ひとことで言うと、区分地上権(くぶんちじょうけん)は、土地の地下や空中を「上下の範囲」を決めて、トンネルなどの工作物を持つために使う地上権です(民法269条の2第1項)。土地をすでにだれかが使っていても、その人たち全員の承諾があれば設定できます(2項)。土地の持ち主は、地上の部分を使い続けられます。
この記事では、①269条の2の要件と効果、②土地を使う人がいるときの承諾、③普通の地上権・地役権との違い、を「範囲・目的・承諾・登記」の表にします。地上権と賃借権の違いは地上権と賃借権の違いの記事、地役権と相隣関係は相隣関係と地役権の記事に任せます。補償金や評価のしかたは扱いません。条文は、令和8年4月1日時点の法令を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
登場人物は次の4者です(架空の話です)。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| さとるさん | 土地の持ち主 | 土地を駐車場として貸している |
| れいなさん | 土地の借主 | さとるさんから土地を借りて駐車場を営む |
| みどり鉄道 | 鉄道会社 | 地下にトンネルを通したい |
| あさひ銀行 | 土地の抵当権者 | さとるさんの土地に抵当権を登記している |
- みどり鉄道は、さとるさんの土地の地下15メートル〜30メートルの部分に、トンネルを通したい。
- さとるさんとみどり鉄道は、その範囲に区分地上権を設定する契約をする。「地上に重い建物を建てない」という土地の使い方の制限も決めた。
- 土地はれいなさんが借りて使っているので、れいなさんの承諾を得た。
- 区分地上権を登記し、地下の範囲と使い方の制限も登記に記録した。
みどり鉄道は、地下の決めた範囲だけを使います。さとるさんは土地の持ち主のまま、れいなさんも地上の駐車場を使い続けます。ただし、承諾したれいなさんは、トンネルの使用を妨げることはできません。
たとえるなら、区分地上権は「土地というケーキを横に切って、一段だけを使う権利」です。普通の地上権は、ケーキを丸ごと(地上も地下も)使う権利です。ただし本物のルールでは、段の厚さは「上下の範囲」として契約で決め、登記で示します。
条文ではこう決まっている
地下又は空間を目的とする地上権(269条の2)
- 何を(1項前段):「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。」
- 土地の使用の制限(1項後段):設定行為(区分地上権を作る契約)で、地上権を使うために、その土地の使用に制限を加えることができる。
- 使う人がいるとき(2項前段):第三者がその土地を使用・収益する権利を持っていても、「その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは」設定できる。
- 承諾の効果(2項後段):土地を使用・収益する権利を持つ者は、「その地上権の行使を妨げることができない。」
普通の地上権と地役権(265条・280条)
- 地上権(265条):「他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利」。竹木(ちくぼく=竹や木)も目的に入ります。
- 地役権(280条):「設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利」。自分の土地(要役地)の役に立てるための権利です。
登記と借地借家法(不動産登記法78条・借地借家法2条1号)
- 登記事項(不動産登記法78条5号):269条の2第1項前段の地上権では、「その目的である地下又は空間の上下の範囲」と、1項後段の土地の使用の制限の定めがあるときはその定めを登記する。
- 借地権(借地借家法2条1号):「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」。区分地上権も地上権なので、目的が建物の所有なら、この文言に当たります。トンネルや送水管のように建物でない工作物なら、借地権ではありません。
区分地上権・地上権・地役権を比べると
| 比べる点 | 区分地上権 | 地上権 | 地役権 |
|---|---|---|---|
| 範囲 | 地下・空間の上下の範囲 | 上下を区切らない | 設定行為で定めた範囲 |
| 目的 | 工作物の所有だけ | 工作物または竹木の所有 | 自分の土地(要役地)の便益 |
| 土地を使う人がいるとき | その全員の承諾で設定できる | 規定なし | 規定なし |
| 登記 | 上下の範囲・使用の制限も記録 | 目的・地代・存続期間など | 承役地に要役地・目的・範囲 |
地役権の登記は、使われる側の土地(承役地)にし、要役地や「地役権設定の目的及び範囲」を記録します(不動産登記法80条1項)。地役権は自分の土地のための権利なので、要役地がなければ成り立ちません。区分地上権は、要役地がなくても設定できます。
当てはまる例・当てはまらない例
例1:地下のトンネル(当てはまる例)
みどり鉄道のトンネルは工作物で、地下の上下の範囲を決めて使います。269条の2第1項の区分地上権に当たります。土地の残りの部分は、さとるさんが使えます。
例2:空中の連絡通路(当てはまる例)
自分のビルから別のビルへの連絡通路を、間にある他人の土地の上空に通す場面です。通路は工作物で、空間の上下の範囲を決めれば、区分地上権の目的にできます。条文は「地下又は空間」と書いているので、地下だけの制度ではありません。
例3:木を植えるための範囲(当てはまらない例)
他人の土地の地表から地下3メートルまでの範囲を決めて、果樹を植えて持ちたいとします。269条の2は「工作物を所有するため」に限っています。竹木を所有するための区分地上権は、条文にありません。竹木の所有も目的にできるのは、普通の地上権(265条)です。
例4:抵当権者の承諾(ひっかけやすい例)
