ひとことで言うと、地域自治区は市町村の中の仕組み、認可地縁団体は住民の団体です。地域自治区は、市町村が条例で区域を分けて設け、事務所と地域協議会を置いて、住民の意見を反映させながら市町村長の事務を分けて処理させるものです(地方自治法202条の4・202条の5)。法人ではありません。
認可地縁団体は、町内会・自治会のような「地縁による団体」が、市町村長の認可を受けて、規約に定める目的の範囲で権利を持ち、義務を負えるようになったものです(260条の2)。この記事では、2つを条文で比べます。特定の市町村の例や一覧、登記・印鑑の手続などの実務は扱いません。条文は、令和8年4月1日時点の地方自治法を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
架空の「ひばり市」で考えます。
- ひばり市は、条例で市の区域を4つに分け、それぞれに地域自治区を設けた。各地域自治区には事務所があり、市の職員が事務所の長になった。
- 東地域自治区には地域協議会が置かれ、市長が、区域に住む人の中から構成員を選んだ。
- 同じ区域の「東町内会」は、会の名前で集会所の契約や預金の管理をしたいと考え、会長が市長に認可を申請した。
1・2番目の地域自治区は、ひばり市が自分の組織として作るものです。地域協議会の構成員は、住民の選挙ではなく市長が選びます。3番目の東町内会は、住民が自分たちで作った団体です。市長の認可を受けると、会の名前で権利を持ち義務を負える(法人格を持つ)ようになり、これが認可地縁団体です。認可を受けても、町内会が市の組織の一部になるわけではありません(260条の2第6項)。
条文ではこう決まっている
地域自治区(202条の4〜202条の9)
- 設置(202条の4第1項):市町村は、市町村長の権限に属する事務を分掌(ぶんしょう=分けて受け持つこと)させ、地域の住民の意見を反映させつつ処理させるため、条例で、区域を分けて地域自治区を設けることが「できる」。
- 事務所(同条2項・3項):事務所を置き、位置・名称・所管区域は条例で定める。事務所の長は、市町村長の補助機関である職員を充てる。
- 地域協議会(202条の5):地域自治区に地域協議会を置く。構成員は、区域内に住所を有する者のうちから市町村長が選任する。選任では、住民の多様な意見が適切に反映されるよう配慮しなければならない。任期は4年以内で条例で定める。報酬を支給しないこともできる。
- 会長・副会長(202条の6):会長と副会長を置き、選任・解任の方法は条例で定める。
- 権限(202条の7):市町村長などから諮問されたもの、または必要と認めるものについて、審議して意見を述べることができる(1項)。条例で定める重要事項で区域に関するものを決めたり変えたりするときは、市町村長は、あらかじめ地域協議会の意見を聴かなければならない(2項)。市町村長などは、意見を勘案し、必要と認めるときは適切な措置を講じなければならない(3項)。
地域協議会が意見を述べられるのは、①地域自治区の事務所が所掌する事務、②そのほか市町村が処理する地域自治区の区域に係る事務、③市町村の事務処理での住民との連携の強化、に関する事項です(202条の7第1項各号)。地域協議会は意見を述べる機関で、市町村長に代わって決める機関ではありません。
指定都市は、条例で区を設けるものとされています(252条の20第1項。行政区とも呼ばれます)。指定都市が地域自治区を設けるときは、区の区域を分けて定めます(同条9項)。区の仕組みは地方公共団体の種類の記事で扱っています。市町村の合併のときに、期間を定めて置く「合併特例区」は、合併特例法で特別地方公共団体とされ(同法26条・27条)、地方公共団体は法人とされる(地方自治法2条1項)ので、法人である点で地域自治区と違います。
認可地縁団体(260条の2)
- 認可の効果(260条の2第1項):町または字の区域など、市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体は、地域的な共同活動を円滑に行うため市町村長の認可を受けたときは、規約に定める目的の範囲内で、権利を有し、義務を負う。
- 認可の要件(同条2項):①住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理など、良好な地域社会の維持・形成に資する地域的な共同活動を目的とし、現にその活動をしていること、②区域が住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること、③区域に住所を有するすべての個人が構成員になれ、その相当数が現に構成員であること、④規約を定めていること。申請は団体の代表者がする。
