ひとことで言うと、事務の共同処理(きょうどうしょり)とは、地方公共団体どうしが仕事を一緒に、または代わりに処理する仕組みです。地方自治法は、新しい法人をつくらない方法として、連携協約・協議会・機関等の共同設置・事務の委託・事務の代替執行の5つを置いています(252条の2〜252条の16の4)。
5つを見分けるかぎは「だれの名で、だれの事務として処理するか」です。事務の委託では、委託を受けた団体が自分の長などの手で処理します。事務の代替執行では、引き受けた団体が、頼んだ団体の名で処理します。どちらも、規約を定める協議に議会の議決が要り、告示して届け出れば足ります。知事などの許可は要りません。
別の法人(特別地方公共団体)をつくって処理する一部事務組合と広域連合は、地方公共団体の種類の記事で扱っています。この記事は、令和8年4月1日時点の地方自治法で書いています。
身近な例で考えると
架空のやまなみ県にある、もみじ市とかえで町の話です。
| 団体 | 立場 | したいこと |
|---|---|---|
| もみじ市 | 人口の多い市 | 周りの町と役割を分けたい |
| かえで町 | 小さな町 | 足りない仕事を市や県に頼みたい |
| やまなみ県 | 2つを含む県 | 町の求めに応じて手伝う |
かえで町は職員が少なく、すべての事務を自分だけで処理するのは大変です。そこで、次のような方法を考えました。
- 消防の事務を、もみじ市に任せる。もみじ市の長などがその事務を処理する(事務の委託)。
- 専門家の審査会を、もみじ市と一緒に一つだけ置く。審査会は、両方の団体の機関として働く(機関等の共同設置)。
- 専門の技術が要るある事務を、やまなみ県に頼む。県は「かえで町長の名」でその事務をする(事務の代替執行)。
- もみじ市と、まちづくりの基本の方針と役割分担を決めた約束を結ぶ(連携協約)。
- 互いの仕事の連絡と調整のために、話し合いの場をつくる(協議会)。
どの方法でも、かえで町が消えたり、新しい団体ができたりはしません。これに対し、近くの町と一部事務組合を設けると、組合という別の法人ができます。たとえると、5つの方法は「仕事を頼む・道具を一緒に持つ・方針を約束する」ことで、一部事務組合は「共同の会社をつくる」ことです。ただし本物のルールでは、組合も地方公共団体の一種で、議会や執行機関を持ちます。
条文ではこう決まっている
5つに共通する手続
- 関係する団体が協議して規約(きやく=約束ごとを書いた決まり)を定めます。連携協約は規約ではなく「協約」そのものを結びます(252条の2第1項)。
- 協議には、関係する団体の議会の議決が要ります(協議会は252条の2の2第3項本文、連携協約は252条の2第3項。共同設置・委託・代替執行は252条の2の2第3項本文の準用)。
- 設けたら告示し、都道府県が加わるものは総務大臣に、その他は都道府県知事に届け出ます(252条の2の2第2項、連携協約は252条の2第2項)。許可ではなく届出です。
- 公益上必要があるときは、総務大臣や知事が、関係する団体に設けるよう勧告できます(252条の2の2第4項など)。
連携協約(252条の2)
- 他の団体と連携して事務を処理するに当たっての「基本的な方針及び役割分担」を定める協約を結べます(1項)。
- 結んだ団体は、協約に基づいて分担すべき役割を果たすため、必要な措置を執るようにしなければなりません(6項)。
- 協約について団体どうしで争いが起きたら、当事者は総務大臣や知事に文書で申請し、自治紛争処理委員による「当該紛争を処理するための方策」の提示を求められます(7項・251条の3の2第1項)。
- 方策の提示を受けた団体は「これを尊重して必要な措置を執るようにしなければならない」とされます(251条の3の2第6項)。裁判の判決のように強制する仕組みではありません。
協議会(252条の2の2〜252条の6の2)
- 目的は3つです。事務の一部を共同して管理・執行する、事務の管理・執行について連絡調整を図る、広域にわたる総合的な計画を共同して作成する(252条の2の2第1項)。
- 連絡調整のための協議会だけは、議会の議決が要りません(同条3項ただし書)。
- 協議会は会長と委員で組織し、関係する団体の職員のうちから選びます(252条の3)。
- 協議会が関係する団体やその長などの名でした事務は、その長などがしたものとしての効力を持ちます(252条の5)。
- 協議会が計画を作ったら、関係する団体はその計画に基づいて事務を処理するようにしなければなりません(252条の2の2第5項)。
機関等の共同設置(252条の7〜252条の13)
- 委員会・委員、附属機関、議会事務局、長の内部組織、事務を補助する職員、専門委員などを、共同して置けます。ただし、政令で定める委員会は除かれ(252条の7第1項ただし書)、その委員会は公安委員会です(地方自治法施行令174条の19)。
