公示・告示・公告・公布の違い:法令用語として何を知らせる言葉か(選挙の公示と告示、官報の公告)

ひとことで言うと、4つの言葉は条文で次のように使われています。公布は、成立した法令を国民に知らせること(憲法7条1号)。告示は、大臣などが公に知らせる必要があるときに出す「形式」の名前(国家行政組織法14条1項)。公示は、広く一般に知らせる「行為」そのもの。公告は、会社などが法律に従って広く知らせることで、方法は官報・日刊新聞紙・電子公告から定款で選びます(会社法939条1項)。

選挙では、衆議院の総選挙と参議院の通常選挙の期日は「公示」、国会議員の補欠選挙と地方の選挙の期日は「告示」と、公職選挙法が言葉を書き分けています。この記事では、言葉の意味を辞書で決めるのではなく、条文での使われ方で区別します。公布と施行の関係は法令の公布と施行の記事、行政規則としての告示の性質は行政立法の記事に任せます。

身近な例で考えると

会社員のみなとさんが、ある1週間に目にしたニュースや書類で考えます。

  1. 月曜日:新しい法律が「公布された」というニュース。法律が国民に知らされ、いつから効き始めるか(施行)の前提が整った。
  2. 火曜日:衆議院の総選挙が「公示された」というニュース。選挙の期日が国民に知らされた。
  3. 水曜日:住んでいる市の市長選挙が「告示された」というニュース。同じ選挙の知らせなのに、言葉が違う。
  4. 木曜日:ある省の「告示」が官報に載ったという記事。処分の要件を定めた告示だった。
  5. 金曜日:勤め先の会社が、法律で求められた事項を「公告」した。定款で定めた方法で広く知らせている。

どれも「広く知らせる」話ですが、だれが・何を・どの法律にもとづいて知らせるかが違います。たとえると、学校の「お知らせ」でも、校長の名前で出す正式な文書(形式)と、掲示板に貼って知らせること(行為)は別の話です。ただし本物の条文では、同じ言葉でも法律によって使い方が細かく違うので、条文ごとに確かめます。

条文ではこう決まっている

公布(憲法7条1号)

天皇は、内閣の助言と承認により、「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」を国事行為として行います(憲法7条1号)。公布は官報で行います(官報の発行に関する法律3条1項)。条例は、地方公共団体の長が公布します(地方自治法16条2項)。

告示と公示(国家行政組織法14条1項、官報の発行に関する法律3条2項)

  • 国家行政組織法14条1項:各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、「公示を必要とする場合においては、告示を発することができる」。
  • 同条2項:所管の諸機関及び職員に対しては、命令又は示達をするため、訓令又は通達を発することができる。
  • 官報の発行に関する法律3条2項:国家行政組織法14条1項などの告示のうち、処分の要件を定める告示などの「公示は、官報をもって行う」。

二つの条文を並べると、「公示(広く知らせること)が必要なときに、告示(形式)を発する」「告示の公示は官報で行う」という使い分けが見えます。告示が「知らせる形式」、公示が「知らせる行為」です。

ほかの法律の「公示」

  • 憲法7条4号:天皇の国事行為として「国会議員の総選挙の施行を公示すること」。
  • 行政手続法39条1項:命令等を定めようとするときは、命令等の案と関連する資料を「あらかじめ公示し」、広く一般の意見を求める。意見提出期間は、公示の日から起算して30日以上(同条3項)。
  • 民法98条:相手方やその所在を知ることができないとき、意思表示は「公示の方法」ですることができる。裁判所の掲示場への掲示と、その掲示があったことの官報への掲載などで行う(2項)。

公告(会社法939条)

  • 1項:会社は、公告方法として、①官報に掲載する方法、②時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、③電子公告のいずれかを定款で定めることができる。
  • 3項:電子公告を公告方法とする会社は、事故その他やむを得ない事由で電子公告ができない場合の方法として、官報か日刊新聞紙のどちらかを定めることができる。
  • 4項:定款で公告方法を定めない会社の公告方法は、官報に掲載する方法となる。

選挙の「公示」と「告示」はどう分かれるか

公職選挙法は、選挙の期日を知らせる言葉を、選挙の種類で書き分けています。日数は「少なくとも◯日前に」で、条文の文言どおりに並べます(令和8年4月1日時点の条文)。

選挙条文の言葉期日の何日前まで条文
衆議院の総選挙公示少なくとも12日前31条4項
参議院の通常選挙公示少なくとも17日前32条3項
衆議院の再選挙・補欠選挙告示少なくとも12日前33条の2第8項1号
参議院の再選挙・補欠選挙告示少なくとも17日前33条の2第8項2号
都道府県知事告示少なくとも17日前33条5項1号
指定都市の長告示少なくとも14日前33条5項2号
都道府県・指定都市の議会の議員告示少なくとも9日前33条5項3号
指定都市以外の市の議員・長告示少なくとも7日前33条5項4号
町村の議員・長告示少なくとも5日前33条5項5号

33条5項は、地方の任期満了・解散・地方公共団体の設置による選挙(33条1項〜3項)についての定めです。地方の再選挙・補欠選挙などについても、34条6項が同じ区分と日数で「告示しなければならない」としています。

