取消訴訟の出訴期間・被告・管轄:6か月と1年の数え方、正当な理由、だれを訴えるか

ひとことで言うと、取消訴訟の出訴期間(しゅっそきかん=訴えを起こせる期間)は、処分があったことを知った日から6箇月、処分の日から1年です。どちらも、正当な理由があれば例外になります(行政事件訴訟法14条1項・2項)。審査請求をした人は、裁決を基準に数えます(14条3項)。

被告は、処分をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国や公共団体です(11条1項)。この記事は、令和8年4月1日時点の行政事件訴訟法で、期間の数え方と、だれを・どこの裁判所に訴えるかを整理します。処分性・原告適格・訴えの利益の3つの要件は取消訴訟の要件をわかりやすくで扱っています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
ゆうなさん美容室の店主4月10日に営業停止処分の通知を受け取って読んだ
A市長処分庁法律にもとづいて営業停止処分をした
A市市長が所属する公共団体取消訴訟の被告になる
  1. 4月10日、ゆうなさんは営業停止処分の通知を受け取り、その日に読んだ。この日が「処分があったことを知った日」になる。
  2. 期間の初日(4月10日)は数えないので、4月11日から数えて6箇月、10月10日の終わりまでに訴えを起こす(この例では、10月10日は平日とします)。
  3. 通知には、被告とすべき者(A市)と出訴期間が書いてあった(46条1項の教示)。
  4. ゆうなさんが先に審査請求をしたなら、出訴期間は裁決を知った日から6箇月・裁決の日から1年になる(14条3項)。
  5. 訴えは、A市の所在地を受け持つ地方裁判所に起こせる(12条1項)。

たとえるなら、出訴期間は「返品を受け付ける期限」です。期限はレシートを受け取った日の翌日から数え、受け取ったことに気づかなくても、買った日から1年たてば終わります。ただし本物のルールでは、正当な理由があれば期限後でも訴えられる例外があり、そこが返品の期限と違います。

条文ではこう決まっている

出訴期間(14条)

  • 1項:処分又は裁決があったことを知った日から6箇月を経過したときは、提起できません。正当な理由があるときは例外です。
  • 2項:処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起できません。正当な理由があるときは例外です。知らないままでも、1年で区切られます。
  • 3項:審査請求ができる場合、または行政庁が誤って審査請求ができる旨を教示した場合に、審査請求があったときは、「その審査請求をした者については」、裁決があったことを知った日から6箇月・裁決の日から1年です。正当な理由があるときは例外です。

期間の数え方

14条には数え方の定めがありません。行政事件訴訟法7条は、定めのない事項は民事訴訟の例によるとし、民事訴訟法95条1項は「期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う」としています。民法140条により初日は算入せず、月や年で決めた期間は暦に従い、起算日に応当する日の前日に満了します(民法143条)。期間の末日が土日・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)に当たるときは、その翌日に満了します(民事訴訟法95条3項)。

例数え始め期間の終わり
4月10日に処分を知った(6箇月)4月11日10月10日
8月31日に処分を知った(6箇月)9月1日(月の初め)翌年2月の末日
処分の日が4月1日(1年)4月2日翌年4月1日

2つ目の例は、数え始めが月の初めなので、暦どおり6か月目の月の末日に満了します(民法143条2項は、月の初めから数えないときの決まり)。行政不服審査法の審査請求の期間は「翌日から起算して」と書かれ、14条にはその言葉がありません。書き方は違いますが、どちらも初日を数えない点は同じです。期間の数字の一覧は期間・数字の一覧にもあります。

古い判例との関係に注意します。今の形に改められる前の14条4項は、審査請求をした者の期間を「裁決があつたことを知つた日又は裁決の日から起算する」と定めていました。最高裁判所第一小法廷昭和52年2月17日判決は、この規定によるときは、知った日・裁決の日を初日として期間に算入するとしました。今の14条は1項から3項まで「〜から6箇月を経過したとき」「〜から1年を経過したとき」の書き方で、「起算する」の語を使っていません。数え方の特別の定めがないので、上の条文のつながりどおり初日は数えない、と読むことになります。

被告(11条)

  • 処分や裁決をした行政庁が国・公共団体に所属するときは、処分の取消しの訴えは処分をした行政庁の所属する国・公共団体を、裁決の取消しの訴えは裁決をした行政庁の所属する国・公共団体を被告にします(11条1項1号・2号)。処分のあとに権限が別の行政庁に引き継がれたときは、引き継いだ行政庁で考えます(同項かっこ書き)。
  • 行政庁が国・公共団体に所属しないときは、その行政庁を被告にします(11条2項)。
  • 被告とすべき国・公共団体・行政庁がないときは、処分や裁決に係る事務の帰属する国・公共団体を被告にします(11条3項)。

管轄(12条)

  • 被告の普通裁判籍の所在地の裁判所、または処分・裁決をした行政庁の所在地の裁判所に起こします(12条1項)。
  • 土地の収用など、不動産や特定の場所に係る処分は、その不動産・場所の所在地の裁判所にも起こせます(12条2項)。
  • 事案の処理に当たった下級行政機関の所在地の裁判所にも起こせます(12条3項)。
  • 国や独立行政法人などが被告のときは、原告の住所を受け持つ高等裁判所の所在地の地方裁判所(特定管轄裁判所)にも起こせます(12条4項)。

被告を誤ったとき(15条)と教示(46条)

