戸籍(こせき)は、生まれた・結婚した・亡くなったといった親子や夫婦などの身分の関係を記録するものです。住民票(じゅうみんひょう)は、どこに住んでいるかを記録するもので、住民票をまとめたものが住民基本台帳です。2つの法律は、①届出の期間、②写しを請求できる人、③行政書士などの職務上の請求、④不正な請求への罰、の4点で比べると違いがはっきりします。
この記事は、2つの法律をこの4点で並べて比べます。条文は令和8年4月1日時点のものです。令和8年4月2日以降に施行された改正は、令和8年度試験の範囲外なので扱いません。基礎知識の全体の中での位置づけは基礎知識の記事で説明しています。
身近な例で考えると:こうたさん一家の1年
会社員のこうたさんの家で、1年の間に次のことが起きたとします。
- 4月10日:こうたさんに子どもが生まれた。→ 出生の届出は14日以内(戸籍法49条1項)。
- 6月1日:一家で、A市から隣のB市に引っ越すことにした。→ A市に、引っ越す前に転出の届出(住民基本台帳法24条)。
- 6月20日:B市に引っ越した。→ B市に、転入をした日から14日以内に転入の届出(同法22条1項)。
- 9月5日:B市の中で、別のアパートに移った。→ 転居をした日から14日以内に転居の届出(同法23条)。
- 11月3日:こうたさんの祖父が国内で亡くなり、こうたさんはその日に知った。→ 届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内に死亡の届出(戸籍法86条1項)。
- 12月:祖父の相続の手続を行政書士に頼んだ。→ 行政書士は、受任した事務のために戸籍謄本などを請求できる(戸籍法10条の2第3項)。
1と5は「身分」が変わる出来事なので戸籍法、2〜4は「住所」が変わる出来事なので住民基本台帳法です。期間の数字は、出来事の性質と結びつけて覚えると混ざりにくくなります。
たとえるなら、戸籍は「家族の系図帳」、住民票は「今の住所録」です。ただし本物の戸籍は、親族全員をつなげた系図ではなく、法律の決まりに従って市町村が扱う公の記録です。
条文ではこう決まっている
戸籍法
- 13条1項:戸籍には、本籍のほか、各人の氏名、氏名の振り仮名、出生の年月日、戸籍に入った原因と年月日などを書く。
- 10条1項:戸籍に記載されている人(除かれた人を含む)、その配偶者、直系尊属(父母・祖父母など)、直系卑属(子・孫など)は、戸籍謄本等の交付を請求できる。
- 10条2項:市町村長は、請求が不当な目的によることが明らかなときは、拒める。
- 10条の2第1項:それ以外の人は、①自分の権利を行使し義務を果たすために確認が必要、②国や地方公共団体の機関に出す必要がある、③その他正当な理由がある、の場合に限り請求できる。
- 10条の2第3項:弁護士・司法書士・行政書士など、条文に挙げられた8つの資格者(法人を含む)は、受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要があるときは、戸籍謄本等の交付を請求できる。
- 10条の3第1項:請求の任に当たっている人は、運転免許証を示すなどの方法で、自分がだれかを明らかにする。
- 120条の2:戸籍が磁気ディスクで作られているときは、本人等の請求(10条1項)を、本籍地以外の指定された市町村長にもできる(いわゆる広域交付)。このとき、郵送での請求(10条3項)の定めは使えない。
- 135条:うそその他不正の手段で戸籍謄本等の交付を受けた人は、30万円以下の罰金。
- 137条:正当な理由なく期間内にすべき届出をしない人は、5万円以下の過料。
住民基本台帳法
- 1条:住民の居住関係の公証(証明)、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とすることなどが目的。
- 7条:住民票には、氏名、氏名の振り仮名、出生の年月日、男女の別、世帯主との続柄、戸籍の表示、住所、個人番号、住民票コードなどを書く。
- 12条1項・6項:住民基本台帳に記録されている人は、自分または同じ世帯の人の住民票の写しの交付を請求できる。不当な目的が明らかなら拒める。
- 12条の3第1項:それ以外の人は、①自分の権利行使・義務の履行のための確認、②国・地方公共団体の機関への提出、③その他正当な理由、のために必要だと申し出て、市町村長が相当と認めるときに、基礎的な事項だけの写しを交付してもらえる。
