働きながら受かる時間の使い方:平日・すき間・休日の役割分担

働きながらの勉強では、毎日同じ長さの時間をとろうとするより、時間の「種類」ごとに役割を決めるほうがうまく回ります。平日に机に向かえる30〜60分は、新しい単元を読んで、すぐその単元の問題を解く時間にします。通勤や昼休みの5〜15分は、前に読んだことを思い出す時間にします。休日のまとまった時間は、分野を混ぜて解き、弱点をつぶし、次の週の段取りをする時間にします。

こう分けると、1つの単元に、1週間のうちに日をあけて3回以上出会うことになります。「間をあけて繰り返す」「読み返すより思い出す」「分野を混ぜて解く」の3つは、学習の研究で効果が確かめられてきたやり方です。この記事では、その研究を短く紹介し、行政書士試験と宅建試験の勉強に当てはめた1週間の回し方を示します。

1日に何時間とるか、1週間の時間割の基本は勉強時間の考え方の記事に書いています。ここでは「どの時間に、何を入れるか」に絞ります。

なぜ時間の長さではなく「種類」で分けるのか

勉強の作業には、それぞれ必要な条件があります。新しい単元を読むには、集中できる時間とテキストが要ります。行政書士試験の記述式(40字程度で答えを書く問題)の練習には、紙とペンが要ります。一方で、前に覚えたことを思い出すだけなら、スマホと数分で足ります。条件の合わない時間に作業を入れると、始めるまでに時間がかかり、途中で切れてしまいます。

もう一つの理由は、記憶の性質です。間をあけた学習の研究を集めた分析(Cepedaら、2006年)は、317の実験を調べました。単語や事実を覚える実験が中心です。その結果、間をあけて学ぶほうが、続けてまとめて学ぶより後まで残るという結果が、くり返し出ていると報告しています。

これは働く人にとって、よい知らせです。平日の短い時間がばらばらに散らばっていることは、弱みではありません。間をあける機会になるからです。間のあけ方は間をあけて繰り返す復習の記事でくわしく説明します。

自分の1週間の時間を3つに分けてみる

最初に、ふつうの1週間で使える時間を書き出し、次の3つに分けます。

  • 机の時間:机に向かえて、20分以上続けられる時間。出勤前や帰宅後など。
  • すき間:手は空くけれど、本を広げにくい5〜15分。通勤の電車、昼休み、待ち時間など。
  • まとまった時間:休日などに、2時間以上続けてとれる時間。

書き出してみると、机の時間は思ったより少なく、すき間は思ったより多いことがあります。そのときは、すき間でできる作業を増やします。残業の多い時期は、机の時間がゼロの日も出ます。その日は「すき間だけで回す日」と先に決めておけば、予定が崩れたと感じずに済みます。

次の表は、作業ごとに向いている時間をまとめた、当サイトの例です。

作業向いている時間要るもの長さの目安
新しい単元を読む机の時間テキスト20〜30分
分野別の過去問を解く机の時間問題集20〜30分
○✕で思い出すすき間スマホ・カード5〜10分
数字・期間の確認すき間スマホ・カード5分
記述式を書く(行政書士)机・休日紙とペン15分〜
混ぜて解く・通し演習まとまった時間問題集・過去問1〜3時間
次の週の段取り休日の最後予定表10〜20分

平日の机の時間には何をやるか:新しく入れて、その場で解く

机の時間は、1週間のうちで一番集中しやすい時間です。新しい単元を進めるのは、ここだけにします。すき間で新しい単元を読もうとすると、途中で切れて、同じところを何度も読み直すことになりがちです。

大事なのは、読んで終わりにしないことです。60分なら「読む25分→その単元の分野別過去問25分→まちがえた選択肢に印をつける10分」のように、最後に解く時間を残します。30分しかとれない日は、読む範囲を半分にして、解く時間のほうを守ります。

