シックハウス対策と石綿:建築基準法28条の2(クロルピリホス・ホルムアルデヒド・換気設備)と、居室の決まり

ひとことで言うと、建築基準法28条の2は、建築材料から石綿などの物質が飛び散ったり出てきたりして「衛生上の支障」が生じないよう、建築物の材料と換気設備に基準を置く条文です。シックハウス対策と呼ばれる決まりは、この条文の3号と、施行令20条の5〜20条の9にあります。

読み分けのかぎは、対象の違いです。1号・2号の石綿は、どの建築物にもかかります。3号のクロルピリホスとホルムアルデヒドは「居室を有する建築物」についての基準で、材料だけでなく換気設備の基準もあります。この記事では、号ごとの対象と決まりを表にし、既存の建築物を増築するときの石綿の扱いを条文で確かめます。健康への影響や除去工事の方法は扱いません。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると:住宅と倉庫を建てる

ひろとさんは、同じ敷地に、家族で住む木造の住宅と、農機具をしまう倉庫(人が継続して使う部屋=居室はない)を新築します。28条の2は、2つの建物に次のようにかかります。

  1. 住宅にも倉庫にも、石綿を添加した建築材料は使えない(1号・2号)。居室があるかどうかは関係ない。
  2. 住宅は居室を有するので、さらに3号がかかる。クロルピリホスを添加した材料は使えない(施行令20条の6)。
  3. 住宅の居室の内装の仕上げには、ホルムアルデヒドを多く発散する材料(第一種)は使えず、ほかの種類は面積の制限の中で使う(施行令20条の7)。
  4. 住宅の居室には、内装の材料に関係なく、基準に合う換気設備を設ける(施行令20条の8)。
  5. 居室のない倉庫には、3号の基準(クロルピリホス・ホルムアルデヒド・換気設備)はかからない。

たとえるなら、石綿は「どの建物にも持ち込めない材料」、クロルピリホスとホルムアルデヒドは「人が過ごす部屋がある建物で、量と換気を管理する物質」です。ただし本物のルールでは、ホルムアルデヒドは「使用禁止」と「面積の制限」と「換気設備」の3つに分かれるので、号と施行令の条で確かめます。

条文ではこう決まっている

28条の2の柱書は「建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない」です。号は3つあります。

  • 1号:建築材料に、石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(石綿等)を添加しないこと。政令で定める物質は「石綿とする」とされています(施行令20条の4)。
  • 2号:石綿等をあらかじめ添加した建築材料を使用しないこと。ただし、飛散・発散のおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの、または大臣の認定を受けたものは除きます。
  • 3号:居室を有する建築物は、1号・2号のほか、居室内で衛生上の支障を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質の区分に応じ、建築材料と換気設備について政令の技術的基準に適合すること。政令で定める物質は、クロルピリホスとホルムアルデヒドです(施行令20条の5)。

号と施行令を1枚にすると

何がどの建物決まり
石綿(1号・2号、令20条の4)すべての建築物添加しない。あらかじめ添加した材料を使わない(大臣が定めたもの等を除く)
クロルピリホス(3号、令20条の6)居室を有する建築物添加しない。あらかじめ添加した材料を使わない(長期間たったもの等で大臣が定めたものを除く)
ホルムアルデヒドの材料(3号、令20条の7)居室を有する建築物の居室内装の仕上げに第一種は使わない。第二種・第三種は面積の制限内
ホルムアルデヒドの換気(3号、令20条の8)居室を有する建築物の居室基準に合う換気設備を設ける(住宅等の居室はn=0.5、その他は0.3)

換気設備の基準は、機械換気設備の有効換気量が、必要有効換気量 Vr=nAh 以上であることなどです(施行令20条の8第1項1号イ)。Aは居室の床面積、hは天井の高さなので、Ahは部屋の容積です。nは住宅等の居室で0.5、その他の居室で0.3なので、1時間に部屋の空気の0.5回分・0.3回分にあたる量になります。「住宅等の居室」には、住宅の居室のほか、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場が入ります(施行令20条の7の表の備考一)。

ホルムアルデヒドの基準には特例もあります。居室内のホルムアルデヒドの量を、1年を通じて空気1立方メートルあたりおおむね0.1ミリグラム以下に保つことができるとして大臣の認定を受けた居室には、20条の7・20条の8の基準を適用しません(施行令20条の9)。

既存の建築物を増築するときの石綿

28条の2の石綿の基準ができる前に建てられ、石綿を添加した建築材料が使われている建築物は、そのままなら「既存不適格」として違反にはなりません(3条2項)。増築や改築をするときは原則として今の基準がかかりますが、86条の7第1項と施行令137条の4の2が、石綿(28条の2の1号・2号に係る部分)について範囲を定めています。次のすべてに当たる増築・改築なら、既存の部分に28条の2の1号・2号を適用しません。

  • 増築・改築に係る部分の床面積の合計が、基準時の延べ面積の2分の1を超えない。
  • 増築・改築に係る部分が、28条の2の1号・2号の基準に適合する。
  • それ以外の部分が、石綿を添加した材料を被覆する、または石綿を材料に固着する措置について、大臣が定める基準に適合する。

つまり、この範囲なら、既存の部分は除去ではなく、被覆・固着の措置で足ります。既存不適格の全体の考え方は既存不適格建築物の記事で扱っています。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:居室のない倉庫でも石綿は使えない

ひろとさんの倉庫には居室がありません。それでも1号・2号は「建築物は」で始まり、居室の有無を限っていないので、石綿を添加した材料は使えません。

当てはまらない例:倉庫のクロルピリホス

クロルピリホスの基準は3号の「居室を有する建築物」の基準なので、居室のない倉庫には28条の2のクロルピリホスの基準はかかりません。石綿と同じ扱いだと思うと取り違えます。

