定期借家(定期建物賃貸借)をわかりやすく:書面と事前の説明、終了の通知、中途解約

定期借家(ていきしゃっか)は、正式には定期建物賃貸借(ていきたてものちんたいしゃく)といい、期間が来たら更新されずに終わる建物の賃貸借です(借地借家法38条)。成り立たせるには、①書面(電子データでも可)で契約すること、②契約の前に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を渡して説明すること、の2つが要ります。

②の書面は、契約書とは別の書面でなければならない、とするのが最高裁の判例です。説明をしないと、「更新しない」という定めは無効になり、普通の借家と同じ扱いになります。期間が1年以上なら、貸主は終わる1年前から6か月前までに「終わります」と通知します。床面積200平方メートル未満の住まいは、転勤などのやむを得ない事情があれば、借主から解約を申し入れて1か月で終わらせられます。

この記事では、定期借家の手続を順番に追い、普通の借家・取壊し予定の建物の賃貸借・一時使用と比べます。普通の借家の更新と解約の申入れは借家の更新と終わり方の記事、土地を借りる側の定期契約は定期借地権の記事で扱います。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると:転勤の3年間だけ自宅を貸すおかださん

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
おかださん貸主(家の持ち主)3年間の転勤の間、自宅を貸したい
りなさん借主おかださんの家を借りて住む
つばめ不動産宅建業者おかださんとりなさんの間に入る(媒介)

おかださんは、3年たったら自宅に戻るつもりです。普通の借家で期間を3年にしても、更新を断るには正当の事由(せいとうのじゆう=返してもらうのももっともだと言える理由)が要ります(28条)。正当の事由があると認められなければ、契約は更新されてしまいます。そこで、更新のない定期借家にすることにしました。

  1. 契約の前に、おかださんは、りなさんに「この賃貸借は更新がなく、期間の満了で終わります」と書いた書面を渡して説明します。契約書とは別の紙です。
  2. そのうえで、期間3年・更新しないことを書いた契約書で契約します。
  3. 期間が1年以上なので、おかださんは、期間が終わる1年前から6か月前までの間に、りなさんへ「期間の満了で終わります」と通知します。
  4. 3年たつと、契約は更新されずに終わります。

つばめ不動産は、宅建業者として重要事項説明(35条)をします。定期建物賃貸借であることも説明の事項です(宅建業法35条1項14号、宅建業法施行規則16条の4の3第9号。貸借の重要事項説明の記事)。ただし、38条の事前の説明は、条文の主語が「建物の賃貸人」で、宅建業者の重要事項説明とは別の決まりです。2つを混ぜないようにします。

条文ではこう決まっている

定期建物賃貸借(38条)

  • 契約の方式(1項・2項):期間の定めがある建物の賃貸借で、「公正証書による等書面によって契約をするときに限り」、更新がないと定められます。電磁的記録(電子データ)による契約は、書面による契約とみなされます。公正証書に限りません。
  • 1年未満の期間(1項):定期建物賃貸借には29条1項(1年未満は期間の定めがないものとみなす)を適用しません。6か月の定期借家もできます。
  • 事前の説明(3項・4項):賃貸人は、契約の前に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を交付して説明しなければなりません。借主の承諾があれば、書面の代わりに電磁的方法で提供できます。
  • 説明しなかったとき(5項):更新がない旨の定めは無効になります。
  • 終了の通知(6項):期間が1年以上なら、賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前まで(通知期間)に、終わることを通知しなければ、終了を借主に対抗できません。通知期間を過ぎてから通知したときは、通知の日から6か月を経過した後は対抗できます。
  • 借主からの中途解約(7項):居住用で床面積200平方メートル未満の建物なら、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情で住み続けるのが難しくなった借主は、解約を申し入れられます。申入れの日から1か月で終わります。
  • 不利な特約(8項):6項・7項に反する特約で借主に不利なものは無効です。
  • 家賃の改定の特約(9項):家賃の改定について特約があるときは、32条(家賃の増減額請求)を適用しません。詳しくは地代・家賃の増減額請求の記事にあります。

