ひとことで言うと、地方公共団体は普通地方公共団体(都道府県・市町村)と特別地方公共団体(特別区・地方公共団体の組合・財産区)に分かれます(地方自治法1条の3)。指定都市や中核市は名前が特別でも「市」なので、普通地方公共団体です。
地方公共団体の組合には、仕事の一部を一緒に処理する一部事務組合と、広い範囲の仕事を計画を立てて処理する広域連合があります。この記事では、まちがえやすい組み合わせを表で比べます。条文は令和8年4月1日時点の地方自治法です。
身近な例で考えると
架空のみなみ県に住む3人の話です。
| 人物 | 住んでいる所 | 気になっていること |
|---|---|---|
| けんじさん | 指定都市のさくら市の北区 | 北区の区長を選挙で選べるか |
| まいさん | 小さなつばき町 | ごみ処理を近くの町と一緒にしている |
| ひろしさん | 東京都の特別区 | 区長も区議会もある区は何者か |
- けんじさんの北区は、さくら市が条例で設けた区です。区は市の仕事を分担する事務所で、区長は市長の補助機関である職員が充てられます(252条の20第3項・4項)。選挙はありません。
- まいさんのつばき町は、近くの町と規約を作って一部事務組合を設け、ごみ処理という仕事の一部を一緒に処理しています(284条2項)。
- ひろしさんの特別区は、都の区で、特別地方公共団体です(281条1項、1条の3第3項)。区長も区議会の議員も選挙で選ばれます。
たとえると、指定都市の区は「大きな会社の支店」、特別区は「グループ会社の一つ」です。ただし本物のルールでは、特別区は都との役割分担のもとで市に近い仕事をし、都が一体的に処理する仕事もあります(281条の2)。
条文ではこう決まっている
- 地方公共団体は、普通地方公共団体と特別地方公共団体とする(1条の3第1項)。
- 普通地方公共団体は、都道府県と市町村(同条2項)。
- 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財産区(同条3項)。
- 地方公共団体の組合は、一部事務組合と広域連合(284条1項)。
- 指定都市は「政令で指定する人口五十万以上の市」(252条の19第1項)、中核市は「政令で指定する人口二十万以上の市」(252条の22第1項)。どちらも都道府県の事務の一部を、政令で定めるところにより処理します。
- 財産区は、市町村や特別区の一部で、財産を持ち、または公の施設を設けているものです(294条1項)。たとえば、ある地区だけが昔から持っている山林を管理する場合です。
| 分類 | 具体的なもの | 条文 |
|---|---|---|
| 普通地方公共団体 | 都道府県、市町村(指定都市・中核市を含む) | 1条の3第2項 |
| 特別地方公共団体 | 特別区 | 281条 |
| 特別地方公共団体 | 一部事務組合、広域連合 | 284条 |
| 特別地方公共団体 | 財産区 | 294条 |
| 地方公共団体ではない | 指定都市の区・総合区 | 252条の20、252条の20の2 |
一部事務組合と広域連合はどこが違うか
どちらも、普通地方公共団体と特別区が協議して規約を定め、許可を得て設けます。都道府県が加わるものは総務大臣、それ以外は都道府県知事の許可です(284条2項・3項)。
| 比べる点 | 一部事務組合 | 広域連合 |
|---|---|---|
| 目的 | 事務の一部を共同処理 | 広域で処理するのが適当な事務 |
| 計画 | 条文上の定めなし | 広域計画を作る |
| 議員・長の選び方 | 規約で定める | 規約で、住民の直接選挙か、構成団体の議会・長による選挙かを決める |
| 規約変更の要請の請求 | 条文上の定めなし | 住民が長に請求できる |
- 一部事務組合の規約には、議会の組織と議員の選挙の方法、執行機関の組織と選任の方法などを書きます(287条1項)。
- 広域連合の議員と長は、規約の定めにより、選挙人(構成団体の選挙権を持ち区域内に住む人)が投票で選ぶか、議員は構成団体の議会が、長は構成団体の長が投票で選挙します(291条の5)。
- 広域連合の住民は、条例の制定改廃などの直接請求ができます(291条の6第1項)。さらに、有権者の総数の3分の1以上(40万を超える部分は割合が下がる)の署名で、構成団体に規約の変更を要請するよう、広域連合の長に請求できます(同条2項)。
- 組合には、都道府県が加わるものは都道府県の規定、市と特別区が加わり都道府県が加わらないものは市の規定、その他は町村の規定が使われます(292条)。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(特別区):東京都の区は特別区で、特別地方公共団体です。特別区は「基礎的な地方公共団体」として、市町村の事務を処理します(281条の2第2項)。特別区には、地方自治法や政令に特別の定めがない限り、市の規定が使われます(283条1項)。
- 当てはまらない例(指定都市の区):けんじさんの北区は、地方公共団体ではありません。区長は職員が充てられます。必要なときは区に代えて総合区を置けますが、総合区長は、市長が議会の同意を得て選び、任期は4年です(252条の20の2)。
- ひっかけやすい例(中核市):中核市は都道府県の事務の一部を処理しますが、特別地方公共団体ではありません。人口20万以上の「市」です。
