ひとことで言うと、株主平等原則は「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない」という決まりです(会社法109条1項)。平等の物差しは「人」ではなく「株式の内容と数」なので、1,000株を持つ人と10株を持つ人で配当の額や議決権の数が違うのは、この原則どおりです。
そのうえで、会社法は、違う扱いをしてよい場面を条文で決めています。株式の内容を種類ごとに変える種類株式(108条)、公開会社でない会社が株主ごとに違う扱いを定款で定める場合(109条2項。一般に「属人的定め」と呼ばれます)、単元株(308条1項ただし書・189条)、自己株式(308条2項)です。判例では、最高裁判所第二小法廷平成19年8月7日決定が、新株予約権無償割当てにも109条1項の趣旨が及ぶとしました。条文は、令和8年度の行政書士試験の基準日(令和8年4月1日)時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました(2026年10月17日確認)。
株主の3つの権利(配当・残余財産・議決権)と株主平等の基本は株式と株主の権利の記事にあります。この記事は、その先の「何が違ってよいか、根拠はどの条文か」と判例を扱います。種類株式の9つの事項は種類株式の記事に任せ、ここでは1行にとどめます。
身近な例で考えると
2つの架空の会社で考えます。
| 人物・会社 | 立場 | この話での役 |
|---|---|---|
| みなと食品 | 公開会社・取締役会設置会社 | 単元株式数を100株と定款で定めている |
| はるかさん | みなと食品の株主 | 2,000株を持つ |
| そうたさん | みなと食品の株主 | 50株だけ持つ |
| やまびこ工房 | 公開会社でない会社 | 創業者けいこさんの議決権を多くする定めを考えている |
- みなと食品は、剰余金の配当を1株につき10円と決めた。はるかさんは2万円、そうたさんは500円を受け取る。配当は株式の数に応じて割り当てるので、額が違っても平等です(454条3項)。
- 株主総会で、はるかさんは20個の議決権(100株で1個)を使える。そうたさんの50株は1単元に満たないので、議決権を使えない(308条1項ただし書・189条1項)。
- それでも、そうたさんは株主です。会社が解散して財産が残れば、50株の分の分配を受けられる。この権利は、定款で定めても単元未満株主から奪えない(189条2項5号)。
- やまびこ工房は、発行する全部の株式の譲渡に会社の承認が要る「公開会社でない会社」(2条5号の公開会社に当たらない会社)なので、「けいこさんの議決権は1株につき3個」という定めを定款に置くことができる(109条2項)。この定めを設ける定款変更には、ふつうより重い決議が要る(309条4項)。
たとえるなら、株主平等は「1口いくらの出資者の会」の平等です。参加者は1人1票ではなく、出した口数に応じて発言権と分け前を受け取ります。ただし本物のルールでは、口の中身(種類株式)を変えたり、小さな会社が人ごとに扱いを変えたりすることが、条文で決めた範囲だけ認められています。
条文ではこう決まっている
109条(株主の平等)
- 1項:会社は、株主を、持っている株式の内容と数に応じて、平等に扱わなければならない。
- 2項:1項にかかわらず、公開会社でない会社は、105条1項各号の権利(剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会の議決権)について、株主ごとに違う扱いをすると定款で定めることができる。
- 3項:2項の定めがあるときは、その株主の株式を、その権利について内容の異なる種類の株式とみなして、会社法第2編(株式会社)と第5編(組織変更・合併など)の規定を使う。
「数に応じて」を具体的に決めた条文
- 議決権:株主は、1株につき1個の議決権を持つ。単元株式数を定款で定めたときは、1単元につき1個(308条1項)。
- 剰余金の配当:配当財産の割当ての定めは、株主(会社自身などを除く)の持つ株式の数に応じて割り当てる内容でなければならない(454条3項)。
- 新株予約権無償割当て:割り当てる新株予約権の内容と数の定めは、株主(会社自身を除く)の持つ株式の数に応じて割り当てる内容でなければならない(278条2項)。
数の扱いが外れる場面(308条・189条)
- 相互保有株式:会社がその株主の総株主の議決権の4分の1以上を持っているなど、会社がその株主の経営を実質的に支配できる関係にあるとして法務省令で定める株主は、議決権を持たない(308条1項かっこ書き)。
- 自己株式:会社は、自分が持つ自己株式について議決権を持たない(308条2項)。
- 単元未満株式:単元未満株主は、その株式について株主総会・種類株主総会で議決権を使えない(189条1項)。会社は、定款で、それ以外の権利の全部または一部も使えないと定められる。ただし、残余財産の分配を受ける権利、株式無償割当てを受ける権利、単元未満株式の買取りを請求する権利などは除く(同条2項)。
属人的定めを置く決議(309条4項)
- 109条2項の定款の定めについての定款の変更は、総株主の半数以上で、かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成による決議(特殊決議)でしなければならない。頭数の要件と議決権の要件の両方がある。
