土地区画整理法をわかりやすく:換地と仮換地、換地処分の効果

土地区画整理事業は、道路や公園を整えて土地を使いやすくするため、地区の土地の形や場所を並べ直す事業です(土地区画整理法2条1項)。工事の間は、元の土地のかわりに「仮換地(かりかんち)」を使います。工事が終わると「換地処分(かんちしょぶん)」が行われ、公告の翌日から新しい土地(換地)が元の土地とみなされます(104条1項)。

宅建試験では、だれが事業をできるか、工事中に家を建てるにはだれの許可がいるか、仮換地と換地処分で何が変わるか、がよく問われる形です。この記事は、宅建試験の基準日である令和8年4月1日時点の条文で確かめています。

身近な例で考えると

名古屋市の郊外に、細い道が入り組んだ古い住宅地があります。ここで区画整理が始まる話です。

人物立場したこと
はなこさん地区に土地を持つ人工事中に土地を売る
まさるさんはなこさんから買う人仮換地に家を建てたい
みどり地区組合土地区画整理組合事業を行う(施行者)
  1. 地区の土地の持ち主たちが、7人以上で定款(ていかん=組合のきまり)と事業計画を作った。土地の持ち主と借地権者(しゃくちけんしゃ=建物のために土地を借りている人)の、それぞれ3分の2以上が賛成した。知事の認可を受けて、組合ができた。
  2. はなこさんは賛成していなかった。それでも地区に土地を持っているので、組合員になった。
  3. 認可の公告のあと、はなこさんは庭に物置を建てたくなった。工事のじゃまになるおそれがあるので、名古屋市長の許可がいる。
  4. 組合が仮換地を指定した。はなこさんは、元の土地は使えなくなり、指定された仮換地を使うことになった。
  5. はなこさんは、元の土地をまさるさんに売った。登記は元の土地のままで行う。まさるさんが使うのは仮換地のほうだ。
  6. 工事が全部終わり、組合が換地処分をした。知事が公告し、その翌日から換地が元の土地とみなされた。そのあと組合が登記所に知らせ、登記がまとめて直された。

たとえると、区画整理は教室の「席替え」に近いものです。仮換地は工事中の「仮の席」、換地処分は「新しい席を正式に決めること」です。ただし本物のルールでは、道路や公園の分を出すため、新しい土地が元より小さくなることがあります。釣り合わない分はお金(清算金)で調整します(94条)。

条文ではこう決まっている

どこで・だれが行うか(2条・3条・14条・18条・25条)

  • 行う場所は「都市計画区域内の土地」。目的は「公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進」(2条1項)。都市計画区域の意味は都市計画区域と区域区分をわかりやすくで説明しています。
  • 行う人(施行者〈しこうしゃ〉)は、①土地の持ち主・借地権者が1人か共同で、②土地区画整理組合、③区画整理会社、④都道府県・市町村、⑤国土交通大臣、など(3条1項〜5項)。
  • 組合を作るには、7人以上が共同で定款と事業計画を定め、知事の認可を受ける(14条1項)。
  • 認可の申請の前に、区域内の土地の所有者と借地権者の「それぞれの三分の二以上の同意」を得る。同意した人の土地の面積の合計も、全体の3分の2以上が必要(18条)。
  • 施行地区内の土地の所有者と借地権者は「すべてその組合の組合員とする」(25条1項)。反対した人も組合員になる。

工事中の建築などの制限(76条)

  • 期間:組合なら設立認可の公告など、事業が正式に決まった公告の日のあとから、換地処分の公告(103条4項)がある日まで。
  • 対象:事業のじゃまになるおそれのある、①土地の形や性質を変えること、②建物などの新築・改築・増築、③動かしにくい重い物を置いたり積んだりすること。
  • 許可する人:原則は都道府県知事。国土交通大臣が行う事業なら大臣。市の区域内で、個人・組合・区画整理会社が行う事業や、市が行う事業なら、その市の長(76条1項)。
  • 許可の前に、知事などは施行者の意見を聴く(76条2項)。許可を出すのは施行者ではない。
  • 違反すると、元に戻すことや、建物の移転・除却(じょきゃく=取りこわし)を命じられることがある(76条4項)。