- ひっかけやすい例(憲法と法律のずれ):最高裁判所大法廷昭和38年3月27日判決は、当時の特別区は憲法93条2項の地方公共団体に当たらないとしました。憲法上の地方公共団体といえるには、住民が共同体意識を持つ社会的基盤と、相当程度の自主立法権・自主行政権・自主財政権などが要る、という考え方です。地方自治法上の特別地方公共団体であることとは別の話です。くわしくは財政と地方自治をわかりやすくで扱っています。
似ているルールとの違い
区という名前のつく3つを並べます。
| 比べる点 | 特別区 | 指定都市の区 | 総合区 |
|---|---|---|---|
| 地方公共団体か | 特別地方公共団体 | ちがう | ちがう |
| 長の選び方 | 選挙(市の規定) | 職員を充てる | 市長が議会の同意で選任 |
| 議会 | ある | ない | ない |
| 根拠 | 281条 | 252条の20 | 252条の20の2 |
地方公共団体が作るルール(条例と規則)の決まりは条例と規則をわかりやすくで、国や都道府県が地方公共団体の仕事に口を出すしくみは国の関与と係争処理で確かめられます。
試験ではここをまちがえやすい
- 分類の入れ替え:指定都市・中核市を特別地方公共団体とする肢は誤り。特別地方公共団体は、特別区・組合・財産区の3つです。
- 区の取り違え:「指定都市の区の区長は住民が選挙する」は誤り。選挙があるのは特別区です。
- 組合の取り違え:広域計画を作るのは広域連合です。規約の変更を要請するよう求める住民の請求も、広域連合の条文にある仕組みです。
- 許可する人:都道府県が加わる組合は総務大臣、それ以外は知事の許可です。
- 数字:指定都市は50万以上、中核市は20万以上。どちらも政令で指定されます。
- 判例の理由:昭和38年判決は「憲法上の」地方公共団体かを判断しました。地方自治法上の位置づけとは分けて覚えます。
覚えるときは「特別地方公共団体は特別区・組合・財産区の3つ」「区長を選挙で選ぶのは特別区だけ」「広域計画と規約変更の要請の請求は広域連合」の3点を軸にすると、入れかえた肢に気づけます。この論点は宅建試験の範囲ではありません。地方自治法をどこまでやるかは行政書士試験の地方自治法は捨てていいかで整理しています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
人口25万人のつつじ市は、政令で中核市に指定され、県の事務の一部を処理している。この場合、つつじ市は、地方自治法上、特別地方公共団体に当たる。
答え:✕ 分かれ目は、中核市の分類です。中核市は「政令で指定する人口二十万以上の市」で(地方自治法252条の22第1項)、市なので普通地方公共団体です(1条の3第2項)。正しくは、特別地方公共団体は特別区・地方公共団体の組合・財産区の3つです(同条3項)。県の事務を処理する点から、特別区と同じ扱いだと取り違えないようにします。
問2(このサイトのオリジナル問題)
指定都市のさくら市の北区(総合区ではない)に住むけんじさんは、北区の区長を選挙で選びたいと考えた。しかし、この区長は市長の補助機関である職員が充てられ、住民が選挙で選ぶ仕組みはない。
答え:○ 「区長」とあるので選挙があると思いがちですが、指定都市の区は市の事務を分担するために条例で置かれ、区長には市長の補助機関である職員が充てられます(地方自治法252条の20第3項・4項)。区長を住民が選挙で選ぶのは、特別区です(283条1項で市の規定が使われます)。総合区長なら、市長が議会の同意を得て選任します(252条の20の2)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
最高裁判所大法廷昭和38年3月27日判決は、当時の特別区の区長を区議会が知事の同意を得て選任する仕組みを、憲法93条2項に違反しないとした。その理由は、特別区が地方自治法上の地方公共団体に当たらない点にある。
答え:✕ 結論は正しく、理由がすり替えられています。判決は、当時の特別区は、共同体意識を持つ社会的基盤と、相当程度の自主立法権・自主行政権・自主財政権などを与えられた地域団体とはいえないので、憲法93条2項の地方公共団体ではないとしました。正しくは「憲法上の」地方公共団体に当たらない、が理由です。地方自治法上は、特別区は特別地方公共団体です(1条の3第3項)。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。
まとめ
- 普通地方公共団体は都道府県と市町村。指定都市・中核市もここに入る。
- 特別地方公共団体は、特別区・地方公共団体の組合(一部事務組合・広域連合)・財産区。
- 広域連合は広域計画を作り、住民は規約の変更を要請するよう請求できる。
- 指定都市の区は地方公共団体ではなく、区長は職員。区長を選挙で選ぶのは特別区。
- 昭和38年判決は、当時の特別区を「憲法上の」地方公共団体ではないとした。
次に読むなら、直接請求と住民監査請求・住民訴訟をわかりやすくがおすすめです。広域連合の直接請求も、もとになる市町村の直接請求の数字を知っておくと区別しやすくなります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。
- e-Gov法令検索「地方自治法」(1条の3、252条の19、252条の20、252条の20の2、252条の22、281条、281条の2、283条、284条、287条、291条の5、291条の6、292条、294条)
- 裁判所「最高裁判所大法廷 昭和38年3月27日判決」(昭和37年(あ)第900号)
働く人の法律試験ノート