住宅ローン控除は、ローンを組んで家を買った人が、年末のローンの残高の0.7%を、所得税から差し引ける特例です。正式な名前は「住宅借入金等特別控除」で、租税特別措置法41条に定められています。
ひとことで言うと、条件は4本です。家の床面積(原則50平方メートル以上)、買う人の所得(合計所得金額2,000万円以下)、住み始める時期(取得などから6か月以内)、借入れの期間(10年以上で分けて返す)。そしてもう1つ、前の家を売って3,000万円控除などの特例を受けると、前後の決まった年は住宅ローン控除が使えません。
この記事では、条件の当てはめと、売ったときの特例との組み合わせを扱います。売ったときの税の計算そのものは不動産を売ったときの税金(譲渡所得)で説明しています。この記事は令和8年4月1日現在の法令によります。控除の期限や、借入れの限度額・控除の期間は住宅の種類と住み始めた年で細かく分かれ、税制改正で変わるので、試験では条件の中身を優先して覚えます。
身近な例で考えると
登場人物は2人です。家を買い替える会社員=さとしさん(その年の合計所得金額は700万円)と、さとしさんの妻=みほさんです。
- 令和7年:さとしさんは、10年住んだ前の家を売った。もうけが出たので、居住用財産の3,000万円特別控除を受けて、所得税がかからなかった。
- 令和8年4月:さとしさんは、35年の住宅ローンを組んで、床面積80平方メートルの新築住宅の引渡しを受けた。
- 令和8年6月:家族で新しい家に住み始めた(引渡しから6か月以内)。
- 令和9年の確定申告:さとしさんは、令和8年分の住宅ローン控除を受けようとした。
床面積・所得・入居の時期・借入期間の4本の条件は満たしています。ところが、住み始めた年(令和8年)の前年に、3,000万円控除を受けています。この場合、住宅ローン控除は使えません(41条21項)。
もしさとしさんが、前の家ではなく、親から相続した空き家を売って「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円控除」を受けていたなら、話は変わります。こちらは住宅ローン控除と重ねて使えます。
たとえるなら、住宅ローン控除と売ったときの特例は「同じ時期に一つしか使えないクーポン」です。ただし本物のルールでは、使えないのは自分が住んでいた家を売ったときの特例で、相続した空き家を売ったときの特例は別扱いです。
条文ではこう決まっている
- だれが・何を:個人が、住宅の新築・取得(または増改築等)をして自分が住み、そのためのローンなど(住宅借入金等)があるとき(41条1項)。
- 控除の額:年末の借入金等の残高(限度額あり)に0.7%をかけた額を、その年の所得税から差し引く(令和4年から令和12年に住み始めた場合。41条4項)。
- 住み始める時期:新築・取得などの日から6か月以内に住む(41条1項)。そのうえで、控除を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること。
- 所得:控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下の年に限る(41条1項)。床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の家(一定のもの)は、1,000万円以下の年に限る。
- 床面積:50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上をもっぱら自分の住まいに使うもの(租税特別措置法施行令26条1項)。40平方メートル以上50平方メートル未満の特例の家もある。
- 借入れ:償還期間(返す期間)が10年以上の割賦償還の方法で返すものなど(41条1項1号ほか)。
- 控除の期間:原則10年。新築の認定住宅などは13年(住み始めた年による)。国税庁の説明では、令和6年以後に住み始めた新築の「その他の住宅」(省エネ基準に合わない住宅)は、原則として対象外です(一定の建築時期のものは10年)。
- 対象にならない取得:国税庁の説明では、贈与による取得や、生計を一にする親族などからの取得は対象外です。
- 売ったときの特例との関係:41条21項・22項(下の表)。
条件を事例で当てはめる
| 条件 | 線 | 当てはまらない例 |
|---|---|---|
| 住み始める時期 | 取得などから6か月以内 | 2月に引渡し、9月に入居(7か月後) |
| 所得 | 2,000万円以下(40〜50㎡未満の家は1,000万円以下) | その年の合計所得金額が2,100万円 |
| 床面積 | 50㎡以上、2分の1以上が自分の住まい | 100㎡のうち住まいは40㎡の店舗併用住宅 |
