行政書士試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所:配点と足切りから決める

行政書士試験で「どこを捨てるか」は、公式に決まっている3つの物差しで決めます。配点、足切り(科目ごとの最低点)、出題範囲です。「出やすい・出にくい」といううわさで決めると、足切りや合計点の計算で苦しくなります。

この物差しで見ると、深追いしなくてよい(基本だけにする)のは、商法・会社法の細かい所、基礎法学、基礎知識のうち一般知識と情報通信です。本当に後回しでよいのは、令和8年4月1日より後に施行される改正です。反対に、意外と捨てないほうがいいのは、記述式と多肢選択式、基礎知識の文章理解と行政書士法、憲法、地方自治法の住民の制度、民法の親族・相続です。

ここでいう「捨てる」は、「まったくやらない」ではありません。「基本だけにして深追いしない」と「本当に後回し」の2つに分けて考えます。

何を物差しにして「捨てる」を決めるのか

配点:1問の重さは形式で決まる

令和7年度の合否判定基準では、5肢択一式(5つから1つ選ぶ問題)は1問4点、多肢選択式は1問8点(空欄1つにつき2点)、記述式は1問20点でした。満点は300点です。配点は前もって公表されず、合格発表のときに公表されます。令和8年度もこのとおりとは決まっていません。

足切り:3つの基準を全部こえる

合格には、法令等が満点の50%以上、基礎知識が満点の40%以上、全体が満点の60%以上の3つを、全部満たす必要があります。令和7年度の点数では、法令等122点、基礎知識24点、全体180点でした。問題の難しさによって、基準が見直される(補正される)ことがあります。

この3つから、「どこまでなら落としてよいか」を逆算できます(令和7年度の数字で計算)。

区分満点基準点落としてよい点
法令等244点122点122点まで
基礎知識56点24点32点(8問)まで
全体300点180点120点まで

表から分かる大事な点が1つあります。全体で落とせるのは120点までなので、法令等を足切りぎりぎりの122点で通っても受かりません。基礎知識が満点の56点でも、合計は178点です。基礎知識で満点を取っても、法令等は124点以上が要ります。基礎知識を24点ぎりぎりで通るなら、法令等は156点(約64%)が要ります。「捨てる」の合計は、この中に収める必要があります。

出題範囲:公式の書き方と基準日

試験の概要では、法令等は憲法・行政法・民法・商法・基礎法学から出題されます。行政法は、一般的な法理論・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法を「中心とする」と書かれています。基礎知識は、一般知識、行政書士法等の業務に関連する法令、情報通信・個人情報保護、文章理解の4つです。そして、令和8年度は「令和8年4月1日現在施行されている法令」から出題されます。

なお、科目ごとの問題数は公式には公表されていません。このあと使う問題数は、当サイトが令和2年度と令和3年度の問題を数えたものです(両年度とも同じでした)。基礎法学2問、憲法5問、行政法19問、民法9問、商法・会社法5問です。多肢選択式は憲法1問・行政法2問、記述式は行政法1問・民法2問でした。公式の内訳ではなく、年度によって変わることもあります。

深追いしなくてよい所はどこか(基本だけにする)

深追いしない所は、「点が小さい」か「公式に範囲が細かく示されていない」所です。どれも、ゼロにはせず、基本だけは残します。

商法・会社法:5問・20点

当サイトの数え方で5問、令和7年度の配点で20点です。5肢択一式を全部勘で選ぶと、平均して取れる点は4点です。最低限の条文(設立・株式・機関)だけやって3問取れれば12点になり、差は8点(択一2問分)です。会社法の中でも、ここから外れる細かい所や、商法の商行為の細かい所は、深追いしません。どこまでやるかの判断のしかたと、最低限の条文は商法・会社法は捨てていいかにまとめています。

基礎法学:2問・8点

当サイトの数え方で2問、8点です。法の分類や解釈など、範囲を決める条文がない話題も多い分野です。法令用語や期間の数え方(民法138条〜143条)のように、条文で答えが決まる所だけを押さえ、それ以上は広げません。

基礎知識のうち、一般知識と情報通信

この2つは、公式に細かい範囲が示されていません。勉強した時間が点に結びつくか、見込みにくい分野です。ニュースで見る用語の意味を短く説明できる程度にとどめます。基礎知識の6問(24点)は、あとで書く文章理解と行政書士法などで先に固めます。

行政法の「中心」6つより外の法律

行政法は、公式に名前が挙がっている6つが「中心」です。「中心とする」という書き方なので、ほかの法律が出ないとまでは言えません。それでも、6つを固める前に、ほかの個別の法律へ手を広げる理由はありません。6つの進め方は行政法の勉強法で書いています。

本当に後回しでよい所はどこか

試験の範囲に入らないものは、後回しにして困ることがありません。令和8年度試験は、令和8年4月1日の時点で施行されている法令が対象です。それより後に施行される改正は、範囲に入りません。

  • 行政書士法:令和8年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号)は範囲に入ります。一方、令和8年5月21日に施行された改正(令和5年法律第63号による改正)は範囲外です。
  • 民法:令和8年4月1日に施行された家族法の改正(令和6年法律第33号。共同親権など)は範囲に入ります。一方、令和8年法律第45号の改正は、施行が令和8年6月24日からの段階施行なので範囲外です。

気をつけたいのは、e-Gov法令検索でいま条文を開くと、範囲外の改正まで反映した最新の条文が出ることです。条文を確かめるときは、どの施行日の版かを見てください。範囲外の改正の中身を、いま覚える必要はありません。

