はじめに言葉の確認です。「非線引き区域(ひせんびきくいき)」は法律の言葉ではなく、「区域区分が定められていない都市計画区域」の呼び方です。区域区分とは、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分ける線引きのことです(都市計画法7条1項)。条文は、どれも「区域区分が定められていない都市計画区域」と書いています。
ひとことで言うと、非線引き区域は「都市計画区域の中なので、建物と開発のルールはかかるが、市街化調整区域のようなきびしい制限はない区域」です。用途地域は定めることができ(8条1項)、開発許可は3,000平方メートル以上でいります(29条1項1号、施行令19条1項)。開発区域の外での建築の許可(43条)はありません。用途地域のない所の建蔽率・容積率は特定行政庁が決め、農地の転用は許可がいり、国土利用計画法の事後届出は5,000平方メートル以上です。
区域区分のしくみそのものは都市計画区域と区域区分の記事、都市計画区域の外の準都市計画区域は準都市計画区域の記事で扱っています。この記事は、非線引き区域で法律ごとに何がかかるかを表にし、事例で当てはめます。具体的にどの市町村が非線引き区域かは扱いません。条文は、令和8年4月1日時点の法令を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
舞台は、都市計画区域に入っているが、区域区分は定められていない「みなみ町」です(架空の町です)。町の中心部にだけ用途地域が定められ、郊外には用途地域がありません。
| 人物 | 立場 | したいこと |
|---|---|---|
| かいせい不動産 | 開発会社 | 分譲住宅のために土地を造成する |
| たけるさん | 会社員 | 郊外の宅地に店を建てる |
| よしこさん | 農地の持ち主 | 畑を自分の家の敷地にする |
- かいせい不動産は、郊外で2,500平方メートルの土地を造成する。条例で規模の定めがなければ、3,000平方メートル未満なので開発許可はいらない(29条1項1号、施行令19条1項)。
- たけるさんは、すでに平らな宅地に、造成をしないで店を建てる。市街化調整区域ではないので、43条の知事の許可はいらない。建築確認はいる(建築基準法6条1項)。
- たけるさんの土地は用途地域の指定がない。それでも、建蔽率・容積率の制限はかかる。数値は、特定行政庁が決めたもの(建築基準法52条1項8号・53条1項6号)。
- よしこさんが畑を家の敷地にするには、農地法4条の許可がいる。前もって農業委員会に届け出れば許可がいらない特例は、市街化区域だけのもの。
たとえるなら、非線引き区域は「家の中だけれど、部屋の仕切りをしていない広間」です。家の中のルール(建築確認・集団規定・開発許可)はかかりますが、「この部屋は物を増やさない」という仕切り(市街化調整区域)はありません。ただし本物のルールでは、仕切りがなくても、用途地域は町の一部に置けますし、用途地域のない所にも建蔽率・容積率の数字が決まっています。
条文ではこう決まっている
区域区分を定めるかどうか(都市計画法7条1項)
区域区分は、都市計画区域について「必要があるときは」定めることが「できる」ものです。ただし、首都圏・近畿圏・中部圏の一定の区域を含む都市計画区域と、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるものには、定めるものとされています(ただし書)。それ以外で区域区分を定めていない都市計画区域が、いわゆる非線引き区域です。
用途地域(8条1項・13条1項7号)
- 8条1項:「都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。」非線引き区域も都市計画区域なので、用途地域・防火地域などを定められます。
- 13条1項7号:市街化区域には少なくとも用途地域を定め、市街化調整区域には原則として定めない。非線引き区域については、定めるかどうかの決まりはなく、必要な所に定めます。
開発許可(29条1項1号・2号、施行令19条1項)
- 小さな開発(1号):区域区分が定められていない都市計画区域では、3,000平方メートル未満の開発行為は許可がいらない。
- 条例での引下げ(施行令19条1項ただし書):市街化の状況などで特に必要があるときは、都道府県(指定都市などではその市)は、条例で区域を限り、300平方メートル以上3,000平方メートル未満の範囲で、別の規模を定められる。
- 農林漁業(2号):市街化調整区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域では、農林漁業用の政令で定める建築物や、農林漁業を営む人の住宅のための開発行為は許可がいらない。
開発区域の外での建築(43条1項)
43条1項は、「市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内において」は、知事の許可を受けなければ建築物を新築してはならない、などと定めています。対象は市街化調整区域だけです。非線引き区域には、この許可はありません。
建築基準法(6条1項・41条の2・48条・52条・53条)
- 集団規定(41条の2):道路・用途・建蔽率・容積率などを定める第3章(第8節を除く)は、「都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する」。非線引き区域は都市計画区域なので、かかります。
