ひとことで言うと、借地借家法がかかるのは「建物を持つために土地を借りる」場合と「建物を借りる」場合だけです(借地借家法1条・2条1号)。更地を駐車場や資材置場として借りる契約は、建物を持つための借地ではないので、民法の賃貸借のルールだけがかかります。
この記事では、①どちらの法律がかかるかの判定、②期間・対抗要件・更新・解約の申入れ・借主に不利な特約の比べ、③一時使用と使用貸借の扱い、を扱います。借地借家法の中の全体図(借地と借家、普通と定期)は借地借家法の記事にあります。条文は、令和8年4月1日時点の民法と借地借家法を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
登場人物は、土地と建物を持つひろみさんと、それを借りるだいすけさん、のちに土地を買うまさるさんです。
- だいすけさんは、ひろみさんの更地を月極駐車場として借りた。車を止めるだけで、建物は建てない。→民法だけ。
- だいすけさんの会社は、別の更地を、木材を置く資材置場として借りた。→民法だけ。
- だいすけさんは、さらに別の土地を、自宅を建てるために借りた。→借地借家法の借地権。
- だいすけさんは、ひろみさんの持つ建物の1階を、店舗として借りた。→借地借家法の建物の賃貸借(借家)。
- その後、ひろみさんは駐車場の土地をまさるさんに売り、まさるさんが登記をした。
5番目で、だいすけさんは駐車場を使い続けられるでしょうか。駐車場には借地借家法がかからないので、借地借家法10条(建物の登記で対抗)も31条(建物の引渡しで対抗)も使えません。民法605条の賃借権の登記がなければ、まさるさんに賃借権を対抗できません。
たとえるなら、借地借家法は「建物」という鍵を持つ人だけが入れる部屋です。土地の上に建物を持つため、または建物そのものを借りるとき、初めてその部屋のルールが使えます。ただし本物のルールでは、一時使用のための借地は、部屋に入っても一部の規定だけが外れる、という中間の扱いがあります。
条文ではこう決まっている
どちらの法律がかかるか
| 借り方 | かかる法律 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建物の所有を目的とする地上権・土地の賃借権 | 借地借家法(借地)+民法 | 借地借家法2条1号 |
| 建物の賃貸借 | 借地借家法(借家)+民法 | 借地借家法1条 |
| 駐車場・資材置場として更地を借りる | 民法だけ | 建物の所有が目的でない |
| 一時使用のための借地 | 借地借家法の一部が外れる | 借地借家法25条 |
| 一時使用のための建物の賃貸借 | 借家の章が全部外れる | 借地借家法40条 |
| ただで借りる(使用貸借) | 民法の使用貸借だけ | 賃貸借でない |
借地借家法2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定めています。土地の上に何かを置くだけ、使うだけの契約は、この定義に入りません。また、借地権は地上権か賃借権なので、ただで貸す使用貸借は、建物を建てる目的でも借地権になりません。
民法と借地借家法の比べ
| 比べる点 | 民法だけ(駐車場など) | 借地 | 借家 |
|---|---|---|---|
| 期間 | 50年まで(604条) | 30年以上(3条) | 上限なし(29条2項)。1年未満は定めなし扱い(29条1項) |
| 対抗要件 | 賃借権の登記(605条) | 登記した建物でも可(10条) | 引渡しでも可(31条) |
| 期間満了 | 借主が使い続け、貸主が知りながら異議を述べなければ更新を推定(619条) | 建物があれば更新。拒むには正当の事由(5条・6条) | 通知がなければ更新。拒むには正当の事由(26条・28条) |
| 期間の定めなし | 土地は申入れから1年で終了(617条) | 30年になる(3条) | 貸主からは6か月・正当の事由(27条・28条) |
| 不利な特約 | 規定ごとに判断 | 無効(9条) | 無効(30条) |
表の補足です。民法の賃貸借は、50年より長く決めても50年になります。借家の更新は、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなかったときに、同じ条件で更新したものとみなされます(26条1項)。借家で借主から解約を申し入れるときは、民法617条の3か月です。9条・30条が無効にするのは、借地・借家それぞれの節の規定に反する特約で、借主に不利なものです。
借地の期間は、30年より短く約束しても30年になります。3条は30年を原則とし、それより長い約束だけをその期間として認めているからです(借地権者に不利な特約を無効とする9条も同じ向きです)。民法の賃貸借は、反対に上限(50年)だけがあり、短い期間は自由です。
当てはまる例・当てはまらない例
- 民法だけ(資材置場の期間):資材置場として土地を60年の約束で借りても、民法604条1項で50年になります。建物の所有が目的なら、60年の約束はそのまま有効です(借地借家法3条ただし書)。
- 民法だけ(駐車場の解約):期間を決めずに駐車場の土地を借りていたら、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から1年で終わります(617条1項1号)。借家の6か月や正当の事由は出てきません。
- 借家(短い期間):店舗を8か月の約束で借りた(定期建物賃貸借でも一時使用でもない)。期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(29条1項)。定期建物賃貸借の扱いは定期借家の記事で確かめられます。
- 当てはまらない(ただで借りる):親から土地をただで借りて家を建てた。使用貸借なので借地権ではなく、借地借家法10条の対抗力もありません。くわしくは使用貸借の記事にあります。
- ひっかけやすい(一時使用の借地):工事の間だけ仮設の事務所を建てるために土地を借りた。建物の所有が目的なので借地権ですが、25条で存続期間・更新・建物買取請求などの規定が外れます。10条の対抗力は25条の除外に入っていません。一時使用の扱いは一時使用の記事で扱っています。
