宅建試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所:合格点と出題範囲の条文から決める

宅建試験で「どこを捨てるか」は、公式に決まっていることだけで決めます。合格基準点は50問の合計で示され、分野ごとの最低点はありません。直近5年(令和3〜7年度)の合格基準点は50問中33〜37点で、落としてよかったのは13〜17問でした。出題範囲は、宅地建物取引業法施行規則8条の「7つの事項」です。

この物差しで見ると、深追いしなくてよい(基本だけにする)のは、法令上の制限のうち、政令の一覧に名前があるだけで教材に章のない法律、税と土地の値段の細かい所、民法のうち土地・建物と関係の薄い所(婚姻・親子など)です。本当に後回しでよいのは、令和8年4月1日より後に施行される改正と、登録講習を終えた人にとっての免除の範囲です。反対に、意外と捨てないほうがいいのは、一般の受験者にとっての免除科目の5問、都市計画法と建築基準法、借地借家法と相続、そして宅建業法の全体です。

ここでいう「捨てる」は、「まったくやらない」ではありません。「基本だけにして深追いしない」と「本当に後回し」の2つに分けて考えます。

何を物差しにして「捨てる」を決めるのか

合格点は合計だけで、毎年変わる

宅建試験は、50問の四肢択一式(4つから1つ選ぶ問題)です。不動産適正取引推進機構(試験を実施している機関。以下「機構」)の試験実施概況では、合格基準点は「50問中◯点」という合計の形で示されています。行政書士試験のような、科目ごとの足切りは示されていません。

年度合格基準点落としてよかった問数
令和7年度50問中33点17問
令和6年度50問中37点13問
令和5年度50問中36点14問
令和4年度50問中36点14問
令和3年度(10月)50問中34点16問

基準点は年によって変わり、直近5年では低い年と高い年で4点ちがいます。前もって「何点で合格」とは決まっていないので、計画は厳しいほうの年(13問)で考えておくと安心です。合格点の決まり方は宅建試験の合格点と合格率にまとめています。

ここから分かることが2つあります。1つ目は、どの分野の1問も、合計の中では同じ1問だということです。だから「捨てる」とは、「時間あたりで点にしにくい所を減らし、点にしやすい所に時間を回す」という判断になります。2つ目は、捨ててよい量は思ったより少ないということです。勉強した分野でもまちがいは出ます。13問の枠を、捨てた分野だけで使い切るわけにはいきません。

分野ごとの問題数は、物差しにしない

「権利関係は何問」といった分野ごとの問題数は、公式には発表されていません。機構は施行規則8条の7つの事項を挙げるだけです。このサイトでは、問題数の集計を理由にした「捨てる・捨てない」は書きません。かわりに、範囲を決めている条文の言葉と、合格点の仕組みだけを使います。7つの事項の中身は宅建試験の科目と出題範囲で説明しています。

深追いしなくてよい所はどこか(基本だけにする)

法令上の制限:政令の一覧にあるだけの法律

施行規則8条3号は「土地及び建物についての法令上の制限に関すること。」です。どの法律が入るかの手がかりは、宅建業法35条1項2号にあります。宅建業者が契約の前に説明しなければならない「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限」です。法律の条文に名前が書かれているのは、都市計画法と建築基準法の2つだけです。

「その他の法令」の中身は、政令(宅地建物取引業法施行令3条1項)に並んでいます。e-Gov法令検索の現行版では64号まであり、60をこえる法律が挙がっています。古都の歴史的風土、空港周辺の騒音対策、砂防、文化財など、範囲はとても広いものです。これを全部同じ深さでやるのは、働きながらでは現実的ではありません。

そこで、都市計画法と建築基準法を軸にします。同じ一覧に入っている法律でも、農地法・国土利用計画法・土地区画整理法・宅地造成及び特定盛土等規制法のように、教材が独立した章で扱う法律は、基本まで押さえます。教材に章がなく、一覧に名前があるだけの法律は、深追いしません。

税(4号)と土地の値段(6号)の細かい所

4号は「宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。」です。土地や建物には、買うとき・持っているとき・売るときに、いくつもの税金がかかります。税ごとに特例(条件を満たすと軽くなる決まり)もあり、細かく見ると範囲が広がります。まず不動産取得税と固定資産税の「だれに・どこが・何に」かけるかという基本を固め、特例の細かい数字は深追いしません。

6号は「宅地及び建物の価格の評定に関すること。」です。地価公示法は、決められた地点の「正常な価格」を公表するしくみを決めた法律で、目的は1条に書かれています。しくみの全体を説明できる程度にとどめます。

民法のうち、土地・建物と関係の薄い所

民法が入る2号は「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。」です。範囲を決める言葉が「土地及び建物についての」となっている点に注目します。婚姻・離婚・親子など、親族の細かい決まりは、土地や建物の権利と関係が薄い所です。宅建では深追いしません。

ここは行政書士試験と扱いがちがいます。行政書士試験は「民法」がそのまま範囲で、令和8年4月1日に施行された家族法の改正も範囲に入ります。両方を受ける人は、行政書士試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所と見比べてください。

