EUの仕組みとASEAN:EUの主な機関(欧州議会・欧州理事会・EU理事会・欧州委員会)と単一通貨、ASEAN・APECとの違い

ひとことで言うと、EU(欧州連合)の法律は、原則として欧州委員会の提案にもとづき、欧州議会とEU理事会が共同で作ります。加盟国の首脳が集まる「欧州理事会」は政治の方向を決める機関で、立法はしません(欧州連合条約13条〜17条)。名前の似た3つ(欧州理事会・EU理事会・欧州評議会)のうち、欧州評議会はEUの機関ではありません。ASEAN(東南アジア諸国連合)は「協議を通じた全会一致方式」で決め、APEC(アジア太平洋経済協力)は「自主的、非拘束性、コンセンサスベースの取組」が特徴です(外務省の説明)。

この記事の位置づけ:基礎知識の4分野(一般知識・業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解)のうち、一般知識の国際の記事です。足切りを越える6問は、文章理解と、条文で答えが決まる法令から先に固める、というのが基礎知識の記事の考え方で、この記事も同じ立場です。その準備が進んでから、地域の枠組みの骨組みを知るために読んでください。

EUの機関の条文は、EUの公式の法令データベース(EUR-Lex)の英語の本文で、加盟国の数・ユーロ・ASEAN・APECは外務省の説明で確かめました(2026年10月17日確認)。加盟国やユーロを使う国の数は変わることがあるので、確かめた時点を添えます。各国の政治、加盟や離脱の経緯、EUの補助金・予算・関税などの個々の政策、その評価は書きません。

身近な例で考えると

会社員のみさきさんは、基本書の国際の章で、似た名前の機関が多くて混乱しました。そこで、EUで新しい規則(EU全体に共通のルール)が作られるまでを、架空の議案で追いかけてみました。

  1. 加盟国の首脳が集まる欧州理事会が、「この分野に力を入れる」という大きな方向を示す。ただし、欧州理事会は法律を作らない(15条1)。
  2. 欧州委員会が、方向に沿った規則の案を提案する。EUの立法は、条約に別の定めがある場合を除き、委員会の提案にもとづいてだけ行われる(17条2)。
  3. EUの市民が直接選んだ議員でつくる欧州議会と、各国の閣僚級の代表でつくるEU理事会が、共同で案を審議して決める(14条1・16条1)。
  4. できた規則の解釈が争われると、欧州連合司法裁判所がEU法を解釈する(外務省の説明)。

たとえると、欧州理事会は「会社の経営会議で方針だけを決める役員」、欧州委員会は「案を書く事務の部署」、欧州議会とEU理事会は「案を可決する2つの会議」です。ただし本物のEUでは、2つの会議の決め方や、分野ごとの手続が条約で細かく決まっており、この例えほど単純ではありません。

条約ではこう決まっている:EUの7つの機関

今のEUの基本の条約は、欧州連合条約と、欧州連合の機能に関する条約の2つです(日本語の名前は訳し方で少し違います)。外務省の説明では、1993年11月にマーストリヒト条約が発効してEUが発足し、2007年12月に署名されたリスボン条約が2009年12月に発効して、今の形になりました。欧州連合条約13条1は、EUの機関を次の7つと定めています。

機関だれで構成何をする
欧州議会直接普通選挙で選ばれた議員(任期5年)EU理事会と共同で立法を行う
欧州理事会加盟国の首脳、欧州理事会の議長、欧州委員会の委員長発展に必要な推進力を与え、全般的な政治の方向と優先事項を定める。立法は行わない
EU理事会(閣僚理事会)各加盟国の閣僚級の代表1人欧州議会と共同で立法を行う
欧州委員会各国1人(外務省の説明で計27人、任期5年)法案を提案し、EU法の適用を監督する
欧州連合司法裁判所司法裁判所と一般裁判所EU法を解釈する
欧州中央銀行ユーロの国の中央銀行とともに「ユーロシステム」をつくるユーロの発行を許可する。ユーロシステムとしてEUの金融政策を行う
会計検査院各加盟国の国民1人ずつEUの会計を検査する