解く時間を入れる理由は、思い出す練習の研究にあります。大学生に短い文章を学ばせ、くり返し読む組と、読んだあと思い出して書く組を比べた実験があります(Roediger & Karpicke、2006年)。5分後のテストでは、くり返し読んだ組のほうがよくできました。ところが1週間後には、思い出して書いた組のほうがよく覚えていました。読んだ直後の「分かった感じ」は、1週間後の記憶とは別物だということです。くわしくは読むより思い出す練習の記事にまとめています。

机の時間の最後の10分でつけた印が、次のすき間で解く問題になります。机の時間とすき間は、この印でつながっています。

すき間時間には何をやるか:前に入れたことを思い出す

すき間は、新しいことを入れる時間ではなく、前に入れたことを取り出す時間にします。数日前に机で読んだ単元の○✕問題を、スマホやカードで解きます。答えを見る前に、自分の答えと、その理由を頭の中で言ってみます。言えなかったものには、また印をつけます。

すき間に向いているのは、短く問える知識です。行政書士試験なら、審査請求ができる期間があります。行政不服審査法18条では、原則として、処分があったことを知った日の翌日から3か月、処分があった日の翌日から1年を過ぎると、審査請求ができません。こうした数字と起算点(数え始める日)の組み合わせです。宅建試験なら、クーリング・オフがあります。宅建業法37条の2では、クーリング・オフができることなどを告げられた日から数えて8日を過ぎるとできなくなり、申込みの撤回などは書面で行います。こうした要件と数字が向いています。

すき間で迷わないために、何を解くかは前の日の机の時間に決めておきます。「いつ・どこで・何をするか」を前もって決めておくと、決めたことを実行しやすくなります。これは、多くの研究をまとめた分析(Gollwitzer & Sheeran、2006年)でも示されています。「朝の電車に乗ったら、昨日の印の問題を5問」のように、場面とやることをセットで決めます。すき間でやる中身は通勤・昼休みの15分の記事で具体的に紹介します。

休日のまとまった時間には何をやるか:混ぜて解き、弱点をつぶし、段取りをする

まとまった時間は、平日にはできないことに使います。当サイトでは、休日の3時間を次のように分ける例をすすめます。

  1. 混ぜて解く(約90分):その週と前の週に進めた単元の問題を、分野を混ぜて解く。
  2. 弱点をつぶす(約60分):平日とすき間でまちがえ続けた問題だけを、テキストと条文に戻って確かめる。
  3. 次の週の段取り(約10〜20分):平日に進める単元と、すき間で解く問題を決める。

混ぜて解く理由も、研究にあります。大学生に4種類の立体の体積の求め方を学ばせ、同じ種類の問題をまとめて解く組と、種類を混ぜて解く組を比べた実験です(Rohrer & Taylor、2007年)。練習中の正答率は、まとめて解く組のほうが高く出ました。ところが、練習の1週間後のテストでは、混ぜて解いた組が63%、まとめて解いた組が20%でした。テストでのまちがいは、ほとんどが計算ミスではなく「使う公式の選びまちがい」でした。人数は18人と少ない実験ですが、見分ける力が要ることを示しています。

本番の試験では、どの分野の問題かを教えてもらえません。分野を混ぜて解くことは、「これはどの知識で解く問題か」を見分ける練習になります。やり方は混ぜて解く練習の記事で説明します。

試験の数か月前からは、休日の1回を通し演習(本番と同じ時間で全問を解く練習)に替えます。行政書士試験は午後1時から4時までの3時間です。宅建試験は午後1時から3時までの2時間で、50問の4択です。通し演習の進め方は休日の使い方の記事で取り上げます。

1つの単元は1週間でどう回るか

3つの時間をつなぐと、1つの単元が1週間に3回以上、日をあけて出てきます。次は、平日の机の時間が30〜60分、休日に3時間とれる人の例です。

曜日時間行政書士の例宅建の例
月机60分行政手続法の不利益処分を読み、過去問クーリング・オフを読み、過去問
水すき間10分聴聞か弁明かの分かれ目を○✕で8日・書面などを○✕で
金すき間10分水曜にまちがえた問題だけ水曜にまちがえた問題だけ
土休日3時間行政手続法・行政不服審査法・民法を混ぜて解く8種制限・媒介契約などと混ぜて解く