- 用途の制限(48条):用途地域ごとに、建てられる建築物の用途を決めている。たとえば1項は「第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない」。決め手は用途地域の中かどうかで、非線引き区域でも用途地域を定めた所には、市街化区域と同じ制限がかかる。
- 建蔽率(53条1項6号):用途地域の指定のない区域では、10分の3・4・5・6・7のうち、特定行政庁が土地利用の状況などを考えて区域を分け、都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの。
- 容積率(52条1項8号):用途地域の指定のない区域では、10分の5・8・10・20・30・40のうち、同じしくみで特定行政庁が定めるもの。
- 建築確認(6条1項3号):1号・2号に当たらない小さな建物でも、都市計画区域の中(知事が指定して除いた区域を除く)なら確認がいる。
農地法と国土利用計画法
- 農地法4条1項7号・5条1項6号:前もって農業委員会に届け出れば許可がいらない特例は、「市街化区域内にある農地」だけ。非線引き区域の農地を転用するには、4条・5条の許可がいる。
- 国土利用計画法23条2項1号:事後届出がいる面積は、市街化区域2,000平方メートル(イ)、それ以外の都市計画区域5,000平方メートル(ロ)、それ以外の区域10,000平方メートル(ハ)。非線引き区域は都市計画区域なので、ロの5,000平方メートル。
法律ごとの「かかる・かからない」の表
| ルール | 非線引き区域 | 根拠 |
|---|---|---|
| 用途地域 | 定めることができる(義務はない) | 都計法8条1項・13条1項7号 |
| 防火地域など地域地区 | 定めることができる | 都計法8条1項 |
| 開発許可 | 3,000㎡以上(条例で300㎡まで引下げ可) | 都計法29条1項1号、令19条1項 |
| 農林漁業の住宅などの開発 | 許可はいらない | 都計法29条1項2号 |
| 開発区域外の建築許可 | かからない | 都計法43条1項(調整区域だけ) |
| 集団規定・建築確認 | かかる | 建基法41条の2・6条1項3号 |
| 用途地域内の用途の制限 | かかる(市街化区域と同じ) | 建基法48条 |
| 用途地域のない所の建蔽率・容積率 | 特定行政庁が定める | 建基法52条1項8号・53条1項6号 |
| 農地の転用 | 許可がいる(届出の特例なし) | 農地法4条・5条 |
| 国土法の事後届出 | 5,000㎡以上 | 国土法23条2項1号ロ |
当てはまる例・当てはまらない例
例1:郊外に店を建てる(当てはまらない例)
たけるさんが、開発許可を受けた開発区域の外の平らな宅地に、造成をしないで店を建てます。造成しないので開発行為ではなく、開発許可はいりません。市街化調整区域ではないので、43条の許可もいりません。同じことを市街化調整区域ですると、原則として知事の許可がいります。
例2:条例で規模が下げられている(ひっかけやすい例)
県が条例で、みなみ町の一部の区域について、許可のいらない規模を1,000平方メートル未満と定めたとします。この区域で2,000平方メートルの開発行為をするなら、3,000平方メートル未満でも開発許可がいります。施行令19条1項ただし書は、300平方メートル以上3,000平方メートル未満の範囲で、条例で別の規模を定めることを認めています。
例3:用途地域のない所の建蔽率(ひっかけやすい例)
用途地域が定められていない郊外でも、建蔽率・容積率の制限はかかります。数値を都市計画で決める用途地域と違い、特定行政庁が、決められた候補の中から区域を分けて定めます。制限がかからないのは、都市計画区域と準都市計画区域のどちらにも入っていない区域です(41条の2)。
例4:畑を家の敷地にする(当てはまる例)
よしこさんが自分の畑を自分の家の敷地にするのは、農地法4条の転用です。非線引き区域には市街化区域の届出の特例がないので、許可がいります。都市計画法では、区域区分がないことで開発許可の面積が市街化区域より大きくなりますが、農地法では、逆に市街化区域の特例が使えません。許可と届出の分かれ目は農地法の記事で扱っています。
似ている区域との違い
| 比べる点 | 市街化区域 | 市街化調整区域 | 非線引き区域 |
|---|---|---|---|
| 用途地域 | 少なくとも定める | 原則として定めない | 定めることができる |
| 開発許可の面積 | 1,000㎡以上(三大都市圏の一部は500㎡) | 面積にかかわらず | 3,000㎡以上 |
| 農林漁業の住宅の開発 | 例外なし | 許可はいらない | 許可はいらない |
| 開発区域外の建築 | 許可なし | 知事の許可(43条) | 許可なし |
| 農地転用の届出の特例 | あり | なし | なし |
| 国土法の事後届出 | 2,000㎡以上 | 5,000㎡以上 | 5,000㎡以上 |
非線引き区域は、開発許可の面積では準都市計画区域と同じ3,000平方メートル、農林漁業の例外と国土法では市街化調整区域と同じ、43条と用途地域では市街化区域に近い、という混ざった位置にあります。開発許可の面積と例外の全体は開発許可の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、区域の指定(都市計画区域・区域区分)が主な論点の問題は5問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では0問でした。開発許可が主な論点の問題は56問、直近10回では10問です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。「区域区分が定められていない都市計画区域」という語が肢に出た数は数えていません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。この区域は、開発許可や国土法の問の前提として出てくる区域です。