2項で承諾がいるのは、土地を「使用又は収益をする権利」を持つ人と、その権利を目的とする権利を持つ人です。土地を借りているれいなさんは、これに当たります。土地の抵当権を持つあさひ銀行は、土地を使う権利を持っていないので、2項の承諾の相手には入りません。抵当権と区分地上権のどちらが優先するかは、登記の先後の問題として別に考えます(177条)。
似ているルールとの違い
土地の上下を分けて使う場面は、ほかにもあります。何を分けているかで区別します。
- 区分所有(区分所有法):分けるのは建物です。マンションの各部屋に所有権を認めます。区分地上権は、土地の地下・空間を使う権利で、所有権ではありません。
- 地役権:となりの土地のための権利です。自分の土地の役に立てる目的なら、地役権を設定する方法もありますが、要役地が必要です。
- 土地の賃貸借:269条の2は地上権の規定です。賃借権で地下の一部だけを借りる場合のルールは、この条文には書かれていません。
登記の申請のしかたは不動産登記法の記事、建物の所有を目的とする借地権のルールは借地借家法の全体図の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、地上権が主な論点の問題は3問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では2問でした。地役権が主な論点の問題は2問(直近10回で1問)です。区分地上権だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 目的に竹木を足す形:区分地上権は「工作物を所有するため」だけ。竹木も入るのは265条の地上権です。
- 地下だけとする形:条文は「地下又は空間」です。
- 土地を使う人がいると設定できないとする形:使用・収益の権利を持つ人などの全員の承諾があれば設定できます(2項前段)。
- 承諾の相手を広げる形:2項の承諾は、土地を使用・収益する権利と、それを目的とする権利を持つ人です。土地の抵当権者は入りません。
- 承諾した後も使用を妨げられるとする形:使用・収益の権利を持つ人は、区分地上権の行使を妨げることができません(2項後段)。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
さとるさんの土地は、れいなさんが賃借して駐車場として使っている。さとるさんは、れいなさんの承諾を得て、みどり鉄道のために地下の一定の範囲に区分地上権を設定した。この場合、れいなさんは、その後、みどり鉄道の区分地上権の行使を妨げることができない。
答え:○ 分かれ目は、承諾した使用者の立場です。269条の2第2項は、第三者が土地を使用・収益する権利を持つ場合でも、その全員の承諾があれば区分地上権を設定でき、「この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない」としています。れいなさんの賃借権が先にあるので、後からできた区分地上権には負けないと考えると✕に見えます。登記の先後で優劣を決める177条の考え方を、承諾がある場面に持ち込んだ取り違えです。
問2(このサイトのオリジナル問題)
ななみさんは、他人の土地の地表から地下3メートルまでの範囲を、果樹を植えて所有するために使いたい。この場合、上下の範囲を定めれば、民法269条の2の区分地上権を設定することができる。
答え:✕ 分かれ目は、区分地上権の目的です。269条の2第1項は、地下または空間を「工作物を所有するため」に上下の範囲を定めて地上権の目的とできるとしています。正しくは、竹木を所有するための区分地上権は認められていません。「工作物又は竹木を所有するため」と定める普通の地上権(265条)の目的と取り違えた文です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
さとるさんの土地には、あさひ銀行の抵当権が登記されているが、土地を使用・収益する権利を持つ第三者はいない。さとるさんが、みどり鉄道のために地下の一定の範囲に区分地上権を設定するには、あさひ銀行の承諾を得なければならない。
答え:✕ 分かれ目は、2項の承諾の相手がだれかです。269条の2第2項が承諾を求めるのは、第三者が「その土地の使用又は収益をする権利」を持つ場合の、その権利とそれを目的とする権利を持つ者です。正しくは、抵当権は土地を使う権利ではないので、2項の承諾は設定の要件になりません。抵当権と区分地上権の優劣は、登記の先後で決まる別の問題です(177条)。土地を賃借している人のように使用・収益の権利を持つ人の承諾(2項)と、取り違えた文です。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。
まとめ
- 区分地上権は、地下または空間を、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて目的とする地上権(269条の2第1項前段)。竹木は目的にならない。
- 設定行為で、地上権の行使のために土地の使用に制限を加えられる(1項後段)。
- 土地を使用・収益する権利を持つ人などがいても、全員の承諾で設定でき、その人たちは行使を妨げられない(2項)。
- 登記には上下の範囲と使用の制限の定めを記録する(不動産登記法78条5号)。地役権と違い、要役地はいらない。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。
- e-Gov法令検索「民法」(177条、265条、269条の2、280条)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(78条、80条)
- e-Gov法令検索「借地借家法」(2条)
このサイトで次に読むなら、地上権と賃借権の違いの記事です。区分地上権のもとになる普通の地上権が、賃借権とどう違うか(譲渡・登記・存続期間)を表で確かめられます。
働く人の法律試験ノート