耐震・制震・免震の違い:地震の揺れへの3つの考え方と、木造・鉄骨造・RC造との組み合わせ(宅建の建物)

ひとことで言うと、耐震(たいしん)は建物の骨組みの強さで揺れに耐える、制震(せいしん。制振とも書く)は骨組みに組み込んだ部材で揺れのエネルギーを吸収する、免震(めんしん)は建物と地盤の間などに免震層を設けて地震の力を建物に伝わりにくくする、という3つの考え方です。

このうち法令の言葉として定義があるのは「免震建築物」で、平成12年建設省告示第2009号が免震層・免震材料などを定義しています。「制震」「制振」は、建築基準法と施行令の定義語ではありません(e-Gov で確かめました)。この記事では、3つの考え方を表で比べ、告示の言葉で免震を確かめ、宅建試験の問50の肢の言い回しを判定します。木造の筋かい、ラーメン構造、基礎の種類は建物の構造の記事に任せます。商品名・工法の名前・費用は扱いません。

身近な例で考えると

マンションを探している、けんじさんの話です。同じ街で、地震への備え方が違う3棟を見比べています。

建物案内で聞いたこと考え方
A棟柱・はり・壁を太く丈夫にしてある耐震
B棟各階の壁の中に揺れを吸収する装置(ダンパー)が入っている制震(制振)
C棟建物と基礎の間に積層ゴムなどを並べた層がある免震
  1. けんじさんは、まず「揺れにどこで対応するか」で分けた。A棟は骨組みそのもの、B棟は骨組みの中の装置、C棟は建物の下の層。
  2. 次に「揺れをどうするか」を考えた。A棟は揺れを受け止めて耐える。B棟は建物に入った揺れのエネルギーを装置が吸収する。C棟は地震の力が上の建物に伝わるのを減らす。
  3. 最後に、C棟の下の層の説明を読み直した。重さを支えるゴムのほかに、揺れのエネルギーを吸収する部材も入っていた。

3番目は、取り違えやすいところです。「エネルギーを吸収する部材がある=制震」とは限りません。免震層にも、揺れのエネルギーを吸収する減衰材(げんすいざい)が入ります。見分ける手がかりは、吸収する部材の有無ではなく、どこで揺れに対応するかです。

たとえるなら、耐震は「足をふんばって揺れに耐える」、制震は「ひざを曲げて揺れを吸収する」、免震は「スケートボードの上に立って、地面の揺れが体に伝わりにくくする」です。ただし本物の建物では、免震や制震の建物も、骨組みそのものは揺れに耐える強さを持つように造られます。3つは「どれか一つ」ではなく、耐震を土台に重ねる考え方です。

法令と公的な資料ではこう決まっている

耐震:建築基準法20条

建築基準法20条1項は、建築物は、自重・積載荷重・積雪荷重・風圧・土圧・水圧と、地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、決まった基準に適合するものでなければならない、としています。どの建物も、まずこの構造耐力の基準を満たします。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造ごとの細かい決まりは、建築基準法施行令の第3章(構造強度)にあります。

免震:平成12年建設省告示第2009号

告示の題は「免震建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件」です。施行令38条3項・80条の2第2号などの規定に基づいて定められています。告示の第一は、言葉を次のように定義しています。

  • 免震建築物:「免震層を配置した建築物をいう。」
  • 免震層:「免震材料を緊結した床版又はこれに類するものにより挟まれた建築物の部分をいう。」
  • 免震材料:建築材料のうち、建築物に作用する地震力を低減する機能を有するもの。支承材(しょうざい。水平に置き、主に建物の重さ=鉛直荷重を支える。積層ゴムなど)、減衰材(振動のエネルギーを吸収する。鉛・鋼材や作動油など)、復元材(変形に応じて元に戻す働きで、建物の揺れの周期を調整する)に分けている。
  • 上部構造:免震層より上の部分。下部構造:免震層より下の部分(基礎の立上り部分を含む)。