- 共同で置いた委員会などは、それぞれの関係団体の委員会や附属機関とみなされます(252条の12)。
- 経費は関係する団体が負担し、規約で定める団体の予算に計上して支出します(252条の11第2項)。
事務の委託(252条の14〜252条の16)
- 事務の一部を他の団体に委託し、その団体の長や同種の委員会・委員に管理・執行させられます(252条の14第1項)。
- 規約には、委託する団体と受ける団体、事務の範囲と管理・執行の方法、経費の支弁の方法などを書きます(252条の15)。
- 委託した事務について、委託した団体側に適用される法令の規定は、委託を受けた団体側に適用されるものとされます。また、規約で別に定めたものを除き、受けた団体が定めた条例・規則は、委託した団体の条例・規則としての効力を持ちます(252条の16)。
事務の代替執行(252条の16の2〜252条の16の4)
- 他の団体の求めに応じ、その団体の事務の一部を、その団体やその長・同種の委員会などの名において管理・執行できます(252条の16の2第1項)。
- 代わりにした事務は、求めた団体の長などが管理・執行したものとしての効力を持ちます(252条の16の4)。
脱退
協議会と機関等の共同設置からは、議会の議決を経て、脱退する日の2年前までに、他の全ての関係団体に書面で予告して脱退できます(252条の6の2第1項、252条の7の2第1項)。予告の撤回は、他の全ての関係団体の同意がある場合に限られます。
5つの仕組みを1枚で比べる
いちばん大事な「だれの名で・だれの事務として」を並べます。
| 仕組み | 何をするか | だれの名で処理するか |
|---|---|---|
| 連携協約 | 方針と役割分担を約束 | それぞれが自分の事務として |
| 協議会 | 共同処理・連絡調整・計画 | 関係団体や長などの名 |
| 共同設置 | 委員会などを一つだけ置く | 各団体の機関とみなす |
| 事務の委託 | 事務を他の団体に任せる | 受けた団体の長などが処理 |
| 代替執行 | 求めに応じ代わりに処理 | 求めた団体や長の名 |
手続の違いは、次の3点にしぼれます。
| 比べる点 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 議会の議決 | 5つとも要る。連絡調整の協議会だけ不要 | 252条の2の2第3項 |
| 国・県の関わり | 告示して届出。許可は要らない | 252条の2の2第2項 |
| 争いの処理 | 連携協約は自治紛争処理委員の方策 | 252条の2第7項 |
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(事務の委託):かえで町が消防の事務をもみじ市に委託した。もみじ市の長などがこの事務を管理・執行し、法令の規定はもみじ市側に適用されます(252条の14・252条の16)。
- 当てはまる例(代替執行):やまなみ県が、かえで町の求めに応じて、町の事務の一部を「かえで町長の名」で処理した。効力は、かえで町長がしたものとして生じます(252条の16の4)。
- 当てはまらない例(許可):かえで町が事務の委託をするのに、知事の許可を受ける必要はありません。届出で足ります。知事の許可(都道府県が加わるものは総務大臣の許可)が要るのは、一部事務組合や広域連合を設ける場合です(284条2項・3項)。
- ひっかけやすい例(議会の議決):連絡調整のためだけの協議会なら、議会の議決は要りません。ただし、このただし書は協議会の規定です。共同設置・委託・代替執行に準用されるのは252条の2の2第3項の「本文」だけなので、議決の例外はありません。
- ひっかけやすい例(連携協約の争い):自治紛争処理委員の方策を受けた団体は、尊重して必要な措置を執るようにする、とされます。国の関与への不服を国地方係争処理委員会で審査する手続とは別の仕組みです(国の関与と係争処理の記事)。
一部事務組合・広域連合との違い
5つの方法と、法人をつくる2つの方法を並べます。
| 比べる点 | 5つの方法 | 一部事務組合・広域連合 |
|---|---|---|
| 新しい法人 | できない | できる(特別地方公共団体) |
| 設けるとき | 告示して届出 | 総務大臣か知事の許可 |
| 条文 | 252条の2〜252条の16の4 | 284条以下 |
一部事務組合と広域連合は、規約で組合の議会や執行機関の組織を定めます(287条1項など)。5つの方法では、協議会の会長や委員も関係団体の職員から選ばれ、別の議会はできません。
自治事務か法定受託事務かという事務の種類の話は自治事務と法定受託事務の違いで、行政主体と行政機関の区別は行政主体と行政機関の記事で整理しています。共同設置した委員会が「どの団体の機関か」は、行政機関の考え方とつながります。
