勉強中にイライラするとき:発散より先にできる気持ちの扱い方(研究から)

勉強中にイライラしたときは、発散しようとするより先に、気持ちを短い言葉にして、場面のとらえ方を変えるほうが研究に合います。怒りを物にぶつけて「すっきりさせる」やり方は、実験では怒りを小さくしませんでした。気持ちを感じないように押さえ込むやり方も、気持ちを軽くする効果は見られていません。

この記事では、勉強中にイライラしやすい3つの場面を挙げ、気持ちの扱い方の研究を条件つきで紹介し、「イライラした瞬間の1分→その日の残り→翌日」の順にやることをまとめます。試験前の不安は試験前の不安が強いときの記事、本番の緊張は試験本番の緊張の記事で扱っているので、ここでは勉強中のイライラに絞ります。

勉強中のイライラは、どんな場面で起きるか

働きながら行政書士・宅建を勉強していると、イライラする場面はだいたい次の3つに分かれます。

  1. 解けない問題が続く:民法の○✕でまちがいが続く、宅建業法の数字が何度やっても混ざる。「こんなに時間をかけたのに」という気持ちが重なります。
  2. 時間が足りない:予定していた範囲が終わらない、残業で勉強の時間が消える。計画どおりに進まないことに腹が立ちます。
  3. 割り込まれる:勉強中に家族に話しかけられる、仕事の連絡が入る。せっかく集中していたのに、と感じます。

どの場面のイライラも、限られた時間で取り組んでいれば起きてもおかしくない反応です。イライラすること自体を責める必要はありません。困るのは、その気持ちのまま次の問題に進んで解けない時間が延びることや、まわりの人に当たってしまうことです。

「発散すればすっきりする」は、研究ではどうだったか

「怒りはためこまず、発散したほうがよい」という考えを確かめた実験に、Bushman(2002年)があります。

  • どんな実験か:大学生600人が短い文章を書き、ほかの参加者(実際にはいない人)から「これまで読んだ中で最悪の文章の一つだ」というひどい評価を返されて、怒りを感じた状態になりました。そのうえで3つの組に分けました。①評価した相手のことを考えながらサンドバッグを叩く組、②体を鍛えることを考えながらサンドバッグを叩く組、③サンドバッグを叩かずに2分間静かに座っている組です。そのあと、怒りの強さと、評価した相手にヘッドホンで大きな音を浴びせる機会でどれだけ攻撃的にふるまうかを測りました。
  • 何が分かったか:相手のことを考えながら叩いた組は、ほかの2つの組より怒りが強く、攻撃的なふるまいもいちばん多くなりました。著者は、何もしないほうが怒りを発散するより効果的だった、とまとめています。

勉強に当てはめると、解けない問題に腹を立てて問題集を机にたたきつける、イライラの原因を頭の中で何度も思い返す、といったやり方は、気持ちを鎮めるどころか長引かせるかもしれない、ということです。この実験は実験室で行われたもので、勉強中のイライラを調べたものではありません。ただ、「ぶつければ収まる」と考えて動く前に、別のやり方を試す理由にはなります。

「イライラしている」と言葉にすると、何が変わるか

発散の代わりにできることの一つが、気持ちに名前をつけることです。Lieberman ら(2007年)は、脳の働きを画像で調べる装置(fMRI)を使って、これを調べました。

  • どんな実験か:参加者に、怒りや恐れなどの表情をした人の顔写真を見せ、その表情に合う感情の言葉(「怒っている」「おびえている」など)を2つから選ぶ場合と、写真の人に合う名前を選ぶ場合、写真をただ見る場合などを比べました。
  • 何が分かったか:感情を言葉にした場合は、ほかのやり方より、感情の反応にかかわる脳の部分(扁桃体(へんとうたい))の反応が小さくなっていました。かわりに、前頭前野の一部の働きが高まっていました。

この実験が測ったのは脳の反応で、本人のイライラが何分で収まったかを測ったものではありません。また、言葉をつけたのは自分の気持ちではなく、写真の顔の表情です。勉強中に自分のイライラに名前をつけるのは、この実験の外への当てはめになります。それでも、「感情を言葉にすると、感情の反応が小さくなる方向に働く」ことを示した研究として、当サイトでは手軽な最初の一手に使うことを勧めます。言葉は短くてかまいません。「今、イライラしている。原因は、民法の○✕が3問続けて✕だったこと」くらいで十分です。