判例:説明の書面は契約書と別に要る

最高裁判所第一小法廷平成24年9月13日判決(平成22年(受)第1209号)は、事前の説明に使う書面は、借主が「更新がなく期間の満了で終わる」と認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要する、としました。判決の当時は38条2項でしたが、電子データの規定が加わった今は38条3項の書面です。

似た2つの制度(39条・40条)

  • 取壊し予定の建物の賃貸借(39条):法令や契約で、一定の期間がたったら建物を取り壊すことが明らかな場合、建物を取り壊す時に賃貸借が終わる、と定められます。この特約は、取り壊すべき事由を書いた書面(電子データも可)でします。
  • 一時使用(40条):一時使用のための建物の賃貸借であることが明らかなら、借家の章(第3章)の規定がまとめて外れます。詳しくは一時使用目的の賃貸借の記事にあります。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • 期間6か月の定期借家を、書面での契約と事前の説明書面で結んだ。→ 有効です。1年未満でも期間の定めがないものとはみなされません(38条1項)。期間が1年未満なので、6項の終了の通知も要りません。
  • おかださんが、期間満了の8か月前に終了の通知をした。→ 通知期間(1年前から6か月前まで)の中なので、期間の満了で終わったことをりなさんに対抗できます。
  • りなさんが2年目に親の介護のため実家へ戻ることになった。家は居住用で床面積120平方メートル。→ 解約を申し入れれば、1か月で終わります(7項)。

当てはまらない例

  • 説明の書面を渡さず、契約書の条項を読み上げて説明した。→ 判例の立場では、事前の説明があったことになりません。更新しない旨の定めは無効です(5項)。
  • 口頭だけで「3年で終わり、更新なし」と約束した。→ 1項の書面がないので、定期建物賃貸借になりません。普通の借家で、更新しない約束は借主に不利なので無効です(30条)。
  • おかださんの建物が店舗で、借りた会社が業績不振で撤退したい。→ 7項は居住用の建物だけで、やむを得ない事情も要件です。店舗にはこの中途解約の定めがかかりません。

ひっかけやすい例

  • 契約書に「借主からの中途解約はできない」と書いた。→ 7項に反し借主に不利な特約は無効です(8項)。居住用200平方メートル未満で、やむを得ない事情があれば解約を申し入れられます。
  • 床面積が250平方メートルの住まい。→ 7項の「200平方メートル未満」に当たらないので、この中途解約の定めは使えません。

似ているルールとの違い

建物の賃貸借で、期間の終わりに更新があるかどうかを並べます。

比べる点普通の借家定期借家(38条)取壊し予定(39条)
終わり方正当の事由がないと更新期間の満了で終わる取り壊す時に終わる
契約の方式定めなし書面(電子も可)取り壊す事由を書いた書面
契約前の説明定めなし別の書面を交付して説明定めなし
終わる前の通知更新しない旨の通知に正当の事由1年以上なら終了の通知定めなし

