勉強中に音楽を聴くと覚えにくくなるか:歌詞あり・なし、好きな曲と、読む勉強・解く勉強の違い

条文・判例・問題文を読む時間は、歌詞のある曲を止めるのが研究に合うやり方です。無音にするか、どうしても音がほしいなら歌詞のない曲にします。研究では、歌詞のある曲を流しながら文章を読むと理解が下がり、それは自分の好きな曲でも同じでした。

一方で、音楽の影響を調べた研究をまとめると、気分や運動の成績にはプラスの結果も出ています。だから「音楽は勉強の敵」と決めつける必要はありません。読む・解く時間は止める、文を読まない作業や勉強を始める前には聴いてよい、と場面で分けます。この記事では、研究で分かっていることを実験の条件とセットで紹介し、行政書士試験・宅建試験の勉強の場面に当てはめます。

研究をまとめると、音楽は勉強のじゃまになるのか

背景音楽(作業中に流れている音楽)の研究をまとめたものに、Kämpfe、Sedlmeier、Renkewitz の3人の論文(2011年)があります。大人を対象にした研究を集めて、結果を数字でまとめ直したメタ分析(たくさんの研究の結果をまとめて分析する方法)です。

  • どんな分析か:「音楽あり」と「音楽なし」を比べた66の研究(参加者は延べ約4,500人)などをまとめました。
  • 何が分かったか:全部をまとめた平均では、影響はほぼゼロでした。しかし著者たちは、これを「音楽には影響がない」と読んではいけないとしています。中身を分けると、文章を読むことにはマイナス(調べた8つの研究がすべてマイナスの向き)、記憶の課題には小さなマイナス、気分やスポーツの成績にはプラスでした。向きの違う影響が、平均すると打ち消し合っていたということです。
  • 注意すること:分野ごとに分けると、それぞれの研究の数は少なくなります。著者たちも、研究の少ない分野の結論は確かとは言えない、と書いています。読むことへのマイナスも、一般的な目安では小さい部類の大きさです。

試験勉強ではこう使います。行政書士試験も宅建試験も、点を取るには条文や問題文を正確に読む必要があります。研究で一貫してマイナスの向きが出ているのが「読むこと」なので、読む時間には音楽を流さないほうに分があります。

歌詞のある曲は、何をじゃまするのか

歌詞の有無で分けた古い実験に、Salamé と Baddeley(1989年)があります。

  • どんな実験か:画面に出る9けたの数字を見て、順番どおりに書き出す課題です。そのあいだ、聞かなくてよい音として、歌の入った曲、楽器だけの曲、人の話し声、意味のない雑音などを流し、無音の場合と比べました。
  • 何が分かったか:歌の入った曲は、楽器だけの曲より、はっきり多くのまちがいを生みました。人の話し声も記憶をじゃましました。意味のない雑音では、はっきりしたじゃまは見られませんでした。楽器だけの曲は、実験によって無音と差が出たり出なかったりしました。

この実験から分かるのは、言葉の入った音は、聞かないようにしていても、言葉を覚える頭の働きに入りこんでくるということです。法律の勉強は、条文の言葉、数字、期間を頭の中で保ちながら読む作業です。「審査請求は知った日の翌日から3か月」と頭の中でくり返しているときに、歌詞が流れていると、その言葉が割りこんできます。

ただし、これは数字を順番に覚える短い課題での結果です。法律の事例問題を解く力に、同じ大きさで影響するかは確かめられていません。

好きな曲なら、じゃまにならないのか

「好きな曲なら気分が上がって、かえってはかどる」と考える人もいるでしょう。これを調べたのが Perham と Currie(2014年)です。

  • どんな実験か:イギリスの大学の学生30人が、文章を読んで選択式の問いに答える読解の課題を、4つの条件で解きました。「無音」「自分で選んだ好きな歌詞のある曲」「好きではない歌詞のある曲」「歌詞のない曲」です。音楽は無視するように言われていました。
  • 何が分かったか:成績がよかったのは、無音と歌詞のない曲でした。歌詞のある曲の2つの条件は、どちらも成績が低くなりました。無音と比べると、好きな歌詞のある曲でも、好きではない歌詞のある曲でも、成績ははっきり下がっていました。好きな曲と好きではない曲のあいだには、差がありませんでした。

試験勉強ではこう使います。好きな曲かどうかではなく、歌詞があるかどうかで決めます。好きな曲の歌詞は、むしろよく知っているぶん、頭の中で一緒に歌ってしまいがちです。読む時間に音がほしいなら、歌詞のない曲を選びます。