似ているルールとの違い
借地借家法は、民法の賃貸借を「なくす」法律ではありません。借地借家法に定めがない点は、民法の賃貸借のルールがそのまま使われます。
| テーマ | 借地・借家でも使う民法の規定 |
|---|---|
| 敷金 | 622条の2(返す時期と額) |
| 修繕・費用の償還 | 606条〜608条 |
| 貸主が替わったとき | 605条の2(対抗要件を備えた賃貸借なら、貸主の地位は買った人に移る。借地借家法10条・31条の対抗要件も含む) |
| 借家の借主からの解約の申入れ | 617条1項2号(3か月) |
敷金・転貸・修繕のルールは賃貸借の記事で扱っています。借地借家法27条の「6か月」は、建物の賃貸人からの解約の申入れについての規定です。借主から申し入れるときは、民法617条の3か月に戻ります。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、賃貸借が主な論点の問題は26問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では8問でした。ほかの論点の問題の中に賃貸借を副の論点として含むものも25問あります。借地借家法は、借地が主な論点の問題が37問、借家が40問で、直近10回はどちらも10問でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 駐車場・資材置場に借地借家法を当てはめる形:建物の所有が目的でなければ借地権ではありません。期間は民法の50年まで、対抗要件は賃借権の登記です。
- 建物の賃貸借に50年の上限をかける形:借地借家法29条2項で、民法604条は建物の賃貸借にかかりません。
- 借地の短い期間をそのまま有効とする形:30年より短い約束は30年になります(3条・9条)。
- 解約の申入れの期間の入れ替え:民法の土地は1年、建物は3か月(617条)。借家の貸主からは6か月と正当の事由(借地借家法27条・28条)。
- 引渡しで対抗できる範囲を広げる形:引渡しで対抗できるのは建物の賃貸借(31条)。土地の賃借権は、引き渡しても、それだけでは対抗できません。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
ひろみさんは、更地をだいすけさんに月極駐車場として貸し、引き渡した(賃借権の登記はない)。その後ひろみさんがこの土地をまさるさんに売り、まさるさんが所有権移転の登記をした場合、だいすけさんは、まさるさんに賃借権を対抗することができない。
答え:○ 分かれ目は、借地借家法の対抗要件が使えるかです。駐車場として更地を借りる契約は建物の所有を目的としないので、借地権に当たらず(借地借家法2条1号)、10条の建物の登記による対抗も、31条の引渡しによる対抗も使えません。民法605条の賃借権の登記がないので、対抗できません。引き渡して使っているので対抗できると考えると✕にしてしまいます。引渡しで対抗できるのは、建物の賃貸借(31条)です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
ひろみさんは、自分の土地に建てた倉庫用の建物を、だいすけさんの会社に期間60年の約束で貸した(定期建物賃貸借ではない)。この賃貸借の期間は、民法の賃貸借の上限により50年となる。
答え:✕ 分かれ目は、建物の賃貸借に民法604条がかかるかです。借地借家法29条2項は「民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない」としています。正しくは、60年の約束のとおり60年です。50年の上限がかかるのは、駐車場や資材置場のように民法だけがかかる賃貸借です(民法604条1項)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
だいすけさんは、ひろみさんから店舗を期間8か月の約束で借りた(定期建物賃貸借ではなく、一時使用のためでもない)。だいすけさんは、8か月が過ぎる前でも解約の申入れをすることができ、賃貸借は申入れの日から3か月で終わる。
答え:○ 分かれ目は、1年未満の建物の賃貸借の扱いと、借主からの申入れにどの条文を使うかです。期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。借主からの解約の申入れには借地借家法に定めがないので、民法617条1項2号により申入れの日から3か月で終わります。8か月の約束に縛られる、または借家だから6か月と考えると✕にしてしまいます。6か月と正当の事由は、貸主から申し入れる場合です(借地借家法27条1項・28条)。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。
まとめ
- 借地借家法がかかるのは、建物の所有を目的とする地上権・土地の賃借権と、建物の賃貸借(1条・2条1号)。
- 駐車場・資材置場の更地の賃貸借と使用貸借は民法だけ。一時使用は、借地は一部、借家は章ごと外れる(25条・40条)。
- 期間:民法は50年まで、借地は30年以上、建物の賃貸借に50年の上限はない(29条2項)。
- 対抗:民法は賃借権の登記、借地は登記した建物、借家は引渡し。
- 解約の申入れ:民法の土地1年・建物3か月、借家の貸主からは6か月と正当の事由。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の民法と借地借家法を確かめました。
- e-Gov法令検索「民法」(601条、604条、605条、605条の2、606条〜608条、617条、619条、622条の2)
- e-Gov法令検索「借地借家法」(1条〜6条、9条、10条、25条〜31条、40条)
このサイトで次に読むなら、借地借家法の記事です。どちらの法律かを判定したあと、借地と借家、普通と定期のどれに当たるかを1枚の表で確かめられます。
働く人の法律試験ノート