宅建試験の権利関係(民法・借地借家法など)は、「AがBに土地を売り、BがCに…」という場面の問題が中心です。この記事は、その場面の読み取りを練習するための、このサイトのオリジナル○✕問題20問です。
答えを覚えるための問題ではありません。各問の解説の最後に「決め手」として、答えを決めた要件(条文の中の一語)を書きました。○✕を当てることより、「どの条文の、どの言葉で答えが決まったか」を言えるかを確かめてください。
問題は、令和8年4月1日に施行されている条文で作っています。過去問の問題文は使っていません。
解く前に:場面を図にする3つの手順
権利関係の問題は、頭の中だけで読むと人物の関係を取り違えます。紙の端に、次の順で小さな図を描きます。
- 人と物を置く:人物を丸で書き、土地や建物を四角で書く。売った・貸した・だましたなどを矢印でつなぐ。
- 時間の順に番号を振る:契約・登記・取消し・死亡などに①②③と番号を付ける。「取消しの前か後か」「受け取る前か後か」で答えが変わる問題が多いからです。
- 問われている2人に線を引く:「AはCに主張できるか」なら、AとCの間に線を引き、その2人の関係を決める条文を探す。
条文を探すときは、問題文の中の「決め手になりそうな言葉」に印を付けます。知っていたか(善意・悪意)、過失はあるか、書面か、登記はあるか、だれの行為か、の5つが、宅建の民法で答えを分けやすい言葉です。
意思表示・行為能力・代理・時効(問1〜問6)
問1(このサイトのオリジナル問題)
Aは、債権者の差押えを逃れるため、Bと示し合わせて自分の土地をBに売ったことにし、登記もBに移した。Bは、事情を知らないCにこの土地を売ったが、Cは少し調べれば事情を知ることができた。この場合、Aは、Cに売買の無効を主張できない。
答え:○ 分かれ目は、守られる第三者に求められる中身です。示し合わせた売買(虚偽表示)は無効ですが、その無効は「善意の第三者」に対抗できず(民法94条2項)、条文は無過失までは求めていません。Cに過失があっても、知らなければ守られます。取り違えの相手は詐欺の取消し(96条3項)で、こちらは「善意でかつ過失がない第三者」です。(決め手:第三者は「善意」だけでよいか)
問2(このサイトのオリジナル問題)
Aは、Bにだまされて自分の土地をBに売り、登記を移した。Bは、その事情を知らないが知らないことに過失があるCに、この土地を売った。その後、Aが詐欺を理由に売買を取り消した場合、Aは、Cに取消しを対抗できない。
答え:✕ 分かれ目は、第三者に過失があるかどうかです。詐欺による取消しは「善意でかつ過失がない第三者」に対抗できないとされています(96条3項)。正しくは、過失のあるCは守られず、AはCに取消しを対抗できます。取り違えの相手は問1の虚偽表示(94条2項)で、こちらは善意だけで守られます。(決め手:第三者に「無過失」まで要るか)
問3(このサイトのオリジナル問題)
Aは、土地をBに売る際、売る土地を取り違えるという重要な錯誤をした。Aには重大な過失があったが、Bも同じ取り違えをしていた。この場合、Aは、錯誤を理由に意思表示を取り消すことができる。
答え:○ 分かれ目は、表意者に重大な過失がある場合の例外です。重過失のある表意者は原則として取り消せませんが、相手方が「表意者と同一の錯誤に陥っていたとき」は取り消せます(95条3項2号)。「重過失なら取り消せない」とだけ覚えていると✕に見えます。取り違えの相手は、例外を考えない95条3項本文の原則です。(決め手:相手方も同じ錯誤か)
問4(このサイトのオリジナル問題)
17歳のAは、親の同意を得ずに、相続した自分の土地をBに売った。Aは、親の同意を得なくても、成年になる前に自分一人でこの売買を取り消すことができる。
答え:○ 分かれ目は、取り消せる人と、取消しに同意が要るかです。同意のない未成年者の契約は取り消すことができ(5条2項)、取り消せる人には制限行為能力者本人が入っています(120条1項)。未成年者は一人では何もできないと考えると✕に見えます。取り違えの相手は追認で、未成年のうちは本人だけで有効な追認はできません(124条1項)。(決め手:取消権者に本人が入るか)
問5(このサイトのオリジナル問題)
Bは、代理権がないのに、Aの代理人としてAの土地をCに売る契約をした。Cは、契約の時、Bに代理権がないことを知っていた。この場合、Cは、Aに対し、追認するかどうか確答するよう催告することができない。
答え:✕ 分かれ目は、相手方が知っていたら使えなくなる権利はどれかです。催告の条文(114条)は、相手方が知らなかったことを求めていません。正しくは、知っていたCも催告でき、Aが期間内に答えなければ追認を拒絶したものとみなされます。取り違えの相手は取消権(115条)で、契約の時に代理権がないと知っていた相手方は取り消せません。(決め手:催告か取消しか)
