国会・内閣・裁判所の関係をわかりやすく:三権分立と抑制の条文

三権分立(さんけんぶんりつ)は、国の力を3つに分ける仕組みです。法律をつくる力(立法権)は国会、法律にもとづいて国の仕事を行う力(行政権)は内閣、争いを法律で裁く力(司法権)は裁判所が持ちます(憲法41条・65条・76条1項)。

分けるだけでなく、おたがいにチェックし合うのがポイントです。国会は首相を指名し、内閣を不信任できます。内閣は衆議院を解散でき、裁判官を任命します。裁判所は、法律や処分が憲法に合うかを判断します。この記事では「誰が・誰に・何をできるか」を、条文と数字で整理します。

身近な例で考えるとどうなるか

登場するのは、中学3年生のそうたさんと、法学部の大学生の姉・ことねさんです。2人で夜のニュースを見ています(ニュースの中身は架空の話です)。

場面1:「内閣不信任案が可決されました」

そうたさん「不信任って、首相がクビになるの?」
ことねさん「すぐには決まらないよ。内閣は、10日以内に衆議院を解散するか、総辞職するかを選ぶの」

憲法69条によると、衆議院で不信任の決議案が可決されたとき(または信任の決議案が否決されたとき)、内閣は10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければなりません。総辞職(そうじしょく)とは、首相と大臣が全員そろってやめることです。

場面2:衆議院が解散されたあと

  1. 衆議院が解散される。衆議院議員は任期(4年)の途中でも身分を失う(45条)。
  2. 解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙が行われる(54条1項)。
  3. 選挙の日から30日以内に、国会が召集される(54条1項)。
  4. 総選挙のあと初めて国会が召集されたとき、内閣は総辞職する(70条)。
  5. 国会が、国会議員の中から新しい内閣総理大臣を指名する(67条1項)。天皇がその指名にもとづいて任命する(6条1項)。

ことねさん「つまり、解散しても今の内閣がずっと続くわけじゃないんだよ。選挙のあとに、いったん総辞職するからね」

たとえ話と、本物との違い

学校で考えると、生徒会の規則を決める「生徒総会」が国会、それを実行する「生徒会執行部」が内閣、もめごとを規則で判断する「審判役」が裁判所のようなものです。ただし本物の憲法では、内閣(執行部)が衆議院(総会の半分)を解散できるなど、学校にはない強いチェックの手段があります。たとえは入口として使い、細かい点は条文で覚えます。

条文ではどう決まっているか

3つの機関の役割

  • 国会:「国権の最高機関」であり、「国の唯一の立法機関」(41条)。法律をつくれるのは国会だけ、という意味です。衆議院と参議院の二院でできている(42条)。
  • 内閣:行政権は内閣に属する(65条)。内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織する(66条1項)。行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う(66条3項)。
  • 裁判所:すべて司法権は、最高裁判所と、法律で設けた下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所など)に属する(76条1項)。
  • 特別裁判所(ふつうの裁判所の系列から外れた、特定の人や事件だけを扱う裁判所)は設けられない。行政機関は、終審(しゅうしん=最後の判断)として裁判できない(76条2項)。

国会→内閣

  • 内閣総理大臣の指名:国会議員の中から、国会の議決で指名する。ほかのすべての案件より先に行う(67条1項)。衆議院と参議院の指名が違い、両院協議会(両方の議院の代表が話し合う場)でも一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決になる。衆議院の指名から10日以内(休会中を除く)に参議院が議決しないときも同じ(67条2項)。
  • 内閣不信任:衆議院だけができる。可決されたら、10日以内に解散がなければ総辞職(69条)。
  • 国政調査:両議院は国政に関する調査を行い、証人の出頭や記録の提出を求められる(62条)。

内閣→国会

  • 衆議院の解散:天皇の国事行為(こくじこうい=憲法が決めた、天皇が形式的に行う国の仕事)として「衆議院を解散すること」があり、内閣の助言と承認で行う(7条3号)。実際に決めるのは内閣です。
  • 臨時会の召集:内閣が召集を決定できる。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなければならない(53条)。

内閣→裁判所

  • 最高裁判所の長官:内閣が指名し、天皇が任命する(6条2項)。
  • 最高裁判所の長官以外の裁判官:内閣が任命する(79条1項)。
  • 下級裁判所の裁判官:最高裁判所が指名した人の名簿によって、内閣が任命する。任期は10年で、再任されることができる(80条1項)。

裁判所→国会・内閣

  • 違憲審査:最高裁判所は、一切の法律・命令・規則・処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を持つ終審裁判所(81条)。