押さえ込むのと、とらえ直すのは、何が違うか

イライラを感じないようにぐっとこらえるのと、場面の見方を変えるのとでは、結果が違うことが研究で示されています。

  • ふだんのやり方と気持ちの関係:Gross と John(2003年)は、5つの研究で、ふだん気持ちをどう扱うかの個人差を調べました。場面のとらえ方を変える(再評価)ことが多い人は、よい気持ちをより多く、いやな気持ちをより少なく感じていました。気持ちを表に出さないよう押さえ込む(抑制)ことが多い人は、その反対でした。ただし、これは「そういう傾向の人がいる」という結びつきで、とらえ直すと気持ちが変わる、という原因まで示したものではありません。
  • 実験をまとめた結果:Webb・Miles・Sheeran(2012年)は、気持ちの扱い方を実験で比べた306の比較をまとめました。気持ちを引き起こした場面そのものをとらえ直すやり方には効果があり、別の視点から場面を見る(かかわりのない人の目や、ほかの人の立場から見る)やり方はさらに効果が大きめでした。表情に出さないようにするやり方にも効果が見られた一方、気持ちを感じないようにする・出来事を考えないようにする、というやり方には、効果が見られませんでした。

勉強の場面でとらえ直すとは、たとえば次のようなことです。

そのままの受け取り方とらえ直した受け取り方
また✕だ。時間のむだだった本番の前に、取り違えている所が1つ見つかった
今日の範囲が終わらなかった計画が今の生活に対して多すぎると分かった
家族に話しかけられて集中が切れた家族は、勉強の時間がいつなのかを知らない

とらえ直しは、無理に前向きになることではありません。事実は変えずに、「次に何をすればよいか」が見える受け取り方を選ぶことです。3つ目の例のように、家族の立場から見ると、家族は腹を立てる相手ではなく、勉強の時間の伝え方を決める相手に変わります。本番の緊張を「体の準備」と受け取るやり方は、とらえ直しの別の使い方で、本番の緊張の記事で紹介しています。

イライラした瞬間・その日・翌日に、何をするか

研究をもとに、当サイトで手順にしました。分数や順番は当サイトの目安です。

場面イライラした1分その日の残り翌日
解けない問題が続く手を止め、気持ちと原因を一言で書く解説を読み、✕の理由を1行書いて別の分野に移るその問題だけを最初に解き直す
時間が足りない「終わらなかった範囲」を紙に書き出す残り時間でできる量だけを1つ決めてやる1週間の計画の量を見直す
割り込まれるやりかけの問題番号をメモしてから応じるメモの番号から再開する勉強の時間を家族と共有する

1分の手順の中心は、手を止めて、言葉にすることです。イライラしたまま次の問題に進むと、問題文を読み飛ばしたまま解いてしまうことがあります。書くのは、問題集の余白でもスマホのメモでもかまいません。

「その日の残り」では、イライラの原因になった作業を続けすぎないことが大事です。解けない分野で粘るより、解説で理由を確かめて、別の分野に移るほうが、その日の残りの時間を使えます。ストレスの発散のために席を立って体を動かしたいときは、怒りの原因を思い返しながらではなく、勉強から少し離れる時間として取ります。短い休憩の取り方は気分転換のしかたの記事にまとめています。

「翌日」は、同じ場面でまたイライラしないための手直しです。割り込みが多いなら、勉強の時間を家族に伝えておくと、話しかけられる回数そのものが減ります。まわりへの頼み方は仕事・家族と両立する人の気持ちの整え方で扱っています。

イライラが何日も続くときは、どうするか

同じ場面のイライラが何日も続くなら、気持ちの扱い方より先に、勉強のやり方か計画に原因があるかもしれません。点が伸びない状態が続いているなら、受かる気がしないときの記事で、伸びない型を見分けられます。計画の量が生活に合っていないなら、量を減らすのではなく、時期と順番を組み直します。

イライラで物に当たってしまう、涙が出る、眠れないといった状態が続くときは、勉強のやり方だけで乗り切ろうとしなくてかまいません。医療機関や相談窓口に相談するのも一つの方法です。そういう時期は、勉強を小さくしてつなぐだけにしてかまいません。

今日からやること

  • イライラしたら、まず手を止めて「今、イライラしている。原因は〜」と一言書く。
  • 問題集を投げる、原因を何度も思い返す、といった「ぶつける」やり方をやめる。
  • ✕が続いたら、「取り違えている所が見つかった」と受け取り直し、✕の理由を1行書いて別の分野に移る。
  • 割り込まれたら、やりかけの問題番号をメモしてから応じ、メモから再開する。
  • 同じ場面のイライラが3日続いたら、気持ちではなく計画とやり方を見直す。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Bushman, B. J. (2002). Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding. Personality and Social Psychology Bulletin, 28(6), 724–731. https://doi.org/10.1177/0146167202289002
  • Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x
  • Gross, J. J., & John, O. P. (2003). Individual differences in two emotion regulation processes: Implications for affect, relationships, and well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362. https://doi.org/10.1037/0022-3514.85.2.348
  • Webb, T. L., Miles, E., & Sheeran, P. (2012). Dealing with feeling: A meta-analysis of the effectiveness of strategies derived from the process model of emotion regulation. Psychological Bulletin, 138(4), 775–808. https://doi.org/10.1037/a0027600

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