もう一つ、商法・会社法を「捨てる」と決めた人は、最低限の条文より先の部分(会社法の細かい制度や商法の商行為の細部)を、本当に後回しにしてかまいません。行政法・民法が固まってから、時間が残れば戻る、という扱いです。

意外と捨てないほうがいい所①:記述式と多肢選択式

記述式は「書くのが苦手だから捨てる」と考えがちな形式です。でも、令和7年度の配点で3問60点あり、満点300点の5分の1です。記述式が0点だと、残りの240点のうち180点、つまり75%を択一式と多肢選択式で取らなければなりません。記述式で20点取れれば、必要な割合は約67%まで下がります。

しかも、記述式は別の科目ではありません。当サイトの数え方では、行政法1問・民法2問でした。択一式で覚える条文の要件(ルールが当てはまる条件)を、40字程度で言えるようにする練習です。択一式の勉強のときから、要件を言葉で言う習慣をつければ、記述式のための時間はあまり増えません。書き方の型は記述式の書き方で説明しています。

多肢選択式は、空欄1つにつき2点です。4つの空欄のうち2つが合えば4点になり、全部そろわなくても点になります。当サイトの数え方では憲法1問・行政法2問で、どちらも択一式で勉強する科目です。捨てる理由が見当たらない形式です。

意外と捨てないほうがいい所②:文章理解と行政書士法

基礎知識は14問・56点と小さい区分です。それでも、24点(6問)に届かないと、法令等が満点でも不合格です。ここは「捨てる」が成り立たない区分です。

4つの分野のうち、どこで6問を取るかを決める手がかりが、総務省の説明です。基礎知識の出題の定めを改正したとき、総務省は意見募集の結果(提出された意見に対する考え方)の中で、改正は4つの分野の「それぞれの分野から毎年一題以上出題することを規定するもの」だと説明しています。行政書士法などの業務に関連する法令についても、別の意見への考え方で、毎年1題以上出題されることにしていると書いています。試験は年1回なので、文章理解と業務関連法令は、毎回出題される前提で準備できます。

  • 文章理解:法律の知識がいらないので、練習で安定させやすい分野です。
  • 行政書士法:令和8年1月1日に施行された改正で、第1条は「目的」から「使命」に変わり、業務の条文は第1条の2から第1条の3に移りました。令和8年度は改正後の条文が範囲です。古い条番号のまま覚えないようにします。

一般知識に時間をかけるより、この2つと個人情報保護法の定義の条文を先に固めるほうが、6問に届く見込みを立てやすくなります。分野ごとの進め方は「基礎知識」とはの記事にまとめています。

意外と捨てないほうがいい所③:憲法、地方自治法、民法の親族・相続

憲法:商法・会社法より点が大きい

当サイトの数え方では、憲法は5肢択一式5問(20点)に、多肢選択式1問(8点)が加わり、28点分です。商法・会社法の20点より大きい計算です。しかも条文は第103条までと短く、統治の数字(任期・定足数など)は条文で答えが決まります。「行政法と民法で手一杯だから憲法は後で」と考える人もいますが、点の大きさと条文の短さから見ると、削る順番は商法・会社法より後です。

地方自治法:条文は多いが、公式に名前がある

地方自治法は条文の数がとても多く、「全部は無理だから捨てる」と考えやすい法律です。でも、試験の概要で行政法の「中心」として名前が挙がっている6つの1つです。全部を読む必要はありませんが、住民が使う制度(直接請求・住民監査請求・住民訴訟)と、条例のルールは残します。範囲をしぼれば、覚える数字は限られます。

民法の親族・相続:改正が範囲に入っている

民法は、当サイトの数え方で択一式9問と記述式2問です。親族・相続は、民法の最後のほうにあるため、時間切れで手薄になりやすい分野です。でも、令和8年4月1日に施行された家族法の改正(離婚後の親権者を「双方又は一方」と定められるようになったことなど)が、令和8年度の範囲に入っています。古い知識のままだと、答えが変わる所があります。また、相続の承認・放棄の「3か月」(915条1項)のように、期間や数字が条文にそのまま書かれた決まりが多く、覚えれば点にしやすい分野でもあります。優先順位の付け方は民法の勉強法で書いています。宅建試験では、範囲の決め方が「土地及び建物についての」権利なので、親族の扱いがちがいます。両方を受ける人は宅建試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所と見比べてください。

今日からやること

  • 自分の予想点を、法令等・基礎知識・全体の3つに分けて書き出し、上の表の「落としてよい点」に収まるかを確かめる。
  • 商法・会社法、基礎法学、一般知識・情報通信は「基本だけ」と決め、そこにかける時間の上限を週ごとに決める。
  • 手持ちの教材と、e-Govで見ている条文が、令和8年4月1日時点の法令に合っているかを確かめる(行政書士法・民法)。
  • 行政法・民法の択一式を解くとき、正解の根拠になった要件を1つ、40字程度で書いてみる。記述式の準備をここから始める。
  • 文章理解を週に2〜3問、試験まで切らさずに続ける。

このサイトで次に読むなら、商法・会社法は捨てていいかがおすすめです。「捨てる」候補のいちばん大きい科目について、捨てるか・後回しにするか・最低限だけやるかを、自分の状況から決められます。足切りに不安がある人は、「基礎知識」とはの記事を先に読むと、6問の取り方を決めやすくなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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