普通の借家で「期間が来たら更新しない」と書いても、借主に不利な特約として無効です(30条)。更新のない借家にしたいときは、定期借家(38条)か、取り壊す事由がはっきりしていれば39条の形を使います。一時使用(40条)は、借家の章がまるごと外れるので、そもそもこの表の外にあります。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、借地借家法の借家が主な論点の問題は40問(38回)で、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)は10回とも1問ずつでした。定期建物賃貸借だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 公正証書:定期借家は書面であればよく、公正証書に限りません。公正証書が必須なのは事業用定期借地権です。
  • 説明の書面:契約書とは別の書面が要ります(最高裁平成24年9月13日判決)。借主が理解していたかどうかでは決まりません。
  • 説明しなかったときの効果:無効になるのは「更新がない旨の定め」で、賃貸借そのものは普通の借家として続きます。
  • 終了の通知:要るのは期間1年以上のときだけ。通知期間を過ぎてから通知したときは、通知の日から6か月で対抗できます。「普通の借家として更新される」は誤りです。
  • 中途解約:居住用・床面積200平方メートル未満・やむを得ない事情の3つがそろうとき。申入れから1か月。3か月(民法617条の期間の定めのない賃貸借)や6か月(貸主からの解約申入れ、27条)と混ぜないようにします。
  • 1年未満:普通の借家では期間の定めがないものとみなされますが、定期借家では1年未満の期間も有効です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
おかださんは、りなさんとの期間3年の定期建物賃貸借で、「更新がなく期間満了で終わる」と目立つように書いた契約書を、契約前に読み上げて説明した。りなさんがその内容を理解していても、契約書とは別の書面の交付(電子データでの提供を含む)をしていなければ、更新がない旨の定めは無効である。

答え:○ 分かれ目は、事前の説明に使う書面が契約書と別でなければならないかです。賃貸人は契約前に書面を交付して説明しなければならず(借地借家法38条3項)、説明しなければ更新がない旨の定めは無効です(同条5項)。最高裁判所第一小法廷平成24年9月13日判決は、借主の認識にかかわらず、この書面は契約書とは別個独立の書面であることを要するとしました。「借主が理解していれば足りる」と考えると✕にしやすい肢で、1項の契約の書面(契約書)と3項の説明の書面を一つにまとめて取り違えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
期間2年の定期建物賃貸借で、おかださんは、期間が満了する3か月前になって初めて、りなさんに終了の通知をした。この場合、この賃貸借は、普通の建物賃貸借と同じく、更新されたものとみなされる。

答え:✕ 分かれ目は、通知が遅れたときの効果です。期間1年以上の定期建物賃貸借では、満了の1年前から6か月前までに通知しないと終了を対抗できませんが、その後に通知した場合は、通知の日から6か月を経過すれば対抗できます(借地借家法38条6項)。正しくは、更新されるのではなく、通知から6か月たてば終了をりなさんに主張できます。普通の借家で更新しない旨の通知をしなかったときの法定更新(26条1項)と取り違えた形です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
おかださんは、法令によって5年後に取り壊すことが明らかな建物を、取り壊す時に賃貸借が終わる約束でりなさんに貸すことにした。この約束は、取り壊すべき事由を書いた書面ですればよく、契約前に別の書面を渡して説明する手続は求められていない。

答え:○ 分かれ目は、定期建物賃貸借と取壊し予定の建物の賃貸借の手続の違いです。借地借家法39条は、取り壊す時に終わる旨の特約を、取り壊すべき事由を記載した書面でしなければならないと定めていますが、38条3項のような事前の説明の定めは置いていません。「更新しない借家なら、どれも事前の説明が要る」と思うと✕にしやすい肢です。事前の説明は38条の定期建物賃貸借の要件で、これと取り違えないようにします。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 定期借家は、書面(電子データも可)で契約し、契約前に契約書とは別の書面を渡して「更新がなく期間満了で終わる」と説明して成り立つ。公正証書でなくてよい。
  • 説明をしなければ、更新がない旨の定めは無効。
  • 期間1年以上なら、1年前から6か月前までに終了の通知。遅れたら通知の日から6か月で対抗できる。
  • 居住用・200平方メートル未満・やむを得ない事情なら、借主の申入れから1か月で終わる。これを奪う特約は無効。
  • 1年未満の期間も有効。取壊し予定の建物は39条、一時使用は40条で別に扱う。

次に読むなら、定期借地権の3種類の記事がおすすめです。土地を借りる側の「更新しない契約」は、期間の下限と公正証書の要否が定期借家と違います。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を e-Gov 法令検索(法令API)で確かめました。判例は裁判所ウェブサイトで確かめました。