ひとことで言うと、領海は「基線から12海里まで」の海で、沿岸国の主権が及びます。排他的経済水域(EEZ)は「基線から200海里まで」の海(領海を除く)で、沿岸国が持つのは天然資源の探査・開発などについての「主権的権利」です(海洋法に関する国際連合条約2条・3条・56条・57条)。領海でも、外国の船舶には無害通航権があります(17条)。その間の「基線から24海里まで」には、通関・財政・出入国管理・衛生の規制ができる接続水域を置けます(33条)。
この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の国際の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、海の区分の骨組みを知るために読んでください。
条約の2条〜58条は外務省の条約データの訳文、76条・77条・86条・87条・89条は国際連合の公式の英語の本文と外務省の説明で確かめました。日本の法律はe-Gov(令和8年4月1日時点)で読みました(2026年10月17日確認)。特定の海域・島・国どうしの争い、日本の水域の面積や順位は書きません。
身近な例で考えると
会社員のあおいさんは、基本書の国際の章を読みながら、架空の沿岸国「なぎさ国」の海を、岸から沖へ順にたどってみました。距離はすべて「基線」から測ります。基線は領海の幅を測る基準の線で、ふつうは海岸の低潮線(潮が最も引いたときの海と陸の境目)です(海上保安庁の説明)。
- 基線より陸側:内水(ないすい)。湾の奥などで、なぎさ国の主権が及ぶ。外国の船舶の無害通航権は原則として認められない(海上保安庁の説明)。
- 基線から12海里まで:領海。なぎさ国の主権が、海の中だけでなく上空と海底・その下にも及ぶ。ただし外国の船舶は、なぎさ国の平和・秩序・安全を害しない限り、通り抜けることができる。
- 基線から24海里まで(領海の外側):接続水域。密輸や不法な入国などを防ぐための規制ができる。
- 基線から200海里まで(領海の外側):排他的経済水域。魚や海底の資源を探したり取ったりする権利は、なぎさ国にある。外国の船舶も航行は自由にできる。接続水域は、この排他的経済水域の内側に重なっている。
- その外側:公海。すべての国に開かれ、どの国も自分の主権の下に置くことはできない。
たとえると、領海は「家の敷地」、排他的経済水域は「家の人だけが畑の作物を取れる、通り抜けは自由な土地」に近いものです。ただし本物の排他的経済水域では、沿岸国の権利は資源などの決まった事柄に限られ、土地の持ち主のような全面的な支配ではありません。
模式図:基線からの距離と沿岸国の権利
岸から沖への断面を、表の形の模式図にしました。距離の数字は条約の条文どおりです(1海里=1,852メートル。海上保安庁の説明)。
| 区分 | 基線からの距離 | 沿岸国の権利 | 条 |
|---|---|---|---|
| 内水 | 基線より陸側 | 主権 | ― |
| 領海 | 12海里まで(約22km) | 主権(外国の船舶に無害通航権) | 2・3・17条 |
| 接続水域 | 24海里まで(約44km。領海を除く) | 通関・財政・出入国管理・衛生の規制 | 33条 |
| 排他的経済水域 | 200海里まで(約370km。領海を除く) | 天然資源の探査・開発などの主権的権利 | 55〜58条 |
| 大陸棚(海底とその下) | 原則200海里まで(条件により延長) | 天然資源の探査・開発の主権的権利 | 76・77条 |
| 公海 | 排他的経済水域などの外側 | なし(すべての国に開放) | 86・87・89条 |
キロメートルは検算すると、12×1.852=22.224、24×1.852=44.448、200×1.852=370.4です。表の「約22km・約44km・約370km」は、海上保安庁の説明の書き方と同じです。
条約ではこう決まっている
正式な名前は「海洋法に関する国際連合条約」です。1982年に採択され、1994年11月に発効しました。外務省の説明では、全17部320条の本文と9の附属書、第11部(深海底)の実施協定からなります。
領海(2条・3条・17条・19条)
- 主権が及ぶ範囲(2条):沿岸国の主権は領海に及び、「領海の上空並びに領海の海底及びその下に及ぶ」。
- 幅(3条):基線から測定して「十二海里を超えない範囲」で、各国が領海の幅を定める権利を持つ。12海里は上限で、それより狭く定めることもできる。
- 無害通航権(17条):「すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず」、領海で無害通航権を持つ。
- 無害の意味(19条1):通航は「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる」。
接続水域(33条)
- できること(33条1):自国の領土・領海内での「通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令」の違反を防止すること、違反を処罰すること。