試験ではここをまちがえやすい
- 名義の入れ替え:代替執行を「引き受けた団体の名で処理する」とする文。正しくは、求めた団体(やその長など)の名で処理します。委託を受けた団体の長などが自ら処理する事務の委託と取り違えないようにします。
- 許可と届出:5つの方法は告示と届出です。「知事の許可が必要」は、一部事務組合・広域連合の規律と入れ替えた文です。
- 議決の例外の範囲:議会の議決が要らないのは、連絡調整のための協議会だけです。
- 協議会の3つの目的:「広域にわたる総合的な計画の共同作成」も協議会の目的です。広域計画を作る広域連合(291条の7)と名前が似ているので注意します。
- 届出の相手:都道府県が加わるものは総務大臣、それ以外は都道府県知事です。
- 連携協約の争い:自治紛争処理委員が示すのは「処理するための方策」で、団体はこれを尊重する、という書き方です。
地方自治法全体の中での優先順位は行政書士試験の地方自治法は捨てていいかで整理しています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
やまなみ県内のかえで町は、消防の事務をもみじ市に委託することにし、両団体の議会の議決を経て規約を定めた。この場合、事務の委託には、やまなみ県知事の許可が必要である。
答え:✕ 分かれ目は、許可か届出かです。事務の委託は、協議で規約を定め(地方自治法252条の14第1項)、議会の議決を経て、告示し、県が加わらないものは知事に届け出ます(同条3項で準用する252条の2の2第2項・第3項本文)。正しくは、許可は要らず届出で足ります。知事の許可(都道府県が加わるものは総務大臣の許可)が要るのは、一部事務組合や広域連合を設ける場合で(284条2項・3項)、その規律と取り違えた文です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
もみじ市とかえで町は、互いの事務の管理及び執行について連絡調整を図るためだけに、協議会を設けることにした。この場合、両団体の議会の議決を経る必要はない。
答え:○ 分かれ目は、協議会の目的です。協議会を設ける協議には原則として議会の議決が要りますが、連絡調整を図るため設ける場合は「この限りでない」とされています(地方自治法252条の2の2第3項ただし書)。「共同処理には議会の議決が要る」と覚えていると✕に見えます。事務を共同して管理・執行する協議会や、広域の計画を作る協議会なら議決が要り、共同設置・委託・代替執行にはこの例外がありません(3項本文だけが準用されるため)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
やまなみ県は、かえで町の求めに応じ、規約を定めて町の事務の一部を代替執行することになった。この事務は、やまなみ県知事の名において管理・執行され、県知事が管理・執行したものとしての効力を生じる。
答え:✕ 分かれ目は、だれの名で処理するかです。事務の代替執行は、求めた団体やその長などの名において管理・執行され(地方自治法252条の16の2第1項)、求めた団体の長などが管理・執行したものとしての効力を持ちます(252条の16の4)。正しくは、かえで町長の名で処理され、かえで町長がしたものとして効力が生じます。委託を受けた団体の長などが自ら管理・執行する事務の委託(252条の14第1項)と取り違えた文です。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。
まとめ
- 法人をつくらない共同処理は5つ:連携協約・協議会・機関等の共同設置・事務の委託・事務の代替執行。
- 委託は「受けた団体が処理」、代替執行は「求めた団体の名で処理」。
- どれも協議に議会の議決が要る(連絡調整の協議会だけ不要)。設けたら告示して届出。許可は要らない。
- 許可が要るのは、法人をつくる一部事務組合・広域連合。
- 連携協約の争いは、自治紛争処理委員の処理方策を尊重する仕組み。
次に読むなら、地方公共団体の種類の記事がおすすめです。一部事務組合と広域連合の違いを先に押さえると、この記事の5つの方法との境目がはっきりします。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。
- e-Gov法令検索「地方自治法」(251条の3の2、252条の2、252条の2の2、252条の3、252条の5、252条の6の2、252条の7、252条の7の2、252条の8、252条の9、252条の11、252条の12、252条の13、252条の14、252条の15、252条の16、252条の16の2、252条の16の3、252条の16の4、284条)
- e-Gov法令検索「地方自治法施行令」(174条の19)
働く人の法律試験ノート