- ただし、かっこ書きで「当該定款の定めを廃止するものを除く」とされている。廃止は、ふつうの定款変更と同じ特別決議(309条2項11号。議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上)で足りる。
何が違ってよいか:根拠の条文の表
| 違ってよい扱い | 何に着目するか | 根拠 | 使える会社 |
|---|---|---|---|
| 持株数で配当・議決権が違う | 株式の数 | 109条1項・308条1項・454条3項 | どの会社も |
| 種類株式(配当の優先など) | 株式の内容 | 108条 | どの会社も(一部の種類は制限あり) |
| 株主ごとの扱い(属人的定め) | 株主その人 | 109条2項・3項 | 公開会社でない会社だけ |
| 単元未満は議決権なし | 株式の数(単元) | 308条1項ただし書・189条1項 | 単元株式数を定めた会社 |
| 自己株式・相互保有株式は議決権なし | 持っている者 | 308条1項かっこ書き・2項 | どの会社も |
表の上の2行は「内容と数に応じて」の中にある違いで、109条1項そのものの姿です。3行目は109条1項の例外で、「前項の規定にかかわらず」と条文に書かれています。下の2行は、議決権の数の数え方を条文で外した場面です。少数株主権の「議決権の3%以上」のような割合の要件も、持株の数に応じた扱いの一つで、数字は会社法で覚える数字の一覧にまとめています。
判例:新株予約権無償割当てと株主平等原則
最高裁判所第二小法廷平成19年8月7日決定(平成19年(許)第30号)は、株式の公開買付けをした株主に対抗するため、会社が新株予約権無償割当てをした事件です。その株主とその関係者は新株予約権を行使できず、会社が金銭を払ってその新株予約権を取得できる内容になっていました。決定の判断は、3つに分けて押さえます。
- 趣旨が及ぶか:株主は株主の資格に基づいて新株予約権の割当てを受け、278条2項は株式の数に応じて割り当てることを求めている。そのため、109条1項の株主平等の原則の「趣旨」は、新株予約権無償割当ての場合にも及ぶ。
- 差別的な扱いが許される場合:特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の企業価値がき損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には、その防止のためにその株主を差別的に扱っても、その扱いが「衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り」、直ちに株主平等の原則の趣旨に反するとはいえない。
- だれが判断するか:株主の共同の利益が害されるかどうかは、「最終的には」会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきもので、株主総会の手続が適正を欠くなど判断の正当性を失わせる重大な瑕疵がない限り、その判断が尊重される。
この決定は、事件の事情(株主総会で議決権の大多数の賛成があったこと、行使できない株主にも新株予約権の価値に見合う金銭が払われることなど)を踏まえて、無償割当てを差し止めませんでした。「差別的な扱いはいつでも許される」とも「株主総会が認めれば何でもよい」とも言っていません。限定の言葉(「相当性を欠くものでない限り」「重大な瑕疵が存在しない限り」)を落とさずに覚えます。新株予約権そのものの発行と差止めは新株予約権の記事にあります。
なお、株主優待(一定数以上の株主に品物などを渡すこと)について、会社法に直接の定めはありません。109条1項との関係は教科書で考え方が分かれるので、試験の対策としては「条文で決まっている違い」を優先して押さえます。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(数に応じた違い):はるかさんの配当がそうたさんの40倍になる。持株数が40倍なので、109条1項に反しません。
- 当てはまらない例(公開会社の属人的定め):公開会社のみなと食品が「はるかさんの議決権は1株につき2個」と定款で定めた。株主ごとの扱いを定められるのは公開会社でない会社だけです(109条2項)。
- 当てはまらない例(2項の対象外の権利):109条2項で株主ごとに変えられるのは、配当・残余財産・議決権の3つ(105条1項各号)に関する事項です。それ以外の権利を人ごとに変える根拠にはなりません。
- ひっかけやすい例(単元未満株主):そうたさんは議決権を使えないが、株主の権利が全部なくなるわけではありません。残余財産の分配や株式無償割当てを受ける権利などは、定款でも外せません(189条2項)。
試験ではここをまちがえやすい
- 「一人ずつ同じ」と読む型:109条1項は「内容及び数に応じて」の平等です。持株数に比例した割当て(454条3項・278条2項)が平等の中身です。
- 属人的定めの決議の取り違え:設ける・変えるときは特殊決議(総株主の半数以上・議決権の4分の3以上)。廃止は除かれていて特別決議。全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更の特殊決議(309条3項1号)とも、議決権の割合が違います。