問6(このサイトのオリジナル問題)
Aは、他人の土地を自分の土地だと過失なく信じ、所有の意思をもって平穏・公然に占有を始めた。3年後に他人の土地だと気づいたが、そのまま占有を続けた。この場合、占有開始から10年で、Aはこの土地の所有権を取得する。
答え:○ 分かれ目は、善意・無過失を判断する時点です。10年の取得時効は「占有の開始の時に」善意で過失がなければよく(162条2項)、途中で気づいても10年で取得できます。途中で知ったら20年になると考えると✕に見えます。取り違えの相手は、占有を始めた時から知っていた(または過失があった)場合の20年(同条1項)です。(決め手:善意・無過失はいつの時点か)
意思表示の全体は意思表示の記事、代理は代理の記事で整理しています。
物権変動・担保(問7・問8)
問7(このサイトのオリジナル問題)
Aが亡くなり、子BとCが土地を2分の1ずつ相続した。遺産分割でBが土地全部を取得したが、登記はしなかった。その後、Cが法定相続分による持分を自分の物としてDに売り、Dが登記した。この場合、Bは、Cの分だった2分の1について、Dに所有権を対抗できない。
答え:○ 分かれ目は、法定相続分を超える部分かどうかです。相続による取得は、遺産分割によるかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分は登記などがなければ第三者に対抗できません(899条の2第1項)。Bの法定相続分の2分の1は別ですが、Cの分だった2分の1は超える部分です。相続なら登記は要らないと考えると✕に見えます。取り違えの相手は、法定相続分の範囲の部分です。(決め手:法定相続分を超えるか)
問8(このサイトのオリジナル問題)
B銀行は、Aの賃貸マンションに抵当権を持っている。Aが返済を滞らせたので、Bは、Aが借主Cから受け取る賃料に物上代位しようと考えた。Bは、賃料が払い渡される前に差押えをしなくても、Cに直接賃料の支払いを求めることができる。
答え:✕ 分かれ目は、差押えが要るかどうかです。抵当権には先取特権の物上代位の条文が準用され(372条・304条)、物上代位をするには「払渡し又は引渡しの前に差押え」が要ります(304条1項ただし書)。正しくは、Bは、Cが払う前に賃料を差し押さえなければなりません。取り違えの相手は「賃料に物上代位できるか」の問いで、そちらはできる(○)ので、要件の差押えを落とした肢に引っかかります。(決め手:払渡し前の差押え)
売買・保証・解除(問9〜問12)
問9(このサイトのオリジナル問題)
Cは、友人Bの借金について、貸主Aと保証契約を結ぶことを口頭で約束し、書面も電磁的記録も作らなかった。この場合、Cの保証契約は効力を生じない。
答え:○ 分かれ目は契約の方式です。保証契約は書面でしなければ効力を生じず(446条2項)、電磁的記録でしたものは書面でしたものとみなされます(同条3項)。売買のように口約束でも成り立つ契約が多いので✕に見えますが、保証は書面が要ります。取り違えの相手は、合意だけで成立する売買や賃貸借です。(決め手:書面か)
問10(このサイトのオリジナル問題)
売主Aは、期日を過ぎても買主Bに土地を引き渡さない。Bが相当の期間を定めて催告したが、期間内に引渡しはなかった。この場合でも、遅れについてAの責めに帰すべき事由がなければ、Bは契約を解除できない。
答え:✕ 分かれ目は、解除に債務者の責任が要るかです。催告による解除の要件は、相当の期間を定めた催告と、期間内の不履行です(541条)。正しくは、Aに責任がなくても、Bは解除できます。解除できないのは、不履行が軽微なとき(同条ただし書)と、債権者B側の責めに帰すべき事由によるとき(543条)です。取り違えの相手は損害賠償で、こちらは債務者の責めに帰することができない事由なら請求できません(415条1項ただし書)。(決め手:解除に帰責事由が要るか)
問11(このサイトのオリジナル問題)
Aから土地を買ったBは、引渡しの後、土の状態が契約の内容に合わないことに気づいた(Aは引渡しの時にこれを知らず、重大な過失もない)。Bは、気づいてから1年以内にその旨をAに通知すれば、1年を過ぎてから代金の減額を請求することもできる。
答え:○ 分かれ目は、1年以内にすることが「通知」か「請求」かです。種類・品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に売主へ「通知」しないと、追完・代金減額・損害賠償・解除を求められなくなります(566条本文)。通知さえしておけば、請求は1年を過ぎてもかまいません(消滅時効にかかるまで)。1年以内に請求まで要ると考えると✕に見えます。取り違えの相手は、売主が知っていた・重過失だった場合の例外(同条ただし書)で、そのときは1年の制限そのものがかかりません。(決め手:通知か請求か)