表の根拠は、欧州議会が14条1・3、欧州理事会が15条1・2、EU理事会が16条1・2、欧州委員会が17条1・2(いずれも欧州連合条約)、欧州中央銀行が欧州連合の機能に関する条約282条1・3、会計検査院が同じ条約285条です。司法裁判所と欧州委員会の人数・任期は、外務省の説明によります。

名前の似た3つの見分け方

  • 欧州理事会:首脳の会議。EUの政治の方向を決める。「立法の機能を行使しない」(15条1)。
  • EU理事会:閣僚級の会議。欧州議会と共同で立法を行う(16条1)。外務省はEUの「主たる決定機関」と説明しています。
  • 欧州評議会:EUの機関ではない。外務省の説明では、1949年にフランスのストラスブールに設立された、人権・民主主義・法の支配の分野の汎欧州の国際機関で、欧州人権裁判所はこの欧州評議会に属します。

単一通貨ユーロ

  • 始まり:1999年1月1日に11か国がユーロを導入し、2002年1月1日にユーロの貨幣の流通が始まりました(外務省の説明)。
  • 金融政策:欧州中央銀行と、ユーロを通貨とする加盟国の中央銀行(あわせて「ユーロシステム」)が、EUの金融政策を行います(282条1)。ユーロの発行を許可(authorise)できるのは欧州中央銀行だけです(282条3)。
  • 数:2026年10月17日に確かめた外務省の説明(令和8年1月15日の更新)では、EUの加盟国は27か国、ユーロを使う国は21か国です。EUの加盟国でも、ユーロを使っていない国があります。

ASEAN・APECとどう違うか

比べる点EUASEANAPEC
始まり1993年11月(マーストリヒト条約の発効)1967年(バンコク宣言)1989年(閣僚会議として)
基本の取決め欧州連合条約などASEAN憲章(2008年12月発効)自主的・非拘束の取組
決め方欧州議会とEU理事会が共同で立法協議を通じた全会一致方式コンセンサスベース
参加の単位国国国と地域(「エコノミー」)
  • ASEAN:原加盟国はインドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5か国です。外務省の説明(令和8年1月8日の更新)では、そのあとブルネイ(1984年)、ベトナム(1995年)、ラオス・ミャンマー(1997年)、カンボジア(1999年)、東ティモール(2025年)が加わり、11か国です。事務局はジャカルタにあります。2015年に、政治・安全保障、経済、社会・文化の3つの共同体からなるASEAN共同体の設立を宣言しました。
  • APEC:1989年に閣僚会議として始まり、1993年から首脳会議も開かれています。外務省の説明では、21の国と地域(エコノミー)が参加し、香港は「ホンコン・チャイナ」、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加します。

名前だけ押さえるもの(OECD・G7とG20・CPTPP)

  • OECD(経済協力開発機構):1961年設立、本部はパリ。日本は1964年に加盟しました(外務省の説明)。
  • G7とG20:G7はフランス・米国・英国・ドイツ・日本・イタリア・カナダ。G20は、G7とEUに、ほかの12か国とアフリカ連合(AU)が加わる枠組みで、2008年11月に初めての首脳会合が開かれました(外務省の説明)。
  • CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定):2018年3月9日に署名、2018年12月30日に日本など6か国で発効しました(外務省の説明)。

WTOのもとでの自由貿易のしくみと比較優位の考え方は比較優位の記事、国と国のあいだのお金の出入りの記録は国際収支の記事で扱っています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:欧州委員会が提案した規則の案を、欧州議会とEU理事会が共同で可決する。EUの立法の基本の形です(14条1・16条1・17条2)。
  2. 当てはまらない例:欧州理事会が、首脳の会議で規則そのものを制定する。欧州理事会は立法の機能を行使しません(15条1)。
  3. 当てはまらない例:欧州人権裁判所をEUの裁判所とすること。欧州人権裁判所は欧州評議会に属し、EUの機関である欧州連合司法裁判所とは別です。
  4. ひっかけやすい例:「EUの加盟国はみなユーロを使う」。確かめた時点で加盟国27か国のうち、ユーロを使う国は21か国です。
  5. ひっかけやすい例:APECの参加者を「加盟国」と呼ぶこと。外務省は「21の国と地域(エコノミー)」と説明しており、国に限りません。