換地計画と仮換地(86条・89条・98条〜100条の2)

  • 施行者は換地計画を定める。個人・組合・区画整理会社・市町村などが施行者なら、知事の認可を受ける(86条1項)。
  • 換地は、元の土地と「位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等」が照応(しょうおう=釣り合う)するように定める(89条1項)。
  • 土地の持ち主の申出か同意があれば、換地を定めないこともできる。その土地を借りている人などがいれば、その人の同意もいる(90条)。
  • 施行者は、換地処分の前に、工事や換地処分のため必要なら仮換地を指定できる(98条1項)。指定は、仮換地の位置・地積と、指定の効力が生じる日を通知して行う(98条5項)。
  • 仮換地が指定されると、元の土地を使えた人は、効力が生じる日から換地処分の公告の日まで、仮換地を元の土地と同じように使える。そのかわり、元の土地は使えない(99条1項)。
  • 仮換地に建物が残っているなど特別な事情があれば、仮換地を使い始められる日を別に決められる(99条2項)。
  • 仮換地の指定で、だれも使わなくなった土地は、換地処分の公告の日まで施行者が管理する(100条の2)。

換地処分とその効果(103条・104条・107条)

  • 換地処分は、関係する権利者に換地計画の内容を通知して行う(103条1項)。
  • 時期は、原則として全部の工事が終わったあと遅滞なく。規準・規約・定款・施行規程に別の定めがあれば、工事の完了前でもできる(103条2項)。
  • 個人・組合・市町村などが換地処分をしたら知事に届け出て、知事が公告する(103条3項・4項)。
  • 公告の日が「終了した時」に消えるもの:換地を定めなかった元の土地の権利、事業で使う意味がなくなった地役権(104条1項・5項)。
  • 公告の「翌日」に起きること:換地が元の土地とみなされる。清算金が確定する。保留地(ほりゅうち)を施行者が取得する(104条1項・8項・11項)。
  • 地役権(ちえきけん=となりの土地を通るなどの権利)は、公告の翌日以後も元の土地の上に残る(104条4項)。
  • 公告があったら、施行者は直ちに登記所に通知し、遅滞なく登記を申請か嘱託(しょくたく)する。換地処分の登記がされるまで、地区内の土地・建物のほかの登記はできない。公告前の原因を確定日付のある書類で証明すれば別(107条1項〜3項)。

保留地は、換地として配らずに残しておく土地です。事業の費用にあてるためなどに定めます(96条1項)。都道府県や市町村などが施行者のときは、事業で土地の価値の合計が上がった分の範囲でしか定められません(96条2項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:仮換地の指定のあと、はなこさんが元の土地に車を停めようとした。元の土地は使えません(99条1項)。その土地を仮換地として指定された別の人が使います。
  2. 当てはまらない例:仮換地の指定のあとでも、はなこさんは元の土地をまさるさんに売れます。仮換地の指定で変わるのは「使える土地」で、元の土地の所有権はそのままだからです。まさるさんは仮換地を使います。
  3. ひっかけやすい例:組合が行う区画整理で、まさるさんが仮換地に家を建てたい。許可を出すのは組合ではありません。名古屋市は市なので、名古屋市長の許可です(76条1項)。町村の区域なら知事です。
  4. ひっかけやすい例:換地を定めなかった元の土地に、銀行の抵当権がついていた。この抵当権は、公告の「翌日」ではなく、公告の日が「終了した時」に消えます(104条1項)。
  5. 当てはまらない例:となりの土地を通るための地役権は、換地処分があっても元の土地の上に残ります(104条4項)。新しい換地に移るわけではありません。