告示の第二は、免震建築物の造り方を、構造計算によらない方法(第二第一号。技術的基準は第四)、告示の第六の構造計算で安全を確かめる方法、大臣の認定を受ける方法に分けています。構造計算によらない方法では、上部構造が施行令第3章第3節から第7節の2までの規定(木造・組積造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの材料ごとの構造の決まり)に、一部を除いて適合することが求められます(第四第二号イ)。どの方法でも、建物は20条1項の構造耐力の基準の中で造られます。免震層があるからといって、上の建物が構造の決まりから外れるわけではありません。

制震(制振):法令の定義語ではない

e-Gov の法令の検索で「制震」を探すと、出てくるのは建築以外の法令(設備の例として「制震装置」を挙げる省令など)で、建築基準法と施行令には出てきません。国土交通省大臣官房官庁営繕部の「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」は「制振構造」と書き、免震構造と並べて、どんな官庁施設に使うかを定めています。仕組みの説明は、自治体の庁舎の建替えの検討資料(川崎市)で、制振構造は耐震構造の中に制振部材を組み込み、地震の入力エネルギーの多くを制振部材が吸収する、と説明されています。この記事も、その意味で「制震(制振)」と書きます。

3つの考え方を1枚にすると

考え方どこで何をするか法令の言葉
耐震柱・はり・壁などの骨組み強さで揺れに耐える20条の構造耐力(定義語ではない)
制震(制振)骨組みの中に組み込んだ部材(ダンパーなど)建物に入った揺れのエネルギーを吸収する建築基準法令の定義語ではない
免震免震層(建物と基礎の間など)地震力を低減し、上の建物に伝わりにくくする告示第2009号の「免震建築物」

見分ける手がかりは「どこで」の列です。骨組みそのもの=耐震、骨組みの中の部材=制震、建物の下などの層=免震。免震層の中にも減衰材があるので、「吸収する」という言葉だけで制震と決めないようにします。改修の場面でも、官庁営繕部の「官庁施設の総合耐震診断・改修基準」は、免震・制振による改修を検討する場合を定めています。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:積層ゴムの層がある建物

C棟のように、基礎と建物の間に積層ゴム(支承材)と減衰材を並べた層があれば、免震層を配置した建築物で、告示の「免震建築物」に当たります。

当てはまらない例:筋かいを増やした木造住宅

木造住宅の壁に筋かいを増やして横からの力に強くするのは、骨組みの強さを上げる耐震の考え方です。筋かいの寸法や欠込みの決まりは施行令45条で、建物の構造の記事で確かめられます。

ひっかけやすい例:免震なら上の建物の規定は要らない?

免震層で地震力が小さくなっても、免震建築物は20条1項の構造耐力の基準の中で造られます。構造計算によらない方法で造るときは、上部構造が施行令の材料ごとの構造の規定に、一部を除いて適合することも求められます(告示第2009号の第四第二号イ)。「免震だから柱やはりの決まりは関係ない」とはなりません。

ひっかけやすい例:ダンパーがあれば制震

揺れのエネルギーを吸収する部材は、免震層の減衰材にも使われます。ダンパーがあるかではなく、それが骨組みの中にあるのか、免震層にあるのかで見分けます。

似ているルールとの違い

言葉何の話か扱う記事
耐震・制震・免震建物の地震への備え方(構造の考え方)この記事
ラーメン構造・壁式構造骨組みの形建物の構造
耐震診断重要事項の説明で、耐震診断を受けているか(建物の調査の話)重要事項説明の災害と建物の調査

耐震診断は、建物の構造の考え方ではなく、宅建業法の重要事項の説明で出てくる「調査を受けたかどうか」の話です。こちらは重要事項説明の災害と建物の調査の記事で扱っています。土地の側の地震への強さ(台地・低地・液状化)は宅地に向く土地の記事です。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、建物(構造・材料)が主な論点の問題は34問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では10問でした。直近10回の10問は、すべて問50で、すべて「誤っているもの」を選ぶ形です。免震・制震だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。問50は、登録講習の修了者が免除される問46〜50の中にあります。