- 認可の義務(同条5項):市町村長は、要件に該当していると認めるときは、認可をしなければならない。
- 認可の意味(同条6項):認可は、団体を公共団体その他の行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならない。
- 運営のルール(同条7項〜9項):正当な理由がない限り、区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない。民主的な運営のもとで自主的に活動し、構成員を不当に差別してはならない。特定の政党のために利用してはならない。
- 告示と取消し(同条10項・13項・14項):市町村長は認可を告示する。告示があるまでは、認可地縁団体となったことを第三者に対抗できない。要件を欠くことになったときや、不正な手段で認可を受けたときは、市町村長は認可を取り消すことができる。
令和3年の改正で、認可の目的が広がった
260条の2第1項の認可の目的は、もとは「地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため」でした。令和3年法律第44号による改正(令和3年11月26日施行)で、「地域的な共同活動を円滑に行うため」に改められました。いまは、集会所などの不動産を持っているかどうかにかかわらず、2項の要件を満たせば認可を受けられます。古い説明で「不動産を持つための制度」と覚えていると、ここで誤ります。
認可を受けていない町内会などは、法人ではありません。団体としての実体があれば、判例のいう権利能力なき社団として扱われることがあり、その財産や借金の扱いは権利能力なき社団の記事で扱っています。
2つの仕組みを表で比べる
| 比べる点 | 地域自治区 | 認可地縁団体 |
|---|---|---|
| 法人か | 法人ではない(市町村の中の区域と組織) | 認可で、規約の目的の範囲内で権利を有し義務を負う |
| だれが作るか | 市町村が条例で設ける | 住民が作った団体の代表者が申請し、市町村長が認可する |
| 何をするか | 事務所が市町村長の事務を分掌し、地域協議会が審議して意見を述べる | 集会施設の維持管理など、地域的な共同活動 |
| メンバー | 地域協議会の構成員は、区域内の住民から市町村長が選任 | 区域に住むすべての個人が構成員になれる。正当な理由なく加入を拒めない |
当てはまる例・当てはまらない例
当てはまる例:諮問がなくても意見を述べる
東地域自治区の地域協議会が、事務所の窓口の受付時間について、市長から聞かれていないのに審議し、意見を述べた場面です。202条の7第1項は「諮問されたもの又は必要と認めるもの」としているので、諮問がなくても意見を述べられます。
当てはまらない例:地域協議会が市の方針を決める
地域協議会は意見を述べる機関です。地域協議会の議決で市の施策が決まるわけではありません。市長には、重要事項について意見を聴く義務(202条の7第2項)と、意見を勘案して必要なら適切な措置を講じる義務(同条3項)があります。
ひっかけやすい例:認可を受けた町内会が加入を断る
認可を受けた東町内会が、区域に引っ越してきた人の加入を、特別の理由もなく断ることはできません(260条の2第7項)。認可の要件にも、区域に住所を有するすべての個人が構成員になれることが入っています(同条2項3号)。
似ているルールとの違い
地域自治区は、一つの市町村の中で区域を分ける仕組みです。複数の市町村が協力して事務を処理する一部事務組合や事務の委託などとは、向きが違います(事務の共同処理の記事)。認可地縁団体は、地方公共団体ではありません。地方公共団体の長や議会の議員は住民が直接選挙します(憲法93条2項)が、地域協議会の構成員は市町村長の選任で、選挙の定めはありません。行政書士試験で地方自治法をどこまで学ぶかは地方自治法の範囲の記事で考え方を示しています。
試験ではここをまちがえやすい
- 構成員の選び方:地域協議会の構成員を住民の選挙で選ぶとする形。市町村長が選任します(202条の5第2項)。
- 設置の義務:市町村は地域自治区を設けなければならない、とする形。202条の4第1項は「設けることができる」です。指定都市の区(252条の20第1項)と混ぜないようにします。