  • 原告が故意または重大な過失なしに被告を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定で被告の変更を許すことができます(15条1項)。このとき出訴期間については、新しい被告への訴えは最初に訴えを起こした時に起こしたものとみなされます(15条3項)。
  • 行政庁は、取消訴訟を起こせる処分や裁決をするときは、相手方に、被告とすべき者・出訴期間・審査請求前置の定めがあればその旨を、書面で教示しなければなりません。処分を口頭でする場合は除かれます(46条1項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる:ゆうなさんが10月10日に訴えを起こす。4月11日から数えて6箇月の最後の日なので、期間内です。
  • 当てはまらない:ゆうなさんが10月12日に訴えを起こし、遅れたことに正当な理由もない。6箇月を過ぎているので、訴えは却下されます。
  • 当てはまらない(客観の1年):処分の日から1年3か月後に処分を知り、その直後に訴えた。知ってから6箇月以内でも、処分の日から1年を過ぎています。正当な理由がなければ起こせません(14条2項)。
  • ひっかけやすい(審査請求をした人だけ):審査請求をした本人は裁決を基準に数えますが、審査請求をしていない人は、処分を基準に数えます(14条3項の「その審査請求をした者については」)。
  • ひっかけやすい(誤った教示):審査請求ができない処分なのに「できる」と教示され、それに従って審査請求をした人も、裁決を基準に数えます(14条3項)。

似ているルールとの違い

場面知った日からあった日から
審査請求をしないで訴える処分を知った日から6箇月処分の日から1年
審査請求をした本人裁決を知った日から6箇月裁決の日から1年
誤って教示され審査請求をした本人裁決を知った日から6箇月裁決の日から1年
審査請求をしていない第三者処分を知った日から6箇月処分の日から1年

教示しなかったとき・誤って教示したときの決まりは教示をわかりやすくで、処分と裁決のどちらを訴えるかは原処分主義と裁決主義で確かめられます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 起算点の入れ替え:審査請求をした本人は裁決が基準、していない人は処分が基準。
  • 誤った教示:審査請求ができない処分でも、誤って教示されて審査請求をしたなら、裁決が基準になります。
  • 被告の取り違え:処分の訴えは処分庁の所属する国・公共団体、裁決の訴えは裁決庁の所属する国・公共団体。所属が違えば被告も違います。
  • 行政庁が被告になる場合:国・公共団体に所属しない行政庁のときだけです(11条2項)。
  • 管轄の広がり:被告の所在地・処分庁の所在地に加え、不動産の所在地、下級行政機関の所在地、特定管轄裁判所にも起こせます。
  • 被告を誤ったとき:故意・重大な過失がなければ変更が許され、出訴期間は最初の訴えの時で判断します。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
B社のマンションに建築確認がされ、近所のゆうなさんが審査請求をして棄却の裁決を受けた。同じ建築確認の取消訴訟を、審査請求をしていない近所のたけしさんが起こす場合も、出訴期間は、その裁決があったことを知った日から6箇月で数える。

答え:✕ 分かれ目は、14条3項の起算点の特例がだれに使われるかです。行政事件訴訟法14条3項は、審査請求があったときの出訴期間を、「その審査請求をした者については」裁決があったことを知った日から6箇月・裁決の日から1年としています。正しくは、審査請求をしていないたけしさんは、処分があったことを知った日から6箇月・処分の日から1年で数えます(14条1項・2項)。審査請求をしたゆうなさん本人の数え方と取り違えた誤りです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
A県知事が、法律上は審査請求ができない処分なのに、処分の通知に誤って審査請求ができると書いた。Cさんが教示どおり審査請求をした場合、Cさんの取消訴訟の出訴期間は、裁決があったことを知った日から6箇月で数える。

答え:○ 分かれ目は、誤った教示に従って審査請求をした人の起算点です。行政事件訴訟法14条3項は、審査請求ができる場合だけでなく、「行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合」に審査請求があったときも、その審査請求をした者の出訴期間を、裁決を知った日から6箇月・裁決の日から1年としています。審査請求ができない処分なのだから処分を基準にする、と考えると✕にしてしまいます。審査庁の教示の誤りを救う行政不服審査法22条とは別の規定です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
A市長が法定受託事務としてした処分について、DさんはB県知事に審査請求をし、棄却の裁決を受けた。Dさんがこの裁決の取消しの訴えを起こすときは、処分をした市長の属するA市を被告とする。

答え:✕ 分かれ目は、裁決の取消しの訴えの被告です。行政事件訴訟法11条1項2号は、裁決の取消しの訴えの被告を「当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体」としています。正しくは、裁決をした知事の属するB県を被告とします。処分の取消しの訴えなら、処分をした市長の属するA市が被告です(同項1号)。市町村長の法定受託事務の処分についての審査請求は、都道府県知事にします(地方自治法255条の2第1項2号)。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 出訴期間は、知った日から6箇月・処分の日から1年。正当な理由があれば例外。
  • 初日は数えない(7条→民事訴訟法95条1項→民法140条)。4月10日に知ったら10月10日まで。末日が休日なら翌日。
  • 審査請求をした本人(誤った教示による場合を含む)は、裁決を知った日から6箇月・裁決の日から1年。
  • 被告は、処分の訴えなら処分庁、裁決の訴えなら裁決庁の所属する国・公共団体。所属しない行政庁なら行政庁。
  • 管轄は被告・処分庁の所在地が基本で、不動産・下級行政機関・特定管轄裁判所にも。被告を誤っても、故意・重大な過失がなければ変更できる。

このサイトで次に読むなら、執行停止と仮の救済です。訴えを起こしただけでは処分は止まらないので、期間内に訴えるのとあわせて、止める手続を確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判年月日・法廷・事件番号・判示事項・裁判要旨を確かめ、初日の算入についての判断は判決全文で確かめました。

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