減歩とは:土地区画整理で土地が小さくなる理由(公共施設の用地と保留地)、減歩率の考え方と減価補償金

ひとことで言うと、減歩(げんぶ)は、土地区画整理で、道路・公園などの用地と、事業の費用にあてる保留地を生み出すために、地区の土地の持ち主が少しずつ土地を出し合い、新しく受け取る土地(換地)が元の土地より小さくなることです。国土交通省は、公共用地が増える分にあてるのを「公共減歩」、事業資金にあてるのを「保留地減歩」と説明しています。

ただし「減歩」は、土地区画整理法が定義している言葉ではありません。2条の定義にはなく、この記事で使う条文(3条、89条、94条、96条、102条、104条、109条)にも「減歩」の語は出てきません(当サイトが e-Gov 法令検索で確かめた範囲です)。試験では、換地の照応(89条)、保留地(96条)、清算金(94条)、減価補償金(109条)という条文の言葉で問われます。この記事では、減歩率の考え方を数値の例で示し、この4つを比べます。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると:300㎡が240㎡になる

ゆかりさんは、細い道に面した300㎡の宅地を持っています。この地区で、市が施行者となって土地区画整理事業が始まりました。事業の目的は「公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進」です(2条1項)。道を広げ、公園をつくり、土地の形を整えます。

  1. 道路と公園の用地が増える。その土地は、地区の持ち主が少しずつ出し合う。ゆかりさんの分は36㎡(公共減歩)。
  2. 事業の費用にあてるため、施行者が売る土地(保留地)も生み出す。ゆかりさんの分は24㎡(保留地減歩)。市が施行する事業なので、保留地は、事業で宅地の価額の総額が増える分の範囲で定める(96条2項)。
  3. 換地計画で、ゆかりさんの換地は、広くなった道に面した240㎡と定められた。
  4. 換地処分の公告があった日の翌日から、240㎡の換地が、元の300㎡の宅地とみなされる(104条1項)。

たとえるなら、ピザを切り分け直すときに、全員が少しずつ出し合って「みんなで使う皿」と「材料費にあてる分」を作るようなものです。1人分の面積は小さくなりますが、道が広くなり土地の形が整うので、土地の使いやすさが上がることがあります。ただし本物のルールでは、出し合う量は換地計画で決まり、面積だけでなく位置や環境なども比べて定めます(89条1項)。

減歩率はどう計算するか

減歩率は、元の土地の面積のうち、どれだけの割合が減ったかを表す数字です。法律で決められた計算式ではないので、ここでは一般の説明として、面積だけで計算します。

  • 減歩率=(従前の宅地の面積−換地の面積)÷従前の宅地の面積
  • ゆかりさんの例:(300−240)÷300=60÷300=0.2、つまり20%
  • 内訳:公共減歩36㎡÷300㎡=12%、保留地減歩24㎡÷300㎡=8%。12%+8%=20%で、合計と一致する(36+24=60㎡)。

割る数をまちがえて、60÷240=25%とすると、換地の面積を基準にしたことになり、元の土地のうちの割合ではなくなります。減歩率の分母は元の土地の面積です。なお、実際の事業で換地をどう定めるかは、面積の計算だけで決まるものではなく、89条の照応の原則と換地計画によります。地区ごとの減歩率の数字は、この記事では扱いません。

条文ではこう決まっている

  • 換地の照応(89条1項):換地は、従前の宅地と「位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように」定めなければなりません。地積(面積)は比べる要素の一つで、同じ面積にすることまでは求めていません。
  • 清算金(94条):換地を定めた結果、不均衡が生ずると認められるときは、位置・地積・土質・水利・利用状況・環境等を総合的に考慮して、金銭で清算します。額は換地計画で定め、換地処分の公告があった日の翌日に確定します(104条8項)。
  • 仮清算金(102条1項):仮換地を指定したときなどに、施行者は、必要があると認めるときは、仮に算出した仮清算金を徴収・交付することが「できる」とされています。清算金の確定とは別のものです。
  • 保留地(96条):換地として定めないで残す土地です。施行者が換地処分の公告があった日の翌日に取得します(104条11項)。定められる目的と量は施行者で違います(1項と2項)。
  • 減価補償金(109条1項):都道府県・市町村・国土交通大臣・独立行政法人都市再生機構・地方住宅供給公社が施行者のとき(3条4項・5項、3条の2、3条の3)に、事業の施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額より減少した場合、その差額に相当する金額を、従前の宅地の所有者や使用・収益の権利を持つ人に、減価補償金として交付しなければなりません。交付額は土地区画整理審議会の意見を聴いて決めます(同条2項)。

換地・保留地・清算金・減価補償金を1枚で比べると

しくみ何がいつだれに
換地(89条・104条1項)照応するように定めた新しい土地公告の翌日から従前の宅地とみなす従前の宅地の所有者
保留地(96条・104条11項)換地に定めずに残す土地公告の翌日に取得施行者
清算金(94条・104条8項)換地の不均衡を直すお金公告の翌日に確定不均衡のある権利者(徴収または交付)
減価補償金(109条)宅地の価額の総額が減った差額総額が施行前より減ったとき従前の宅地の所有者など(公的な施行者のときだけ)

表の「公告」は換地処分の公告(103条4項)です。保留地を定められる目的と量が、組合などの施行と公的な施行で違う点は、土地区画整理組合と保留地の記事の表で比べています。換地処分の効果の全体は土地区画整理法の記事にあります。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:面積が減っても照応していればよい

ゆかりさんの換地は60㎡小さくなりましたが、元の土地と近い位置で、広い道に面しています。89条1項は、位置・地積・環境などが「照応する」ように定めることを求めていて、面積が減ったことだけで換地の定め方が条文に反するわけではありません。