| 借入れ | 10年以上で分けて返す | 返済期間8年のローン |
| 取得のしかた | 贈与・生計を一にする親族からの取得は除く | 生計を一にする父から買った家 |
当てはめるときは、問題文から「引渡しの日と住み始めた日」「所得」「床面積(と自分の住まいの部分)」「返済期間」の4つを抜き出し、上から順に線と比べます。所得の条件は「控除を受ける年ごと」に見る点に注意します。ある年だけ所得が2,000万円を超えても、その年が使えないだけで、ほかの年は使えます。
売ったときの特例と併用できない組み合わせ
前の家を売ったときの特例と、新しい家の住宅ローン控除は、決まった年の範囲で重なると、住宅ローン控除が使えません。
| 売ったときの特例 | 住宅ローン控除と | 条文 |
|---|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 併用できない | 35条1項(41条21項・22項) |
| 居住用財産の軽減税率(10年超所有) | 併用できない | 31条の3第1項 |
| 特定の居住用財産の買換え・交換の特例 | 併用できない | 36条の2・36条の5 |
| 既成市街地等の中高層耐火建築物等の買換えなど | 併用できない | 37条の5 |
| 相続した空き家の3,000万円特別控除 | 併用できる | 35条3項(21項のかっこ書きで除外) |
使えなくなる年の範囲は、住み始めた年(居住年)を真ん中に、次のとおりです(41条21項・22項)。
- 居住年、その前年、前々年に、上の特例を受けたとき。
- 居住年の翌年から3年以内に、前の家など(新しい家とその敷地以外の資産)を売って、上の特例を受けるとき。
まとめると、居住年の前2年・居住年・後3年の6年間に「自分が住んでいた家を売ったときの特例」を受けると、住宅ローン控除は使えません。
覚え方は「売る側の特例と、買う側の特例は、同じ家の買い替えの前後では一つ」です。売ったときにもうけが出ないなら、売る側の特例はもともと要りません。だから、もうけが小さいときは住宅ローン控除を、もうけが大きいときは3,000万円控除を選ぶ、という選び方になります(どちらが有利かは額しだいです)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(店舗併用住宅):床面積120平方メートルのうち、80平方メートルが住まい、40平方メートルが店の家を買った。2分の1以上が自分の住まいなので、対象になりうる(施行令26条1項)。
- 当てはまらない(入居が遅い):2月1日に引渡しを受け、9月1日に住み始めた。同じ年の中でも、6か月を過ぎているので使えない。
- 当てはまらない(前年に3,000万円控除):さとしさんの例。前年に自分が住んでいた家を売って3,000万円控除を受けているので、使えない。
- ひっかけやすい(空き家の特例):前年に相続した親の空き家を売り、空き家の3,000万円控除を受けた。この特例は併用の制限から外されているので、住宅ローン控除は使える(41条21項のかっこ書き)。
- ひっかけやすい(所得は年ごと):控除を受けている途中の1年だけ、合計所得金額が2,000万円を超えた。その年は使えないが、翌年以後に2,000万円以下に戻れば、その年はまた使える。
試験ではここをまちがえやすい
- 期間の数字の型:入居は「6か月以内」。登録免許税の住宅用家屋の軽減の「取得後1年以内の登記」と混ぜて、「1年以内に住めばよい」とする形に注意します。
- 所得の線の型:原則2,000万円以下、40〜50平方メートル未満の家は1,000万円以下。贈与税の住宅取得等資金の非課税の特例と、所得の線(2,000万円と1,000万円)は同じですが、床面積の下限の意味が違います。
- 控除率の型:令和4年以後に住み始めた場合は0.7%。古い教材の1%のままの数字に注意します。
- 併用の型:自分が住んでいた家を売ったときの特例(3,000万円控除・軽減税率・買換え)とは併用できない。相続した空き家の3,000万円控除とは併用できる。
- 年の範囲の型:居住年の前2年と後3年。「前後3年」や「前後1年」に変えた形に注意します。
- 税の種類の型:住宅ローン控除は所得税の税額から引く特例です。不動産取得税・固定資産税(地方税)の住宅の特例と混ぜないようにします。家を買ったときの地方税は不動産の税金をわかりやすくで整理しています。
宅建試験では、国の税(国税)の問題の中で、住宅ローン控除の条件や、譲渡の特例との組み合わせを区別して押さえます。親から資金をもらって家を買う場面の贈与税は宅建の贈与税をわかりやすくで扱っています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