本当に後回しでよい所はどこか

登録講習を終えた人:1号と5号

登録講習(宅建業で働く人が受けられる講習)を終え、その修了試験に合格した日から3年以内の試験では、施行規則8条の1号と5号が免除されます(施行規則10条の14)。機構の過去問ページでは、修了者の問題は問1〜問45とされています。免除される5問(問46〜問50)は、解かなくてよい問題です。この人たちにとっては、勉強しなくてよい範囲です。条件と期間は5問免除(登録講習)の記事で確かめてください。

令和8年4月1日より後に施行される改正

機構は「出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。」としています。それより後に施行される改正は、その年の試験の範囲に入りません。たとえば民法は、令和8年法律第45号による改正が、令和8年6月24日から段階的に施行されています。令和8年度の範囲には入りません。

一方、宅建業法は、e-Gov法令検索の改正履歴で、令和8年4月2日以降に施行される改正が出ていません(最新は令和8年4月1日施行の改正で、これは範囲に入ります)。いまe-Govで開く宅建業法の条文が、そのまま令和8年度の範囲の条文です。民法のように、開いた条文が範囲外の改正を含んでいないかは、法律ごとに改正履歴で確かめます。

意外と捨てないほうがいい所①:一般の受験者にとっての免除科目5問

登録講習を受けていない人は、1号と5号の5問(問46〜問50)も解きます。1号は「土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。」、5号は「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。」です。

この5問は、試験の最後に並んでいます。勉強でも最後に回しがちで、時間切れで手つかずになりやすい所です。でも、5問は、厳しい年に落としてよかった13問の4割近くにあたります。ここを丸ごと捨てて5問とも落とすと、ほかの45問でまちがえてよいのは8問だけになります。

深く掘る必要はありません。1号なら、地目(宅地・田・畑などの土地の使いみちの種類)や、木造・鉄筋コンクリート造といった建物の構造の基本を押さえます。5号は範囲がばくぜんとしているので、教材の該当章を1回読み、問題で確かめる程度にします。「捨てない、でも深追いもしない」の扱いです。

意外と捨てないほうがいい所②:都市計画法・建築基準法、借地借家法、相続

都市計画法と建築基準法

法令上の制限は「数字が多いから捨てたい」と感じやすい分野です。でも、先に見たとおり、宅建業法35条1項2号に名前が書かれているのは、この2つです。宅建士が契約の前にお客さんへ説明する制限の中心で、宅建業法の重要事項説明ともつながっています。用途地域、建ぺい率・容積率、開発許可は、この2つの法律の中の話です。「何のための制限か」と数字をセットで覚えれば、取りちがえにくくなります。

借地借家法と、民法の相続

2号の「土地及び建物についての権利」を、いちばんまっすぐに定めているのが借地借家法です。土地や建物を借りる人を守るために、民法の賃貸借のルールを修正した法律です。民法の範囲の広さに疲れて、借地借家法まで手が回らないことがありますが、条文の数は民法よりずっと少なく、2号の言葉にそのまま当てはまります。民法とのちがいは借地借家法をわかりやすくで説明しています。

相続は、親族の決まりと同じく民法の後ろのほうにありますが、扱いは別です。相続によって土地や建物の持ち主が変わるので、2号の「権利の変動」そのものです。親族の細部は深追いしない一方で、相続人・相続分・相続放棄の基本は残します。

宅建業法は、どこまでやればよいか

宅建業法には、「捨てる」場所を作らないことをすすめます。宅建業法16条2項は「試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う。」と定めています。試験の名前のもとになっている、中心の分野です。

もう一つの理由は、一つの法律にまとまっていて、決まりが具体的なことです。「何日以内」「だれが」「書面で」といった条文の言葉が、そのまま要件になっています。覚えた言葉を、問題の正誤の判断にそのまま使えます。範囲が広くてつかみにくい民法や、法律の数が多い法令上の制限とくらべると、同じ時間をかけたときに点にしやすい分野だと当サイトは考えます。削った分野で浮いた時間は、まず宅建業法の条文の確認に回します。

今日からやること

  • 「落としてよいのは13問」として、捨てる分野で何問落とす計算になるかを書き出す。
  • 法令上の制限は、都市計画法・建築基準法の章を先に仕上げ、次に農地法などの章へ進む。教材に章のない法律には時間を使わないと決める。
  • 民法は、親族の細部に印を付けて後回しにし、そのかわり借地借家法と相続の基本を予定に入れる。
  • 登録講習を受けていない人は、1号・5号(問46〜問50)を最後の週まで残さず、早めに1回通しておく。
  • 教材が令和8年4月1日時点の法令に合わせてあるか、版と発行時期を確かめる。

このサイトで次に読むなら、宅建を独学で受けるにはがおすすめです。ここで決めた「深追いしない所・残す所」を、教材の選び方と半年の計画にそのまま落とし込めます。7つの事項をもう一度確かめたい人は、宅建試験の科目と出題範囲を読むと、範囲の全体を見渡せます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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