この実験の参加者は30人で、読んだのはアメリカの大学入試の練習用の文章です。人数が少ないので、これ一つで決まりとは言えません。ただ、メタ分析の「読むことにはマイナス」と同じ向きの結果です。

クラシックを聴くと頭がよくなるのか

「モーツァルトを聴くと頭がよくなる」という話は、1993年に科学誌に載った実験から広まりました。その後、Pietschnig、Voracek、Formann(2010年)が、この「モーツァルト効果」を調べた約40の研究(参加者は合計3,000人あまり)をまとめました。結論は、モーツァルトの曲を聴くと空間の課題(図形を頭の中で動かす問題など)の成績が特に上がる、という考えを支える結果は得られなかった、というものです。

「この曲を聴けば成績が上がる」という特定の曲はない、と考えておきます。クラシックでも、歌の入った曲(オペラなど)は、歌詞のある曲と同じ扱いです。

勉強の場面ごとに、どう使い分けるか

ここまでの研究を、行政書士試験・宅建試験の勉強の3つの場面に当てはめます。表の使い分けは、研究の向きをもとにした当サイトの目安です。

場面音の目安理由
条文・判例・テキストを読む無音。音がほしければ歌詞のない曲読むことにはマイナスの向き
○✕・過去問を解く無音問題文を読み、言葉を頭に保つ作業
文を読まない作業聴いてよい言葉を覚える作業ではない

条文・判例・テキストを読むとき

行政法の条文、民法の判例、宅建業法の数字のように、言葉を一語ずつ正確に読む時間です。研究の結果がいちばん当てはまる場面なので、歌詞のある曲は止めます。数字・期間を覚える時間も同じです。Salamé と Baddeley の実験は、まさに数字を順に覚える課題でした。

○✕や過去問を解くとき

問題を解く時間は、読む時間でもあります。宅建の問題文も、行政書士の5肢択一式も、「誰が・誰に・いつ」を頭に置きながら読む作業です。ここも無音にします。答え合わせのあとの解き直しも、まちがえた肢を「どの言葉がちがうから✕か」と言葉で確かめる作業なので、同じ扱いです。思い出しながら解く練習のしかたは、読むより思い出すほうが覚えるで説明しています。

通勤の電車でイヤホンをして○✕を解く人もいるでしょう。音楽を止めても車内の放送や話し声が気になるときは、イヤホンを耳栓の代わりに使う方法もあります。Salamé と Baddeley の実験では、人の話し声は記憶をじゃましましたが、意味のない雑音でははっきりしたじゃまは見られませんでした。すき間時間の○✕の組み方は通勤・昼休みの15分の記事にまとめています。

文を読まない作業のとき

机の片づけ、問題集のコピー、まちがえた問題の番号を一覧に写す作業、翌日の分の付せんを貼る作業などは、言葉を覚える作業ではありません。この時間は、好きな曲を聴いてかまいません。メタ分析では、音楽は気分にプラスの結果が出ていました。疲れて帰った夜に、好きな曲を1曲聴いてから机に向かい、読み始めたら止める、という使い方もできます。これは研究ではなく、当サイトの組み立て方です。

無音だと落ち着かない人は、どうするか

いつも音楽を流しながら作業してきた人には、無音がかえって落ち着かないこともあります。その場合は、いきなり無音にせず、次の順で切りかえます。

  1. まず、歌詞のある曲を、歌詞のない曲に替える。
  2. 次に、読む時間だけ止め、解き直しや片づけの時間は流す。
  3. 慣れてきたら、○✕を解く時間も止める。

もう一つ、本番のことも考えておきます。試験の会場では音楽は聴けません。行政書士試験は3時間、宅建試験は2時間を、ほかの受験生が紙をめくる音だけの部屋で解きます。休日の通し演習(本番と同じ時間で解く練習)は、無音で解いておくと本番に近い練習になります。

音のほかに、スマホの通知や机の上の物も気をそらします。勉強中の通知の止め方や、時間の区切り方は集中できる環境の作り方で扱っています。

今日からやること

  • 条文・判例・テキストを読む時間は、歌詞のある曲を止める。音がほしければ歌詞のない曲にする。
  • ○✕や過去問を解く時間と、その解き直しの時間は無音にする。
  • 好きな曲は、片づけ・コピー・番号の書き写しなど、文を読まない作業の時間に回す。
  • 通勤中に解くときは、音楽を止めて、イヤホンを耳栓の代わりに使う。
  • 休日の通し演習は、本番と同じく無音で解く。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

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