行政書士試験の勉強時間に、公式の目安はありません。試験を行う行政書士試験研究センター(以下「センター」)も、時間や勉強法は示していません。ネットで見かける「◯時間」という数字は、あまり当てになりません。その人が前に法律を学んだことがあるか、1時間で何をしたかが分からないからです。
そこでこの記事では、時間からではなく「何点取るか」から逆算します。手順は3つです。①合格の基準と配点(問題ごとの点数)から、目標の点を決める。②点の多い行政法と民法に、時間を多く回す。③自分が1つの単元(教科書の1章くらいのまとまり)に何時間かかるかを測り、必要な時間を見積もる。そのうえで、働きながら勉強する人の1日と1週間の組み方を、例で示します。
勉強時間に公式の目安はあるのか
ありません。センターの試験概要・試験案内・よくある質問のどれにも、勉強時間の目安は書かれていません。よくある質問では、資格講座や教材についての問い合わせにも答えないとしています。合格した人の勉強時間を集めた、公式の統計もありません。
公式に決まっているのは、試験の中身のほうです。令和7年度の合否判定基準では、満点は300点でした。内訳は、法令等(法律の科目)が244点、基礎知識が56点です。合格するには、次の3つを全部満たす必要がありました。法令等で122点以上、基礎知識で24点以上、全体で180点以上です。この基準は、問題の難しさによって補正(ほせい=合格ラインを下げるなどの調整)されることがあります。勉強時間は、この3つの条件を越える点を取るのに必要な量として、自分で見積もるものです。
時間ではなく「取る点」から逆算する
まず、問題の形ごとに目標の点を決めます。令和7年度の配点は、次のとおりでした。5肢択一式(5つの選択肢から1つ選ぶ問題)は1問4点です。多肢選択式(文章の空欄に入る言葉を選ぶ問題)は1問8点で、空欄1つにつき2点です。記述式(40字くらいで答えを書く問題)は1問20点です。次の表は、当サイトが作った目標の点の一つの例です。
| 形式 | 満点 | 目標の例 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 法令等 5肢択一 | 160点(40問) | 120点 | 30問正解 |
| 多肢選択 | 24点(空欄12個) | 16点 | 空欄8個 |
| 記述 | 60点(3問) | 20点 | 1問分相当 |
| 基礎知識 | 56点(14問) | 32点 | 8問正解 |
この例だと、法令等が156点(基準は122点)になります。基礎知識は32点(基準は24点)、全体は188点(基準は180点)です。3つの条件を、少し余裕をもって越えます。記述式は、書いた答えが何点になるかを自分では見積もりにくい形です。そこで目標を低めにして、択一で点を積む形にしています。
この表から分かるのは、点の大半が法令等の5肢択一から来る、ということです。勉強時間も、まずここに多く回します。足切り(あしきり=ある部分の点が基準に届かないと、全体の点が高くても不合格になる仕組み)については、合格点と足切りの記事で詳しく書いています。
科目ごとに時間をどう配るか
科目ごとの問題数は、センターが表で公表しているものではありません。参考として、令和3年度の問題PDFの並びを、当サイトで数えました。結果は次のとおりです。これは当サイトが数えたもので、公式の内訳ではありません。年度によって変わることがあるので、目安として見てください。
| 科目 | 令和3年度の問題数 | 点数の目安 |
|---|---|---|
| 行政法 | 択一およそ19・多肢2・記述1 | 約112点 |
| 民法 | 択一9・記述2 | 約76点 |
| 憲法 | 択一5前後・多肢1 | 約28点 |
| 商法・会社法 | 択一5前後 | 約20点 |
| 基礎法学 | 択一2前後 | 約8点 |
| 基礎知識 | 択一14 | 56点 |
行政法と民法を合わせると、300点のうち、およそ190点になります。当サイトでは、勉強時間の分け方を次のくらいから始めることをすすめます。そのあと、模試や過去問の結果を見て調整します。
- 行政法:35%前後。条文に書かれた条件で答えが決まる問題が多い科目です。時間をかけた分が、点につながりやすくなります。
- 民法:30%前後。範囲が広く、分かるまでに時間がかかります。そのため、点数の割合より少し多めに見ておきます。
- 基礎知識:15%前後。足切りがあるので、量は少なくても毎週続けます。
- 憲法:10%前後。
- 商法・会社法と基礎法学:合わせて10%前後。
この割合は、配点から考えた当サイトの例です。正解ではありません。たとえば、法学部の出身で民法に慣れている人は、民法を減らしてかまいません。行政法と民法の中で何から始めるかは、行政法の勉強法と民法の勉強法の記事で書いています。
自分に必要な時間を見積もる手順
人の数字の代わりに、自分の数字を測ります。最初の2週間を「測る期間」にします。この期間は、計画どおりに進めることを目指しません。ふだんの生活の中で、実際に何分取れたか、1単元に何分かかったかを記録します。
- 基本書(ベースにする教科書)で、行政法の1単元を読む(たとえば行政手続法の1章)。そのあと、その単元の分野別過去問(科目・テーマごとに並べた過去問集)を解き終えるまでの時間を測る。
- 同じことを、民法でも1単元やって測る。民法のほうが時間がかかると分かったら、その差も計画に入れる。
- 基本書の目次を見て、科目ごとの単元の数を数える。
- 「1単元の時間×単元の数」で、1周目にかかる時間を出す。2周目からは、1周目より短くなると考えて見積もる。どのくらい短くなるかは、2周目の最初の単元で測り直す。
- 最後の3か月にやる通し練習(1回3時間+見直し)を、回数分だけ足す。