- 都市計画区域の外と取り違える形:非線引き区域は都市計画区域の中です。集団規定・建築確認がかかり、国土法は5,000平方メートルです。
- 市街化調整区域と同じ扱いにする形:43条の建築許可は市街化調整区域だけ。開発許可も面積の基準(3,000平方メートル)があります。
- 用途地域を定められないとする形:8条1項により定めることができます。定めなければならないのは市街化区域です。
- 非線引き区域の用途地域には用途の制限がないとする形:建築基準法48条は用途地域の中かどうかで決まり、区域区分の有無は関係ありません。
- 用途地域がなければ建蔽率の制限もないとする形:53条1項6号・52条1項8号で、特定行政庁が定める数値がかかります。
- 3,000平方メートルを動かせないとする形:条例で、区域を限って300平方メートルまで下げられます(施行令19条1項ただし書)。
- 農地転用に届出の特例を使う形:特例は市街化区域内の農地だけです。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
みなみ町は区域区分が定められていない都市計画区域で、町の中心部に第一種低層住居専用地域が定められている。この地域内に建築物を建てる場合も、市街化区域内の第一種低層住居専用地域と同じく、建築基準法48条による用途の制限を受ける。
答え:○ 分かれ目は、用途地域の用途の制限が区域区分に左右されるかです。建築基準法48条1項は「第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない」としていて(特定行政庁の許可による例外はただし書)、要件は用途地域の中かどうかで、市街化区域かどうかは問いません。用途地域は市街化区域に定めるもの(都市計画法13条1項7号)とだけ覚えていると、非線引き区域の用途地域には制限がかからないと考えて✕にしてしまいます。少なくとも用途地域を定めることになっているのが市街化区域で、非線引き区域でも用途地域を定めれば(8条1項)、同じ用途の制限がかかります。
問2(このサイトのオリジナル問題)
区域区分が定められていない都市計画区域内の、用途地域の指定のない区域に、よしこさんが住宅を建てる。用途地域の指定のない区域では、建築基準法の建蔽率の制限はかからない。
答え:✕ 分かれ目は、用途地域のない区域に建蔽率の数値があるかです。建築基準法53条1項6号は、用途地域の指定のない区域内の建築物について、10分の3〜10分の7のうち特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるものを建蔽率の限度としています。正しくは、制限はかかります。集団規定がかからないのは都市計画区域・準都市計画区域の外(41条の2)で、その区域と取り違えた文です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
区域区分が定められていない都市計画区域で、県が条例により、区域を限って、開発許可がいらない規模を1,000平方メートル未満と定めている。この区域で、かいせい不動産が分譲住宅のために2,000平方メートルの開発行為をする場合、開発許可を受けなければならない。
答え:○ 分かれ目は、3,000平方メートルの基準が条例で変わるかです。都市計画法29条1項1号の規模は施行令19条1項で3,000平方メートルですが、ただし書により、都道府県は条例で区域を限り、300平方メートル以上3,000平方メートル未満の範囲で別の規模を定められます。3,000平方メートル未満だから許可はいらないと考えると✕にしてしまいます。条例の定めがない場合の3,000平方メートル(施行令19条1項本文)と、条例で下げた規模を取り違えないようにします。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。
まとめ
- 「非線引き区域」は法律の言葉ではなく、「区域区分が定められていない都市計画区域」のこと。都市計画区域の中にある。
- 用途地域は定めることができる(8条1項)。開発許可は3,000平方メートル以上で、条例で300平方メートルまで下げられる(施行令19条1項)。
- 43条の建築許可は市街化調整区域だけで、非線引き区域にはない。集団規定・建築確認はかかる。
- 用途地域のない所の建蔽率(10分の3〜7)・容積率(10分の5〜40)は特定行政庁が定める。
- 農地転用は許可(届出の特例は市街化区域だけ)。国土法の事後届出は5,000平方メートル以上。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(7条、8条、13条、29条、43条)
- e-Gov法令検索「都市計画法施行令」(19条)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(6条、41条の2、48条、52条、53条)
- e-Gov法令検索「農地法」(4条、5条)
- e-Gov法令検索「国土利用計画法」(23条)
このサイトで次に読むなら、市街化調整区域の記事です。同じ形の表で、開発許可・43条・用途地域の扱いが非線引き区域とどこで分かれるかを見比べられます。
働く人の法律試験ノート