表から分かることは二つです。一つは、この表で「公示」が使われているのは衆議院の総選挙と参議院の通常選挙で、国会議員の選挙でも補欠選挙は「告示」だということ。もう一つは、日数は言葉ではなく選挙の種類で決まっていて、たとえば参議院の通常選挙の「公示」と都道府県知事選挙の「告示」は、どちらも少なくとも17日前だということです。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:衆議院が解散され、総選挙が行われる。期日は少なくとも12日前に「公示」されます(公職選挙法31条4項)。解散による総選挙は、解散の日から40日以内に行います(同条3項)。
  • 当てはまる例:みなとさんの住む指定都市でない市の市長選挙。期日は少なくとも7日前に「告示」されます(33条5項4号)。
  • 当てはまらない例:参議院議員が欠けて行われる補欠選挙を「公示」とすること。条文は「告示」です(33条の2第8項)。
  • ひっかけやすい例:大臣が職員に対して仕事の進め方を指示する文書を「告示」とすること。所管の諸機関及び職員に対して発するのは訓令・通達です(国家行政組織法14条2項)。告示は、公示が必要な場合に発するものです(同条1項)。
  • ひっかけやすい例:定款で公告方法を定めていない会社が、電子公告で公告すればよいと考えること。定めがなければ官報に掲載する方法です(会社法939条4項)。

似ている言葉との違い

言葉条文での使われ方条文の例
公布成立した法令を国民に知らせる憲法7条1号、地方自治法16条2項
告示大臣などが公示を必要とするときに発する形式。地方選挙・補欠選挙の期日を知らせる国家行政組織法14条1項、公職選挙法33条5項・33条の2第8項
公示広く一般に知らせる行為。総選挙・通常選挙の期日を知らせる憲法7条4号、公職選挙法31条4項・32条3項、行政手続法39条1項、民法98条
公告会社などが法律に従って広く知らせる会社法939条

この表は、この記事で読んだ条文での使われ方をまとめたものです。法令全体でこの4つの言葉を一つの定義でくくった規定を示すものではありません。ほかの法令用語(「及び・並びに」「又は・若しくは」など)は基礎法学の記事、「直ちに・速やかに・遅滞なく」は法令用語の時間の言葉の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 選挙の言葉の入れ替え:国会議員の選挙はすべて「公示」とする形。補欠選挙・再選挙は「告示」です。
  • 日数の入れ替え:衆議院は12日、参議院は17日。地方は17・14・9・7・5日で、知事と参議院が同じ17日です。
  • 告示と訓令・通達:国家行政組織法14条の1項(告示)と2項(訓令・通達)の相手の違い。訓令・通達は所管の諸機関と職員に対して発します。
  • 公布の主体:法律の公布は天皇の国事行為(憲法7条1号)、条例の公布は地方公共団体の長(地方自治法16条2項)。
  • 公告方法の定めがないとき:官報に掲載する方法(会社法939条4項)。電子公告ではありません。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
参議院議員が欠けたため、補欠選挙を行うことになった。公職選挙法の条文では、この補欠選挙の期日は、参議院議員の通常選挙と同じく「公示」するものとされ、その日数は少なくとも17日前である。

答え:✕ 分かれ目は、条文の言葉です。参議院議員の補欠選挙の期日は、公職選挙法33条の2第8項により「告示」しなければならず、日数は少なくとも17日前です。正しくは「公示」ではなく「告示」で、日数は合っています。「公示」と書くのは、衆議院の総選挙(31条4項)と参議院の通常選挙(32条3項)です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
都道府県知事の任期満了による選挙の期日は、少なくとも17日前に告示しなければならず、この日数は、参議院議員の通常選挙の期日を公示する日数と同じである。

答え:○ 分かれ目は、言葉が違っても日数が同じ組を知っているかです。知事の選挙は公職選挙法33条5項1号で少なくとも17日前に告示、参議院の通常選挙は32条3項で少なくとも17日前に公示です。国政の選挙のほうが長いはずと考えると✕に見えます。衆議院の総選挙は12日前、指定都市の長は14日前で、ここと入れ替えた形にも注意します。

問3(このサイトのオリジナル問題)
国家行政組織法によれば、各省大臣は、その機関の所掌事務について公示を必要とする場合に、所管の諸機関及び職員に対して告示を発することができる。

答え:✕ 分かれ目は、告示と訓令・通達の相手です。国家行政組織法14条1項は、公示を必要とする場合に告示を発することができるとし、相手を限っていません。所管の諸機関及び職員に対して発するのは、命令又は示達をするための訓令又は通達です(同条2項)。正しくは、職員あての指示は訓令・通達で、告示は広く知らせるための形式です。

法令用語・基礎法学の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • 公布:成立した法令を国民に知らせる。法律は天皇の国事行為(憲法7条1号)で官報による。条例は長が公布。
  • 告示:大臣などが公示を必要とするときに発する形式(国家行政組織法14条1項)。職員あては訓令・通達(2項)。
  • 公示:広く知らせる行為。告示の公示は官報で(官報の発行に関する法律3条2項)。
  • 選挙:総選挙(12日前)・通常選挙(17日前)は「公示」。補欠選挙・地方の選挙は「告示」。
  • 公告:会社の公告方法は官報・日刊新聞紙・電子公告から定款で選び、定めがなければ官報(会社法939条)。

次に読むなら、天皇の国事行為の記事がおすすめです。公布と総選挙の公示がどちらも国事行為として並ぶ7条の一覧から、内閣の助言と承認の仕組みを確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の版を指定して確かめました。公職選挙法の日数は、各条の文言で確かめています。

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