国会・国民→裁判所

  • 弾劾裁判所:国会は、両議院の議員でつくる弾劾裁判所(だんがいさいばんしょ)を設ける(64条1項)。罷免(ひめん=やめさせること)の訴追(そつい=やめさせるよう訴えられること)を受けた裁判官を裁くためのものです。
  • 国民審査:最高裁判所の裁判官は、任命後初めての衆議院議員総選挙のときに国民の審査を受け、その後10年を過ぎて初めての総選挙のときに再び審査を受ける(79条2項)。投票者の多数が罷免を可としたときは罷免される(79条3項)。
  • 裁判官の身分の保障:心身の故障で職務ができないと裁判で決まった場合を除き、公の弾劾によらなければ罷免されない。行政機関は裁判官の懲戒処分をできない(78条)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:衆議院で内閣不信任案が可決され、内閣が8日後に衆議院を解散した。10日以内の解散なので、69条による総辞職は求められません。ただし、総選挙のあと初めて国会が召集されたときに総辞職します(70条)。
  • 当てはまらない例:参議院で内閣の問責決議(責任を問う決議)が可決された。69条の不信任は「衆議院」での可決についての定めなので、参議院の決議は69条の場面に当たりません。
  • 当てはまらない例:内閣が、ある裁判官の判決が気に入らないとして、その裁判官を懲戒処分にする。78条は、行政機関による裁判官の懲戒を禁じています。
  • ひっかけやすい例:内閣総理大臣が国務大臣を選ぶとき、全員を国会議員以外から選んだ。68条1項は、国務大臣の「過半数」を国会議員から選ぶよう求めています。全員を国会議員にする必要はありませんが、過半数は必要です。また、内閣総理大臣は国務大臣を任意に罷免できます(68条2項)。
  • ひっかけやすい例:衆議院の解散が憲法に合っているかを、裁判所で争った。最高裁判所大法廷昭和35年6月8日判決(昭和30年(オ)第96号。事件名「衆議院議員資格並びに歳費請求」。一般に「苫米地〈とまべち〉事件」と呼ばれます)は、衆議院の解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にあるとしました。解散で議員の身分を失った人が給料(歳費)を求めた裁判の中で、解散が有効かを判断の前提として争っても、裁判所は判断しない、ということです。

似ているルールとの違い

「誰が・誰に」の早見表

誰が誰に何をできるか条文
国会内閣首相の指名67条
衆議院内閣不信任の決議69条
内閣衆議院解散(天皇の国事行為)7条3号
内閣裁判所長官の指名、裁判官の任命6条2項・79条・80条
裁判所国会・内閣違憲審査81条
国会裁判官弾劾裁判所で裁く64条
国民最高裁の裁判官国民審査79条2項

まぎらわしい数字

  • 「10日」が3つある:①不信任可決のあと、解散までの期間(69条)。②首相の指名で、衆議院の議決から参議院が議決しないまま過ぎる期間(67条2項)。③参議院の緊急集会(衆議院の解散中に開く集まり)でとった措置は、次の国会の開会後10日以内に衆議院が同意しないと効力を失う(54条3項)。
  • 「40日」と「30日」:解散の日から40日以内に総選挙、選挙の日から30日以内に国会の召集(54条1項)。「30日」は、予算(60条2項)や条約(61条)を参議院が受け取ってから議決しないときの期間にも出てきます。
  • 「3分の2」:法律案を参議院が衆議院と違う議決をしたとき、衆議院が出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律になる(59条2項)。
  • 「4分の1」:臨時会の召集を求めるのに必要な、いずれかの議院の総議員の数(53条)。
  • 「10年」が2つある:下級裁判所の裁判官の任期(80条1項)と、最高裁判所裁判官の国民審査の間隔(79条2項)。

統治の数字は、憲法の勉強法の記事でも一覧にしています。裁判所の種類や審級は、基礎法学の記事とつながる内容です。

試験ではここをまちがえやすい

行政書士試験の憲法の統治分野では、条文の主語と数字を入れかえる形が問われやすいです。

  • 主語の入れかえ:「内閣総理大臣は、天皇が国会の議決で指名する」のような形。指名するのは国会、任命するのは天皇です(6条1項・67条1項)。最高裁判所の長官は、内閣が指名し天皇が任命します(6条2項)。
  • 参議院と衆議院:「参議院で不信任決議が可決されたときも、内閣は10日以内に解散か総辞職を選ぶ」とする形。69条は衆議院についての定めです。
  • 総辞職のタイミング:「解散して総選挙で与党が勝てば、内閣は総辞職しなくてよい」とする形。総選挙のあと初めての国会召集で、内閣は総辞職します(70条)。
  • 国務大臣の条件:「国務大臣は全員が国会議員でなければならない」とする形。必要なのは過半数です(68条1項)。また、内閣総理大臣その他の国務大臣は文民(ぶんみん=軍人ではない人)でなければなりません(66条2項)。
  • 任期と再任:「下級裁判所の裁判官は任期10年で、再任されない」とする形。再任されることができます(80条1項)。
  • 裁判官をやめさせる方法:「内閣は、裁判官を懲戒処分にできる」とする形。行政機関は裁判官の懲戒処分を行えません(78条)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
衆議院で内閣不信任の決議案が可決された。内閣は、30日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければならない。

答え:✕ 69条の期間は「10日以内」です。30日は、総選挙の日から国会を召集するまでの期間(54条1項)なので、入れかえに注意します。

問2(このサイトのオリジナル問題)
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が指名した者の名簿によって内閣が任命し、任期は10年で、再任されることができる。

答え:○ 80条1項のとおりです。ただし、法律の定める年齢に達したときは退官します。

問3(このサイトのオリジナル問題)
ことねさんは「内閣総理大臣は、国会議員でなくても、国会の議決で指名されれば首相になれる」と説明した。この説明は憲法の条文に合っている。

答え:✕ 67条1項は、内閣総理大臣は「国会議員の中から」国会の議決で指名するとしています。

まとめ

  • 立法は国会(41条)、行政は内閣(65条)、司法は裁判所(76条1項)。3つがおたがいにチェックする。
  • 国会は首相を指名し(67条)、衆議院は内閣を不信任できる(69条:10日以内に解散がなければ総辞職)。
  • 内閣は衆議院を解散でき(7条3号)、最高裁判所の長官を指名し、ほかの裁判官を任命する(6条2項・79条1項・80条1項)。
  • 裁判所は違憲審査を行う(81条)。国会は弾劾裁判所を設け(64条)、国民は最高裁判所の裁判官を審査する(79条2項)。
  • 解散の効力は、裁判所の審査権限の外にある(最高裁判所大法廷昭和35年6月8日判決)。

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参考にした公式の情報(2026年10月確認)