問12(このサイトのオリジナル問題)
売主A(宅建業者ではない)と買主Bは、土地の売買で手付を授受した。その後、Bが中間金を支払った。A自身はまだ何もしていないので、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約を解除することができる。
答え:✕ 分かれ目は、だれの「履行の着手」を見るかです。手付による解除は「その相手方が契約の履行に着手した後は」できません(557条1項ただし書)。判例は、履行の着手を「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をな」すことなどと説明しており(最高裁判所大法廷昭和40年11月24日判決)、解除しようとするAから見た相手方Bが代金の一部である中間金を支払ったことは、これに当たります。正しくは、Aは解除できません。取り違えの相手は「自分の着手」で、解除する側が着手していないことは解除できる理由になりません。(決め手:相手方の着手か)
賃貸借・借地借家法(問13〜問17)
問13(このサイトのオリジナル問題)
AはBに建物を月10万円で賃貸し、BはAの承諾を得て、その建物をCに月12万円で転貸した。Bが賃料を払わないとき、Aは、Cに対し、月10万円の範囲で、直接賃料の支払いを求めることができる。
答え:○ 分かれ目は、転借人が賃貸人に負う義務の範囲です。適法な転貸では、転借人は「賃借人の債務の範囲を限度として」賃貸人に直接義務を負います(613条1項)。AとCは契約していないので✕に見えますが、条文が直接の義務を認めています。取り違えの相手は、BC間の12万円を基準にする誤りで、限度はAB間の10万円です。(決め手:賃借人の債務の範囲が限度)
問14(このサイトのオリジナル問題)
Bは、Aから建物を借りるときに敷金20万円を預けた。Bが今月の賃料10万円を払えなくなった場合でも、Bは、Aに対し、敷金を今月の賃料に充てるよう請求することはできない。
答え:○ 分かれ目は、敷金を充てる選択がだれにあるかです。賃貸人は、賃借人が債務を履行しないとき敷金を充てることができますが、賃借人から充てるよう請求することはできません(622条の2第2項)。自分が預けたお金なのに使えないので✕に見えます。取り違えの相手は、賃貸人の側からの充当で、Aからなら充てられます。(決め手:賃貸人の選択か、賃借人の請求か)
問15(このサイトのオリジナル問題)
Bが借地上に所有する登記された建物が、火事でなくなった。Bは、土地の見やすい場所に、建物を特定する事項・なくなった日・建物を新たに築く旨を掲示した。この場合、Bは、建物を再築しなくても、期間の制限なく借地権を第三者に対抗できる。
答え:✕ 分かれ目は、掲示の効き目の期限です。掲示をすれば建物がなくても対抗力は続きますが、なくなった日から2年を経過した後は、その前に建物を新たに築き、その登記をした場合に限られます(借地借家法10条2項)。正しくは、掲示だけで守られるのは2年までです。取り違えの相手は、建物の登記で対抗する10条1項の原則です。(決め手:滅失から2年)
問16(このサイトのオリジナル問題)
AとBは、更新がない定期建物賃貸借の契約を、公正証書ではないふつうの書面で結んだ。Aは事前に、更新がないことを書いた書面を交付して説明していた。この場合、公正証書によらないので、更新がない旨の定めは効力を生じない。
答え:✕ 分かれ目は、公正証書が必須かどうかです。定期建物賃貸借は「公正証書による等書面によって」契約すればよく(借地借家法38条1項)、公正証書は例として挙がっているだけです。正しくは、ふつうの書面でも、事前の書面による説明(同条3項)があれば有効です。取り違えの相手は事業用定期借地権で、こちらは公正証書でしなければなりません(23条3項)。(決め手:「公正証書による等書面」)
問17(このサイトのオリジナル問題)
Aは、Bに建物を期間2年で賃貸している。期間満了の1年前から6か月前までの間に、AもBも更新しない旨の通知をしなかった場合、契約は更新したものとみなされ、更新後の期間も2年となる。
答え:✕ 分かれ目は、更新後の期間です。通知がなければ従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされますが、「その期間は、定めがないものとする」とされています(借地借家法26条1項)。正しくは、期間の定めのない賃貸借になります。取り違えの相手は「同一の条件」に期間も含めて読む誤りです。(決め手:更新後は期間の定めなし)
借地と借家のルールの全体は借地借家法の記事で確かめられます。
共有・相続(問18〜問20)
問18(このサイトのオリジナル問題)
