」。前の分野は回し続ける
順番を「宅建業法を終わらせてから権利関係へ」と受け取ると、試験のころには宅建業法を何か月もさわっていない、ということが起きます。次の分野に入ったら、前の分野は「解き直しの枠」に移して回し続けます。
| 段階 | 新しく入れる分野 | 解き直しを続ける分野 |
|---|---|---|
| 1 | 宅建業法 | ― |
| 2 | 権利関係 | 宅建業法 |
| 3 | 法令上の制限 | 宅建業法・権利関係 |
| 4 | 税・その他 | 3つの分野すべて |
| 仕上げ | ― | 全分野を混ぜて解く |
平日の机の時間を新しい分野に、通勤などのすき間と休日の一部を解き直しに使うと、2つの枠を両立できます。時間の分け方は働きながら受かる時間の使い方で説明しています。残りの期間ごとに、どの月にどの分野を置くかは宅建の勉強スケジュールを見てください。
順番を変えたほうがよい人
- 民法を勉強したことがある(行政書士試験の勉強をした人など):権利関係は復習で足りる所が多いので、宅建業法の次に法令上の制限に入り、権利関係は借地借家法など宅建で足す法律から始めます。
- 宅建業で働いていて、登録講習を終えている:問46〜問50の5問が免除されます。税・その他のうち、その5問にあたる「土地と建物の性質」「需要と供給」(一号・五号)の勉強がいらなくなるので、そのぶんを権利関係に回します(5問免除)。
- 試験までの期間が短い(残り3か月ほど):宅建業法の次に法令上の制限に入り、権利関係は売り買い・貸し借り・相続の基本だけにします。条文の数字と要件で正誤が決まる問題が多い分野を先にするためです(勉強スケジュールの記事の「残り3か月」の表と同じ考え方です)。どこまでにとどめるかは宅建試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所を見てください。
どの分野にも共通する勉強のしかたは何か
分野ごとのやり方に入る前に、どの分野にも使う3つのやり方を確かめます。学習法の研究をまとめた Dunlosky ら(2013年)は、10の学習法を比べ、練習テスト(自分で思い出す練習)と分散学習(間をあけた学習)を「有用性が高い」、読み返しや線を引くことを「有用性が低い」と評価しています。
読んだら、その日のうちに本を閉じて思い出す
Roediger と Karpicke(2006年)の実験では、大学生が短い説明文を学び、読み返す組と、読んだあと思い出して書き出す組を比べました。5分後のテストでは読み返した組のほうがよくできましたが、2日後と1週間後には、思い出した組のほうがよく覚えていました。読み返しは「覚えている」という自信を高めたのに、実際の記憶にはつながらなかった、という結果です。ただし、実験は文章の中身を書き出すテストで、法律の4択とは形が違います。
宅建の勉強に落とすと、こうなります。基本書の1単元を読んだら、本を閉じて「誰が・何を・いつまでに(いくらまで)」を3行で書き出します。そのあと、その単元の過去問を解きます。書き出せなかった所と、解けなかった肢だけ基本書に戻ります。くわしいやり方は読むより「思い出す」ほうが覚えるで説明しています。
間をあけて、前の単元に戻る
Cepeda ら(2006年)は、間をあけて学ぶ場合と、続けてまとめて学ぶ場合を比べた多くの実験を集めて分析し、間をあけたほうがよく残ること、テストが先になるほど、よい間隔も長くなることを示しました。
宅建に落とすと、月曜に読んだ宅建業法の単元は、木曜のすき間に○✕で思い出し、翌週の休日にもう一度その単元の過去問を解きます。すき間の○✕には、このサイトの宅建の5分○✕ドリル(オリジナルの肢で1回10問)も使えます。正解した問題も「もうできた」と外さず、間をあけてもう一度解きます。間隔の決め方は間をあけて繰り返す復習を見てください。
一通り終えたら、取り違えやすいものを混ぜて解く
Rohrer と Taylor(2007年)は、何種類かの数学の問題を、種類ごとにまとめて練習する組と、混ぜて練習する組を比べました。1週間後のテストでは、混ぜた組のほうが成績がよかったと報告しています。数学の実験なので、法律の4択にそのまま当てはまるとは言えません。それでも「この問題はどの決まりを使うのか」を見分ける練習になる、という考え方は使えます。
宅建で混ぜる相手は、似ていて取り違えやすい制度どうしです。
- 宅建業法:重要事項説明書(35条)と37条書面、営業保証金と保証協会
- 権利関係:民法の賃貸借と借地借家法、民法の契約不適合責任と宅建業法の8種制限
- 法令上の制限:開発許可・建築確認・農地法の許可(だれの、何の許可か)
- 税:不動産取得税と固定資産税(いつ、だれにかかるか)
混ぜるのは、それぞれを一通り終えてからです。分野別の問題集で、2つの制度の問題を交互に解くだけでも混ぜたことになります。やり方は同じ分野をまとめて解くより、混ぜて解くにまとめています。比べる表は、きれいに清書することに時間をかけず、列を隠して言う・白紙の枠に思い出して埋める、という使い方で確かめます(白紙に埋めるやり方は法令上の制限の勉強法で説明しています)。
宅建業法は、どう勉強するか
要点は3つです。
- 条文の言葉で○✕を言えるようにする:「誰が(業者か宅建士か)」「いつ(契約の前か後か)」「どの書面を誰に」「何日・いくら」の4つが、選択肢の正誤の分かれ目になります。
- 取引の流れの順に単元を回す:免許・宅建士・営業保証金(仕事を始める)→媒介契約・重要事項説明・37条書面(取引の流れ)→業者が売主のときの決まり・報酬→監督処分。
- 似た制度は表で比べる:35条書面と37条書面、営業保証金と保証協会などは、表の列を隠して言えるかで確かめます。