- 12条の3第2項・3項:戸籍法と同じ8つの資格者(特定事務受任者。弁護士・司法書士・行政書士など)が、依頼者が1項の人に当たることを理由に申し出て、市町村長が相当と認めるときは、交付することができる。
- 22条〜25条:転入は転入をした日から14日以内、転居は転居をした日から14日以内、転出はあらかじめ、世帯の変更は変更があった日から14日以内に届け出る。
- 30条の45:日本の国籍を持たない人のうち一定の人で、市町村に住所がある人(外国人住民)にも住民票が作られる。
- 46条2号:うそその他不正の手段で住民票の写しなどの交付を受けた人は、30万円以下の罰金。
- 52条:虚偽の届出をした人(他の法令で刑を科す場合を除く)、正当な理由なく転入・転居・転出などの届出をしない人は、5万円以下の過料。
2つの法律を表で比べる
届出の期間
| 届出 | 法律・条文 | 期間 |
|---|---|---|
| — | — | — |
| 出生 | 戸籍法49条1項 | 14日以内(国外は3か月以内) |
| 死亡 | 戸籍法86条1項 | 死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内) |
| 転入 | 住基法22条1項 | 転入をした日から14日以内 |
| 転居 | 住基法23条 | 転居をした日から14日以内 |
| 転出 | 住基法24条 | あらかじめ(引っ越す前) |
写しを請求できる人と罰
| 比べる点 | 戸籍法 | 住民基本台帳法 |
|---|---|---|
| — | — | — |
| 本人側で取れる人 | 本人・配偶者・直系尊属・直系卑属 | 本人・同じ世帯の人 |
| それ以外の人 | 3つの場合に限り「請求」 | 3つの場合に「申出」、相当と認めれば交付 |
| 行政書士など | 受任事務に必要なら「請求できる」 | 「申出」、相当と認めれば「交付できる」 |
| 不正に取得 | 30万円以下の罰金 | 30万円以下の罰金 |
| 届出をしない | 5万円以下の過料 | 5万円以下の過料 |
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(祖父の戸籍):こうたさんは、祖父の戸籍謄本を本人等として請求できます。祖父は直系尊属だからです(戸籍法10条1項)。
- 当てはまらない例(兄の戸籍):こうたさんの兄が結婚して別の戸籍にいるとき、こうたさんが兄の戸籍謄本を本人等として請求することはできません。兄弟姉妹は配偶者・直系尊属・直系卑属のどれでもないので、10条の2第1項の場合(権利行使のための確認など)に当たるときに限られます。
- 当てはまる例(住民票と同じ世帯):こうたさんは、同じ世帯の妻や子の住民票の写しを請求できます(住基法12条1項)。
- ひっかけやすい例(広域交付):こうたさんが、本籍地ではないB市の窓口で、自分の戸籍謄本を請求する。磁気ディスクで作られた戸籍なら、本籍地以外の指定された市町村長にも請求できます(戸籍法120条の2)。ただし、郵送で求める定め(10条3項)は使えません。また、行政書士の職務上の請求(10条の2第3項)は、この広域交付の対象に入っていません。
- ひっかけやすい例(外国人):B市に住む外国人の同僚も、外国人住民として住民票が作られます(住基法30条の45)。「住民票は日本国民だけ」は誤りです。
似ているルールとの違い:「請求」と「申出」
同じ行政書士の職務上の手続でも、条文の言葉が違います。戸籍法10条の2第3項は「交付の請求をすることができる」で、請求する権利の形です。住民基本台帳法12条の3第2項は、行政書士などから「申出」があり、市町村長が「相当と認めるときは」「交付することができる」という形です。この主語と述語の違いは、取り違えやすいところです。
行政書士がこれらの書類を職務で扱うときの守秘や帳簿の義務は、行政書士法の側の決まりです。行政書士法の条文まとめの記事で確かめてください。また、市町村が持つ個人の情報の扱い(開示・訂正の請求など)は、個人情報保護法の行政機関等の決まりになります。個人情報保護法の全体は個人情報保護法の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
- 期間の入れ替え:死亡を14日、出生を7日とする形。出生は14日、死亡は知った日から7日です。転出は「14日以内」ではなく「あらかじめ」です。
- 起算点:死亡は「死亡の事実を知った日から」、転入・転居は「転入(転居)をした日から」です。