A・B・Cは、土地を3分の1ずつ共有している。AとBは、Cの同意を得ずに、この土地を駐車場として3年間Dに貸すことを決めた。この賃貸は、A・Bの決定だけですることができる。
答え:○ 分かれ目は、共有物を貸すことが「管理」か「変更」かです。建物を建てる目的でない土地の賃借権等は、5年を超えないものなら、持分の価格の過半数で決める管理として設定できます(252条1項・4項2号)。A・Bの持分は合わせて3分の2です。貸すには全員の同意が要ると考えると✕に見えます。取り違えの相手は共有物の変更(251条1項)で、こちらは他の共有者の同意が要ります。(決め手:5年以内の土地の賃貸か)
問19(このサイトのオリジナル問題)
Aが亡くなった。Aの子Bは、相続を放棄した。Bには子Dがいる。この場合、Dは、Bに代わってAの相続人となる。
答え:✕ 分かれ目は、代襲相続が起きる原因です。代襲相続は、子が相続の開始以前に死亡したとき、相続人の欠格に当たったとき、廃除されたときに起き(887条2項)、相続放棄は入っていません。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます(939条)。正しくは、Dは相続人になりません。取り違えの相手は、Bが相続の開始前に死亡していた場合で、そのときはDが代襲します。(決め手:放棄は代襲原因か)
問20(このサイトのオリジナル問題)
Aが亡くなった。Aには妻Bと、父母の双方を同じくする兄Cがいるが、子はなく、父母・祖父母もすでに亡くなっている。この場合、Bの法定相続分は4分の3である。
答え:○ 分かれ目は、配偶者と一緒に相続するのがだれかです。子も直系尊属もいないので兄弟姉妹が相続人になり(889条1項)、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です(900条3号)。兄と半分ずつと考えると✕に見えます。取り違えの相手は、配偶者と子(各2分の1・1号)、配偶者と直系尊属(3分の2・2号)の組み合わせです。(決め手:相続人の組み合わせ)
相続分の計算は相続の記事で、ほかの組み合わせも練習できます。
まちがえた問題は、決め手の型で見直す
まちがえた問題は、「知らなかった」のか「知っていたのに読み落とした」のかを分けます。読み落としは、次の型に当てはめて整理できます。自分のまちがいがどの型かを数えると、次に気をつける言葉が決まります。
| 決め手の型 | この記事の問 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 第三者の主観(善意・無過失) | 問1・問2 | 条文ごとに「善意」か「善意でかつ過失がない」か |
| だれの行為・だれの権利か | 問5・問12・問14 | 主語と相手方を図の線で確かめる |
| 時点・期限 | 問6・問11・問15・問17 | 図の番号で「いつの話か」を確かめる |
| 方式(書面・登記・差押え) | 問7・問8・問9・問16 | 要件の手続が問題文にあるか |
| 原則と例外 | 問3・問10・問18・問19 | 例外の条件が問題文にそろっているか |
一問一答は、答えを見る前に自分で理由を言ってから確かめると効き目が上がります。使い方の考え方は宅建の一問一答の使い方にまとめています。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。この記事の20問で決め手の型をつかんでから、ドリルでまぜて解くと、場面の読み取りが速くなります。
まとめ
- 宅建の民法は場面の問題。人と物を置き、時間の順に番号を振り、問われている2人に線を引いてから条文を探す。
- 答えを分けやすい言葉は、善意・悪意、過失、書面、登記、だれの行為か。
- 似た条文の組(94条2項と96条3項、114条と115条、10条1項と2項)は、一語の違いで答えが逆になる。
- まちがえた問題は、決め手の型で数えて、次に印を付ける言葉を決める。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。
- e-Gov法令検索「民法」(5条、94条〜96条、113条〜115条、120条、124条、162条、251条、252条、304条、372条、415条、446条、541条、543条、557条、566条、613条、622条の2、887条、889条、899条の2、900条、939条)
- e-Gov法令検索「借地借家法」(10条、23条、26条、38条)
- 裁判所「最高裁判所大法廷 昭和40年11月24日判決」(手付解除と履行の着手)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
働く人の法律試験ノート