例(このサイトのオリジナル問題):「宅建業者は、重要事項の説明を、自分の会社の従業者であれば、宅建士でない者にさせてもよい。」
答えは✕です。宅建業法35条1項は、契約が成立するまでの間に「宅地建物取引士をして」書面を交付して説明をさせなければならない、と定めています。この問題は「誰が」をすり替えた形です。こうしたすり替えの型、宅建業法で何問を目標にするか、1週間の回し方は宅建業法の勉強法でくわしく説明しています。
権利関係(民法)は、どう勉強するか
- 登場人物の図を描いてから選択肢を読む:A・B・Cと矢印(売った・貸した・登記した)を余白に描くと、誰と誰の争いかが見えます。
- 土地・建物の場面から入る:売り買い、貸し借り、お金を借りて土地を担保に入れる、相続。この場面に出てこない細かい所は後回しにします。
- 結論だけでなく、理由を一言で言う:「登記がないから対抗できない」のように条文の要件と結びつけておくと、場面を変えて出されても答えがぶれません。
例(このサイトのオリジナル問題):「AがBに土地を売ったが、Bが登記をする前に、Aが同じ土地をCにも売り、Cが先に登記をした。この場合、Bは原則として、Cに土地の所有権を主張できない。」
答えは○です。民法177条は、不動産の物権の変動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。図を描けば、先に登記をしたCとの争いだと一目で分かります(くわしくは不動産の二重譲渡と登記)。範囲の絞り方と、論点ごとの優先順位は宅建の権利関係(民法)の勉強法で扱っています。
法令上の制限は、どう勉強するか
- 「何のための制限か」→「誰の許可(届出)か」→「数字」の順で覚える:数字だけを先に覚えると、どの法律の数字かが混ざります。
- 数字は「以上」「未満」「超」まで覚える:境目ちょうどの数字が選択肢に出たとき、ここで答えが分かれます。
- 宅建業法とつなぐ:法令上の制限は、重要事項説明で買う人に説明する中身です。「この土地を買う人に何を説明するか」と考えると、ばらばらの法律が一つの場面にまとまります。
例(このサイトのオリジナル問題):「市街化区域内で1,000平方メートルの開発行為をする場合、原則として開発許可はいらない。」
答えは✕です。都市計画法29条1項1号と都市計画法施行令19条1項により、市街化区域で許可がいらないのは、原則として「千平方メートル」未満の規模です。1,000平方メートルちょうどは「未満」に入らないので、許可がいります(首都圏などの一部の区域は500平方メートルとされ、条例で別に定める場合もあります)。どの法律から回すか、数字の覚え方は宅建の法令上の制限の勉強法と覚え方で説明しています。
税・その他は、どう勉強するか
- 税は「何に・誰に・いつ・いくら(税率・特例)」の4つの欄で覚える:不動産取得税・固定資産税・登録免許税・印紙税・譲渡所得を同じ欄で並べると、違いが見えます。
- かからない場面(非課税)を先に覚える:「相続ではかからない」のような決まりは、そのまま選択肢の正誤になります。
- 統計は、試験の年度の数字を、試験が近づいてからまとめて覚える:古い年の数字で覚えても点になりません。
- 登録講習を終えていない人は、問46〜問50(土地と建物の性質、需要と供給)も、早めに一度通しておく:後回しにして最後の週に初めて見る、という形を避けます。
例(このサイトのオリジナル問題):「相続で土地を取得した人には、不動産取得税がかかる。」
答えは✕です。地方税法73条の7第1号は、相続による不動産の取得に対して、不動産取得税を「課することができない」と定めています。税をどこまでやるか、捨ててよいかの判断は宅建の税・その他の勉強法で扱っています。
今日からやること
- 自分の順番を決める。基本は宅建業法から。民法を勉強したことがある人と、残り3か月ほどの人は、宅建業法→法令上の制限→権利関係にする。
- 次に読む1単元を決め、読み終えたら本を閉じて「誰が・何を・いつまでに」を3行で書く。そのあと、その単元の過去問を解く。
- 解き直しの日を先に決めておく。読んだ日から3〜4日後のすき間と、翌週の休日。
- 次の分野に入ったら、前の分野の解き直しを、週1回の枠として予定に残す。
- 10月18日の試験まで1週間ほどの人は、新しい分野や教材に手を広げず、今の問題集の✕と△の解き直しに時間を使う(直前1か月の復習の配分)。
このサイトで次に読むなら、最初に入る分野の宅建業法の勉強法がおすすめです。宅建業法で何問を目標にするか、問題の型、1週間の回し方まで決められます。目標点(当サイトの目安は50問中38点、5問免除の人は45問中33点)と、どの分野で何問まで落としてよいかを先に決めたい人は、宅建試験の得点戦略を読んでください。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.(DOI)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI)
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.(DOI)
- Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35(6), 481–498.(DOI)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の範囲、登録講習修了者の免除)
- e-Gov法令検索(2026年4月1日時点の条文):宅地建物取引業法 16条・35条、宅地建物取引業法施行規則 8条、民法 177条、都市計画法 29条、都市計画法施行令 19条、地方税法 73条の7
働く人の法律試験ノート