試験ではここをまちがえやすい

  • 立法するのはどこか:欧州議会とEU理事会(共同)。提案は欧州委員会。欧州理事会は立法しない。
  • 構成の取り違え:欧州理事会=首脳。EU理事会=閣僚級。欧州議会=直接選挙で選ばれた議員。
  • EUの外の機関:欧州評議会(1949年)と、そこに属する欧州人権裁判所は、EUの機関ではない。
  • ユーロ:導入は1999年1月1日、貨幣の流通は2002年1月1日。発行を許可できるのは欧州中央銀行だけ。
  • 決め方の違い:ASEANは協議を通じた全会一致方式。APECは自主的・非拘束・コンセンサスベース。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
EUで新しい規則を作るとき、加盟国の首脳、欧州理事会の議長、欧州委員会の委員長で構成される欧州理事会は、欧州委員会の提案を受けて、欧州議会と共同で立法の権限を行使する。

答え:✕ 分かれ目は、首脳の会議(欧州理事会)と閣僚級の会議(EU理事会)の取り違えです。欧州連合条約15条1は、欧州理事会について、EUの政治の方向を示すとしたうえで、「立法の機能を行使しない」と定めています。正しくは、欧州議会と共同で立法を行うのは、各加盟国の閣僚級の代表でつくるEU理事会です(14条1・16条1)。どちらも「理事会」と訳されるので、構成する人で見分けます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
欧州人権裁判所が属する欧州評議会は、EUの機関と名前が似ているが、欧州連合条約13条が挙げるEUの機関には含まれず、1949年に設立された別の国際機関である。

答え:○ 分かれ目は、欧州評議会がEUの機関かどうかです。13条1が挙げるEUの機関は、欧州議会・欧州理事会・EU理事会・欧州委員会・欧州連合司法裁判所・欧州中央銀行・会計検査院の7つで、欧州評議会は入っていません。外務省の説明では、欧州評議会は1949年にストラスブールに設立された汎欧州の国際機関で、欧州人権裁判所はそこに属します。「欧州の人権の裁判所ならEUの機関だろう」と考えると✕に見えます。EUの裁判所は、EU法を解釈する欧州連合司法裁判所です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
ASEANは、1967年のバンコク宣言によって設立され、2008年12月にASEAN憲章が発効した。外務省の説明によれば、ASEANの意思決定は、加盟国の多数決で行うことを原則としている。

答え:✕ 分かれ目は、ASEANの決め方です。前半の設立の年と憲章の発効は、外務省の説明のとおりです。正しくは、外務省はASEANの意思決定を「協議を通じた全会一致方式」と説明しており、多数決ではありません。多数の賛成で決める議会の決め方を、そのまま当てはめた誤りです。APECも、外務省の説明では「コンセンサスベースの取組」です。

基礎知識の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。

まとめ

  • EUの機関は7つ(欧州連合条約13条1)。立法は欧州委員会の提案にもとづき、欧州議会とEU理事会が共同で行う。
  • 欧州理事会=首脳の会議で、政治の方向を示すが立法はしない。EU理事会=閣僚級の会議。欧州評議会はEUの機関ではない。
  • ユーロは1999年1月1日導入、2002年1月1日に貨幣の流通開始。発行を許可するのは欧州中央銀行。確かめた時点で27か国中21か国が使う。
  • ASEAN=1967年バンコク宣言、協議を通じた全会一致方式。APEC=1989年開始、21の国と地域(エコノミー)、自主的・非拘束。

このサイトで次に読むなら、GDPR(EU一般データ保護規則)の記事です。この記事で見たEUの「規則」が、個人データの分野で日本の個人情報保護法とどう違うかを確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条約の本文と外務省の説明は、2026年10月17日に確かめました。加盟国・ユーロを使う国の数は、外務省のページの更新日の時点のものです。

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