行政手続法13条では、許認可の取消しなどの不利益処分をするときは聴聞(ちょうもん=期日を開いて相手の言い分を聞く手続)、それに当たらないときは弁明の機会の付与(原則として書面で言い分を出してもらう手続)を行います。どちらになるかの分かれ目は、水曜の○✕で問いやすい中身です。

この回し方のポイントは、月曜に読んだ単元を、その日のうちにもう一度読み返さないことです。水曜に思い出すとき、少し忘れかけているくらいでかまいません。思い出すのに少し苦労する練習のほうが後まで残る、という考え方は「望ましい困難」と呼ばれています(Bjork & Bjork、2011年)。ただし同じ論文は、学ぶ人がこなせないほどの難しさは、ただの妨げになるとも書いています。まったく思い出せなかったら、すぐ答えとテキストを見て、次の回に回します。

予定が崩れる週はどう組めばいいか

時間の役割を決めても、1週間の予定はよく崩れます。人は、作業にかかる時間を短く見積もりがちだからです。卒業論文に取り組む大学生に、書き終える日を予想してもらった研究があります(Buehlerら、1994年)。予想は平均で約34日後でしたが、実際には平均で約56日かかりました。予想した日までに終えた人は、3割ほどでした。「何もかもうまくいかなかった場合」の予想(平均約49日)でさえ、実際より短かったのです。

この結果から、当サイトでは次のように組むことをすすめます。

  • 書き出した机の時間の全部に予定を入れず、週に1回分は空けておく。残業でつぶれた週は、そこで取り戻す。つぶれなかった週は休んでよい。
  • 机の時間がとれない日も、すき間の○✕だけは続ける。新しい単元が進まなくても、思い出す練習は止めない。
  • 週の終わりに、予定した量と実際の量を比べる。予定より少ない週が2回続いたら、見積もりが楽観的すぎると考えて、次の週の量を減らす。

遅れを取り戻そうとして、休日の3時間を新しい単元の読み込みに全部使うのはおすすめしません。混ぜて解く時間と段取りの時間がなくなり、次の週の平日とすき間でやることが決まらないまま始まってしまうからです。

今日から何を変えるか

  • ふだんの1週間の時間を書き出し、「机の時間・すき間・まとまった時間」に分ける。
  • 新しい単元は机の時間だけで進め、読んだあとに分野別過去問を解く時間を残す。
  • 机の時間の最後に、すき間で解く問題(まちがえた問題)に印をつけておく。
  • 休日は、混ぜて解く時間と、次の週の段取りの時間を先に予定に入れる。
  • 机の時間を週に1回分、予備として空けておく。

次に読むなら、間をあけて繰り返す復習の記事がおすすめです。この記事の1週間の回し方を試験日まで続けるとき、復習の間隔をどう広げていけばよいかが分かります。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.(DOI/PubMed)
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI/PubMed)
  • Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498.(DOI)
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.(DOI)
  • Buehler, R., Griffin, D., & Ross, M. (1994). Exploring the “planning fallacy”: Why people underestimate their task completion times. Journal of Personality and Social Psychology, 67(3), 366–381.(DOI)
  • Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2011). Making things hard on yourself, but in a good way: Creating desirable difficulties to enhance learning. In Psychology and the real world: Essays illustrating fundamental contributions to society.(著者の研究室のPDF)
  • 行政書士試験研究センター「試験概要」(試験の時間)、同「令和8年度 試験案内」(PDF)(記述式は40字程度)
  • 不動産適正取引推進機構「試験概要」(50問・4肢択一式)、同 試験日程(試験の時間)
  • e-Gov法令検索:行政手続法13条、行政不服審査法18条、宅地建物取引業法37条の2

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です