- 法人格の有無:地域自治区を法人とする形。法人なのは、合併特例区(特別地方公共団体)や、認可を受けた地縁による団体です。
- 改正前の認可の目的:不動産などを保有するための認可とする形。令和3年の改正で「地域的な共同活動を円滑に行うため」になりました。
- 認可の意味:認可で町内会が市の組織の一部になる、とする形。260条の2第6項はそう解釈してはならないとしています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
ひばり市は、条例で地域自治区を設け、地域協議会を置いた。この地域協議会の構成員は、地域自治区の区域内に住所を有する人の中から、住民の投票によって選ばれる。
答え:✕ 分かれ目は、地域協議会の構成員をだれが選ぶかです。202条の5第2項は、構成員は区域内に住所を有する者のうちから「市町村長が選任する」としています。正しくは、ひばり市長が選任し、その際、住民の多様な意見が適切に反映されるよう配慮しなければなりません(同条3項)。取り違えの相手は、地方公共団体の長と議会の議員で、こちらは住民が直接選挙します(憲法93条2項)。
問2(このサイトのオリジナル問題)
ひばり市の東地域自治区の地域協議会は、市長から諮問を受けていない事項であっても、地域自治区の事務所が所掌する事務に関するものであれば、必要と認めるときは、審議して市長に意見を述べることができる。
答え:○ 分かれ目は、地域協議会が意見を述べるのに諮問が要るかです。202条の7第1項は、事務所が所掌する事務に関する事項などのうち「諮問されたもの又は必要と認めるもの」について、審議して意見を述べることができるとしています。諮問を受けたときだけ答える機関と考えると✕にしてしまいます。取り違えの相手は同条2項で、こちらは市長の側が、条例で定める重要事項について、あらかじめ意見を聴かなければならないという義務です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
集会所などの不動産を持っておらず、持つ予定もない町内会でも、区域・構成員・規約などの要件を満たして地域的な共同活動をしていれば、市町村長の認可を受けて、規約の目的の範囲内で権利を有し義務を負う団体になれる。
答え:○ 分かれ目は、認可の目的に不動産の保有が要るかです。令和3年法律第44号による改正(令和3年11月26日施行)で、260条の2第1項の目的は「地域的な共同活動を円滑に行うため」になり、不動産を保有するための認可という限定はなくなりました。同条2項の要件にも、不動産を持つことは入っていません。改正前の「不動産又は不動産に関する権利等を保有するため」で覚えていると✕にしてしまいます。取り違えの相手は、この改正前の条文です。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。
まとめ
- 地域自治区:市町村が条例で区域を分けて設けることができる。法人ではない(202条の4)。
- 地域協議会の構成員は、区域内の住民から市町村長が選任。任期は4年以内で条例で定める(202条の5)。
- 地域協議会は、諮問されたもの・必要と認めるものについて意見を述べる。重要事項は市町村長があらかじめ意見を聴く(202条の7)。
- 認可地縁団体:地縁による団体が市町村長の認可で権利能力を得る。要件を満たせば市町村長は認可しなければならない。行政組織の一部ではない(260条の2)。
- 令和3年改正で、認可の目的は「地域的な共同活動を円滑に行うため」に広がった。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめました。260条の2第1項の改正は、e-Gov法令検索で令和3年11月25日時点と11月26日時点の条文を比べ、改正した法律の番号と施行日を確かめました。
- e-Gov法令検索「地方自治法」(2条、202条の4、202条の5、202条の6、202条の7、202条の8、202条の9、252条の20、260条の2)
- e-Gov法令検索「市町村の合併の特例に関する法律」(26条、27条)
- e-Gov法令検索「日本国憲法」(93条)
このサイトで次に読むなら、権利能力なき社団の記事です。認可を受けていない町内会の財産はだれのものか、借金はだれが払うかを、判例で確かめられます。
働く人の法律試験ノート