- 本人等の範囲:戸籍は配偶者・直系尊属・直系卑属、住民票は同じ世帯の人。兄弟姉妹を戸籍の本人等に入れる肢に注意します。
- 請求と申出:行政書士は、戸籍では「請求できる」、住民票では「申出」をして「相当と認めるとき」に交付されます。
- 罰の種類:不正取得は30万円以下の「罰金」(刑罰)、届出の怠りは5万円以下の「過料」(刑罰ではない金銭の制裁)です。
- 振り仮名:令和8年4月1日時点では、戸籍にも住民票にも氏名の振り仮名を記載する定めがあります(戸籍法13条1項2号、住基法7条1号の2)。
相続の手続で戸籍を使う場面は、民法の相続の記事の相続人の範囲とあわせて読むと、だれの戸籍が要るかのイメージがつかみやすくなります。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
こうたさんの兄は、結婚して別の戸籍に入っている。こうたさんが兄の戸籍謄本の交付を請求できるのは、自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合など、戸籍法10条の2第1項の場合に限られる。
答え:○ 分かれ目は、本人等として請求できる親族の範囲です。戸籍法10条1項で請求できるのは、戸籍に記載されている人と、その配偶者・直系尊属・直系卑属です。兄弟姉妹は入らないので、こうたさんは10条の2第1項の場合に限って請求できます。家族なら当然取れる、と考えると✕に見えます。祖父母(直系尊属)の戸籍なら、10条1項で請求できます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
行政書士が、受任している事務の依頼者が住民票の記載事項を確認する必要がある者に当たることを理由に、住民票の写しが必要である旨を申し出た。この場合、市町村長は、住民票の写しを交付しなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、市町村長の対応が義務か裁量かです。住民基本台帳法12条の3第2項は、特定事務受任者から申出があり、かつ、市町村長が「当該申出を相当と認めるときは」交付することが「できる」としています。正しくは、相当と認めるときに交付できる、です。戸籍法10条の2第3項は、行政書士などが「請求をすることができる」と権利の形で定めているので、2つの法律の書き方を取り違えた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
こうたさんの祖父が国内で亡くなり、届出義務者であるこうたさんは、その日のうちに死亡の事実を知った。こうたさんは、死亡の事実を知った日から14日以内に死亡の届出をすればよい。
答え:✕ 分かれ目は日数です。戸籍法86条1項は、死亡の届出を「死亡の事実を知つた日から七日以内」(国外で死亡したときは3か月以内)にしなければならないとしています。正しくは7日以内です。14日は、出生の届出(49条1項)や、住民基本台帳法の転入・転居の届出の期間です。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 戸籍は身分の記録(戸籍法)、住民票は住所の記録(住民基本台帳法)。外国人住民にも住民票がある。
- 届出の期間:出生14日以内、死亡は知った日から7日以内、転入・転居14日以内、転出はあらかじめ。
- 本人等の範囲:戸籍は配偶者・直系尊属・直系卑属、住民票は同じ世帯の人。それ以外の人は権利行使などの場合に限られる。
- 行政書士などの職務上の手続:戸籍は「請求できる」、住民票は「申出」→相当と認めれば「交付できる」。
- 不正取得は30万円以下の罰金、届出をしないと5万円以下の過料(両法とも)。
次に読むなら、行政書士法の条文まとめの記事がおすすめです。基礎知識の諸法令の中で、この記事の職務上の請求とつながる行政書士の義務を、条文で確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「戸籍法」(第10条、第10条の2、第10条の3、第13条、第49条、第86条、第120条の2、第135条、第137条を確認。令和8年4月1日時点の条文)
- e-Gov法令検索「住民基本台帳法」(第1条、第7条、第12条、第12条の3、第22条〜第25条、第30条の45、第46条、第52条を確認。令和8年4月1日時点の条文)
- e-Gov法令API「戸籍法」「住民基本台帳法」の改正履歴(令和8年4月2日以降に施行される改正の確認)
働く人の法律試験ノート