仮換地と換地はどう違うか

項目仮換地の指定換地処分
いつ工事の途中原則、全部の工事の後
使える土地仮換地換地
所有権がある土地元の土地のまま換地(公告の翌日から)
登記元の土地のまま施行者が申請・嘱託

施行者の種類による違いも、よく入れかえられます。

施行者始め方ポイント
個人1人か共同で土地の持ち主・借地権者など
組合7人以上・知事の認可それぞれ3分の2以上の同意
区画整理会社株式会社公開会社ではないこと
都道府県・市町村施行区域の土地で保留地に上限あり

なお、76条の許可は、宅建業法33条の「広告を始めてよい時期」を決める許可の一つです。工事中の土地を広告するときの話は宅建業の広告のルールをわかりやすくで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

土地区画整理法は宅建試験の法令上の制限で問われる法律です。次の型に注意します。

  • 許可権者のすりかえ:「施行者の許可」「組合の許可」とする形。76条の許可は知事か市長(大臣施行なら大臣)です。施行者は意見を聴かれる側です。
  • 「当日の終わり」と「翌日」:権利が消えるのは公告の日が終了した時。換地が元の土地とみなされる、清算金の確定、保留地の取得は翌日です。
  • 仮換地で所有権まで移るとする形:仮換地の指定で変わるのは使える土地だけです。元の土地の売買や登記は、元の土地で行います。
  • 換地処分の時期:「工事の完了前には一切できない」とする形。規準・規約・定款・施行規程に定めがあれば、完了前でもできます(103条2項)。
  • 組合の数字:7人以上、所有者と借地権者の「それぞれ」3分の2以上。反対した人も組合員です。
  • 地役権:換地に移るとする形。元の土地の上に残ります。

行政書士試験では、区画整理の「事業計画の決定」が取消訴訟の対象になるか、という行政法の形で出てくることがあります。その点は取消訴訟の要件をわかりやすくで説明しています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内で、設立認可の公告のあとに建物を新築するには、その組合の許可を受けなければならない。

答え:✕
許可するのは都道府県知事です。市の区域内で組合が施行する事業なら、その市の長です(76条1項)。組合などの施行者は、許可の前に意見を聴かれる側です(76条2項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
仮換地が指定されたあとは、元の土地の所有者は、元の土地を他人に売ることができない。

答え:✕
仮換地の指定で使えなくなるのは、元の土地を「使うこと」です(99条1項)。所有権は元の土地に残るので、売ることはできます。買った人は仮換地を使います。

問3(このサイトのオリジナル問題)
換地処分の公告があった場合、換地計画で定められた換地は、その公告があった日の翌日から元の土地とみなされる。

答え:○
104条1項のとおりです。一方、換地を定めなかった元の土地の権利は、公告があった日が終了した時に消えます。「翌日」と「当日の終わり」を分けて覚えます。

まとめ

  • 区画整理は都市計画区域内で行う。組合は7人以上、所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意、知事の認可。
  • 工事中の建築などは、知事(市の区域内なら市長、大臣施行なら大臣)の許可。施行者の許可ではない。
  • 仮換地の指定で、使える土地が仮換地に変わる。所有権と登記は元の土地のまま。
  • 換地処分の公告:当日の終わりに権利が消え、翌日に換地・清算金・保留地の効果が生じる。地役権は元の土地に残る。

このサイトで次に読むなら、同じ法令上の制限で工事の規制を扱う宅地造成及び特定盛土等規制法をわかりやすくがおすすめです。「だれの許可か」「何日以内か」を比べながら覚えると、数字の取りちがえを防ぎやすくなります。

条文について:この記事は、令和8年4月1日時点で施行されていた条文(e-Gov で2025年6月1日施行の改正を反映した版)で確かめました。そのあとに施行された改正(たとえば2026年10月1日施行の令和8年法律第27号)は、令和8年度の宅建試験の基準日より後のものです。なお、この記事で扱った76条1項の許可権者(知事・市長・大臣)の書き方は、2026年10月1日施行後の条文でも同じです。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)