- 幅(33条2):「領海の幅を測定するための基線から二十四海里を超えて拡張することができない」。領海の外側の線から24海里ではありません。
排他的経済水域(55条〜58条)
- 意味(55条):「領海に接続する水域」で、第5部の特別の法制度によるもの。領海そのものは入りません。
- 沿岸国の権利(56条1(a)):海底の上の水、海底とその下の天然資源(生物資源か非生物資源かを問わない)の探査・開発・保存・管理のための「主権的権利」。
- 幅(57条):基線から「二百海里を超えて拡張してはならない」。
- ほかの国の権利(58条1):すべての国は、沿岸国か内陸国かを問わず、排他的経済水域で、航行と上空飛行の自由、海底電線・海底パイプラインを敷く自由を持つ。
大陸棚と公海(76条・77条・86条・87条・89条)
- 大陸棚(76条・77条):沿岸国の大陸棚は、海底とその下(水は入らない)。外務省の説明では、原則として基線から200海里まで、一定の要件を満たせばさらに外側の限界まで。沿岸国は、大陸棚を探査し天然資源を開発するための主権的権利を持つ(77条1)。この権利は、沿岸国が探査や開発をしていない場合でも、沿岸国の明示の同意なしにほかの者がこれらの活動をすることはできない、という意味で排他的である(77条2)。
- 公海(86条・87条・89条):排他的経済水域・領海・内水などに含まれない海の全部。すべての国に開放され、航行・上空飛行・海底電線などの敷設・人工島などの建設・漁獲・科学的調査の自由がある(87条1。条件つきのものを含む)。どの国も、公海のどの部分についても、自国の主権の下に置くことを有効に主張することはできない(89条)。
日本の締結と国内の法律
- 締結:日本は1983年2月に署名し、1996年6月に批准しました。条約は日本について1996年7月20日に発効しました(外務省の説明)。署名・批准・締結の言葉の違いは条約の署名・批准・締結の記事で扱っています。
- 領海及び接続水域に関する法律(昭和52年法律第30号):1条で、領海を基線から外側12海里の線までの海域とする。4条で、33条1にもとづく接続水域を設け、基線から外側24海里の線までの海域(領海を除く)とする。
- 排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成8年法律第74号):1条で、排他的経済水域を基線から200海里の線までの海域(領海を除く)とする。2条で大陸棚の範囲を定め、3条で、天然資源の探査・開発などの事柄に日本の法令を適用すると定める。
どちらの法律も、12海里・24海里・200海里の線が、向かい合う外国との「中間線」を超える部分は、中間線(外国と合意した線があればその線)までとしています。また、領海及び接続水域に関する法律の附則は、一部の海域について、当分の間、領海を基線から3海里までとする特例を置いています。条約の上限の距離が、どの海でもそのまま使えるわけではありません。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:外国の貨物船が、なぎさ国の領海を止まらずに通り抜ける。平和・秩序・安全を害しない限り、無害通航として認められます(17条・19条1)。
- 当てはまる例:基線から20海里の海で、外国の船が密輸品を陸に運び込もうとしている。接続水域では、領土・領海内での通関の法令の違反を防ぐ規制ができます(33条1(a))。
- 当てはまらない例:基線から100海里の海を、外国の船が航行するだけの場合。排他的経済水域でも航行は自由で、沿岸国が資源の主権的権利を理由に止めることはできません(58条1)。
- 当てはまらない例:ある国が、公海の一部を自国の海だと宣言すること。89条により、公海のどの部分についても、自国の主権の下に置くことを有効に主張することはできません。
- ひっかけやすい例:基線から30海里の海。領海の外側の線(12海里)から数えると18海里ですが、接続水域は基線から24海里までなので、接続水域の外です。排他的経済水域を設けていれば、その中に入ります。
似ている言葉との違い
| 比べる点 | 領海 | 排他的経済水域 |
|---|---|---|
| 沿岸国が持つもの | 主権(上空・海底・その下まで) | 天然資源の探査・開発などの主権的権利 |
| 外国の船舶 | 無害通航権(害しない限り) | 航行の自由 |
| 範囲 | 基線から12海里まで | 基線から200海里まで(領海を除く) |
- 主権と主権的権利:主権は、その海での全体的な支配。主権的権利は、資源の探査・開発など、条約が決めた目的に限った権利です。
- 排他的経済水域と大陸棚:排他的経済水域は水と海底の両方の資源を対象にします。大陸棚は海底とその下だけで、条件を満たせば200海里の外まで延ばせます。
- 内水と領海:どちらも主権が及びますが、外国の船舶の無害通航権は、領海にはあり、内水には原則としてありません(海上保安庁の説明)。
試験ではここをまちがえやすい
- 測り始めの線:12海里・24海里・200海里は、どれも基線から測る。接続水域を「領海の外側の線から24海里」としない。