当てはまる例:不均衡は清算金で直す

隣のたけしさんの換地は、ゆかりさんより減り方が小さかったとします。地区の中で換地どうしに不均衡があると認められるなら、清算金で金銭により清算します(94条)。多くもらった人からは徴収し、少なかった人には交付します。

当てはまらない例:減歩があれば減価補償金がもらえる

減価補償金は、1人の土地が小さくなったことではなく、地区全体で、施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額より減ったことが条件です(109条1項)。道が広がって土地が使いやすくなり、総額が増えたなら、ゆかりさんの土地が小さくなっても減価補償金はありません。

ひっかけやすい例:組合が施行する事業の減価補償金

109条1項の主語は、3条4項・5項、3条の2、3条の3の施行者(都道府県・市町村・国土交通大臣・独立行政法人都市再生機構・地方住宅供給公社)です。土地の持ち主が作る土地区画整理組合(3条2項)や個人施行者(同条1項)、区画整理会社(同条3項)は入っていません。

ひっかけやすい例:清算金はいつ決まるか

仮換地を指定した段階で、施行者は仮清算金を徴収・交付することができます(102条1項)。これは「仮に算出した」お金で、清算金そのものが確定するのは換地処分の公告があった日の翌日です(104条8項)。仮換地の上で何ができるかは仮換地の記事に任せます。

似ているルールとの違い

比べる点清算金減価補償金
何を直すか換地どうしの不均衡地区全体の価額の総額の減少
施行者どの施行者でも公的な施行者だけ
お金の向き徴収も交付もある交付だけ
条文94条・104条8項109条

公的な施行者が保留地を定めるときは、施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額を超える場合に、その差額に相当する金額を超えない価額の範囲でしか定められません(96条2項)。価額の総額が増えれば保留地、減れば減価補償金、という対になる作りです。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、土地区画整理法が主な論点の問題は40問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では10問でした。減歩だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 減歩と減価の取り違え:土地が小さくなれば減価補償金が出るとする形。条件は価額の総額の減少です(109条1項)。
  • 施行者の広げすぎ:組合や個人施行者も減価補償金を交付するとする形。109条1項の施行者は公的な施行者だけです。
  • 照応の読み違え:換地は従前の宅地と同じ面積にしなければならないとする形。89条1項は位置・地積・環境等の照応を求めます。
  • 時点の取り違え:清算金が仮換地の指定の時に確定するとする形。確定は換地処分の公告の日の翌日です(104条8項)。
  • 計算の分母:減歩率を換地の面積で割る形。分母は従前の宅地の面積です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
土地区画整理組合が施行する事業で、施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額より減った。この場合、組合は、その差額に相当する金額を、従前の宅地の所有者などに減価補償金として交付しなければならない。

答え:✕ 分かれ目は施行者です。109条1項で減価補償金を交付するのは、3条4項・5項、3条の2、3条の3の施行者(都道府県・市町村・国土交通大臣・独立行政法人都市再生機構・地方住宅供給公社)です。正しくは、組合(3条2項)が施行する事業には109条の減価補償金の定めはありません。取り違えの相手は、市などの公的な施行者の事業です。同じ施行者の区別は、保留地を価額の増えた分までに限る96条2項にもあります。

問2(このサイトのオリジナル問題)
A市が施行する土地区画整理事業で、ゆかりさんの換地は従前の宅地より地積が小さく、清算金を受け取ることが換地計画で定められた。この清算金は、仮換地の指定の時ではなく、換地処分の公告があった日の翌日に確定する。

答え:○ 分かれ目は清算金が確定する時点です。104条8項は、94条の清算金は換地処分の公告があった日の翌日に確定するとしています。仮換地を指定したときにお金のやりとりがあると知っていると、その時に決まると考えて✕にしてしまいます。取り違えの相手は、仮換地の指定などのときに施行者が必要と認めればできる仮清算金(102条1項)で、これは仮に算出したお金です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
A市が施行する土地区画整理事業で、ゆかりさんの換地は従前の宅地より地積が小さくなったが、事業の施行後の宅地の価額の総額は施行前の総額より増えた。この場合、A市は、ゆかりさんに減価補償金を交付しなくてよい(清算金の定めは別とする)。

答え:○ 分かれ目は、減価補償金の条件が「1人の地積の減少」か「価額の総額の減少」かです。109条1項は、施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額より減少した場合に、その差額を交付するとしています。土地が小さくなった(減歩があった)のだから補償がある、と考えると✕にしてしまいます。取り違えの相手は、換地どうしの不均衡を金銭で直す清算金(94条)です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 減歩は土地区画整理法が定義する言葉ではない。公共用地にあてる公共減歩と、事業資金にあてる保留地減歩がある(国土交通省の説明)。
  • 減歩率=(従前の面積−換地の面積)÷従前の面積。300㎡→240㎡なら20%。
  • 換地は位置・地積・環境等が照応するように定める(89条1項)。不均衡は清算金で直し、公告の翌日に確定する(94条・104条8項)。
  • 減価補償金は、公的な施行者の事業で、宅地の価額の総額が減ったときだけ(109条1項)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点のものを確かめました(2026年10月17日確認)。「減歩」の語がないことは、2条の定義と、この記事で使った条文で確かめたものです(法律の全文を検索したものではありません)。出題数は、不動産適正取引推進機構が公開している過去の問題を当サイトが数えたもので、公式の分類ではありません。

このサイトで次に読むなら、土地区画整理法の記事です。換地処分の公告の翌日に何が起き、公告の日が終わった時に何が消えるかを、条文の順に確かめられます。

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