肢の言い回しで○✕を判定する

当サイトが作った説明文です。「どこで・何をするか」の表に当てはめて判定します。

説明文判定決め手
耐震は、柱・はり・壁などの強さで揺れに耐える○骨組みで耐える
制震は、建物と基礎の間に積層ゴムを置き、揺れを伝えにくくする✕それは免震の説明
制震は、骨組みに組み込んだ部材で揺れのエネルギーを吸収する○骨組みの中の部材
免震層には、重さを支える部材だけが使われる✕減衰材・復元材もある
免震は、地震の力を建物に伝わりにくくする○地震力の低減
  • 説明の入れ替え:耐震・制震・免震の説明を入れ替える形。「どこで」を先に確かめます。
  • 部材の数を減らす形:免震層を「積層ゴムだけ」とする形。告示は支承材・減衰材・復元材の3つに分けています。
  • 規定が外れるとする形:免震建築物なら構造耐力の規定がかからない、とする形。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
免震構造は、建物の柱やはり、壁を太く丈夫にして、地震の揺れに骨組みの強さで耐えるようにした構造である。

答え:✕ 分かれ目は、どこで揺れに対応するかです。告示第2009号は、免震建築物を「免震層を配置した建築物」とし、免震材料を「建築物に作用する地震力を低減する機能を有するもの」としています。正しくは、免震は、免震層で地震の力が上の建物に伝わるのを減らす考え方です。問題文の説明は、骨組みの強さで耐える耐震の説明と入れ替えたものです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
免震建築物の免震層には、建物の重さを主に支える支承材のほかに、振動のエネルギーを吸収する減衰材も用いられる。

答え:○ 分かれ目は、免震材料の種類です。告示第2009号は、免震材料を、主に鉛直荷重を支える支承材、振動エネルギーを吸収する減衰材、建物の周期を調整する復元材に分けています。「エネルギーを吸収するのは制震」と覚えていると✕にしやすい肢です。制震(制振)と免震の違いは、吸収する部材があるかではなく、それが骨組みの中にあるか免震層にあるかです。

問3(このサイトのオリジナル問題)
Aは、鉄筋コンクリート造のマンションを、免震層を配置した免震建築物として建てる。この建物にも、建築基準法20条1項の、地震その他の震動に対して安全な構造とする規定が適用される。

答え:○ 分かれ目は、免震層があると構造の規定が外れるかです。20条1項は、建築物を、地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、決まった基準に適合させるとしています。告示第2009号は、施行令80条の2などに基づいて、免震建築物がこの基準を満たすための造り方を定めたもので、20条の外に出る仕組みではありません。地震力が小さくなるのだから構造の決まりは外れる、と考えると✕にしてしまいます。取り違えの相手は、建築基準法令の規定が適用されない、非常災害のときの応急仮設建築物(85条1項)のような緩和の規定です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。

まとめ

  • 耐震=骨組みの強さで耐える。制震(制振)=骨組みの中の部材でエネルギーを吸収する。免震=免震層で地震力を伝わりにくくする。
  • 「免震建築物」は平成12年建設省告示第2009号の定義語。「制震」「制振」は建築基準法令の定義語ではない。
  • 免震材料は支承材・減衰材・復元材。免震層にもエネルギーを吸収する部材がある。
  • 免震建築物も20条1項の構造耐力の基準の中で造る。構造計算によらない方法では、上部構造に材料ごとの構造の規定が一部を除いてかかる。
  • 直近10回の建物の問題は、すべて問50の「誤っているもの」の形。説明の入れ替えを「どこで」で見抜く。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の建築基準法を確かめました。「制震」の語は、e-Gov の法令の検索(令和8年4月1日時点)で確かめました。

このサイトで次に読むなら、土地と建物の基礎知識の記事です。問46〜50の免除科目の中で、建物の構造の数字と地形の見分けを一緒に確かめられます。

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