- 属人的定めと種類株式の混同:属人的定めは株式ではなく人に着目した定めですが、109条3項で種類株式とみなされ、会社法の規定はその扱いで使います。
- 単元未満株主の権利の範囲:議決権は法律で当然に使えない(189条1項)。ほかの権利は定款で制限できる(同条2項)が、外せない権利がある。「当然に」と「定款で」を入れ替えた形に注意します。
- 判例の限定の落とし方:平成19年決定は、新株予約権無償割当てに109条1項の「趣旨」が及ぶとした。差別的な扱いが許されるのは、衡平の理念に反し相当性を欠くものでない限りで、判断は最終的には株主自身による、という形です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
公開会社でないやまびこ工房は、創業者けいこさんの議決権を1株につき3個とする、株主ごとに異なる取扱いの定めを定款に置いている。この定めを廃止する定款変更には、総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上の賛成による決議が要る。
答え:✕ 分かれ目は、309条4項のかっこ書きです。109条2項の定めについての定款変更は特殊決議(総株主の半数以上・総株主の議決権の4分の3以上)ですが、「当該定款の定めを廃止するものを除く」とされています(309条4項)。正しくは、廃止はふつうの定款変更と同じ特別決議(309条2項11号)で足ります。定めを設けるときの特殊決議を、廃止にも当てはめると○にしてしまいます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
単元株式数を100株と定めている公開会社みなと食品で、株主そうたさんは50株を持つ。そうたさんは株主総会で議決権を行使できないが、みなと食品は、定款で定めても、そうたさんが残余財産の分配を受ける権利を行使できないようにすることはできない。
答え:○ 分かれ目は、単元未満株主から外せる権利と外せない権利の区別です。単元未満株式には、法律で当然に議決権がありません(189条1項)。会社は、定款でそれ以外の権利の行使も制限できますが、残余財産の分配を受ける権利は、制限できない権利として189条2項5号に挙がっています。議決権がないことから「定款で何でも外せる」と考えると✕に見えます。剰余金の配当により金銭等の交付を受ける権利も、同項6号の法務省令(会社法施行規則35条1項7号ニ)で外せない権利に入っています。
問3(このサイトのオリジナル問題)
取締役会設置会社であるみなと食品が、新株予約権無償割当てをする。定款に別段の定めはない。取締役会は、株主の持つ株式の数にかかわらず、株主1人につき同じ数の新株予約権を割り当てると定めることができる。
答え:✕ 分かれ目は、割当ての物差しが「人」か「株式の数」かです。取締役会設置会社では、定款に別段の定めがなければ取締役会が割当ての事項を決めます(278条3項)。しかし、その定めは、株主(会社自身を除く)の持つ株式の数に応じて割り当てる内容でなければなりません(同条2項)。正しくは、1人につき同じ数とする定めはできません。株主平等を「一人ずつ同じ」と読むと○に見えます。平成19年8月7日決定も、この278条2項を、109条1項の趣旨が無償割当てに及ぶ理由の一つにしています。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。
まとめ
- 109条1項は「株式の内容及び数に応じて」の平等。持株数に比例した配当・議決権・無償割当ては、この原則どおり(308条1項・454条3項・278条2項)。
- 例外:公開会社でない会社は、配当・残余財産・議決権について株主ごとの扱いを定款で定められる(109条2項)。その株式は種類株式とみなされる(同条3項)。
- 属人的定めの定款変更は特殊決議(総株主の半数以上・議決権の4分の3以上)。廃止は除かれていて特別決議(309条4項・2項11号)。
- 単元未満株式は議決権なし(189条1項)。残余財産の分配などは定款でも外せない(同条2項)。自己株式・相互保有株式も議決権なし(308条)。
- 最決平成19年8月7日:無償割当てにも109条1項の趣旨が及ぶ。差別的な扱いは、衡平の理念に反し相当性を欠くものでない限り、直ちに趣旨に反するとはいえない。判断は最終的には株主自身。
このサイトで次に読むなら、種類株式の記事です。表の2行目の「株式の内容」による違いを、108条の9つの事項と種類株主総会で確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめました(2026年10月17日確認)。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判所・年月日・事件番号と、決定の全文を確かめました。
- e-Gov法令検索「会社法」(105条、108条、109条、189条、278条、308条、309条2項11号・3項1号・4項、454条2項・3項)
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」(35条1項7号:単元未満株主が行使できる権利)
- 裁判所「最高裁判所第二小法廷 平成19年8月7日決定(平成19年(許)第30号)」(新株予約権無償割当てと株主平等の原則。会社法109条1項・247条)
働く人の法律試験ノート