ひっかけやすい例:材料を選べば換気設備はいらないか

ひろとさんが、住宅の居室の内装にホルムアルデヒド発散建築材料を一切使わないとしても、施行令20条の8第1項1号は「居室には、次のいずれかに適合する構造の換気設備を設けること」としていて、材料を使う場合に限っていません。外れるのは、同等以上とされる大臣の定めや認定(20条の8第2項)、20条の9の認定を受けた居室などです。

ひっかけやすい例:家具店の売場

家具店の売場は住宅ではありませんが、「住宅等の居室」に入るので、必要有効換気量の計算は n=0.5 です。事務所の居室なら0.3です。

似ているルールとの違い

決まり何のため条文
居室の採光・換気の窓居室に光と外気を入れる開口部建築基準法28条
石綿・シックハウス材料からの飛散・発散による衛生上の支障を防ぐ建築基準法28条の2
重要事項説明の石綿使用調査調査の記録があるときに、その内容を説明する宅建業法35条と施行規則

28条の窓の大きさの割合は単体規定の記事の表にあります。28条と28条の2は、どちらも単体規定(建物そのものの安全や衛生の決まり)です。重要事項説明で石綿の使用の有無の調査の結果をどう扱うかは災害と建物の調査の記事に任せます。新築のときに確認を受ける手続は建築確認の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、単体規定が主な論点の問題は2問(直近10回〔令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ〕で0問)、ほかの論点の問題の中に副の論点として含むものが9問(直近10回で4問)でした。建築基準法の論点が混ざる「総合」の問題は50問(直近10回で20問)です。シックハウス・石綿だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 対象の取り違え:石綿の決まりを「居室を有する建築物」に限る形、またはクロルピリホスをすべての建築物にかける形。石綿は1号・2号、クロルピリホスは3号です。
  • 換気設備の条件の付け足し:ホルムアルデヒド発散建築材料を使わなければ換気設備はいらないとする形。施行令20条の8第1項は材料の使用を条件にしていません。
  • ホルムアルデヒドの材料の区分:第二種・第三種も使えないとする形。使えないのは内装の仕上げの第一種で、第二種・第三種は面積の制限内で使えます。
  • 既存不適格の増築:増築するなら既存の部分の石綿は除去しなければならないとする形。施行令137条の4の2の範囲なら、被覆・固着の措置で足ります。
  • 28条との混同:28条の2を窓の採光・換気の割合の決まりとする形。窓の割合は28条です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ひろとさんは、居室のない農機具の倉庫を新築する。この倉庫には、石綿をあらかじめ添加した建築材料(国土交通大臣が定めたものや認定を受けたものではない)を使用することはできない。

答え:○ 分かれ目は、石綿の基準が居室の有無を問うかです。28条の2の1号・2号は「建築物は」で始まり、居室を有する建築物に限っていないので、居室のない倉庫にもかかります。シックハウスの決まりは人が過ごす部屋のためのもの、と考えると✕にしてしまいます。取り違えの相手は、「居室を有する建築物」に限る3号(クロルピリホス・ホルムアルデヒド)です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
ひろとさんは、住宅の居室の内装の仕上げに、ホルムアルデヒド発散建築材料を使わないことにした。この場合でも、その居室には、建築基準法施行令の基準に適合する換気設備を設けなければならない(大臣の認定などによる例外は考えない)。

答え:○ 分かれ目は、換気設備の基準が材料の使用を条件にしているかです。施行令20条の8第1項1号は「居室には、次のいずれかに適合する構造の換気設備を設けること」とし、ホルムアルデヒド発散建築材料を使う場合に限っていません。材料を選べば換気設備の基準はかからない、と考えると✕にしてしまいます。取り違えの相手は、内装の仕上げの面積を制限する20条の7で、こちらは材料を使うときの基準です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
問1の倉庫(居室はない)に使う建築材料について考える。この倉庫には、建築基準法28条の2の基準により、クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料(国土交通大臣が定めたものではない)を使用することはできない。

答え:✕ 分かれ目は、クロルピリホスの基準がかかる建築物の範囲です。クロルピリホスの基準は、28条の2第3号の「居室を有する建築物にあつては」の基準で、物質は施行令20条の5、材料の決まりは20条の6が定めています。正しくは、居室のない倉庫には28条の2のクロルピリホスの基準はかからず、この材料の使用は28条の2では禁じられていません。問1と同じく、どの建築物にもかかると考えると○にしてしまいます。取り違えの相手は、居室の有無を問わずすべての建築物にかかる石綿の1号・2号(問1)です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 28条の2は、建築材料からの飛散・発散による衛生上の支障を防ぐ単体規定。
  • 石綿(1号・2号)はすべての建築物。クロルピリホス・ホルムアルデヒド(3号)は居室を有する建築物。
  • ホルムアルデヒドは、内装の仕上げの第一種は使わない、第二種・第三種は面積の制限内、居室には換気設備(住宅等の居室はn=0.5)。
  • 既存不適格の増築は、延べ面積の2分の1以内などの範囲なら、既存の部分は被覆・固着の措置で足りる(86条の7・令137条の4の2)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめました(2026年10月17日確認)。出題数は、不動産適正取引推進機構が公開している過去の問題を当サイトが数えたもので、公式の分類ではありません。

このサイトで次に読むなら、単体規定の記事です。28条の採光・換気の窓の割合など、建物そのものにかかるほかの決まりと並べて確かめられます。

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