- 重なり:接続水域(12〜24海里)は、排他的経済水域(12〜200海里)の内側に重なる。どちらも領海は含まない。
- 権利の強さ:排他的経済水域で沿岸国が持つのは主権ではなく主権的権利。外国の船舶の航行は自由。
- 無害通航権の持ち主:すべての国の船舶。海に面していない内陸国の船舶も含む(17条)。
- 年:採択1982年、発効1994年11月、日本の批准1996年6月・日本について発効1996年7月20日。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
なぎさ国は、領海の幅を12海里とし、接続水域も設けている。なぎさ国の基線から沖へ30海里の地点は、領海の外側の線から18海里の所にある。この地点は、国連海洋法条約の接続水域の範囲に入る。
答え:✕ 分かれ目は、接続水域の幅をどこから測るかです。33条2は、接続水域は「領海の幅を測定するための基線から二十四海里を超えて拡張することができない」と定めています。正しくは、基線から30海里の地点は接続水域の外で、排他的経済水域を設けていればその中に入ります。領海の外側の線から24海里と数えると、問題文のように範囲を広く取りすぎます。測り始めを基線とする点は、領海の12海里・排他的経済水域の200海里と同じです。
問2(このサイトのオリジナル問題)
海に面していない内陸国の船舶も、なぎさ国の平和、秩序又は安全を害しない限り、なぎさ国の領海を通航することができる。
答え:○ 17条は、無害通航権を「すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず」持つと定めています。通航が無害とされるのは、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限りです(19条1)。「海を持たない国の船には領海の話は関係ない」と考えると✕に見えます。主権が及ぶ領海でも、外国の船舶の通り抜けは認められる、というのが無害通航権の中身です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
なぎさ国は、排他的経済水域では、海の天然資源の探査・開発について主権的権利を持つ。そのため、なぎさ国は、外国の船舶がこの水域を航行することを、自国の許可を受けた場合に限ることができる。
答え:✕ 分かれ目は、排他的経済水域で沿岸国が持つ権利の範囲です。前半は56条1(a)のとおりです。正しくは、58条1により、すべての国が排他的経済水域で航行と上空飛行の自由を持つので、航行を沿岸国の許可制にはできません。沿岸国の主権が及ぶ領海でさえ、外国の船舶には無害通航権があります。資源についての「主権的権利」を、領海の「主権」と同じ強さの権利と取り違えた誤りです。
基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 領海=基線から12海里まで。沿岸国の主権が上空・海底まで及ぶ。外国の船舶には無害通航権(内陸国の船舶も)。
- 接続水域=基線から24海里まで(領海を除く)。通関・財政・出入国管理・衛生の規制。
- 排他的経済水域=基線から200海里まで(領海を除く)。天然資源などの主権的権利で、外国の船舶の航行は自由。
- 大陸棚は海底とその下(原則200海里、延長あり)。公海はすべての国に開放され、どの国の主権の下にも置けない。
- 1海里=1,852メートル。日本は1996年に批准し、同年7月20日に日本について発効。
このサイトで次に読むなら、条約の署名・批准・締結の記事です。この条約のように、署名のあと批准を経て日本について発効する条約が、国内でどんな手続を通るのかを確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条約の訳文・国連の本文・外務省と海上保安庁の説明・日本の法律は、2026年10月17日に確かめました。法律は令和8年4月1日時点の条文です。
- 外務省 条約データ「海洋法に関する国際連合条約」(2条、3条、17条、18条、19条、33条、55条、56条、57条、58条)
- 国際連合「United Nations Convention on the Law of the Sea, Part VI」(76条、77条)
- 国際連合「United Nations Convention on the Law of the Sea, Part VII」(86条、87条、89条)
- 外務省「海洋の国際法秩序と国連海洋法条約」(採択・発効・日本の署名と批准、条約の構成、大陸棚・公海の説明)
- 海上保安庁 海洋情報部 パンフレット(2025)(1海里=1,852メートル、基線・内水・領海・接続水域・排他的経済水域の説明)
- e-Gov法令検索「領海及び接続水域に関する法律」(1条、2条、4条、附則2項)
- e-Gov法令検索「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(1条、2条、3条)
働く人の法律試験ノート