計算の例を示します。数字は計算のしかたを見せるための仮のもので、目安ではありません。会社員のゆうとさんが測ったら、1単元に2時間かかったとします。行政法が30単元あれば、1周目は60時間です。ゆうとさんが週に7時間とれるなら、行政法の1周目だけで約9週間かかります。こうして出た合計が、試験日までに取れる時間を超えることもあります。そのときは、目標の点の分け方か、1週間の時間の取り方を見直します。見積もりは1か月ごとに測り直すと、ずれが小さいうちに直せます。
社会人は1日の中でどう時間を取るか
働きながらの勉強では、時間の長さより「毎日同じ時刻に始められるか」で、続くかどうかが決まります。1日の時間を3種類に分け、それぞれに合うことだけを入れます。
- 決まった時間(まとまった30〜60分):出勤前か帰宅後に、毎日同じ時刻で1つ取ります。新しい単元を読む、分野別過去問を解く、といった集中のいる作業に使います。朝にするか夜にするかは、残業や家の予定でつぶれにくいほうを選びます。
- すき間時間(5〜15分):通勤、昼休み、待ち時間です。まちがえた問題の見直し、条文を1つ読む、文章理解を1問、など1回で区切れることだけを入れます。新しい単元は入れません。
- 寝る前の5分:その日にまちがえた選択肢を見返すだけにします。
決まった時間が60分なら、中身を3つに区切ります。たとえば「基本書を読む20分→その単元の分野別過去問25分→まちがえた選択肢と、その根拠の条文を記録する15分」です。こう区切ると、時間がだらだら流れにくくなります。読むだけで60分を使い切ると、次の日には、何が分かって何が分からないのかが残りません。最後の記録の15分が、すき間時間にやることの材料になります。
ポイントは、すき間時間に何をするかを、前の日に決めておくことです。「何をやろう」と考えているうちに、すき間時間は終わってしまいます。まちがえた問題の番号をメモやスマホに書いておけば、開いてすぐ始められます。
1週間はどう組むか
1週間の中で、「新しく進める日」「まとめて解く日」「調整する日」を分けます。次は、平日に毎日1時間前後、週末に合わせて3〜5時間とれる人の例です。時間は、自分の生活に合わせて置き換えてください。
| 曜日 | 時間の例 | やること |
|---|---|---|
| 月〜木 | 決まった時間60分+すき間 | 新しい単元と分野別過去問 |
| 金 | 30分 | 遅れの調整。なければ休む |
| 土 | 2〜3時間 | その週の範囲の過去問をまとめて解く |
| 日 | 1〜2時間 | まちがえた問題と条文の見直し、翌週の準備 |
日曜日の最後に5分だけ、その週の予定と、実際にやった量を比べます。予定より少ない週が2回続いたら、次の週の量を減らすか、決まった時間の時刻を変えます。予定を守れない週が続くのは、やる気より予定の置き方に問題があることが多いものです。計画のほうを直しましょう。この振り返りの記録は、前の章で出した見積もりを測り直す材料にもなります。
金曜日を調整日にしておくと、平日に残業で1日つぶれても、週の予定が崩れません。遅れがなければ、休んでかまいません。休む日を先に決めておくほうが、長く続けやすくなります。文章理解は、平日のすき間時間に週2〜3問入れておきましょう。そうすれば、基礎知識の足切り対策を途切れさせずに済みます(基礎知識の記事)。
時期によって配分をどう変えるか
同じ1時間でも、試験までの残りの期間によって、中身を変えます。科目の順番と1年の分け方は、独学の進め方の記事で書いています。ここでは、時間の使い方の変え方だけを示します。
- 前半:読む時間を多め、解く時間を少なめにする。ただし、1単元読んだらすぐに分野別過去問を解き、読むだけで終わらせない。
- 中盤:解く時間を増やし、読むのはまちがえた所だけにする。記述式の練習(週1〜2問)を始める(記述式の書き方の記事)。
- 最後の3か月:週末の1回を、本番と同じ午後1時から4時の3時間で通して解く練習にする。この時期は、上の表の土曜日を4時間前後(通し練習3時間+見直し)に広げる。試験は午後に行われるので、その時間帯に頭を働かせる練習になります。平日は、通し練習でまちがえた所の見直しに使う。
途中には、申込の期間もあります。令和8年度は、インターネット申込が7月21日(火)午前9時から8月24日(月)午後5時までで、郵送は8月17日(月)消印有効でした。申込を忘れると、その年の勉強時間が試験に使えなくなります。勉強の予定表に、申込の日も書き込んでおきましょう。
時間が取れない週はどうするか
仕事の忙しい時期や家の事情で、予定どおりにいかない週はあります。そのときは、次の順番で、できる分だけやります。
- まちがえた問題の見直し(忘れるのを止める)
- 条文を1つ読む
- 新しい単元を進める
新しい単元を進められない週でも、1と2を1日15分ずつ続けましょう。それだけで、それまで積み上げた分が崩れにくくなります。遅れは、次の週からの金曜日の調整日と週末で、少しずつ取り戻します。1週間の遅れを1日で取り戻そうとすると、次の週の予定まで崩れてしまいます。
次に読むなら、独学の進め方の記事がおすすめです。ここで決めた1週間の組み方に、どの教材を、どの科目の順番で入れるかが決まります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 行政書士試験研究センター「試験概要」
- 同「試験案内」(令和8年度の日程・申込期間)
- 同「令和7年度 合否判定基準」(PDF)(配点・合格基準)
- 同「よくある質問(試験について)」(補正的措置、教材・講座への問い合わせ)
- 同「過去の試験問題と正解」(令和3年度の問題PDFで科目の並びを確認)
働く人の法律試験ノート