さとしさん(合計所得金額700万円)は、床面積120平方メートルのうち80平方メートルを住まい、40平方メートルを自分の店に使う家を、返済期間25年のローンで新築し、完成の1か月後に住み始めた。店の部分があっても、この家は住宅ローン控除の対象となりうる。(令和8年4月1日現在の法令による)
答え:○ ○です。分かれ目は「床面積の2分の1以上が自分の住まいか」です。住宅ローン控除の家は、床面積50平方メートル以上で、その2分の1以上がもっぱら自分の住まいに使われるものです(租税特別措置法施行令26条1項)。120平方メートルのうち80平方メートルが住まいなので当たります。店があると全部だめ、と考えると✕を選びます。床面積の下限50平方メートルは家全体の床面積で見る点も、住まいの部分だけで見る取り違えに注意します。
問2(このサイトのオリジナル問題)
みほさんは、令和8年2月1日に新築住宅の引渡しを受け、同じ年の9月1日に住み始めた。引渡しと同じ年のうちに住み始めているので、ほかの要件を満たせば、住宅ローン控除を受けられる。(令和8年4月1日現在の法令による)
答え:✕ ✕です。分かれ目は入居の期限です。正しくは、新築や取得の日から6か月以内に住み始めることが要件です(租税特別措置法41条1項)。2月1日から9月1日までは7か月なので、同じ年のうちでも要件を満たしません。「その年中」や、登録免許税の住宅用家屋の軽減の「取得後1年以内の登記」と取り違えた肢です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
さとしさんは、令和7年に10年住んだ前の家を売って居住用財産の3,000万円特別控除を受け、令和8年に住宅ローンを組んで新しい家に住み始めた。床面積・所得・入居の時期・借入期間の要件を満たせば、令和8年分から住宅ローン控除を受けられる。(令和8年4月1日現在の法令による)
答え:✕ ✕です。分かれ目は、売ったときの特例を受けた年と、住み始めた年の関係です。住み始めた年やその前年・前々年に居住用財産の3,000万円控除(35条1項)を受けた場合、住宅ローン控除は使えません(41条21項)。正しくは、さとしさんは令和8年分から控除を受けられません。相続した空き家を売ったときの3,000万円控除(35条3項)なら併用できるので、その特例と取り違えた肢です。
まとめ
- 住宅ローン控除は、年末のローン残高(限度額あり)の0.7%を所得税から引く。
- 条件は、床面積50㎡以上(2分の1以上が自分の住まい)、合計所得金額2,000万円以下(40〜50㎡未満の家は1,000万円以下)、取得などから6か月以内に入居、10年以上で返すローン。所得は年ごとに見る。
- 居住年の前2年・居住年・後3年に、自分が住んでいた家を売ったときの特例(3,000万円控除・軽減税率・買換えなど)を受けると使えない。
- 相続した空き家の3,000万円控除とは併用できる。
- 控除の期間や借入れの限度額は住宅の種類と住み始めた年で違い、改正で変わる。試験では条件の中身を優先して覚える。
税の分野の○✕は、このサイトの宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。住宅ローン控除の肢もあるので、譲渡所得の肢と混ぜて、売る側と買う側の特例を見分ける練習に使ってください。
次に読むなら、不動産を売ったときの税金(譲渡所得)がおすすめです。この記事の表の左の列(3,000万円控除・軽減税率・買換え)の中身が分かると、併用の可否の理由までつながります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令API(v2)で令和8年4月1日時点(asof=2026-04-01)の版を指定して確かめました(令和8年法律第12号による改正の施行後)。特例の期限・控除の期間・借入れの限度額は、令和8年4月1日現在の法令によります。
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(31条の3、35条、36条の2、36条の5、37条の5、41条)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」(26条)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(令和8年4月1日現在法令等。主な要件、控除期間、その他の住宅の扱い)
- 国税庁 タックスアンサーNo.3302 マイホームを売ったときの特例
働く人の法律試験ノート